特集 2012年1月28日

媚びない!ぶれない!淡水魚マニアの聖地、アクア・トトぎふ

この渋さ。たまらないよね。
この渋さ。たまらないよね。
僕は魚が好きだ。特に淡水魚が好きで好きでたまらない。
そんなわけで水族館へ遊びに行くと、ついつい淡水魚の水槽に多くの時間を割いてしまう。しかし、大抵の水族館はきらびやかな海水魚たちの展示がメインで、淡水魚を収容した水槽はあくまで「オマケ」的な存在感と規模であることが多く、淡水魚マニアとしてはいつも物足りない思いをしてきた。
ところが、岐阜県にはなんと淡水魚を主役に据えた夢のような水族館があると聞いた。これは是が非でも見学に行ってみたい。しかもマニアックな視点からネッチリと楽しみたい。
1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。(動画インタビュー)

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というわけでやって来ました、岐阜県各務原市にあります「アクア・トトぎふ」。
というわけでやって来ました、岐阜県各務原市にあります「アクア・トトぎふ」。
このアクア・トトぎふは世界最大級の規模を誇る淡水魚水族館として有名で、淡水魚好きの間では「聖地」扱いされている施設である。
ちなみに「アクア・トトぎふ」というのは愛称で、正式名称は「世界淡水魚園水族館」というのだそうだ。

実はここ、2004年に開館したばかりの新しい水族館で、豊かな緑のそばにたたずむ外観も非常に綺麗なものだ。そして意外と大きい。この大きな建物の中に世界中の淡水魚が詰まっていると考えると、もうワクワクがおさまらない。
さっそく入館してみよう。
さっそく入館してみよう。
ん?待てよ。入口近くの池に何かいるぞ。
錦鯉。
錦鯉。
わかってる!さすが淡水魚水族館!よくわかっていらっしゃる!
何を興奮しているんだ。池に錦鯉なんて普通じゃん。と思われるだろう。その通り、これはごく普通の錦鯉の展示だ。同時にこれがベストな錦鯉の展示方法でもあるのだ。

実は錦鯉というのは、日本にガラス製の水槽が普及する以前に作りだされた世界的にも珍しい「上から眺めるための」観賞魚なのである。よって、その魅力を100%引き出すにはこのように澄んだ水を張った池で飼育、展示するのが一番なのだ。

最近は錦鯉を透明な水槽に収容して横からその姿を観察させる施設もよく見かけるが、やはりこうした基本を押さえた展示方法を選ぶのは魚をより美しく見せたいという心意気故なのだろう。
おそるべしアクア・トトぎふ。入館前から興奮させてくれるじゃないか(別にそんな意図はなかったのかもしれないが)。
さて、ようやく入館。と、エントランスにいきなり水槽が。
さて、ようやく入館。と、エントランスにいきなり水槽が。
ここにも小技が利いている。
普通、水槽のレイアウトというのは一方向からの見栄えを意識して組まれるものだが、この水槽は設置場所が場所だけに前後から来館者の目に晒されることになる。
前から見ても美しく、
前から見ても美しく、
後ろから見てもまた違った味わい。
後ろから見てもまた違った味わい。
水草を密に植え込みすぎない、どの角度から見ても見栄えの良い形の流木を選んで配置するなど、さりげない工夫を凝らすことで前後どちらからの鑑賞にも耐えられるように仕上げてある。
さすが淡水魚専門の水族館!

館内には長良川が!

もう入り口の自動ドアを挟んだ状態で小さいことに興奮しっぱなしである。実はまだ受付すら通っていない。キリも無ければ時間も無いのでそろそろメインの展示を見ていくことにしよう。
順路に従って進み始めるとまずこんな物が目に入る。
長良川源流の文字。
長良川源流の文字。
そう、長良川を源流から河口まで下っていくコースなのだ。
上流域はイワナやサンショウウオたちが遊ぶ渓流がしっかり再現されている。
上流域はイワナやサンショウウオたちが遊ぶ渓流がしっかり再現されている。
まるで実際に沢歩きをしているようで大変気持ちがいい。
さすが岐阜。オオサンショウウオもしっかり展示。
さすが岐阜。オオサンショウウオもしっかり展示。
中流域にはウグイの群泳。こんな渋いモノ、見ようと思ってもなかなか見られませんよ。
中流域にはウグイの群泳。こんな渋いモノ、見ようと思ってもなかなか見られませんよ。
収容する魚を同じ地方、同じ水系のものでまとめた水槽というのはそんなに珍しいものではないかもしれない。しかし一つの河川を上、中、下流、河口とエリアごとに区切って混ぜ泳がせる魚を厳密に限定するというのはなかなかできるものではない。それを実現している長良川再現ゾーンはこの水族館最大の個性の一つだろう。
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世界の巨大淡水魚に会える!

