固い、やすい、うまいが理想
グミにも色々あるが、僕が好きなのは、固いグミ。口に入れた瞬間の頼もしさ、噛みしめたときのガッツリとした歯ごたえ、飲み込むときのゴロリとしたのどごし。中でも気に入っているのはもっぱらHARIBOのグミだ。中でも、というかそれしか食べてない。
ハリボックス。200g入り
HARIBOには美味しいものからタイヤの味がするものまでいろんな種類があるのだが、僕が好きなのはゴールドベア。クマの形のグミが入った、HARIBOブランドでは最もオーソドックスなやつだ。
その美しさはまるで宝石のよう
見た目にもきれいだが、ゴールドベアの真価は見た目ではない。その固さにある。噛むまでもなく、指でつまんだ瞬間にわかるその固さ。
HARIBOはドイツの製菓会社だが、ヨーロッパでは固いものを食べる習慣があまりないため、これを食べて子供に咀嚼力をつけてほしい、という願いの元にわざと固く作っているそうである。
固さを計る
つい熱くなってHARIBOの紹介が長くなってしまった。ではこのHARIBOがどれほど固いか、他のグミと比べて確かめてみよう。
4つ買ってきました
アイデア拷問器具みたいな見た目ですが違います
土台を下にしてテーブルに設置
歯(人間の歯を再現しているので「刃」ではなく「歯」だ)の下にグミを置き、ペットボトルに水を足していく。グミが噛み切れた時点で水の重さを量る
さっそく計測してみよう。
エントリーナンバー1番は「果汁グミ」。
口に入れるとプリプリしてやわらかく、噛んでもやはりやわらかい。グミの中でも相当に柔らかい部類だろう。
慎重に少しずつ水を足していく
グミに少しずつ歯が食い込んでいく。やっぱり拷問器具だな、これ
バシャー
バランスを崩し測定器具が落下。床の色のせいで写真では見づらいが、一面に約500mlの水がぶちまけられた。
予想外の展開に、オーディエンス(横にいた妻)が大いに沸いた(キレ気味で)。
無駄にハイテク2号機
2号機である。初号機は歯が厚すぎてなかなかグミが裂けなかったため、もっと薄い金具に変更。あと、おもりは水をやめて袋にした。ここに固体のおもりを詰めることにしよう。
あと2号機の目玉機能としては
グミが完全に裂けるとLEDでおしらせ
グミの裂け具合が見た目ではわかりにくかったので、土台と歯に電極をつけて、歯が貫通すると光るようにした。
…適当に作った割に高機能な物ができた。もうこの記事、「グミの固さ測定器を作る」で良かったんじゃないかと思う。
改めまして、果汁グミ。
たまたま本棚にあった漫画を載せていく
5巻ぶんで貫通。
文庫本5冊で貫通。重さにして800gほどだった。
この数字をどう評価していいかわからないが、少なくとも手塚治虫「ブッダ」5巻の時点でブッダは悟りを開いていない。果汁グミ的歴史観によれば仏教も生まれなかったし、日本は神道を中心とした国としてまた違った発展を遂げていたことだろう。
次にこちら、ピュアラルライチグミ。
持った感じがぷるんぷるんなのでやわらかいのかと思いきや、噛んでみると意外にコリッとしていて不思議。圧がかかったときに固い歯ごたえになるのだろう。新食感を自称するだけのことはある。
測定してみると
11巻まで
約1.7キロの荷重まで耐えた。ブッダの物語的にも11巻ともなると佳境である。ブッダが自分の死に方について考え始めるのだ。一方でこの記事は、まだ本題である固いグミの作り方を考え始めてさえいない。漫画の内容について与太話をしている場合ではないぞ。さっさと次のグミへ。みっつめはハードタイプを自称する「サワーズ」。
これは固い!固いのに弾力はあり、衝撃吸収性は高い。クッション材によさそうな素材だ。噛むとゴリッとするのが気持ちがいいが、まわりに砂糖がまぶしてあるのが個人的には減点。
ぐっと食い込んで
手塚治虫作品集
ブッダだけでは足りなくなってしまい、奇子、アドルフに告ぐをそれぞれ全巻、火の鳥を3巻まで、という結果になった。
さすがハードタイプを自称するだけあり、手塚先生のキャリアを初期から後期までなめる網羅ぶりである。重さにすると3.9kg。
そして最後に我らがHARIBOゴールデンベア。
ハリボックス(再掲)
パッケージを振ってみると音が「カタカタカタ」で固い。そして持つとまた固い。弾力がないのだ。
噛みしめてもガチッとしっかりした抵抗がある。そしてクマの凹凸が歯茎の裏にあたって気持ちがいい。美味しいだけでなく、マッサージの効果もあるのだ。
クマを仰向けでセット。拷問器具の本領発揮
どんどんたまっていく本。そしてついに…
ギャー!
