特集 2011年10月24日

金魚の名産地では道ばたに金魚が泳いでいる

奈良県で金魚すくいをしてきました。
奈良県で金魚すくいをしてきました。
金魚の名産地、奈良県の大和郡山市では道ばたの側溝とかに金魚が泳いでいるらしい。

いやー、それはウソだろう。流石にそれは無いわー。と思って行ってみたら、本当に泳いでいた。凄いぞ金魚の名産地。
1983年三重県生まれ、大阪在住の司法書士。
手土産を持参する際は消費期限当日の赤福で受け取る側に過度のプレッシャーを与える。

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> 個人サイト owariyoshiaki.com

これはあるかもしれないな

金魚の名産地って言ってもそんな金魚で溢れてるわけでもなし、道沿いにいたりするわけないじゃん。

そう思ったが、以前、玉葱産地の淡路島の海には玉葱が浮いている。と聞いて行ってみたら本当に浮いていたという事があった。

今回も、もしかして…と思ってとりあえず地図を調べてみたら。
なんだこれ、池?もしかして、全部金魚のための池?こんなに!?

まさかこんな状況だとは。これならば、その辺に金魚がいるというのも分かる気がする…。と、いう事は…
金魚すくいし放題なのでは!!
金魚すくいし放題なのでは!!
と、いう事でポイ(金魚すくいの網)を持って大和郡山市に向かった。

そんなに金魚じゃない

大阪から1時間ちょっと。意外と近い。
大阪から1時間ちょっと。意外と近い。
ウキウキしながら到着した大和郡山市、実際に来てみると意外と普通の駅で金魚の気配は無し。ポイを持って歩いている人もいない。
金魚じゃないんだ、ふれあいの街なんだ。
金魚じゃないんだ、ふれあいの街なんだ。
地図で見るとほぼ金魚が支配していたが、実際は人が文化的な生活を営んでいた。まぁそうか、大阪でもお好み焼きのコテを持って歩いている人はいないか。
銭湯がカッコ良かった。
銭湯がカッコ良かった。
とはいうものの、予想以上に金魚要素の無い町並みに不安を覚えつつ、地図上で池だらけだった辺りに向かう。

金魚の王国だ

おぉ、見渡す限りに池!
おぉ、見渡す限りに池!
実際は全然金魚とかいなかったらどうしよう。と思いつつ向かうと、一気に景色が変わり、見渡す限りに池が広がった。
でも、金魚の気配は無い。
でも、金魚の気配は無い。
おぉ!ホントに池なんだ。地図で見た妙な風景が実際に目の前に広がっているのを見ると嬉しくなったが、金魚の姿はない。

池がほとんど緑色になっちゃってるし、もう使ってないのかな。季節ハズレだったりするのかな。と、思ったが、違う!!
この点々、全部金魚!!
この点々、全部金魚!!
よく見ると何か動いている、近づいて見ると全部金魚!金魚だらけ!!うおおおお、ちょっと怖いくらいに金魚だらけ。

これ、ここにこれだけいるって事は、見渡す限りにこれだけの金魚がいるって事だよな…
ここ全部に、あの金魚たちが…!?
ここ全部に、あの金魚たちが…!?
甘く見てた…。これ、絶対人口よりも金魚の方が多い。金魚が名産でーす。じゃなく、金魚の国に住まわせてもらってますって感じだ。

これ、いるわ、いるに違いないわ

どこ見ても金魚、溢れんばかりの金魚。ここに来て確信する、これは道ばたの側溝で金魚泳いでるはずだ。むしろ、泳いでないとおかしい。
側溝の方が水が透き通ってる。
側溝の方が水が透き通ってる。
遮る物はこれだけだぜ。
遮る物はこれだけだぜ。
これだけの金魚、溢れんばかりというか、溢れてると思う。溢れかえって側溝にいても全然不思議じゃない。

側溝と金魚池を隔てる壁の高さが5センチ位。こんなの雨降ったらすぐ繋がるだろう。
さがせっ!
さがせっ!
よし、金魚、すくってやる!!
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すくって良いのか…?