上流から河口へと長良川を抜けるといよいよ大海原へ…なんていうことは決して無く、唐突に世界各地の淡水魚が展示されるエリアに。
普通ならついついサンゴやらクマノミやらが入ったブルーを基調とした水槽でも置きそうなものだが、この姿勢は潔くて好感が持てる。
世界の淡水魚エリアの入り口には探検グッズが。男心を揺さぶられる。
世界の淡水魚エリアの入り口には探検グッズが。男心を揺さぶられる。
通路にはトロピカルな観葉植物が飾られる。
通路にはトロピカルな観葉植物が飾られる。
わびさびのある長良川ゾーンから一転してさながらジャングルクルーズ。空間の雰囲気作りの巧さに感心させられる。

このエリアは東南アジアからはメコン川、アフリカ大陸からコンゴ川とタンガニーカ湖、南米大陸からアマゾン川がそれぞれチョイスされ各河川の魅力的な魚たちが多数展示されている。
メコン川の主、メコンオオナマズ!
メコン川の主、メコンオオナマズ!
でかい。小学生くらいの大きさはある。これは一見の価値ありだ。
でかい。小学生くらいの大きさはある。これは一見の価値ありだ。
川魚というと一般的には地味で小さな魚というイメージだが、世界にはこんな怪物もいるのだ。
もしも川で泳いでいて遭遇したら怖いだろうなー。と思ったが、実はその巨体に似合わず草食性のおとなしい魚なのだそうだ。

この魚はそのインパクトのためかお客さん、特に子供たちに大人気で、常に多数のギャラリーがついていた。
でも個人的にメコンオオナマズより興奮したのがこの魚。
クリプトプテルス・アポゴン!
クリプトプテルス・アポゴン!
この一見地味な魚を見られて何が嬉しかったかというと、こんなに傷一つない綺麗な姿を見たのが初めてだったから。
以前に熱帯魚を輸入している業者の方から「この魚は皮膚が弱く、傷つけずに輸送するのが困難」だと聞いていたので国内で自然のままの姿を拝むのは無理だと思っていたのだ。
これが見られただけでもこの水族館に来た甲斐があったというものである。

続いてはアフリカエリアを覗いてみよう。
コンゴ川水槽は割と落ち着いた色合いの魚が多かった。
コンゴ川水槽は割と落ち着いた色合いの魚が多かった。
いかに熱帯魚とはいえ、色合いが地味な水槽はとことん地味。安易にカラフルな魚を投入して媚びたりはしない。これもこの水族館の特徴だろう。色合いは地味な魚であっても彼らにしかない渋さを持っている。そうした魅力を引き出す見せ方がとても上手いのだ。
でもタンガニーカ湖水槽は一転してきらびやか。一瞬サンゴ礁の魚を展示しているのかと思った。
でもタンガニーカ湖水槽は一転してきらびやか。一瞬サンゴ礁の魚を展示しているのかと思った。
緩急自在な展示で来館者を退屈させない。

あこがれの魚に出会えた

アフリカエリアではずっと見てみたかった魚を見ることができた。
ジムナーカスという魚。こんなに立派な個体は初めて見た。かっこいい!
ジムナーカスという魚。こんなに立派な個体は初めて見た。かっこいい!
観賞魚店で小さなものを見たことはあったのだが、これほど大きな個体が悠然と泳ぐ姿を見たのは初めてだったのでとても感動した。
このつぶらな瞳!不敵な口元!実はアフリカへこの魚を捕まえに行くのが僕の夢の一つだったりする。
このつぶらな瞳!不敵な口元!実はアフリカへこの魚を捕まえに行くのが僕の夢の一つだったりする。
いいよージムナーカスいいよー。
物陰に隠れてばかりでなかなか姿を見せてくれず、この写真を撮るために水槽の前で30分も粘ってしまった。

