空港の名前からしてヤマネコ
対馬には飛行機で向かった。
同じ県内なのに、なんと長崎からだと飛行機しか選択肢がないのだ。(福岡からならフェリーもある)
そしてプロペラ機。
飛行機はプロペラ機だった。(人生初)
翼に車輪がついており、離陸するとフタがパカッと開いて格納される様子が機内からよく見えた。鳥肌もののかっこよさだった。
長崎空港からの所要時間は35分。
飛んだ!と思ったら退屈する間もなく着陸態勢に入る。その時、客室乗務員のお姉さんが言ったセリフに耳を疑った。
「まもなくツシマヤマネコ空港に到着します。」
ええっ、対馬空港じゃなくて?!
ツシマヤマネコ空港?!
美人すぎるキャビン・アテンダントさん
飛行機にこんなタラップで乗り降りする
ようこそ対馬へ (キラリーン!)
おや、何かあるぞ。
対馬やまねこ空港は離島の小さな空港なので、手荷物を受け取るレーンも1つしかない。
こんなところにまでヤマネコが!
こんな看板が立っている。
もちろんお土産コーナーには
ヤマネコグッズが充実。
というように、対馬に到着するやいなや、予想以上のヤマネコ攻勢。こんなにもヤマネコで推してくるとは知らず、かなり意表を突かれた。
こんなバスも目撃。
レンタカーで島内一周
空港にはホテルの人が迎えに来てくれた。
で、ホテルのレンタカーを借りた。
これで島内を一周する。
ワゴンR。軽自動車とは思えないほど快適。
余談だが、ホテルの受付ロビーに置いてあった呼び鈴が斬新だった。
初めて見たタイプの「ご用の方は叩いて下さい」。
これ叩く人いるんかいな?と思っていたら、いい年のおっちゃんがピロピロ♪ポロンポロン♪ピロポロカラン♪と猛烈に叩きまくっているのを見てしまった。(が、ホテルの人は誰も出てこなかった)
さらに言うと、食事の支度をしていたのとレジで会計してたのと私を空港まで送ってくれたのは全部同じおばちゃんだった。安心のワンストップ・サービスである。
対馬は思ったより都会だった。
対馬は思っていたより都会だった。
マックス・バリューもあるし、ハイパーセンター・オサダもあるし、ドラッグストア・モリもある。ベスト電器もダイレックスもゲオもある。「だいたいなんでもある」と言ってもいいかもしれない。
私の中での対馬のイメージは、“原生林”だった。
山猫がいるくらいだから、というのもあったが、もうひとつ小学5年生の時(その頃私は関東に住んでた)対馬からやって来た転校生の影響が大きい。彼は道に落ちてるガムのカスを拾って食ってみせ
「対馬ではこれくらい当たり前なんだぜ!」
と言った。衝撃の転校生はまたたく間にクラスの人気者になり、私たち同級生の間ではすっかり、対馬=野生というイメージが定着した。
また彼は、「対馬には信号が1つしかないんだぜ。それも本当は必要なかったけど信号とは何かを学ぶために1つだけ作ったんだ。」と言っていた。
あれから30年。
当時、小学生の視野の狭さから1つしか無いと思ったのか、それとも30年前の対馬には本当に1つしかなかったのかはわからないが、私が訪れた対馬には信号が幾つもあった。
いい景色だ。
さきほど「都会だ」と書いたが、いくらなんでもそれは言い過ぎた。
正確には、ドラクエで言うところの「町」みたいなエリアが幾つかある感じで、それをちょっと外れると途端にすごい山奥となる。
落石注意の標識や (これってどう注意すればいいんだろうね?)
発砲禁止の看板など
そしてヤマネコの看板だ
道路にはカジュアルに石が落ちている。
こういった感じの道をしばらく運転し、ヤマネコのことも忘れそうになっていたその時、突如、道路の端に小動物の姿が見えた!!
動物がいなくなった直後の様子。
その大きさから、一瞬ツシマヤマネコか?!と思ってものすごくドキドキした。が、よく見るとイノシシであることがわかった。(鼻先がとがっていた)
ヤマネコでなかったのは残念だが、イノシシでも野良のものを見たのは私は初めてだったのでかなり興奮した。さすが対馬。
その後もずっと、ヤマネコが道路に(車で引かない程度のちょうどいい位置に)飛び出してこないかと期待しながら運転していたが、結局そういうことはなかった。
ヤマネコセンターへ
対馬は広い。
1日目は対馬の南半分(下島)を一周しただけで終わってしまったので2日目は北部(上島)にある対馬野生生物保護センター、通称ヤマネコセンターを目指した。
地図を縮小してみるとわかるが、対馬の中でもかなりの辺境の地にある。(
大きな地図で表示)
行く先々にヤマネコ飛び出し注意の看板がある。
トンネルの名前もヤマネコ。
この看板を左に曲がってしばらくゆくとヤマネコセンターがある。
ヤマネコの像もあった。
対馬 野生生物保護センター
野生生物保護センターはヤマネコなどの保護増殖、調査研究、普及啓発などを行っているところ。入場無料で、中はミニ博物館のようになっている。
館内の様子その1
その2。
説明によると、ツシマヤマネコは現在80~110頭ほどしかいないという。そ、そんなに少なかったとは…。
こんなに島内あちこちでヤマネコの文字を見るのに、実は対馬の人でもほとんど見たことがないらしい。たしかに、ホテルのおばちゃんも見たことないと言っていた。
現在の生息数は80~110頭。これは少ない!
