特集 2011年12月12日

蜂に花を贈りたい

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いつからか、ウチに蜂が来るようになった。
1983年三重県生まれ、大阪在住の司法書士。
手土産を持参する際は消費期限当日の赤福で受け取る側に過度のプレッシャーを与える。

前の記事:いい風呂の日だ、銭湯フェス

> 個人サイト owariyoshiaki.com

蜂がきた

ごはんを食べていたら窓から蜂が入ってきた。おかずからおかずへ飛び移って色々と調べている。

なんだよ、冷めるじゃん。どっか行けよ。
蜂、キャベツとか超調べるよ。
蜂、キャベツとか超調べるよ。
おかずを調べ終わると部屋の中をグルグル飛んで出て行ったかと思うとまた入ってきたりする。なに、もう、やめて。怖い。やめて。

と、出来るだけ蜂から遠ざかっているといつの間にか蜂はいなくなっていた。、なんだったんだと思っていると、蜂は翌日も来た。そしてその翌日も来た。
トイレのランプとか超入念。
トイレのランプとか超入念。
初めは怖がっていたのだけれど、そう何回も来られると慣れてくる。花もないのに何回もウチに来て、ヒマなのかなと思う。

怖いと思っていたものが怖くないと分かると意外と良いやつに感じる。なんというか、日課、ではないけれど毎日挨拶に来てくれているような感じに思えてきていた。
蜂の写真撮るの難しかった…。
蜂の写真撮るの難しかった…。
それが当たり前になってきた頃、蜂がこなくなった。1日2日は別の所行ってるのかなと思ったが、1週間くらいこなかったので心配になってきた。

気になってミツバチについて調べてみると、寿命が約2ヶ月という事を知った。
お前、汚いコーヒーメーカー調べてる場合じゃないぞ!
お前、汚いコーヒーメーカー調べてる場合じゃないぞ!
2ヶ月…!!

そんなに、そんなに短いのか…。もしかしたら…いや…。

探しに行こうとも思ったがミツバチの行動半径は約2キロもあるらしく、この時住んでいた大阪市浪速区の約3倍の面積。探しきれるわけがない。

蜂に何かしてあげられないか

そんなに貴重な時間を使ってウチに来ていた蜂に何か、何かしてあげられないか。
花屋さんとか来る事ない。
花屋さんとか来る事ない。
ならばやはり花だろう。また来るか、来てくれるか分からないけれど、来てくれた時に花を用意して待っていたい。

今までずっと無駄足だった、ウチに来ていたという事を有意義な事にして欲しい。
蜂に贈る花。
蜂に贈る花。
そう思って花を買いに行った。蜂、どんな花が好きかなぁ…。とか思いながら花を選んだ。

女性にもプレゼントした事のない花束を初めてプレゼントするのは蜂。女性も主食が花と言っておけばプレゼントに花束を貰える確率が上がると思う。
蜂よ、来い。
蜂よ、来い。
花を生けて蜂を待つ。来い、来い。今ならあるから。花があるから。

待つ事しか出来ない事がもどかしい。来てくれていた時に邪険にしていた事を後悔する。
早く来いよ。
早く来いよ。
信じて待つも、やはり悪い事を想像してしまう。初めて蜂が来た時に僕はツイッターにつぶやいていたので調べてみるとその時からそろそろ2ヶ月。
雨の日でも少し隙間を空けて待っている。
雨の日でも少し隙間を空けて待っている。
来ないのか。失ってみて初めて分かるとかいうベタな事を言い始めるなきゃいけないのか。ああぁ、と、思っていたら。

蜂が来た

もっと早く花を贈ろうとするべきだったな…そんな事を思っていると、ブーンと窓の外から何かが飛んできた。蜂だ!!
行かないでッ!!
行かないでッ!!
おぉ、生きていたのか!と、思うやいなや、すぐに飛び去ってしまった。えっ。
すでに枯れていた。
すでに枯れていた。
折角花を用意していたのに。と思ったがすでに花は枯れていた。だがそれ以上に感じる違和感。蜂が、なんだか小さくなっていた…!?

