特集 2012年1月11日

龍宮城に行こう! 浦島太郎の動く城

「ソープランド龍宮城」とかもありそうですが、そういうハナシではありません
「ソープランド龍宮城」とかもありそうですが、そういうハナシではありません
超・メジャーな日本昔話『浦島太郎』。

そのわりに、龍宮城で鯛やヒラメや乙姫様にウッハウッハの酒池肉林状態になったり、たいして悪いこともしていないのに一瞬にして老人になっちゃうという悲惨な結末を迎えたりと、子ども向けおとぎ話の枠から逸脱した衝撃的なストーリー展開に胸をガッチリつかまれてしまいます。

そんな浦島太郎の舞台である龍宮城の雰囲気が味わえるスポットがあるらしいのですが……。
1975年群馬生まれ。ライター&イラストレーター。
犯罪者からアイドルちゃんまで興味の幅は広範囲。仕事のジャンルも幅が広過ぎて、他人に何の仕事をしている人なのか説明するのが非常に苦痛です。変なスポット、変なおっちゃんなど、どーしてこんなことに……というようなものに関する記事をよく書きます。(動画インタビュー)

前の記事:レジャー感覚で日本刀(真剣)を振るってきた!

> 個人サイト Web人生

悲惨すぎて気になる浦島太郎

アニメ『まんが日本昔ばなし』のDVDが全60巻(しかも1巻に4話収録)で刊行中だそうで、「そんなにいっぱい昔話ってあるのかよー!」と驚愕している今日この頃なんですが、大量にある昔話の中でも一大勢力を誇っているのが「太郎」モノ。

超・メジャーどころな桃太郎や金太郎をはじめ、じーさんばーさんの垢を固めて作られたというショッキングな誕生秘話を持つあか太郎(力太郎)、ものぐさ太郎、三年寝太郎、竜の子太郎……等々、日本には数多くの「太郎」が存在する。
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話の内容的にはどれも、子どもだったりグータラだったりした○○太郎が成長することによって何かしらを達成するという、まあビルドゥングスロマン(成長物語)が基本なのだが、そんな太郎業界においてかなりメジャーなポジションであるにも関わらず、ちょいと成長して立派になるどころか、成長しすぎていきなり老人と化してボーゼンとしてしまうのが『浦島太郎』だ。

ほとんどが「めでたしめでたし」で終わる予定調和な太郎モノの中ですさまじい異彩を放っている。
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もちろん昔話の中にはバッドエンディングなものも少なくはないが、大抵はいじわるじーさんが悪知恵を働かせた結果の因果応報的な鬱エンドなので、子供心にも納得はできるというもの。

しかし浦島太郎に関してはそんなに悪いこともしていないのに(開けるなっていわれてた玉手箱を開けたことくらいか)こんなブルーかつお気の毒なエンディングを迎えちゃっていいものか!?
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亀救出→お礼に龍宮城に→ウハウハ→地上に戻ったらすんごい年月が経ってた→玉手箱で老化……って、歌舞伎町でチンピラに絡まれてるお姉ちゃんを救出→お礼に知っている店で飲みましょう→ウハウハ→お会計時に怖いお兄さん登場→根こそぎお金を巻き上げられて人生破滅……みたいなことでしょ!? 悲惨過ぎるよッ。
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「こんなことなら亀(姉ちゃん)なんか助けるんじゃなかった!」という教訓しか与えてくれない物語って……夢見がちな子どもたちのハートにグッとトラウマを刻み込んでくる『浦島太郎』。実はボク、大好きなのです。
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“乗れる”龍宮城とはこれいかに?

さて、そんな浦島太郎の龍宮城に乗れる場所があるらしいと聞きつけたので、今回はそこに行ってみることに。
やって来ました三重県の鳥羽港。すっげえキレイな海!
やって来ました三重県の鳥羽港。すっげえキレイな海!
しかし龍宮城に「行ける」じゃなくて「乗れる」って、どういうことなんだろうか?

