特集 2012年3月5日

風車を見に行ってきました

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最近忙しいのでのんびりしたい。何が良いかと考えると、おっきくてゆったりと回っている風車をのんびり見てたいな。と思った。

いいね、それ。見に行こう。
1983年三重県生まれ、大阪在住の司法書士。
手土産を持参する際は消費期限当日の赤福で受け取る側に過度のプレッシャーを与える。

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電車から見えた気がする

見たいのは風車といってもオランダのレトロな感じの風車じゃなくて、風力発電のプロペラみたいな風車。あれはシャープでかっこいい。

和歌山県で電車に乗っていたら何ヵ所か見えた記憶がある。そこに行こう、と思って「和歌山 風力発電」で検索してみたら凄く山の中にあるものしか出てこない。なぜだ。
旅行、って言うほどでもないお出かけの気分を盛り上げる、ランチパック。
旅行、って言うほどでもないお出かけの気分を盛り上げる、ランチパック。
なぜ出ないのか、でも、確かに見たんだ。とりあえず、行けばあるだろう。
この人たちは電車を待ってるのではなく、連結の切り離しを見守っているのです。
この人たちは電車を待ってるのではなく、連結の切り離しを見守っているのです。
そう思ってとりあえず家を出た。確か、和歌山駅以南にあったと思う。
で、切り離しっ、って所で駅員さんブロック食らった。
で、切り離しっ、って所で駅員さんブロック食らった。

風車いっぱいあるらしい

電車の切り離しを見届けて、とりあえずの目標和歌山駅に到着。ここからどこまで行けば良いのか。
とりあえず到着
とりあえず到着
車掌さんに「風車見える駅ってありませんか?」って聞いてみると「あぁ、多分箕島か紀伊宮原ですね」と教えてもらった。
その間、車窓から見えたガスタンク。丸いよ。
その間、車窓から見えたガスタンク。丸いよ。
おぉ!やっぱりあった。こんなに当たり前な感じで認知されているのに検索で出ないのは何故なのか。不思議だ。

そう思いながら「箕島 風力発電」で検索してみると、箕島の風力発電の人気店ランキングってページが出てきて、なにそれ、そんなのあるの!?って開いてみたら、該当のお店はありません。ってかかれてた。そりゃないわ、まず何だそのカテゴリ。
もう桜が咲いていた。
もう桜が咲いていた。
とりあえず簑島かと、電車に乗り込む。すると響く「これ以降IC乗車券は使えません」というアナウンス。おぅ、車内アナウンスで言いますか、それを。

慣れて忘れる「IC乗車券は使えない地域のほうが多いこと」「検索してもわからないことの方が多いこと」
風車は無い。
風車は無い。
急いで車掌さんを捕まえて切符を買う、が、箕島と紀伊宮原どっちに降りれば良いのだろうか。

「すみません、風車が見たいのですが、どこで降りれば良いでしょうか」そう聞くと帰ってきた答えは「どの風車が見たいんですか」。えっ、何、そんなに風車いっぱいあるの。
この裏にも風車立ってるらしい。
この裏にも風車立ってるらしい。
聞くとこの辺りは結構いっぱい風車があって、見たいもので降車駅が変わるらしい。とりあえずゆったりと見たいので、駅が近いところが良いです。と言うと、じゃあ紀伊宮原ですね。と、いうやり取りをしていると車掌さんが窓の外を指差した。
わかりづらいけど、あった!
わかりづらいけど、あった!
「ほらっ、そこに」と指差す先の山の上に風車が小さく見えた。おぉ、あったあった。小さくっておもちゃみたい。車掌さんにお礼を言って電車を降りた。
到着。
到着。
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どうせなら近くで見たい

鵜飼いも見たい。手早く風車見て鵜飼見よう。
鵜飼いも見たい。手早く風車見て鵜飼見よう。
ようやく到着した風車の見える駅。記憶の中ではもっと近かった気がするのだが、記憶違いか。一応風車を見ることは見れたが、やっぱり折角だから近くで見たい。

とりあえず風車の方に歩いていってみよう。
有田みかんも食べたい。
有田みかんも食べたい。
と、向かっていたら、お花屋さんにみかんがあった。それを買う際に「風車見に行きたいんですけど、どのくらいかかりますか?」とおばちゃん聞いてみたら言われた「そら無理ちゃうか!」即答!?ムリッ!?