とどめは旅行ガイドであった
前述の手塚治虫作品集にくわえ、台湾・オーストラリア・パリのガイドブックを追加。
タイトルのチョイスに他意はない。本が足りなくなって慌てて掴んだらたまたまガイドブックだっただけだ。
重さにして5.2kg。スーパーで安いからといって米5kgを買ってしまって帰りに重くて後悔することがあるが、あれ、実はグミ1個で支えられるのである。そう、HARIBOならね。
一応グラフで
自作で固いグミを目指す
さあ、驚くべきことに、ここからがこの記事の本題である。クマを越える固いグミを、自作で作るのだ。
調べたところによると、意外にもグミはゼラチンで簡単に自作できるらしい。ゼラチンを高濃度にすれば、きっと固いグミが出来るに違いない。
材料はゼラチン、ジュース、レモン汁、水飴
ゼラチンを入れる。通常は5g、今回は増量版も作ります。
ジュース大さじ2杯と、レモン少々を投入
左から、ゼラチン等倍(レシピどおり)、ゼラチン1.5倍、ゼラチン2倍。2倍のが露骨にパサパサなのが心配である
30秒ほどレンジにかけます
うおー、溶けた!等倍はけっこうサラサラ
1.5倍はとろみつき
2倍
すごい…
2倍のゼラチンは、調理台が霞むほどの高さまで伸びた。芥川龍之介「蜘蛛の糸」を彷彿とさせる光景である。この糸を伝って地獄の亡者達が続々と昇ってくるのだ。
亡者達には悪いが、途中で切って味見してみた。
ん…
グミだ!
この弾力。この時点でもはやグミである。今はかなり柔らかいグミではあるが、このあとに冷却工程が待っていることを考えると、ポテンシャルとしては充分といえよう。
ここにそれぞれ水飴を大さじ1混ぜて、もう一度レンジで加熱。今度は20秒ほど。
その間に、冷凍したHARIBOにアルミホイルを押しつけて型を作った
型に流し込んでいく。これはゼラチン等倍
こちらは2倍。のわー
うおー
すごい伸びと粘着力で、全く自由がきかない2倍ゼラチン。
少しでも手間取れば手間取るほどにどんどん固まっていく。
もう引っ張っても簡単に千切れないレベルの強度
型に詰めた
その後、冷蔵庫で30分ほど冷却
この時点で等倍/1.5倍のグミについては、すでにどうでもよくなっていた。
あのもっちりとした、半乾きの万能ボンドみたいな2倍グミが冷却でどう化けるか。
充分に固くなってくれればいいのだが…。
そして30分後
等倍
1.5倍
2倍
見た目はそんなに変わらない。ひとつずつ食べてみよう。まず等倍
グミだ
これ、確かにグミだ。ほんとにグミが自分で作れた。すごいぞ!って思わず興奮してしまったが、問題は食感である。
プルンプルン。果汁グミに近い気もするけど更にゆるい。これは僕の求めていたものじゃない。
味の方は、最初は味がなくて、噛んでると遅れて水あめの味がやってくる。でも甘さ控えめ。食感至上主義の僕は甘いグミに飽き飽きしていたので、これはかえっておいしいかも。1.5倍の方も食べてみよう。
うーん…
多少固い。多少硬いんだけど、まだぐにゃぐにゃする。僕が望んでた固さじゃない。じゃあ2倍はどうか。
この弾力感。
んんっ…
…あーっ、違う…。
確実に固いんだけど、カツーンって感じの硬さじゃなくて、弾力がすごい。ぐにゃっと噛むとボワンと跳ね返される感じ、ホルモン焼きと同じ方向性の「固い」だ。僕の目指しているものとは違う。さらに、これはとても残念なことだが…ゼラチン臭い。
自作グミは光る
結局、自作作戦は失敗だ。残念な結果ではあったが、一応固さ測定もしたので、結果だけお知らせしよう。
等倍はブッダ1冊ですでにアウト。150gくらい
1.5倍は5巻まで。800g
2倍だと、ブッダ12冊+アドルフに継ぐも完結。2.8kg
全体に冴えない結果ではあるが、ひとつだけ驚いたことがあった。
自作グミをセットした瞬間
光ってる…
手作りグミは電気を通す。
この原理を使えば、銀歯に電流を通しておいてグミを噛むとミニ四駆が走る…なんてけったいなことも出来そうだが、本稿の趣旨ではないので今度ヒマなときにやろう。
固いグミ作りオルタナティブ
まあそれなりに固いグミはできたが、できた焼きホルモン系の固さは、僕の求めるそれとは違う。音楽性ならぬ「固い」性の違いにより、バンドは決裂状態である。そもそもの方向が違うので、2倍のゼラチンを4倍に増やしたからといって、カチカチの固グミができるとも思えない。あとこれ以上ゼラチン臭くなるのは味的にもNGだ。
さて、どうするかな…。
そのとき、冒頭で買ってきた他のグミが目に止まった。
チャック
グミにはぜんぶチャックがついてる。なぜかというと乾燥するからだ。乾燥して固くなるからだ。
そうか、グミを乾燥させればいいのか!