いたらすぐにすくうつもりでポイを片手に歩き回る。
金魚いないかなー。
金魚いないかなー。
溝を見て回るも、なかなかいない。と、今気付いたが金魚養殖池の周りでポイ持って歩いてるのは、どう考えても泥棒ではないか。
これくらいの泥棒感。(“泥棒”になろうより)
これくらいの泥棒感。(“泥棒”になろうより)
もし金魚盗難事件が起こっていたとしたら真っ先に犯人だと疑われそうな、シュークリームが無くなった横で口の横にカスタード付けてる位の状況だ。

そうか、これ、見つかっても勝手にすくって良いのだろうか。

すくって良いか聞いてみよう

泳ぐ図鑑…?
泳ぐ図鑑…?
悩みつつも金魚を探しつつ歩いていると、金魚資料館という所が見えてきた。おぉ、ここで話を聞いてみよう。
金魚についての資料がいっぱい。
金魚についての資料がいっぱい。
秘伝の書みたいなのがあってカッコイイ。
秘伝の書みたいなのがあってカッコイイ。
ふらーっと入ってみると、金魚についての色んな資料が有ったり、色んな種類の金魚が展示されてたりする。しかも入場無料、凄い。
色んな金魚もいっぱいいる。
色んな金魚もいっぱいいる。
楽しく見回っていたが、金魚について聞けそうな人は見あたらない。

小学生自由

誰かいないかなーと思っていたら小学生が社会科見学っぽいので金魚屋さんに質問していた。
小学生「心配事はなんですか?」おっちゃん「景気の悪化やな」
小学生「心配事はなんですか?」おっちゃん「景気の悪化やな」
隅っこの方で一緒に聞いていたけれど面白い。

小学生「仕事をしていて、どうですか?」

アバウト!超ぼんやりしてる!なにっ、どうって!?

先生「この仕事の喜びはなんですか?」

おぉ、凄い、先生のフォロー力凄い!教育に知識だけじゃなくトーク力も必要!

金魚屋さん「ウチの金魚が金魚すくいで網をいっぱい破るって聞いた時はやったな!って思うな」

あ、そうなんだ。そういうの嬉しいんだ。

金魚知識も面白いし、子供の奔放さ、先生の軌道修正力とか社会科見学の質疑応答は結構な見応えだ。
最近の小学生は授業でデジカメ使うんだぜ…!?
最近の小学生は授業でデジカメ使うんだぜ…!?
質問が終わって、わちゃわちゃしてる小学生に道の横で金魚見た事ある?と聞いてみると。

「ある!」
「おるわけないやん!」
「見た事ある!!」
「ない!」

と、大体半々位で見た事あるという答え。その中で一人の女の子は雨の日に道路の上を金魚が泳いでいて、カメが降ってきた事があるらしい。きっとその日は金魚注意報が出ていただろう。

金魚すくっても大丈夫っぽい

珍しい金魚もいっぱい売ってた。
珍しい金魚もいっぱい売ってた。
そうだ、そういえば、側溝にいる金魚をすくっても良いのか聞きに来たんだ。ので金魚屋さんに聞いてみた。

僕「すみません、外の池って、雨降ったら金魚流れていったりしないんですか?」

金魚屋さん「あぁ、流れてっちゃいますね。そことかもたまに流れてますよ」
そこ
そこ
僕「えっ、水位調整とかしないんですか?」

金魚屋さん「あぁ、基本的には出来ないですね」

僕「えっ、じゃあ、流れちゃったヤツって、すくったりしても大丈夫ですか?」

金魚屋さん「え、あ、まぁ、良いんじゃないですか」

と、いう感じ。調べてみると逃げちゃった魚とかは法律上も獲った人の物になるらしい。これで心置きなく金魚すくいが出来るぜ!気合いを入れて探してみよう。
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金魚いたっ!!