その答えはすぐに明らかになった。
ん、なんか変なモノが……?
ん、なんか変なモノが……?
ええーっ船!?
ええーっ船!?
こ……コレが龍宮城なのかッ!?
こ……コレが龍宮城なのかッ!?
いったん広告です

船の中も外も龍宮城

コイツが海の上を進んでいる姿は100メガショック級の衝撃!
コイツが海の上を進んでいる姿は100メガショック級の衝撃!
穏やかな鳥羽湾の洋上に突然ズゴゴゴーッと出現した超・ド派手な船。

これこそが"乗れる"龍宮城こと「遊覧船・龍宮城」なのだ!
地図中央のデカイ島がイルカ島なんだけど……イルカの形してるか?
地図中央のデカイ島がイルカ島なんだけど……イルカの形してるか?
この船は志摩マリンレジャーという会社が運営する遊覧船。たくさんの島が浮かぶ鳥羽湾をめぐって、ミキモト真珠で知られる真珠島や、イルカの形をしているイルカ島などを見ることが出来るのだが、この会社の遊覧船はなぜか必要以上に派手なものばかり。
こちらは遊覧船・フラワーマーメイド号
こちらは遊覧船・フラワーマーメイド号
船の上になんかいるッ!
船の上になんかいるッ!
おっぱい丸出しの人(魚)も……
おっぱい丸出しの人(魚)も……
そして、その中でも群を抜いてイカレ……夢あふれる形をしているのが、この遊覧船・龍宮城なのだ。
やっぱりスゴイ……
やっぱりスゴイ……
うん、こんな船に乗ったら浦島太郎ならずとも脳内麻薬垂れ流しのウッハウハ状態になってしまうこと必至! 早速、乗ってみようじゃないですかッ。
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さて、いよいよ乗り場に……
さて、いよいよ乗り場に……
うわーっ、『タイタニック』におけるディカプリオ&女(誰だったっけ?)ポジションに浦島&亀が!?
うわーっ、『タイタニック』におけるディカプリオ&女(誰だったっけ?)ポジションに浦島&亀が!?
しかもゴールデン……
しかもゴールデン……
遠くから見ていてもかなりエキセントリックな外観だったこの船だけど、近づいて見ると一段とこう……。とにかく、色んなところに細かいネタがちりばめられているのだ。

建物をかたどった屋形船的なものはよくあるけれど、この遊覧船・龍宮城はレベルが違う!
いたるところに「龍宮城」の文字が
いたるところに「龍宮城」の文字が
異常にリアルな魚たちが舞い踊る
異常にリアルな魚たちが舞い踊る
顔面蒼白の謎の女子。乙姫様……かな?
顔面蒼白の謎の女子。乙姫様……かな?
像の置物……はおそらく龍宮城とは関係ないと思われます。しかしなぜ置いた!?
像の置物……はおそらく龍宮城とは関係ないと思われます。しかしなぜ置いた!?
こんな遊覧船・龍宮城にこれから乗り込むワケです
こんな遊覧船・龍宮城にこれから乗り込むワケです
さて、乗船する前から異様な雰囲気をプンプンと放ちまくっている遊覧船・龍宮城。期待感が高まらずにはいられないが、ラッピングバスやポケモンジェット的な飛行機なんかだと外から見ている分には楽しいけど乗ってしまうと普通、というケースも少なくない。