「えっ、ほんとに無理ですか!?」動揺して返すとおばちゃんは不安そう。「おとーさーん、おとーさーん!」。おばちゃんAは仲間を呼んだ。
みかん食べて元気出しなよ。
みかん食べて元気出しなよ。
おじさん1「おっ、にいちゃん、風車見に行くんか。なかなか大変やぞ、大丈夫か。あれは見えとるけどかなり遠い。ふもとまで3キロくらい、さらに結構標高あるからな。上行くほど傾斜もキツなってるからペース配分も大事やぞ!」

おじさん1 は ノリノリ だ!

おじさん1「そんでな、あそこ、上行ったら道つながって無いからな、右からぐるーっと回っていかなアカン」

おじさんの指示、作戦は的確で付いていったら世界も獲れそうな勢い。でも、同じ話がループしだしたので感謝を伝えてその場を離れた。

ふむ、なんとなく大変そうなことは理解できた。でも、思うのは、見えてんだから行けるんじゃないのって事。とりあえず行くだけ行って、無理なら帰ってこよう。鵜飼見に行こう。

近づくほど離れていく恋心(恋心は関係ありません)

梅もいっぱい咲いていた。そういえばこの日はひな祭り。
梅もいっぱい咲いていた。そういえばこの日はひな祭り。
という事で、トットコトットコと歩いて向かう。この日は暖かくて歩いていて気持ちが良い。
近づくと風車が見えなくなっちゃった。
近づくと風車が見えなくなっちゃった。
だが、すぐに風車が見えなくなってしまった。近づいているのはわかっていても、目に見えないとなんだか張り合いが無い。
あっ、この山、高い!
あっ、この山、高い!
そしてどうにかふもとまでたどり着いて気付く。山は、高い。

この年になってようやく自分が食べられる食事の適切な量がわかるようになってきたが、山くらい大きいとまだちょっと頭の中と現実のすりあわせが上手くいっていないようだ。

近づいているはずなのに目標は見えなくなり、壁は高くなっている感覚。これは、どうしようか、あきらめようか。

ちょっとだけ登ってみようか

こういう、徐々に景色良くなっていく場合、景色よさレベル3位で景色いいなー!ってなって、レベル5くらいでうんうん、景色良いよね。その後景色よさレベルマックスの10くらいになったら、あぁ、景色ね。良いよね。ってなっちゃうの悲しい。
こういう、徐々に景色良くなっていく場合、景色よさレベル3位で景色いいなー!ってなって、レベル5くらいでうんうん、景色良いよね。その後景色よさレベルマックスの10くらいになったら、あぁ、景色ね。良いよね。ってなっちゃうの悲しい。
登ろうか登るまいか。少し考えて、登ってみる事にした。ここまで歩いてわかったのはここにはみかんの木か風車しかないと言うことだ。ならば、風車見なきゃね。
もうかなり疲れた。
もうかなり疲れた。
先ほどおじさんに教えてもらったように右側から大回りで裏に抜けてから風車を目指す。見た目にわからなかったが歩いてみるとアップダウンが激しい。疲れる。

糞詰まり

風車を目指しつつ風車とは反対方向に歩いて迂回する。風車も見えない、あっているかもわからない。急がば回れという言葉は回っていても確かに進んでいる、という実感があるから言えるのであって、進んでいるかわからない状態で回るのは精神的にしんどい。
合ってるのかな、合ってるのかな。ブブー!行き止まりでしたー!!
合ってるのかな、合ってるのかな。ブブー!行き止まりでしたー!!
本当に合っているか疑心暗鬼に陥りながら進んでいた中での行き止まり。しかも、これ以上の分岐は無し。回り道自体することが出来ない状態。ああ!!!
前面コンクリで犬の足跡だけあったんだけど、犬単独で来たのかな。
前面コンクリで犬の足跡だけあったんだけど、犬単独で来たのかな。
迂回する場合、もっともっと大きく迂回する必要があったのか、それとも作戦自体間違っていたのか。わからないが、重い足取りで来た道を戻る。
道ってこんなにパッツリと切れるものだっけ。
道ってこんなにパッツリと切れるものだっけ。
やはり直接向かうほうが性に合っている。そう思い直して分かりやすく風車のほうに直進する。さぁ、そろそろ風車か。と、思っていたところ、道が切れた。切れた。えっ!!