これはやっぱり金魚いるし、すくえるぞ。俄然高まる金魚すくい熱。絶対に見つけてやるぞ!と意気込んで再出発。
至って普通の家の横。
至って普通の家の横。
池の辺りの方がいるだろうなと、向かいつつ、水があれば覗いて回る。民家の横の溝を見てみたら、赤い影がッ!
いたっ!ホントにいた!
いたっ!ホントにいた!
えっ、金魚!?家の横の側溝に金魚。凄い、いた、本当にいた!見た事ないって言ってた地元の小学生、ついそこにいるぞ。もっとお外で遊べ。

うぉー、凄い!金魚が泳いでいると側溝でもなんだか優雅な感じがする。
草をポキポキ折ってるおじいちゃん。
草をポキポキ折ってるおじいちゃん。
でもこれって、ホントに野生?のものなのだろうか。家の横におじいちゃんがいたので聞いてみた。

僕「すみませーん、この金魚って、育ててるんですかー?」

おじいちゃん「いやー、どっかから流れてきたんやー」

うお、やっぱり!やっぱり大和郡山では金魚は勝手に道ばたで泳いでたりするものなんだ…!!

よしっ、じゃあ、ついに金魚すくいを…!!

おじいちゃん「かわいいやろー!」

!!

お、おじいちゃん、家の前の金魚をかわいがってる!!こ、これは、無理だ、これはすくえない…他の所を探そう…

結構いる

折角見つけたが心情的に出来なかった金魚すくい、だが、いる事は分かった。金魚、すくうぞ!!
こういう所がポイント
こういう所がポイント
養殖池やさっきいた所を見るに、金魚は流れが穏やかな所にいるようだ。なので、側溝がせき止められている様な所がポイントだ。
って、いた!!
って、いた!!
ポイントだ!とか言ったらホントにいた。写真に納められなかったが、他にも数匹いた。

よしっ、やるぞ!!!

野生の金魚超手強い

よっしゃ!
よっしゃ!
ポイを携えて、ついに戦闘開始!

が、全く相手にならない。金魚、速い。速いし、それ以上に物陰とか手の届かない所に逃げるのでどうしようも無い。
この動きを捕らえられるか…?
ノールールになって初めて知る、通常の金魚すくいに置ける人間本位のルール。

空間が区切られ、遮蔽物が全く無く、全てに手が届く所で戦うなんて、金魚にとっちゃ飛車角落ちも良い所だ。
ちょ、これ、無理ッスね。
ちょ、これ、無理ッスね。
金魚はすぐに全員見えない所に隠れてしまい、手も足も出せなくなった。自然の中で人間は、あまりにも無力だ(諦めた)。

最高の条件が整った

実際にすくってみようとすると金魚すくいにはかなり厳しい条件が整っていなければならない事が分かった。

・浅い
・物陰が無い
・上からふさがれてない
・金魚がいる
・水が汚いと嫌だ

金魚さえいれば出来ると思っていた金魚すくいの難しさを知り、これは無理なのでは無いかという思いが頭をよぎりはじめたその時。
あっ、凄くすくいやすそうな一団が。
あっ、凄くすくいやすそうな一団が。
あった。凄くすくいやすそうな環境が整っていた。なにこれ、凄い。これなら、これならいける、が、側溝が深い。届かない。
行くしか、ない!
行くしか、ない!
おそらくは最高の環境、これ以上は望むべくも無いと思う。ちょっと、予想外ではあるが、行くしかない。
金魚すくいというか、姿勢的には、狩り。
金魚すくいというか、姿勢的には、狩り。
10月なのに、暖かい日で本当に良かった。よしっ、やるぞ!!
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金魚超速い

遂に金魚との真剣勝負の開始だ(道ばたで)。ハッキリ言って僕は金魚すくいは上手くない。けれどここまで来たんだからどうにかすくいたい。
一瞬でどっか行く。
一瞬でどっか行く。
意を決し、ポイを握りしめて恐る恐る近づく。そして、いざ!とポイを水に入れた時の金魚の速さよ!凄い、速いというか、消える。

これは、厳しい戦いになるぞ…

一匹に狙いを定めろ!