しかし、この船は中に入っても依然どーかしまくっていた。いや、中の方が格段にどーかしているのだ!
エントランスホール。壁に魚とか描かれていますが
エントランスホール。壁に魚とか描かれていますが
天井を見上げると……。中央の照明が気になります
天井を見上げると……。中央の照明が気になります
遊覧船・龍宮城の船内は、なんとなーく龍宮城をイメージしたっぽい内装となっているのだけれど、さらに奥に進むと……。
ん……?
ん……?
なんじゃこりゃーっ!?
なんじゃこりゃーっ!?
おそらく子どもたちが亀をいじめているところ。そして……
おそらく子どもたちが亀をいじめているところ。そして……
それを制止する浦島太郎ッ!
それを制止する浦島太郎ッ!
おおうっ、めっちゃイケメン!
おおうっ、めっちゃイケメン!
そして浦島太郎の頭上には宇宙的な絵が
そして浦島太郎の頭上には宇宙的な絵が
船内のあちこちに浦島太郎のストーリーを再現した像が設置されており、海の上を進みながら浦島太郎気分にひたれる趣向となっている。まさに、船自体が浦島太郎テーマパークなのだ。

それにしても、この手のスポットにある像の常ではあるものの、ここ龍宮城の像も顔がすごく怖いんだ。
猫ひろしを彷彿とさせる老け顔の少年
猫ひろしを彷彿とさせる老け顔の少年
性格の悪さが顔ににじみ出ているガキ
性格の悪さが顔ににじみ出ているガキ
そして、亀をいじめる男子ふたりを不敵な笑みを浮かべながら見つめる少女。多分、将来は悪女に
そして、亀をいじめる男子ふたりを不敵な笑みを浮かべながら見つめる少女。多分、将来は悪女に
オイラ、こんなクレイジーな遊覧船に乗ったのはじめてだよ!

鳥羽湾の美しい風景そっちのけで、さらにこの遊覧船・龍宮城を探索していきたいと思う。
我ながらいい写真だと思う
我ながらいい写真だと思う
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あのクライマックスも像になっていた

天女っぽい女子ふたり、こういう人もいましたっけ?
天女っぽい女子ふたり、こういう人もいましたっけ?
さらに遊覧船・龍宮城を見ていくとしよう。

2階客室には、この手の昔話系スポットのお約束としてストーリーを解説するパネルが展示されているのだが、このパネルに描かれているイラストがなんともジワジワくる画風なのだ。
ま、このように絵と文章でストーリーを解説しているんですが
ま、このように絵と文章でストーリーを解説しているんですが
画風がなんというか……
画風がなんというか……
あまり工夫せずにいっちゃいますと
あまり工夫せずにいっちゃいますと
絵の得意な職員に描かせたんじゃないかな……という感じの絵となっております
絵の得意な職員に描かせたんじゃないかな……という感じの絵となっております
絵のテイストがちょいちょい変わっているのも気になるところ
絵のテイストがちょいちょい変わっているのも気になるところ
そして問題の老化シーン。なぜかいきなりタッチがディズニー風に
そして問題の老化シーン。なぜかいきなりタッチがディズニー風に
こちらもまた随分とタッチが違いますが……
こちらもまた随分とタッチが違いますが……
80年代『週刊少年サンデー』風なイケメン浦島太郎
80年代『週刊少年サンデー』風なイケメン浦島太郎
乙姫様たちも、ちょい昔の美少女漫画風
乙姫様たちも、ちょい昔の美少女漫画風
もちろんイラストだけではなく、立体物もまだまだ展示されているぞ。
ほい乙姫様(たぶん)
ほい乙姫様(たぶん)
従者らしき人の顔が、例のごとくいい味わいを……
従者らしき人の顔が、例のごとくいい味わいを……
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そして、こんなに気になる像がズーンと鎮座召しているのに、みんな海に夢中でまったく気にも留めていないご様子。

海なんてどこで見たって一緒じゃん。でも龍宮城はここでしか楽しめないんだよ、もっと船内に目を向けようよッ!
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さて、いくら夢の世界・龍宮城とはいえ船は船。若干世界観は崩れちゃうものの、ちゃんと浮き輪を設置するなどの安全対策は万全だ。
「龍宮城 救命・消火設備及び脱出経路図」
「龍宮城 救命・消火設備及び脱出経路図」
脱出経路図がちゃんと龍宮城になっているのも味わい深い……。