皿に広げて
寝かせます
5日後
実は前々からちょっと思っていたのだ。袋入りのHARIBOにはチャックがないので、開けて数日たったものはちょっと固くなっている。これ、うまいなーと。ただ乾燥には時間がかかるし、サクッと固くできないだろうか、と考えたのが先ほどのゼラチン増量である。
でもゼラチンが失敗した今、急激に株を上げてきた乾燥工法。
仕込から5日が経った。果たして、理想のグミは出来上がっているか?
いずれも見た目は変わらない
ますは手作りのゼラチン等倍から。皿にガッチリとくっついている
固い…
固い。特に表面が、空気に接してた面が、もうカチッカチである。
最近見ないけど昔コーラグミってあったじゃないですか、裏にオブラートついてるやつ。
あれのオブラートを10倍厚くした感じ、といえばいいだろうか。
残るグミ部もかなり固くなった。しかし10倍オブラート、うまいかまずいかで言うと…。察してください。
続いて2倍のほうも。この端っこの部分とか
もう、パリッパリである
噛み切れない!
筆者は生粋の日本人だ。せんべいやスルメが日常的にある環境で育ち、ヨーロッパ人と比べて固いものを食べるチャンスはかなり多かったはずだ。その日本人のあごをもってしても太刀打ちできない、スーパーハードグミ。しかしこれアレだ、固すぎるわ。自転車のチューブ食べてる気分。ちょっと無理…。
一方で市販のグミはどうなったか。
触り比べた感じではそんなに変わらない。
ん…
うまい
これだ…。軒並みうまくなってる…。
やわらかすぎた果汁グミには適度な歯ごたえが生まれ、本物の果物のようなジューシー感が増したように感じる。
ピュアラルライチグミはコリッとした食感がレベルアップしてザクッとしたものに変わり、前歯に至福の快感を与えてくれる。
サワーズ…は固くなったけど、まあ普通かな。あ、ちょっと乾いたな、って感じ。
そしてHARIBO。元々の食感から方向性は変わらないが、1.2倍ほど固くした感じ。うまい。
うちの妻が、しけったお菓子がすきなのだ。だからスコーンを1回開けて2日くらい放置してから食べていたりする。僕はそれを(途中で少しずつ食べていくなどして)からかっていたのだが、いまなら妻の気持ちがわかる。
グミは、干すと、うまい。
一応固さも計ってみましょう
サワーズ、HARIBO、手作り全部がメーター振り切る結果に!
9kg以上の測定はもう装置が限界だったのであきらめました
結論:市販グミを干せ
総評すると、市販のグミを干したものがおすすめ。
果汁グミは味がよく、ピュアラルライチグミは独特のザクザクした食感がよし。この2つはもうちょっと長く、冬場なら1週間くらい置いてもいいかも。
あとHARIBOは安定したうまさ。開封後はお好みに応じた期間だけ寝かせましょう。
自作は、味は工夫しだいとしても、固グミ好きには食感面で難しい気がします。自作グミ界の技術革新が待たれますね。
以上、長くなりましたが、皆様の明るいグミライフに貢献できれば幸いです。