東京の地下鉄駅がかわいい
ウェブの地図は本当に便利だ。スマートフォンを買ったのもほとんど地図のためだった私は特に、これがなかった時代のことを思い出せないというより、未だにその便利さに感動することがけっこうよくある。
地下鉄駅の出入り口表示なんてまさにそのいい例。
えっと、赤坂サカスに行きたいときは、どの出入り口だっけ?とおもって地図を拡大表示していきますよね。そうするとだ。
ただの「赤坂」という点でしかなかった駅に、にょきっと足がはえる!いや、足じゃなくて、階段の出口がどこにあるかという表示なのだけど、これがすごく詳細で、虫っぽいのだ。
ちなみにこんなに情報が充実しているのは鉄道網が異様に発達した東京くらいなんだろうなと思ってちょっと海外の地図もみてみたら、パリもロンドンもニューヨークもどこまで拡大しても出入口表示なんてなかった。ゼンリン様の執念ありがとうである。
どうやら地下鉄駅虫たちの生息地帯はほぼ東京にかぎられるらしい。
細かいことはともかく、早速採集してみたいとおもう。
まずは標本箱を作る
昆虫採集といえば、昆虫標本である。前々からちょっといいなと思っていたのだ、昆虫標本。
ただ、最近は専ら無機物に愛をそそぎ、標本にすべきような昆虫とは無縁な生活を送ってきたため、あまり知識はない。「標本箱」ってどんなものか、ネットで探したら異様に高い木箱だったので、木箱にコルクボードを敷いてそれっぽく作ろうと思う。
見よう見まねでそろえた材料たち。
余談だが、東京ってけっこう買い物面倒くさい。特に最初の頃はホームセンターや100円ショップの場所が把握できず、「ホームインホーマー(実家から自転車で1分のホームセンター)があればイッパツで事足りるのに!」と、けっこう長い間、勝手に不便を感じていた。今回も電車でいちばん近い繁華街であるところの銀座に出てきてしまったために、東急ハンズ、ユザワヤ、伊東屋といろいろはしごするはめに。繁華街ってデパートとか専門店ばっかりで不便ですよね!(それを言うなら地元金沢の繁華街でもそうなんですけど!)
銀座が誇る文具専門店、伊東屋で「色画用紙ありますか?」ときいたら、まさかのバラ売りを提案され、それならばとメトロの路線図をもちだし、じっくりいちばん近い色を探す。
そして東急ハンズのDIYフロアで、ハンズで売ってるもののなかで私がいちばん好きな、”アクリルボックス”をチョイス。
ああ、美しい…
ついハンズのアクリルボックスの美しさに魅せられ、「木箱」という条件を逸脱してしまった。この傷ひとつない透明の箱をみていると、むくむくと、なんでも作れそうな、なにか作らなきゃいけないような気がしてくるんだよね…。
なんだかんだで今回、材料費だけは無駄な銀座クオリティである。
コルクボードを敷いて、あっさり「標本箱」っぽい感じに。満足である。さすがの銀座クオリティ。
虫(駅)に生命をふきこむ
Googleマップでみつけた地下鉄虫(駅)たちを採集(印刷)する。(なにをチョイスしたかは最終ページで!)
おおまかに切り取る。
伊東屋セレクトのいい色画用紙に貼っていき
そしてまたおおまかに切り取る。
そしていよいよ虫(駅)の姿を切り出していく作業
細かい足(出入口)にもめげずにがんばる
サンショウウオ的な生命の誕生である(副都心線渋谷駅)
深く考えていなかったが、足(出入口)、めちゃくちゃ細かい。そもそも採集の時点で、「なるべく足(出入口)の形が複雑でかわいい虫(駅)」を中心にチョイスしたので当然である。しかも、最初にとりかかった副都心線渋谷駅がやや特殊なサンショウウオ型だっただけで、だいたい地下鉄駅というのは細くて長いナナフシ型。ハサミでちまちま切り出すのにじつに向かない造形なのであった。
切り出す段になっておもわず、「おわー」とつぶやいた竹橋駅…なげーよ!
虫たち(地下鉄駅)の足(出入口)の秘密
ところでこの竹橋駅、なんでこんなに長いのかといいますと
ひとつには東西線の車両とホームが元々すごい長いせいもあるのだが、
竹橋の場合、ホームのはじっこに
こんなふうに、水増し部が存在するのだ。
反対側のホームにもこのとおり。ここ、おもしろい。
形がかわいいなと思っていた虫たちだが、実際、形を切り出してみると、「ここ、なんでこうなってるんだろう?」「ほんとにこんな形なのかな?」と気になるところがいろいろあった。
たとえば、赤坂駅のこの三角にとがった部分は何かというと、
実際にたしかに三角の階段だったりする
銀座一町目駅のこのツノみたいなところは
左右に運命の分かれ道みたいになってた
足にたくさんの節がある新富町駅は
行ってみると、ほぼ迷路。
階段の途中にまずひとつめの節(5番出口)
ふたつめの節は、実際にはのぼったりくだったり大変なことに。
うわぁこれはいい足(階段)!
なんてことはない。地図をみて、実際に行ってみて、やっぱりおもしろかった。ていうだけなんだけど、こっちは虫の足のつもりでいるので、なんというか、躍動感を感じますな。
途中で、「あ、路線の”ろ”って、右側、”各”じゃなくて”名”じゃん!!私のバカ!!(注:”各”であってます)」とゲシュタルト崩壊しながら、昆虫(駅)ラベルを作成。学名(路線名)和名(駅名)のつもりである。
完成した。
では満を持して、これまで紹介のなかった虫(駅)たちにもご登場いただこう。
いちばん気に入っている、丸ノ内線の銀座駅。他線への乗換通路を省いたのでやや反則だが、この独特のカーブ感はどうしてもコレクションしておきたかったのだ。
さすがの貫禄、虎ノ門駅を、銀座線の代表に。
地下鉄路線のほとんどが、郊外方面に向かうにつれ単純な構造になっていく中、なかなかの気概をみせた王子駅
微生物っぽい名残の残る日比谷駅
日比谷線は全体的に単純ながら微生物っぽいつくりがかわいい
半蔵門線は新種っぽい
いろんな場所に
さりげなく飾ってみる。
最終的には部屋の中でいちばん女子っぽいコーナーにおさまった。
念願の昆虫(駅)標本を手に入れて満足だ
今回は、(おもにアクリルボックスの値段の都合があって)全11種にとどまったが、これは楽しい。かわいい。もっといっぱい作りたい。そしていつの日か全種コンプリートして自慢しよう。