特集 2012年2月23日

ドーナツの胸やけと戦う

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ドーナツを食べると胸やけする体質で、子供の頃から損ばかりしている。
ほんとは僕だってみんなと一緒にドーナツを楽しみたい。
どうにか胸やけせずに食べることはできないか。
1978年、東京都出身。漂泊の理科教員。名前の漢字は、正しい行いと書いて『正行』なのだが、「不正行為」という語にも名前が含まれてるのに気付いたので、次からそれで説明しようと思う。

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1・最高級の油でドーナツを揚げる

ドーナツが食べられない、と言ったときに返ってくる反応は、共感より疑問が多い。
人によっては責めるように「なんで?なんでなの?」と聞いてくる。
別に健康志向を気取っているわけではない。
単に胸やけしてしまうのだ。
図で表すと、以下のようになる。
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小麦粉食品のうち、右上あたりの食べ物に胸やけしてしまい、その筆頭がドーナツなのだ。
(あとサーターアンダギーも厳しい)
この図に共感してくれる人は意外といると思う。

悪いのは油なのか?

このことを説明すると「揚げた油が悪かったんじゃないの?」と返されることがある。ドーナツ擁護の立場だ。
確かにそうかもしれない。
これまで僕が食べてきたドーナツ全てが、悪い油で揚げられていた可能性もある。
じゃあ最高級の油で揚げてみたら大丈夫なのだろうか。
楽天で買った最高級サラダ油。1瓶1280円。
楽天で買った最高級サラダ油。1瓶1280円。
普段使っている油の5倍以上の値段がした。
瓶1本でミスドのドーナツが10個買える価格だ。
この油でドーナツを揚げてみよう。

ドーナツ作りに苦戦

ドーナツは手軽なことにホットケーキミックスで作れるらしい。
ホットケーキは大好きだ。
あの香り、甘み、口当たり……。「焼きたてのホットケーキにメープルシロップ」なんて、空腹時に聞いたらショック死しそうなほど甘美なフレーズだ。
しかし僕はドーナツが食べられない。
まずは手軽に作ってみます。
まずは手軽に作ってみます。
これから揚げるのに、生地にバター入れる!
これから揚げるのに、生地にバター入れる!
初めて分かった事実がある。
ドーナツは揚げ物なのに、その生地の中に油が混ぜ込んであるのだ。しかも大量、そのまま焼いてもいいんじゃないかという量の油である。こんな揚げ物、初めて見た。
明らかにカロリーオーバーである。
彦麻呂風に言えば、「カロリーのスカイツリーやーー!」といった衝撃だ。
縄文式土器みたいなの、できた。
縄文式土器みたいなの、できた。
縄文時代のドーナツ調理風景
縄文時代のドーナツ調理風景
僕はいま、自分が一番食べられない食品を調理している。これは何とも楽しくない時間だった。
たまに酒が飲めないバーテンダーを見かけることがあるが、その人もこんな気持ちでカクテルを作っているのだろうか。
できた。最高級の素材を使った手作りのドーナツ。
できた。最高級の素材を使った手作りのドーナツ。
形の適当さにやる気の無さが表れているが、それはさておき、これを食べて、胸やけはするのか、どうなのか……。
おそるおそる食べてみた。
あれ、ホットケーキじゃん。
あれ、ホットケーキじゃん。
それは全くもってホットケーキであった。
ホットケーキ粉で作ったので当り前だが、それにしても、あまりにもホットケーキであった。
中身は多少ぱふっとしているが、香りはホットケーキそのもの。
ミスタードーナツのざらっとした食感とは全然違った。
ミスドのドーナツと全然違う!!
ミスドのドーナツと全然違う!!
翌日、朝食にこの手作りホットケーキ(ドーナツ)を食べたが胸やけはしなかった。てゆうかむしろ美味しかった。
これは工夫次第で思ったよりいけるかもしれない。
次の挑戦ではミスドを攻めてみよう。

結論:最高級サラダ油だと胸やけしない
(できたのはホットケーキだけど)