また、この水槽も新鮮なインパクトがあった。
緑であふれた水槽にフグというミスマッチがニクい!
緑であふれた水槽にフグというミスマッチがニクい!
フグは海の魚というイメージの強い日本人の感覚だと「えっ!水草が生えるような川や湖にフグがいるの!?」と驚いてしまうが、熱帯地方には淡水に棲むフグも少なくないそうだ。
確かに漢字で「河豚」って書くもんね。
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続いてはアマゾンエリア。
アマゾン川を再現した水槽にはかわいい大型ナマズが充実。ナマズ好きにはたまらない。
アマゾン川を再現した水槽にはかわいい大型ナマズが充実。ナマズ好きにはたまらない。
感動したのがこの苔蒸した流木。
感動したのがこの苔蒸した流木。
鮮やかな緑で大型魚だらけの水槽内に華をそえつつ野趣を増している。
実は以前ブラジルの川に潜ったことがあるのだが、この写真とそっくりな光景が広がっていたのを思い出させてくれた。
それにしてもこれだけ大きな流木に人工的にコケを植え付けるのは手間がかかっただろうなあ…。
ウロコのある淡水魚では世界最大といわれるピラルクもいた。
ウロコのある淡水魚では世界最大といわれるピラルクもいた。
水草がうっそうと茂ったアマゾンの小川を再現した水槽も。
水草がうっそうと茂ったアマゾンの小川を再現した水槽も。
環境が整っているおかげで勢い余って水草が水上に飛び出してしまっている。
環境が整っているおかげで勢い余って水草が水上に飛び出してしまっている。
実はほとんどの水草は水上でも生育することができ、その見た目を水中とは大きく異にする。自然界ではその二通りの姿で混在していることも多い。おそらくこれは両者の姿を楽しませるための粋な計らいに違いない。

熱帯の魚だけではない

淡水魚のエキスパートたるアクア・トトぎふには、なじみ深い日本の魚や個性的な熱帯魚たちだけでなく、中国大陸や朝鮮半島という簡単に手が届きそうで届かない土地の魚も展示されている。見ようと思っても意外と見ることができない魚たちだ。
これは中国大陸東部に生息するケツギョという魚。
これは中国大陸東部に生息するケツギョという魚。

魚がやたら大きい

館内を見学しているとあることに気付く。
魚がとても大きいのだ。といっても先ほどのメコンオオナマズやピラルクのようなサイズが売りの巨大魚のことではない。
小~中型の魚までもがやたらと立派なのだ。
テッポウウオがでかい。
テッポウウオがでかい。
陸にいる虫を水鉄砲で撃ち落とすという奇異な生態ゆえか、あちこちの水族館で見られるテッポウウオだが、ここアクア・トトのテッポウウオは一味違う。でっぷりと太って分厚く、貫禄すらあるのだ。テッポウウオってこんなにかっこよくなる魚だったのか!と衝撃を受けた。
デンキナマズもでかい
デンキナマズもでかい
このデンキナマズなんて60センチくらいあった。これだけ大きければ発する電気もすさまじいだろう。水槽の掃除を任された飼育員さんは大変だろうなと思った。

テッポウウオといいデンキナマズといい一体どれだけ飼いこめばこんなに立派になるのだろうか。そもそもそんなに大きさを楽しむタイプの魚でもないだろうに。そこはさすが淡水魚特化型水族館。展示する魚の質にはこだわりぬき、他の追随を許さないということか。

レイアウトが凝っている。

さて、この辺りでそろそろ魚以外の点にも目を向けていこう。水槽のレイアウトである。
サンショウウオ水槽にはコケやシダを生やした小石が転がっており、さながら渓流の一部を切り取って来たかのよう。
サンショウウオ水槽にはコケやシダを生やした小石が転がっており、さながら渓流の一部を切り取って来たかのよう。
沢を歩きながらの生き物探しを疑似体験できる。
沢を歩きながらの生き物探しを疑似体験できる。
水草を植えこんだ水槽にも工夫が見られる。
水草を植えこんだ水槽にも工夫が見られる。
基本的に成長が遅く、手入れをしやすい種類の水草のみを使用しているようだ。美しいレイアウトを長期間にわたって来館者に楽しんでもらうための工夫だろう。
また、収容されている魚と水草の産地を合わせてあるのにもこだわりが感じられる。
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無機質なものを見せない

