特集 2012年2月16日

新・3大もうすぐなくなる東京の景色

この景色もうすぐなくなるの、まじ?
この景色もうすぐなくなるの、まじ?
街を歩いていると、そこにあった建物がいつの間にか取り壊されて、見慣れた景色が一変していることがある。さらに新しい建物が建ったりすると、その前がどんなだったか思い出せなくなってしまう。

だから、いまのうちに記憶しておきたいと思った。
1974年東京生まれ。最近、史上初と思う「ダムライター」を名乗りはじめましたが特になにも変化はありません。著書に写真集「ダム」「車両基地」など。
(動画インタビュー)

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お馴染みのあの景色はもうない

まるで細胞が入れ替わっていくように、長い目で見ると街並みは少しずつ変化している。

僕が住んでいる東京でも、気がつくと子供のころから当たり前のようにあった建物や景色がなくなっている。
マツケンサンバが繰り返し流れていたコマ劇場はついになくなり
マツケンサンバが繰り返し流れていたコマ劇場はついになくなり
銀座の歌舞伎座は既に新築工事中
銀座の歌舞伎座は既に新築工事中
さすがにコマ劇場や歌舞伎座の面影はまだ忘れていないけど、でも新しい建物が建ち、その景色が馴染むころには思い出せなくなっているかも知れない。

新宿と言えば、僕が学生のころ東口の線路際には映画の巨大看板がずらりと並んでいた。友達と映画を見に行く時など、見る映画の看板の前で待ち合わせしたりしていた(もちろん携帯電話が普及する前の話だ)けど、いつの間にかなくなった。
なんだか殺風景になった新宿東口
なんだか殺風景になった新宿東口
新宿ついでにもうひとつ、ずっと前から続いている南口の陸橋の工事は、最終的には巨大なビルやバスターミナルなどが造られて、およそ4年後に完成するらしい。つまり、いまや工事中がデフォと言える南口の景色もあと4年で過去のものになるということだ。
工事してない南口を思い出せないほどずっと工事してる
工事してない南口を思い出せないほどずっと工事してる
ここに何と33階建てのビルもできるらしい!
ここに何と33階建てのビルもできるらしい!
南口のごちゃごちゃした仮設の雰囲気が好きな人はそんなにいないと思うけど、新しい施設ができる楽しみと同時に、先の見えなかった工事が実は終盤戦に突入している、という事実を知って、どことない寂しさをなぜか感じた。

なくなることが決定している景色

ここまでは前置きで、今回は近い将来見られなくなることが決定している、東京の有名物件を3カ所見てきた。どれも東京近郊に住んでいる人なら馴染みのある景色ばかりで、これらがなくなる、ということを想像するのはちょっと難しい。でも、計画通りに進めば5年後くらいにはすべてなくなっているというのだ。

5年後と言うと僕は42歳。うむ、確かにまったく想像がつかないぞ。

東横線の渋谷駅がなくなる

まずやってきたのは渋谷駅。この駅の東側も十数年ずっと工事している気がするけど、それよりもJRの線路と並んで建っている東急東横線の渋谷駅がなくなる光景を想像できるだろうか。
これが本当になくなるのだろうか
これが本当になくなるのだろうか
今さら説明するまでもないかも知れないけど、東横線は渋谷駅まで開通した東京メトロ副都心線と繋げる工事が行われていて、来年度中には地下ホームに移って直通運転が開始されるのだ。来年度中と言っても、もうほとんど1年以内の話だ。

その後、東横線のホームは解体されて、この場所には高層ビルが建ち、さらに土地がなくてズレて設置されている埼京線のホームが移ってくるらしい。

この計画の詳細は以前に林さんが記事にしているので、未来が気になる方は見てください。

今回あらためて考えてびっくりしたのは、この高架に東横線の電車が止まっている光景が、あと1年経つか経たないかで見られなくなるということだ。僕の想像力ではそんな渋谷はちょっとイメージできない。
この景色もう見納めだってみんな気づいてる?
この景色もう見納めだってみんな気づいてる?
このでかい改札も奥のホームも閉鎖されるのだろうか
このでかい改札も奥のホームも閉鎖されるのだろうか
東横線は地下に移るので、高架駅から出発してJR線の上を越えている現在の線路も使われなくなる。ここも見に行ってみた。
ホームの下の先頭の方は宅配便の基地になっていた
ホームの下の先頭の方は宅配便の基地になっていた
東横線のカーブに合わせたこの建物の形が後世に線路の存在を伝えるだろう
東横線のカーブに合わせたこの建物の形が後世に線路の存在を伝えるだろう
高架が撤去されたらこの食い込んでる部分がどうなるのか気になる
高架が撤去されたらこの食い込んでる部分がどうなるのか気になる
渋谷の屋外で東横線が見られなくなるとは
渋谷の屋外で東横線が見られなくなるとは
しばらく歩いて、東横線が90度カーブしてJR線を越える橋までやってくると、線路は工事用の柵で囲われていた。既に撤去に向けた工事が始まっているのかも知れない。
線路のまわりは既に工事用柵で囲われている
線路のまわりは既に工事用柵で囲われている
地下化工事と書いてある
地下化工事と書いてある
この立体交差も見納めに近い
この立体交差も見納めに近い
直通運転がいつから始まるのか、まだ正式には発表されていないようだけど、東横線の高架駅が近々なくなるのは間違いないので、今のうちに記憶に叩き込んでおいた方がいいと思う。