無い。行き止まりじゃなくて、無い。
向こうに見える道にはこっちはまったく繋がっていない。
向こうに見える道にはこっちはまったく繋がっていない。
農作業をしていたおじいさんがいたから声をかけた。

「すみません、風車…を、見に行きたいんですが…」というと「風車ぁ?こっちゃ糞詰まりやで、風車ら行かれんで」との答え。
道は無いけど頂上に上がってそこを歩いていけば…って、それは繋がっていると言えるのか。
道は無いけど頂上に上がってそこを歩いていけば…って、それは繋がっていると言えるのか。
「えっ、もう、ホントにどこも繋がってないんですか!?」必死の質問だが「てっぺんまでいって尾根伝いに行ったら行けん事も無いやろけど道は無いで。なんでこっち来たんや」と、望み無し。oh…なんでこっちきたんや…。

すでに山の8合目くらいまでは登っているが道は無し。再度向こう岸の道を登ろうとすると一旦一番下まで降りなければならない。ああぁ…。
もう、行くしか無い!!!
もう、行くしか無い!!!
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どうしてこうなった。

いざ行かん、頂上へ。
いざ行かん、頂上へ。
諦める、引返して登りなおす。その選択肢もあったが、選んだのは道なき道を行くこと。登りなおすのが嫌という気持ちよりここまで登ったのが無に帰すのが嫌だった。
足踏み外すとゴロンゴロン転がっていっちゃう系斜面。
足踏み外すとゴロンゴロン転がっていっちゃう系斜面。
そうやって選んだ道(道は無い)を進んでいると、「人は得したい気持ちより損したくないという気持ちのほうが強いらしく、投資などでちょっとの損を嫌がってドツボにはまる人が多いらしい」という事を思い出した。まさか、ここがドツボか。
木を掴んで蛇かと思ってヒッ!ってなったけどツタだった。
木を掴んで蛇かと思ってヒッ!ってなったけどツタだった。
今日の予定は風車が回っているのをのんびりと眺めて、適当に観光したり美味しいご飯食べて、海と山があるっていうのは、こういう所が良いんだよ~!とか、おっ、海鮮汁、そういうのもあるのか。とか、いいぞいいぞ~お刺身いいぞ~!

とか言うつもりだったのに何故山の斜面を這いつくばって登っているのか。

そんなもやもや吹っ飛ばす神々しさ

ほぼ頂上に到達した。
ほぼ頂上に到達した。
這いつくばって、よじ登って何とか頂上に到着した。もうこの時点であるのは意地。風車見たいよりも、ここまで来たんだから最後まで行ってやるという意地。とりあえずやり遂げたいという思いだけだったのだが、それが一発で吹っ飛ばされた。
枝で全然見えないだろうけど、現場では見えた。輝きが。
枝で全然見えないだろうけど、現場では見えた。輝きが。
頂上には登りつめ、あとは横の移動。もうそろそろ着くだろう。と思っていたら、聞こえてきた「フォンッ…!フォンッ…!」という野球選手の素振りのような音。えっ!?と思って顔を上げると山の尾根に8本の風車が聳え立っているのが見えた。
ブオンブオンやってる。
ブオンブオンやってる。
あれが、風車!?今まで持っていたなんだかのほほんとしたイメージとはまったく違う、力強い存在感を放っている。疲れで重くなっていた足が、早く風車の全貌が見たいと軽くなる。

風車カッコ良い

ブオンブオン回ってる。
ブオンブオン回ってる。
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急いで風車の元に駆け寄って全体を見て圧倒される。デカい、高いというのはもちろんだけれどそれ以上に不思議な迫力がある。

山の頂上、自然しかないところに急に生えてきた、降り立ったかのように立つ風車。そのギャップだろうか、この世のものとは思えない感覚を抱く。

もし現代文明が滅びた後も残っていて欲しい工作物一位に躍り出た。古代文明としてピラミッドやらスフィンクスやらあっても、凄いなー。位にしか思わないが、山の頂上でこの8基が回っていたら、神をも信ずるぞ。
真下から見たら手をペコペコしてるみたい。
真下から見たら手をペコペコしてるみたい。
凄い凄い、全面的に風車を勘違いしていた。のんびりとか思っていたが、風車の影を見ると回っている速度はものすごい。影に近づくのが怖いと思った。
風車との位置関係で聞こえる音がまったく違う。飛行機が飛んでる音みたいだったり、素振りみたいだったり。
風車との位置関係で聞こえる音がまったく違う。飛行機が飛んでる音みたいだったり、素振りみたいだったり。
予想外の展開にはなったけれども、風車が見れて本当に良かった。風車の持つ力強さ、存在感、不思議さ。また、遠くから見たときの愛らしさとか。距離でこうも印象が変わるかと驚いた。きっとここはロケーションの力もあるんだろうけれど、凄かった、風車。

と、言うことで何とかみることが出来ました、風車。帰るときに迷って農作業してる人に案内してもらったけれど、下手したら猟師に撃たれとったぞ。っていう洒落にならないご忠告をいただきましたので、皆様方におきましては風車を見に行かれる際は、いろいろ上手いことして楽に見に行かれますようお願い申し上げます。

僕もまた見に行きたいけど、この方式は嫌です。
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