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2・好きな食べ物にドーナツを混ぜる

僕は長年の体験から、ドーナツの味自体が苦手になっているのかもしれない。
これを別の味でごまかせば、ミスタードーナツも食えたりしないだろうか。
敵の本拠地、ミスタードーナツ。
敵の本拠地、ミスタードーナツ。
ドーナツが食べられないと言うとよく、「ポン・デ・リングも?」と聞かれる。
質問の意図がよく分からない。
これまでのドーナツとは違うから、という人の勧めで2、3度食べたことがある。
しかし、それは全身全霊でドーナッツだった。
【再現】いやいやいや、これドーナツですやん……。
【再現】いやいやいや、これドーナツですやん……。
そして僕はきっちりと胸やけを起こして寝込んだ。

しかしそんな、ハードルが低いという噂のポン・デ・リング、別の食べ物に細かく刻んで入れれば何とかいけるんじゃないか。僕の大好きなメニューに取り入れてみよう。
肉と一緒に刻んで……
肉と一緒に刻んで……
キャベツとともに、フライパンに投入!!
キャベツとともに、フライパンに投入!!
もしくはポン・デ・焼きそば
もしくはポン・デ・焼きそば
こ、これは想定外に美味い……!
こ、これは想定外に美味い……!
何か、明らかなネタ料理っぽくなったが、食べてみたら、これ、めちゃくちゃうまかったのだ!
想定していなかったのだが、ポン・デ・リングがあげ玉の役割になり、その油がさっぱりとしたソースと調和して、意外なバランスを形成している。
加熱によって食感も進化し、ちょっと甘めモチモチのソース玉として一つの独立した具となっていた。
このモチモチソース玉は「これまで無かった!」という味。
このモチモチソース玉は「これまで無かった!」という味。
もちろん食後も胸やけなんかしなかったし、焼きそば作戦は大成功であった。
焼きそばの包容力、すばらしい!
次はさらなる高みを目指し、自然食品とのコラボで胸やけに立ち向かっていきたい。

結論・「そばドナ」を新メニューとして、ミスドへプロデュースしたい
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3・胸やけに効く食品でカバーする

給食では揚げパンも苦手だった。
しかし小学生の頃、僕はあれを美味しく食べる方法をマスターしていた。
方法と言うのは、砂糖をすべて振り落とし、セットになって必ず出てくる「五目うま煮」浸して食べるのである。
これはむしろ、かなりうまい。
揚げパンに似てると思うドーナツ、フレンチクルーラー
揚げパンに似てると思うドーナツ、フレンチクルーラー
この系統の食べ方は、バーミヤンでも中華粥に揚げパンを浸すというメニューがあり、これもうまい。
発展性が望めるのではないだろうか。
ドーナツも、同様の方法で食べやすくしてみたい。
日本では、胸やけには大根おろしと言われている。
日本では、胸やけには大根おろしと言われている。
この二つを鍋で煮込むだけで、完成。
この二つを鍋で煮込むだけで、完成。
おろし煮だが、大戸屋の「チキンかあさん煮」をリスペクトして命名
おろし煮だが、大戸屋の「チキンかあさん煮」をリスペクトして命名
ところで僕の母は極端な甘党で、思春期の頃は「甘くない」の定義について衝突し、何度もケンカをしたものだった。
「甘くないもの買って来てって言ってるのに、何でビスケット買ってくるんだよ!!」と母に浴びせた罵声。
そんな反抗期の頃を思い出が、ほろ苦く胸によみがえる。
しかし、今では「レアチーズケーキは美味い」という共通認識のもと、相互理解に至っている。手土産には欠かさない。
大人になるって、素晴らしいことだ。
これも想定外にうまい!
これも想定外にうまい!
それはそうと、「かあさん煮」は思った以上にうまかった。
男子が苦手としやすいシュガーコーティングが煮汁に溶け、ちょっと甘めの煮物の味になり、優しい母さんを思い出させる。
ついでに煮込んだポン・デ・リングもモッチモチで、さっきの焼きそばに続き、またしても新たな可能性が見えた。

大根おろしでもう一品

やはり大根おろしは生の方が胸やけに効くと思うので、もう一つ作ってみた。
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アツアツを手際よく切りましょう
アツアツを手際よく切りましょう
全くもって歩み寄る気の無い2つの味。
全くもって歩み寄る気の無い2つの味。
僕が最も苦手とする「オールドファッションド」をオーブンでカリカリに温めて、あつあつのうちに大根おろしとからめた。
ついでにユズも載せた。