しかし、なんらかの事故が起こって万一この船が沈みそうになったとしても、助けにきた人たちが「ああ、この人たちは本当の龍宮城に帰っていくのだな」とか思って救助が遅れたりしないかなぁ……しないか。
外に出る扉の上にもこんな小ネタが
外に出る扉の上にもこんな小ネタが
それではつづいて、屋上デッキに上ってみましょう。
外に出ると、船の周りをカモメがビュンビュン飛び交っていてビビリました
外に出ると、船の周りをカモメがビュンビュン飛び交っていてビビリました
余談だけど、この手のスポットを訪れた時にボクが必ずチェックする場所がトイレ。なぜなら、男女トイレを識別するマークに工夫が凝らされていることが多いからだ。

たとえば忍者系のスポットだったら忍者とくノ一になってたり、チョンマゲ系スポットだったら殿と姫になってたり……。となると龍宮城の場合は浦島太郎と乙姫様かな、やっぱ。などと思いながらトイレに向かったところ。
なぜ洋風……?
なぜ洋風……?
手すりにはこんなガラスが。鯛やヒラメの舞い踊り……ってのは聞いたことがありますが、龍宮城にはエンゼルフィッシュもいたんですかね?
手すりにはこんなガラスが。鯛やヒラメの舞い踊り……ってのは聞いたことがありますが、龍宮城にはエンゼルフィッシュもいたんですかね?
そんなこんなで屋上デッキにやって来ましたよ。
あれは……?
あれは……?
浦島太郎ーッ!(老化後)
浦島太郎ーッ!(老化後)
な……なんちゅう顔してはるんや、浦島はん!
な……なんちゅう顔してはるんや、浦島はん!
まあ、浦島太郎の世界を再現するに当たって避けては通れない場面ではあるけどね。それにしても、なんちゅうイイ顔……。
さっきのイケメンが
さっきのイケメンが
一瞬にしてこんなことになっちゃったとしたら、そりゃあショックでしょうよ
一瞬にしてこんなことになっちゃったとしたら、そりゃあショックでしょうよ
そして、衝撃的な出来事にボーゼンとする老人・浦島太郎の見つめる先には……
そして、衝撃的な出来事にボーゼンとする老人・浦島太郎の見つめる先には……
浦島太郎の数倍はあろうかという超・巨大な乙姫様が!
浦島太郎の数倍はあろうかという超・巨大な乙姫様が!
こんな場面、原作にはなかったハズだけど……。この光景を見ちゃうと、悲惨エンディングの意味合いもちょっと変わってきちゃうでしょ。明らかに乙姫様の陰謀だよ!
もう、老人と化した浦島太郎をあざ笑っているようにしか見えない!
もう、老人と化した浦島太郎をあざ笑っているようにしか見えない!
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帰ってから調べたところ、浦島太郎の舞台とされるのは京都府の丹後半島あたり、もしくは神奈川県の横浜市神奈川区あたりという説があるらしいけど、三重県にはカスッてもいなかったですな。

ホントに全然関係ないのに作っちゃったのね、龍宮城……。

理由なんていらない! もっと作って、こういうの

なんの縁もないのに「よっしゃ、ド派手な遊覧船作ったろか!」という気合い一発でこんな龍宮城を作ってしまったパワーに唖然! やっぱり理由があるからやるんじゃなくて、「理由はないけど、でもやるんだよ!」っていう、どーしてこうなった系スポットは好きですね。

ただ、あまりに龍宮城がステキ過ぎたので、キレイな鳥羽湾の風景を全く見てませんでした。まあ、また機会があったら行ってみようかなと。それまでに是非、「遊覧船・鬼ヶ島」とか「遊覧船・姥捨て山」とかを作っておいてもらいたいものです。
●遊覧船・龍宮城
三重県鳥羽市鳥羽1-2383-4
【電話番号】0599-25-3147
【出航時間】30分ごと運航(龍宮城以外の船の場合もアリ)
【定休日】不定休
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