気のせいだろうか、ちょっとしかいなかったので自信はない。とりあえずまた花を買ってこよう。
鉢植えの方が長持ちするかなと思って。
鉢植えの方が長持ちするかなと思って。
今度は切り花ではなく鉢植えのお花を買ってきた。長持ちしそうだし、蜂によって受粉して種が出来たら嬉しいから。

そしてこの花を買ってからはチョコチョコと蜂がきた。来るんだけれども、本当に一瞬だけ部屋に入ってすぐ出て行く。

やはり小さいし前とは全く違う行動を取る。どう考えてもこれは違う個体だ。蜂にも絶対性格ってあるぞ。という位、明らかに違う。
きたッ!って思ったらハエだったりした。
きたッ!って思ったらハエだったりした。
無いエサを探し続けた前の蜂とエサがあるのにささっと出て行っちゃう今の蜂。なんだか通ずる様な気がするバカさ。同じ巣から来ているとしたらこの2匹の蜂は兄弟だ。

今の蜂もそっけないけれど、だからこそかまいたくなる。兄弟の分までやっぱりエサを持って帰って貰いたい。
と、思ってる内にまた枯らした。
と、思ってる内にまた枯らした。

蜂との別れ

と、そうこうしているうちに部屋を引っ越す事になった。事になったというか自分で決めたのだけれど、これはもう蜂との確定的なお別れだ。蜂がどうこうでなく僕がお別れだ。

なので引っ越す前にどうしても花を贈りたい。蜜を持っていって欲しい。

と、いう事で当サイトライターで生き物に詳しい平坂さんに相談してみると。

・マメ科の花はミツバチに人気。
・蜂は視覚でエサを探している。

という事を教えていただいた。

そうか、視覚か。今までの花は目立たなかったから蜂が気付かなかったのかもしれない。
花どーん
花どーん
なので花をいっぱい買ってきた。とはいってもいっぱい買うほどお金が無いので、本物の花の周りを造花で飾り立てた。あと、豆科の花ってよく分からなかったのでデカイの買った。

造花で「花がある」という事に気付かせ、エサを採取しようとしたら造花を撤収し本物の花に向かわせる作戦だ。
乱雑ですなぁ。
乱雑ですなぁ。
さぁ来い、蜂よ来い。ここしばらくは寒くて窓を開けていられなかったが、今は全開で迎え入れる。来い。俺がいなくなる前に来い。
荒れる部屋
荒れる部屋
と、来る事を願いながらも引っ越しの準備を進める。自ら別れへ歩を進める。
あとは運ぶだけ。
あとは運ぶだけ。
ついに引っ越し当日、まだ蜂はきていない。僕は蜜をあげられていない。今日が最後、きて欲しい。花があるんだから蜜を持って帰って欲しい。
日が、暮れていきますね。
日が、暮れていきますね。
待てども待てども蜂はこない。来る事の多かった12時から15時までの時間はもう過ぎた。蜂が来ない。そして引っ越し業者も来ない。
来て、くださいよ…。
来て、くださいよ…。
本来ならばすでに引っ越しが終わっているかも知れない時間になったが、前の引っ越しが長引いて引っ越し業者が遅れているそうだ。

蜂と僕の延長戦。残りはあとどのくらいか。
完全に日が暮れた。もう蜂は飛ばない。
完全に日が暮れた。もう蜂は飛ばない。
と、最後まで信じて待っていたが、結局蜂は来なかった。

少し寂しいけれども、何かとの関係性というのは急に繕ってもダメで、普段からの積み重ねなんだろうなと思った。蜂に教えられた。
引っ越し屋さん手際よくて凄い。
引っ越し屋さん手際よくて凄い。
今度この部屋に住む人が蜂に優しければ良いな、もしくは新居まで来い、蜂。

家具が無くなると部屋の広さにビックリするよね。
家具が無くなると部屋の広さにビックリするよね。
初めて蜂がきた時は嫌だったのに、慣れてくると少し可愛く思えてきた。まさかこんな変化が起こるとは思わなかった。

養蜂場のおっさんが「刺さないから蜂に触ってみな」って言ってるのを「刺す刺さないじゃなくて、まず虫に触りたくない」って思っていたが、今ならおっさんの気持ちが分かる。

やなヤツ扱いされてるけれど、実際は良いやつなんだよ!そういう事を言いたいんだろう。誤解を解きたかったんだよね。わかるよおっさん。
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