金魚や熱帯魚を飼ったことがある方ならお分かりだと思うが、水槽の中に自然の風景を切り取るのは容易なことではない。
魚を健康に生かしておくためにはどうしてもポンプやらろ過器のパイプやらといった人工物を水槽の中に設置しなければならないからである。
そのあたりの問題もアクア・トトでは上手く解消されている。
水を循環させるパイプを死角に配置したり
水を循環させるパイプを死角に配置したり
流木で隠したり
流木で隠したり
思い切って滝にしてしまったりしている。
思い切って滝にしてしまったりしている。
おお、素晴らしい。特に滝を作るというのは水を循環させつつ趣を出すという一石二鳥のアイディアではないか。
こうした工夫は自宅に水槽を置く際の参考にもなりそうだ。滝は無理だけど。

しかし奥が深いもので、あえて人工物を強調した面白いレイアウトの水槽もあった。
漁具が入っている!
漁具が入っている!
魚を食料としている人間と魚は切っても切れない関係。忠実に水辺の姿を再現していくならば、そうした人間の営みの影を排除しきってしまうというのは、実はある意味ではとても不自然なことなのかもしれない。そんな視点に立ってみると、これは現地の人々の暮らしを水景の一部として捉えた意欲的なレイアウトだと言えるのではないだろうか。

図書コーナーの充実ぶりがすごい

さて、世界の淡水魚たちとお別れすると楽しかった水族館見学もそろそろ終盤である(ここではほんのわずかしか紹介できていないが)。
ライブラリー&ITコーナー
ライブラリー&ITコーナー
突如、学校の図書室のような空間が現れた。どうやら水辺の生き物や環境に関する本やパソコンを使ったクイズゲームが楽しめるらしい。
子供向けの絵本から
子供向けの絵本から
やたら専門的な書籍まで幅広く網羅している。
やたら専門的な書籍まで幅広く網羅している。
ああ~、これやばいわ。この部屋だけで何時間でもいられるわ。
実際、自分が幼稚園児の頃に愛読していた本をたまたま見つけてしまい、一時間ほど読みふけってしまった。

タッチプールであの魚と触れ合う

さて、屋外に出ると水族館名物のタッチプールがあった。
タッチプールと言えば普通の水族館だとヒトデやナマコなど、潮だまりの小動物を相手にすることが多いが、そこは淡水魚水族館。入っているのはがっつり川魚。
この時期に屋外で水に手を入れるのは正直寒かったです。
この時期に屋外で水に手を入れるのは正直寒かったです。
エサをあげるとコイたちがものすごい勢いで集まってきて手を入れるのが怖い。
エサをあげるとコイたちがものすごい勢いで集まってきて手を入れるのが怖い。
タッチできるのはコイばかりではない。こんな珍しい魚も。
だ~れだっ?
だ~れだっ?
キャビアで有名なチョウザメである。名前や姿は知っていても実際に触れる機会はほとんど無い魚だ。私も初めて触ったが、その手触りは想像していたものとかなり違った。ゴツゴツザラザラしているものだと思っていたのだが実際はスベスベで柔らかかった。うん、いい経験ができた。

ガチャガチャがマニアック

いよいよすべての展示を回り終えてしまった。
名残惜しくはあるが、あとはもうお土産屋売り場を通って退館するだけだ。
そのお土産売り場で妙なものを目にした。
カプセルベンダー。いわゆるガチャガチャというやつだが…。
カプセルベンダー。いわゆるガチャガチャというやつだが…。
日本のカエル…?日本の清流…?最後の最後まで本当にぶれないな、アクア・トトぎふ!

いやー、堪能した。噂に違わず淡水魚好きにはたまらない空間であった。結局この日は開館と同時に入館し、閉館時間ギリギリまで館内を何往復もしながら舐めるように見学したがそれでも飽きることはなかった。

他にも盛り沢山!

ところで、この記事の中で紹介した魚たちは全体のごくごく一部にすぎない。なんせアクア・トトにはおよそ220種、2万5千点もの魚類や両生類が展示されているのだ。お好きな方はぜひ足を運んで、じかにその目で見ていただきたい。
ひとつ誤解の無いように断わっておくが、アクア・トトぎふは当然淡水魚マニアでなくても間違いなく楽しめる水族館である。館内は清潔で落ち着いた雰囲気なので家族連れでもカップルでも心地良い時間を過ごしながら素敵な思い出を作れるはずだ。

詳細はこちらから!
http://aquatotto.com/index.php
魚だけじゃなくてカピバラさんやカワウソちゃん、ゾウガメくんなんかもいるよ!
魚だけじゃなくてカピバラさんやカワウソちゃん、ゾウガメくんなんかもいるよ!
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