この金魚の一団は10匹くらい。すくおうとすると目移りして狙いが定まらない。すると知らない間に目の前には金魚が一匹もいなくなっている。狙いを定めるのが重要だ。
よし、勝負だ!!
よし、勝負だ!!
ほっ!
ほっ!
あっ、逃げられた…。
あっ、逃げられた…。
まだだっ、粘れっ!
まだだっ、粘れっ!
うおおおおおおっ、きたあああああ!!
うおおおおおおっ、きたあああああ!!
あああっ…
あああっ…
やぶれたっ…。
やぶれたっ…。
ああっ、惜しかった。惜しかった、ポイの上にはきた、が、腕を伸ばしきっていた為に、上手く腕や手首を使い切れなかった。

座ってすくうだけではなく全身を使う金魚すくい。小手先ではなく体捌きも重要になってくる。深いぞ、金魚すくい。

勝つまでは

破れちまった。
破れちまった。
早速ポイが破れてしまったが、意外と良い所までいけた気がする。
ワシのポイは108式まであるぞ!!(実際は残り99枚)
ワシのポイは108式まであるぞ!!(実際は残り99枚)
もちろんポイはごっそり用意してある。勝つまでやるぞ!!
強者どもが夢の後
強者どもが夢の後
金魚、強い。
金魚、強い。
と、意気込むも次々にやられていくポイ。僕の腕か、野良金魚の強さか、なかなかすくう事が出来ない。でもちょっとは上手くなっている気がするのだ。
ほら、もうちょっとでしょ。

すくえた!!!!

しばらく戦って金魚疲れてきているのか、僕が上手くなってきたのか、徐々に動きを捕らえる事が出来るようになってきた。

そして!
おぉ、きたッ!!
おぉ、きたッ!!
上手いっ!上手いよっ!!
上手いっ!上手いよっ!!
きたぁぁぁ!!!完全にッ、すくったぁぁぁ!!!!
きたぁぁぁ!!!完全にッ、すくったぁぁぁ!!!!
ポチャンッ。
ポチャンッ。
ちゃうねん、ちゃうねん。すくってんねん。これはもう完璧にすくえてんねん。けどな、左手でな、カメラ持ってて、いれられへんねやん?やからな、しゃあないねん。

どうしよう

という事で、写真とかそっちのけでカメラを置いてすくう事に集中したら金魚がすくえた!道ばたで、金魚をすくえた!!プライスレス!!!
遂にッ!
遂にッ!
って、すくったんだけれど、どうしよう。実を言うと、すくえるとは思ってなかった。すくった後の事まで考えてなかった。

水に返してありがとう。でも良いんだけれど、折角すくったんだから、どうにかしたい。探して探してすくえたんだから、結構激しい戦いの果てに、すでに愛着が沸いている。
近くにホームセンターが!!
近くにホームセンターが!!
何かに入れて連れて帰ろうとしたが、手元にはなにも無い。何かないかと調べてみたら、近くにホームセンターが!!走った。

というわけで、幸せに暮らしましたとさ

買ってきた。
買ってきた。
急いで手頃な金魚飼育セットを買ってきた。もう、コイツは連れて帰るしかない!!
一匹では寂しかろうと、仲間を増やした。素手だと超簡単に掴まる。
一匹では寂しかろうと、仲間を増やした。素手だと超簡単に掴まる。
連れて帰るとなると、ここの水のまま連れて行く方が良かろう、と水槽に水をくんだ。
凄く重い。
凄く重い。
すると、凄く重くて、持って帰るのに指が切れるかと思ったし、腕が筋肉痛になったりもしたけれど。
電車で水がこぼれないか心配したりもした
電車で水がこぼれないか心配したりもした
水のおかげか、自然でのびのびと暮らしていたおかげか、とりあえず金魚たちが元気で暮らしているので嬉しい。
元気。
元気。
金魚、可愛い。

いた。金魚の名産地では道ばたに金魚が泳いでいた。
いた。金魚の名産地では道ばたに金魚が泳いでいた。
淡路島では海に玉葱が浮いているのが普通だし、大和郡山では道ばたに金魚が泳いでいるのが当たり前なのだ。

常識、という事から考えるとそれぞれ非常識なのだけれどこの土地においては当たり前。そういう事が不思議で面白いと思います。
猫が金魚狙ってた。
猫が金魚狙ってた。
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