前日私がドライブした下島(対馬の南半分)はしばらくヤマネコの目撃情報がなく、もう生存してないと思われていたところ、2007年に23年ぶりに発見された、とあった。
下島で発見されたのは23年ぶり。そんなにレアだったのか…。
という対馬住民でもほとんど見たことがないというヤマネコを実際に見て関心を持ってもらおうと、一般公開をしている。
ツシマヤマネコは大変警戒心が強くデリケートとのことで、奥まったところにおり、センターの人が案内してくれた。
いた!
ぉぉ…
これがツシマヤマネコだ!
ツシマヤマネコは木の上でじっと丸くなっていた。
ずっと向こうを向いて座っていたが、しばらく見ているとやがて私の気持ちが通じたのか…
こっち向いた!
軽く伸びをしたかと思うとこっちを向いて座り直してくれた。うお~!!
まるでアイドルが目線くれたみたいな興奮。 (アイドルの追っかけしたことないけど)
か、かわいい!
ヤマネコがこっちを向いてくれたのが、何かが伝わった気がして(気のせいだと思うが)すごく嬉しかった。
その後少しするとまた軽く伸びをして後ろを向いた。
特徴。
ちなみに、ツシマヤマネコと普通のイエネコとの違いは、
・耳の先が丸い
・耳の後ろに白い斑点がある。
・額の縦縞(頭の後ろまで続く)
・太くて長い尾
・体の模様はぼんやりした斑点
ヤマネコに似てるイエネコを探すのも面白そうだ。
【参考】 うちの実家の猫。たしかに耳が大きくて先がとがってる。
館内には野生生活を再現したジオラマなどもある。
ヤマネコの保護
ヤマネコの数が減った原因には、
・木の伐採などによる生息地の減少
・交通事故
・イエネコからの感染症
・犬
・とらばさみ
などがあるという。
中でも交通事故は平成4年からの累計で60件起き、うち53頭が死亡とのこと。なにしろ全体で80~110頭しかいないのだから、53頭はけっこう深刻な問題だ。
対馬には人間の無事故記録と、
ヤマネコの無事故記録とがある。
一時は675日だったこともあるというヤマネコの無事故記録も、ここ最近事故が多く、今年に入ってからも1件あったため今は40日となっていた。(2012.2.12時点)
車を走らせていたらこういう看板があった。
事故発生現場。出発前、かみさんから私よりヤマネコの方が価値が高いと思う的なことを言われたがあながち間違ってない。
ヤマネコの減少を防ぐためのガイドブックもいろいろと作られていた。
「ツシマヤマネコ交通事故防止のためのエコドライバーズマニュアル」より
私も飼っていたネコが自宅の前でひかれて死んでしまったことがあるので、その時の悲しみは非常によく分かる。ネコの匂いを嗅ぐのが大好きだった私は、悼みながら死んだ直後のネコの匂いを嗅いだ。するとまだ温かくきれいなのに、匂いはすっかり死体の匂いになっていてショックを受けた。
ネコが死んだ時の悲しさは私も大変よくわかる。全力で守りたい。
こちらは家猫対策。なんと、対馬の家猫にはマイクロチップを埋め込むことが義務付けられている。(!)
車を走らせていると、時々道路沿いの木に黒いシートのようなものが掛けてあるのが気になった。
道路沿いの木に黒いシートのようなものが掛けてある。
これはひょっとしてヤマネコが道路に飛び出してこないようにするためのものかなぁ?…と思って見ていたが、
よく見ると、中でシイタケか何かを育てていた。
道路の下に通り道(カルバート)を作る対策をしてるそうだ。
ヤマネコトイレ
ヒトツバタゴ自生地 (ナンジャモンジャの木)
対馬は地理的に、かつて日本が陸続きであったことを示すような大陸系の動植物が数多くいる。
ツシマジカ、ツシマテン、ツシマナメクジなど「ツシマ~」と名の付く生き物がいっぱいいる。
全力で保護したい
というわけで、対馬では島全体が予想以上にヤマネコ重視だった。が、その一方で数は本当に少なく、対馬住民でも見たことある人は少ないという。(さすが絶滅危惧種IA類だけのことはある)
そして全力で助けたくなるルックスをしている。
危険だったり不気味だったりする生き物が絶滅しようというのと違い、基本「ネコ」だけにとてもかわいく、絶滅とか絶対させたくないという気持ちが沸いてくる。
(まぁどんな生物でも絶滅してほしくないが)
というか、もし絶滅してしまったら空港の名前も直さないといけないし、いろいろ大変なので絶対に絶滅させてはいけないと思う。