特集 2012年2月3日

スナックのドアはなぜか斜め

名前、外壁の模様・色、謎の菱形。何もかもが香ばしい、すてきなファサード。そしてポイントは「斜めドア」
名前、外壁の模様・色、謎の菱形。何もかもが香ばしい、すてきなファサード。そしてポイントは「斜めドア」
今年、ついに40歳になる。

この歳だが、結婚もしておらず、クルマの免許もなく、パチンコもやったことがなく、タバコも吸ったことがない。いったいぼくはこれまで何をやってきたのだろう。(答え:団地とか工場を巡っていました)

こういった、本来オトナとしてやっておかねばならないはずのことのひとつとして「スナックに行く」があると思う。

なので、思い切ってやってみた。
もっぱら工場とか団地とかジャンクションを愛でています。著書に「工場萌え」「団地の見究」「ジャンクション」など。(動画インタビュー

前の記事:全長6kmのタツノオトシゴの絵を描いた

> 個人サイト 住宅都市整理公団

「行く」とは言ったが「入る」とは言ってない

スナック。入りづらい。世のオトナたちはいったいどうやってスナックに入るきっかけをつかむものなのか。

一見さんお断りっぽいし、やっぱり常連に紹介してもらうものなのだろうか。思春期の頃に女の子と仲良くなるためのきっかけをどうやって得たらいいのか皆目分からず絶望したときの気分に似ている。というか、こんな取っつき悪そうな雰囲気で、世の中のスナックはよくやっていけているものだ、と感心する。つぶれないビジネスモデル上の秘密があるのかもしれない。さおだけ屋がなぜつぶれないのか、というような。
いったい誰が、なんの紹介もなくここに入っていけるというのだろう。
いったい誰が、なんの紹介もなくここに入っていけるというのだろう。
とまあ、いろいろ書いていますが、ようするに入れなかったのだ。無理だ。ちょう無理。

と、そのときあることに気がついた。

スナックのドアって、斜めってる。
斜めだ。
斜めだ。
この一件だけの特徴ではない。スナックって、駅前の特定のエリアに集まって存在していることが多く、それらを見て回ったのだが(入りやすいところないかなー、って思って)多くのドアが斜めっている。
ネコの浮かれ電飾、重厚な扉、そして斜め。あと右側のエアコンのパイプがいったん壁から出てまた入っていっているのがいい。
ネコの浮かれ電飾、重厚な扉、そして斜め。あと右側のエアコンのパイプがいったん壁から出てまた入っていっているのがいい。
漆喰調の壁に玄関スペースを四角く彫り込んで、そして斜め。
漆喰調の壁に玄関スペースを四角く彫り込んで、そして斜め。
これも彫り込みがかわいらしい。上部が曲線になっているのもいい。そして斜め。
これも彫り込みがかわいらしい。上部が曲線になっているのもいい。そして斜め。
ほら!ね。

なんで斜めなんだろう。

細い路地に面した立地が多く、ドア付近に立っても通行の邪魔にならない空間が必要、とかそういう理屈があるのだろう。でも、それだけじゃない気がする。

スナック好きで有名な都築響一さんに「なんでスナックのドアって斜めなんでしょうか?」って訊いてみたのだが「え?斜めだっけ?」と返された。都築さんがこう言うということは、そんなに斜めじゃないのだろうか。いやいや、斜め多い気がするよ。

なんというか、「スナック様式」とでも言うようなデザイン上のこだわりがあるような気がしてならない。「ウェルカム感」の演出とか。

ともあれ謎は謎のままとして斜めのドアを見て回りたい。もう入店するのはあきらめた。
ダイナミックな斜め!これはすばらしい、と思ったら…
ダイナミックな斜め!これはすばらしい、と思ったら…
「ウェルカム感」力及ばず、ということだろうか。
「ウェルカム感」力及ばず、ということだろうか。
いったん広告です

スナックは撮るのもはばかられる

もとスナックてはないかと睨んでいる。
もとスナックてはないかと睨んでいる。
「ウェルカム感」説があやしくなってくる佇まい。
「ウェルカム感」説があやしくなってくる佇まい。
いろんな駅のスナック街を巡ってみたのだが、やはり斜めドアが多い気がする。ただ、ぼくが「斜めドアが多いはず!」って思い込んでいるので、いわゆる心理学的に言う認知バイアスがかかっているかもしれないが。

というか、別の問題があって。スナックって撮りづらいのだ。端的に言うとこわい。おこられそう。

実際には怒られはしなかったのだけれど、このぼくがびくびくしちゃってるマインドが、とりもなおさずスナックに入店できない甲斐性なしにつながっているのだろうと思う。
床屋さんも斜め。横の階段との組み合わせにぐっと来る。
床屋さんも斜め。横の階段との組み合わせにぐっと来る。
なので、スナックがいかに斜めドアかは、みなさん自身の目で現地で確かめていただくことにしたい。

