特集 2011年10月27日

何も起こらない人生ゲームを作る

プラスでもマイナスでもないふつうのイベントが目白押し
プラスでもマイナスでもないふつうのイベントが目白押し
先日、押入れの奥に人生ゲームが眠っているのを見つけた。

懐かしい気持ちでボードを広げてみると、「ピカソの絵を買う」「油田発見」「冷凍睡眠」のマスが。そんな出来事は僕の人生にはない。多くの人の人生にもない。

これは放っておいてはいられない。もっと身の丈にあった、ふつうのイベントしか起こらないふつうの人生ゲームを作りたい。
1986年埼玉生まれ、埼玉育ち。大学ではコミュニケーション論を学ぶ。しかし社会に出るためのコミュニケーション力は養えず悲しむ。インドに行ったことがある。NHKのドラマに出たことがある(エキストラで)。(動画インタビュー)

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人生ゲーム懐古

押入の奥から出てきた人生ゲームは僕が小学生のときに買ったものなので、15年くらい前の版になるだろうか。

買った後、高校生のときに謎の盛り上がりを見せた。僕はたいてい銀行の役を買って出て、資産をちょろまかすことで常勝無敗を誇っていた記憶がある。

それはそれとして、見ていて懐かしい気持ちになる。
あと進むマスの数もちょろまかしていた。
あと進むマスの数もちょろまかしていた。

そんな人生じゃない

誰もが知っている人生ゲームではあるが、あらためて見ると「そんなことあるか!」というマスがけっこうある。

迷子の宇宙人に親切にしたり、沈没船を発見したり、そんな数奇な人生を巡る人はなかなかいないだろう。(個人的には、コースによってはすんなりサラリーマンになれたりするのもおかしいと思う。)

そんなマス、僕の人生にはないのだ。
スタートして2マス目がこれだ
スタートして2マス目がこれだ
探してもいない沈没船が見つかることがあるか
探してもいない沈没船が見つかることがあるか
ふつうの人の人生をすごろく風にしたら、多額のお金をもらったり失ったりするマスだけではないはずだ。

プラスでもマイナスでもなく、価値判断さえできないような些細なできごとの連続が人生である。そういうふつうな人生ゲームを作ろう。

冒頭の画像で既にお分かりの通り、手描きである。
まずコース選び。右のほうがふつうっぽいので右にした
まずコース選び。右のほうがふつうっぽいので右にした

ふつうマスを考えよう

ごくありふれたふつうの出来事、けどすごろくのマスになるようなイベントってなんだろうか。考えてみよう。

「おなかがすいたからカレーを食べる。」
「久々にぐっすり寝た。」

いや、あまりに日常的すぎる。もう少し偶発的なイベント感が欲しい。ふつう、だけどイベント。なんだそれは。
はやくも自分が何をしてるのかわからなくなってきた。
はやくも自分が何をしてるのかわからなくなってきた。
ニオイの原因を一発で当てる

辺りに漂ういつもと違うニオイ。クンクン、勘が自然に働く。ニオイの正体、それはお前だ!アタリ!

‥‥だからどうしたということでもない。地味過ぎる。ふつう。でも個人的にはイベント感がある。マスに採用だ。
ニオイの原因を見事言い当てる筆者(イメージ)
ニオイの原因を見事言い当てる筆者(イメージ)
テレビがホカホカなことに気がつく

テレビは観て楽しむものだが、ふと掌を乗っけてみるとこれまた温かい。そして程よい温度。

これは発見だ。しかし誰かに教えてあげても、テレビをこんな風に使う人はいない。よくも悪くもない発見。むしろこの場合、事実の言い切りにしてしまってもいいかもしれない。つまり

テレビがホカホカだ

となる。これもマスに採用しよう。
癒される温度だと思う。
癒される温度だと思う。

プラスもマイナスもないマス

「ふつう」「何も起こってない」で考えるとわからなくなってきた。ではプラスマイナスゼロで考えるとどうだろうか。例えば、

コロッケが道に落ちてる

コロッケはおいしい、つまりプラスだ。でも道に落ちていたらダメだ。そこで差し引きゼロになる。

もしかしたらそれは珍しいことではあるかもしれない。けれども、人生ゲームのマスにあるような何万ドルにも値する体験でもないだろう。まあ、よし。
イメージ画像。もったいないからパックのまま道においてみた。
イメージ画像。もったいないからパックのまま道においてみた。
あるいは、こういうのはどうだろう。

毒まんじゅうは売り切れだった

人生ゲームには対戦相手に仕返しするマスがあるが、現実にはきっとまんじゅうに毒を入れたりするのだろう。本当に毒まんじゅうを仕掛けるのはダメだけど、買おうとしたら売り切れなのでセーフ。マイナスかけるゼロはゼロだ。

考えすぎた挙句たどり着いた答えなので、少しフィクション性が高くなってしまった。でも、よし。
売ってたらまずいけど売り切れてたら大丈夫。
売ってたらまずいけど売り切れてたら大丈夫。

完成

あれこれ考えているうちに何も起きてないマスの案が50個ほどできたので、コースに書きこんでみる。人生ゲームから波乱万丈を抜き去ることが出来たはずなのだが‥‥。

ちなみにふつうについて考え過ぎたせいで、タイトルが人生ゲームから離れて「ふつうすごろく」になっている。
ゴールは人生ゲームの「億万長者の土地」をリスペクト。
ゴールは人生ゲームの「億万長者の土地」をリスペクト。
ペンで色をつけたら小学生の壁新聞みたいになってしまった。スタートが山でゴールが都市(ピラミッドはなんとなく描いてしまった)というも、進歩主義しか知らない小学生っぽい。

これはちょっと(見た目が)恥ずかしい出来なんじゃないか。どうにかしようと思い、バックアップのデータを印刷して、改めて白黒バージョンを作ってみた。シックで大人っぽくなるかと思ったのだ。

白黒バージョンも

森の動物に狂気が増してしまった。
森の動物に狂気が増してしまった。
小学生の壁新聞から小学生のノートになった(レベル落ちた)。こういうの昔描いたことがある。ふつうって小学生のことだったのか。いや、それも違う気がする。期せずして進歩のなさを露呈してしまったようだ。

小学生から1マスも進んでいない

すごろくのマスの中身自体は一生懸命考えたので満足しているが、出来上がったのが小学生の壁新聞でがっかりである。

試しにサイコロを振って遊んでみると、なんの盛り上がりも見せずに終わってしまった。終りなき日常ですね。
印刷できるようなファイルも用意しました。ぜひプレイして人生の侘び寂びみたいなものを感じ取ってください。(カラー、モノクロ)
印刷できるようなファイルも用意しました。ぜひプレイして人生の侘び寂びみたいなものを感じ取ってください。(カラーモノクロ
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