ちなみに味は、想像どおりである。
おろしポン酢とドーナツは、決して調和せず、全く別個の味として口の中に入ってくる。
僕はドーナツを意識しないことに努め、最後には大根おろしを増量して、オールドファッションドをバリアーするようにして食べた
中身が途中からドーナツではなく、犬の肉に変わっていたとしても気付かなかったと思う。
どちらも完食。
どちらも完食。
この日、僕は1食で3個のドーナツを食べた。自己新記録の大幅な更新である。
しかし、さすがに3個は食べすぎで、胸やけの代わりに胃もたれになり、結局寝込んだ。
愚かだ。
今となっては反省している。

結論:ドーナツを一度に3個食べると胃もたれする。

最後は実践編。ミスド店内での対処法を考えたい。
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4・胃に優しくドーナツをデコる

最後に、ミスドの店内でも実践できる方法に挑戦した。
ミスドに行くと、ドーナツの大半はチョコとかシュガーで飾られている。
ほとんどがデコレーション済み。
ほとんどがデコレーション済み。
この飾りデコを胃に優しい成分にすれば、胃を痛めることも無いのではないだろうか。
自前のデコグッズを持参し、ミスド店内で試してみた。
店員さんから渡される初ミスド。緊張する。
店員さんから渡される初ミスド。緊張する。
みんなからの死角となる位置へと移動。
みんなからの死角となる位置へと移動。
店員さんのスマイルがまぶしい。
本当はドーナツ嫌いなのに、ミスドに来てるのが後ろめたく、笑顔を正視できない。
というか、楽しげな他のお客さんに対しても後ろめたい。
すいません、僕みたいなのが来てすいません……、ちゃんと好きになってドーナツ食べますから、すいません……、と思ってしまう。そんな許しを乞うような気持ちになりながら僕は座席に向かい、そっとデコグッズを取り出した。
秘蔵のとろとろシロップをかけたのち、
秘蔵のとろとろシロップをかけたのち、
極秘のシナモン入りパウダーでデコる。
極秘のシナモン入りパウダーでデコる。
完成。胃に優しいデコドーナツ。
完成。胃に優しいデコドーナツ。
液キャベをシロップに、太田胃酸をパウダーシュガーに見立てて、思いっきりデコってみた。
これで大丈夫だろう。たぶん胸やけはしないはずだ。
大胆に食べてみよう
味のほうは……
味のほうは……
まずっ! これ、まずっ!!
まずっ! これ、まずっ!!
まずい。
考えられないぐらいまずい。
人生で食べたうち、3本の指に入るほどまずい。
ドーナツに重く吸いこまれた液キャベが、口内に冷たく広がって、それだけでダメージなのに、さらに味はニガニガしく、臭いは漢方薬臭く、素材は油っこい。そのうえ見た目は、濁って黄色い。
温かいメープルシロップに対して、全てが真逆。
温かいメープルシロップに対して、全てが真逆。
世の中にまずい食べ物は多いが、このように五感の全てに訴えてくるまずさというのは初めてだ。
セットになったコーヒーの苦みとも相性が悪く、300円でここまでまずいものができるとは思っていなかった。
正直、驚愕だ。
とんでもない組み合わせを発見してしまった。
もう二度とやりたくない。
一応完食。胸やけはまあ、しなかった。
一応完食。胸やけはまあ、しなかった。
結論:胸やけとか、どうでもよくなるほどの不幸が五感を襲う。

胸やけは回避できる

1~4の、全ての方法で胸やけを気にすることなくドーナツを食べられたので、胸やけを回避することはわりと可能だと言える。
いつかもっと美味しくドーナツを食べられる日が来たら、「この味がいいね」とつぶやいて、その日をドーナツ記念日に制定してみたい。
また、ポンデリングの具材としての才能が開花しつつある。甘みを抑えて、油揚げや天かすと同じように売り出せば、本気で売れるんじゃないかな。
普通にウインナーとかハンバーグのメニューもあった。次はこっち食おう。
普通にウインナーとかハンバーグのメニューもあった。次はこっち食おう。
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