で、すっかり「斜めドア」センサーが発達してしまったぼく。スナック以外にもときおり斜めっている事例があることに気がついた。そちらを紹介しよう。
こちらも床屋さん。もしや床屋も斜めドアが多いか?今後の研究が待たれる。
こちらも床屋さん。もしや床屋も斜めドアが多いか?今後の研究が待たれる。
幾何学模様の外壁とガラスブロック、そしてこの斜めってル半透明のドア。すてきだ。
幾何学模様の外壁とガラスブロック、そしてこの斜めってル半透明のドア。すてきだ。
寿司やさんも斜めに!引き戸の事例ははじめてだ。手前の斜めではない梁の存在が、扉の斜め感を際立たせている。名品だ。
寿司やさんも斜めに!引き戸の事例ははじめてだ。手前の斜めではない梁の存在が、扉の斜め感を際立たせている。名品だ。
しかもこの「ななめずし」(勝手に命名)、高架下建築なのだ!すばらしい。
しかもこの「ななめずし」(勝手に命名)、高架下建築なのだ!すばらしい。
レンガで統一、ひさし部分の意匠といい、アールのついた窓といい、完璧なできばえのランチハウス洋包丁。だめ押しは懐の深い斜めドアである。
レンガで統一、ひさし部分の意匠といい、アールのついた窓といい、完璧なできばえのランチハウス洋包丁。だめ押しは懐の深い斜めドアである。
ただ、若干疑問なのは「こんな裏通りに…B級グルメの店が!」という見出し。通常表通りにあるものなのだろうか、B級グルメは。
ただ、若干疑問なのは「こんな裏通りに…B級グルメの店が!」という見出し。通常表通りにあるものなのだろうか、B級グルメは。
もしぼくが家を建てることがあったら、ドアは斜めにしたいものだ。

いや、どうかな。

とか思っていたら、一般住宅でも斜めっている事例があった。
いったん広告です

自宅が斜めドアの人の話を聞いてみたい

やんわりと控えめな斜めっぷりがすてき。
やんわりと控えめな斜めっぷりがすてき。
スナックと違って、住宅の斜めドア事例を見ていくと、これはやはり前の道路とのかねあいなのだろうな、と感じる。もっぱら実利的な理由なのだろう、と。もしご自宅が斜めドアだという方がいらっしゃったらぜひお話を聞かせていただきたい。

しかしかさねて申し上げるが、スナックの場合はそれだけじゃない雰囲気があるのだ。だから、住宅の斜めドアとスナックとのそれは表れ方は同じだが、実質違うものであると主張したい。

そしてぼくが「斜めドアの家」を建てるときにはあくまでスナック的佇まいとしたい。なにこのこだわり。
こちらはいまは住宅っぽいが、元はなんらかの店舗だったとおぼしき作品。
こちらはいまは住宅っぽいが、元はなんらかの店舗だったとおぼしき作品。
切れ込みの深さ、よく見ると三角形ではなく台形である点など、見所が多い。あと右のグリーンのタイルも意欲的。
切れ込みの深さ、よく見ると三角形ではなく台形である点など、見所が多い。あと右のグリーンのタイルも意欲的。
シンメトリーな切れ込み具合がそそる斜めドア住宅。上のひさしと相似形か。
シンメトリーな切れ込み具合がそそる斜めドア住宅。上のひさしと相似形か。
今回見てきた中でもっともふしぎな斜めドア。
今回見てきた中でもっともふしぎな斜めドア。
上の住宅の斜めドアを見つけたときは興奮した!

まず2段構えである点が面白い。そして上の照明の部分を見ると分かるのだが、壁自体は全体的に斜めで、左の斜めでない方のドアは、そこからさらに彫り込んでまっすぐなのだ。両方斜めではいけないか。

前後にずれているのは、狭い改札口に置かれている自動改札のズレやエスカレーターを彷彿とさせる。導線がぶつからないようにという配慮だろうか。

げに、斜めドアは奥が深い。そう気づかされた逸品である。
いったん広告です

「そりゃあ斜めになるよねえ系」

これまで見てきた斜めドアと異なった理由で斜めっているドアがある。
こういうやつ。
こういうやつ。
斜めドア鑑賞家であれば、「ははーん、これ系ね」と気がつくことだろう。
場所はここ。建物のファサードが斜めの道に面している(大きな地図で表示
そうなのだ。建築の形からすると、これはドアが斜めなのではなく、壁の方が斜めなのだ。こういう斜めはあまり好みではない。「そりゃあ斜めになるよねえ」って感じだ。

でも、上の地図よく見ると、道の向かいの建物や背後の通りに面している建物たちは道路にあわせて建築自体を「斜め」にしているのに、ここはそうではない。うーん、そう考えるとおもしろいな!うん、こういう斜めもいいんじゃないか?好きじゃない、とか言ってすまなかった。

斜めドアに貴賤なし、ということか。反省。人生、勉強の連続である。
タイルといい、丸みを帯びた意匠といい、ドアの重厚さといい、なんとも魅力的なこの斜めドアも…
タイルといい、丸みを帯びた意匠といい、ドアの重厚さといい、なんとも魅力的なこの斜めドアも…
高架と道路が「斜め」に交差したために、壁側が斜めになっている「そりゃあ斜めになるよねえ系」なのだった。うん、これはこれでいいよ!すてきだよ!(大きな地図で表示
一方で、「きっとなにか事情があるんだろうな」と思うんだけど、その理由はスナック以上にまったくの謎、という例も。
駅通路に突如深く切り込まれた斜めドア。当然と言えば当然だが、これまでのものとは一線を画す斜め佇まいだ。
駅通路に突如深く切り込まれた斜めドア。当然と言えば当然だが、これまでのものとは一線を画す斜め佇まいだ。
場所は、東京駅の地下通路の途中。地図を見る限りその理由は謎のまま。きっとなにかあるんだろうなー。

スナックには再度挑戦したい

ちょっとひるんでスナックの「斜めドア」をまっとうできなかったが、今後は気合いを入れて挑戦していきたいと思う。みなさんも斜めドア見つけたら教えてください。
ネコにかまうためのスペースづくりか!
ネコにかまうためのスペースづくりか!
▽デイリーポータルZトップへ

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←

デイリーポータルZを

 

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ
↓↓↓ここからまたトップページです↓↓↓

 

今日のみどころ