赤坂プリンスホテルがなくなる

首都高速4号新宿線で、新宿方面から都心環状線に向かって走っていると、赤坂トンネルを抜けたあと、目の前に出現するいかつい高層ビルが印象に残っている人も多いと思う。
このドット絵のようなかっこいい高層ビルは、赤坂見附交差点の傍らに建つグランドプリンスホテル赤坂新館、もともとは赤坂プリンスホテル新館と呼ばれていた地上39階建のホテルだ。

完成は1983年、設計はフジテレビや東京都庁舎などと同じ、あの丹下健三氏である。
都内でも指折りのド派手なビルではないか
都内でも指折りのド派手なビルではないか
しかし、グランドプリンスホテル赤坂が去年の3月に営業終了し、その後は東日本大震災の避難所として使われたあと完全に閉鎖。そして、完成から30年未満という若いビルにも関わらず、何と解体されることになってしまった。解体される建物としては国内で過去もっとも高いビルである。

実際に現地に行ってみると、まだ外観に変化はないものの、敷地のまわりを高い塀で囲ってあり、近づくことすらできなかった。
現在は内装を剥がしている最中らしい
現在は内装を剥がしている最中らしい
いや、それにしてももったいない話である。この強烈な形は見たら忘れないし、完全に赤坂見附のランドマークと言える存在感だった。残念ながら泊まったことはないけど、1度だけ最上階にあったレストランで食事をしたことがあって、眺めもすばらしかった。
ラスベガスのホテルのような強烈な存在感
ラスベガスのホテルのような強烈な存在感
解体工事は今年の5月から始まって、およそ1年後には完全に姿を消してしまうという。跡地にはさらに高層な複合ビルとタワーマンションが建つ計画で、風景は一変するだろう。

ぜひ、いまのうちに記憶にとどめておきたい景色である。

築地の市場がなくなる

東京の台所と言えば築地。築地と言えば卸売市場。そのくらい知名度のある地名だけど、ここも、敷地の狭さと施設の老朽化で数年以内の移転が計画されている。
築地市場正門
築地市場正門
この日は時間がなくて場内には入らなかったけど、プロの業者さんや一般の観光客、そして外国人観光客で賑わっていた。

そんな築地市場が、直線距離で1kmほど離れた豊洲に移転する計画らしい。
いちばん忙しい時間帯は過ぎていたようだ
いちばん忙しい時間帯は過ぎていたようだ
そうなると、市場のすぐ外に密集している場外市場はどうなるんだろう。
平日の午前中でこの賑わい
平日の午前中でこの賑わい
中の方の通りはまさしくアジアのマーケット
中の方の通りはまさしくアジアのマーケット
プロ仕様の自転車が雰囲気を盛り上げる
プロ仕様の自転車が雰囲気を盛り上げる
こういうマシンがあちこちにあるのも市場ならでは
こういうマシンがあちこちにあるのも市場ならでは
移転は、市場を運営する東京との方針としては決定しているらしいけど、いろいろ反対意見も出ているようで、計画通りに進むかどうかは分からない。そのへんは政治の話なので僕はどうでもいい。

でも移転先も気になったので、歩いて見に行ってみた。
初めて勝鬨橋を渡った
初めて勝鬨橋を渡った
勝鬨橋から見た築地市場
勝鬨橋から見た築地市場
移転予定地はまだ何もない
移転予定地はまだ何もない
でも何かしら工事は始まっているようだ
でも何かしら工事は始まっているようだ
豊洲の市場予定地はだだっ広い埋め立て地で、まだ建物の類いは何もない。しかし何もない中に新交通システムゆりかもめの駅ができていたり、新しい橋がいくつも造られていたり、インフラの整備はかなり行われている様子だった。

現市場の移転理由にひとつに「物流アクセスの悪さ」があるらしいので、否が応でも納得してもらうため都側も必死なのだろう。
ゆりかもめには既に「市場前」という駅がある
ゆりかもめには既に「市場前」という駅がある
新しい橋が架けられていた
新しい橋が架けられていた
何か基礎的な工事が行われていた
何か基礎的な工事が行われていた
もし移転したとして、豊洲がすんなりと東京の台所のイメージを受け継げるだろうか。そしてあの狭く魅力的な場外市場を、この時代に新しく築き上げることができるだろうか。

築地市場の場合は駅や商業施設と違って、単に再開発をするだけでなく、築地が培ったブランドイメージや独特の雰囲気といった、直接触ったり数値化したりできないものも一緒に移転しなければならない。そのためには移転を推進する役所だけでなく、そして実際に利用する業者だけでもなく、いろんな人が協力して、むしろ築地を忘れてしまうような新しい市場の形作りをしなければならないのだと思う。

おお、そんなつもりはなかったのに社会派的なまとめになってしまった。

忘れる前に記憶しよう

子供のころ住んでいた家や、遊んだ公園、使っていた駅、通っていた高校など、毎日のように目にしていた景色でも、なくなったり建てかわったりしてしまうと、もとはどんなだったかだんだん忘れてしまった。時代は日々進んで行くけど、自分が愛着のあった景色の記憶くらいは何かの形で残しておいてもいいと思う。
もっと身近では調布駅の分岐がもうすぐなくなる
もっと身近では調布駅の分岐がもうすぐなくなる
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