矛盾対決はおもしろい
それは、ことわざの「矛盾」さながら、お互いが最強を自負するもの同士を戦わせるという内容の番組だった。
冒頭で述べた「最強金属」対「最強ドリル」など様々な矛盾対決を繰り広げるエンターテイメントである。
矛(ほこ)
盾(たて)
あれは実力伯仲のライバル同士がガチンコで対決しているからおもしろいんだろう。
大人になるとだんだん人と争うことを避けるようになり、極力平穏な道を選びがちになるが、あの番組を見るとそんなふぬけた心にカツが入るのだ。
僕も戦いたい。ガチンコな名勝負を繰り広げたい。ということで、日頃から気になっているアレコレを対決形式で検証してみることにした。
まず最初に検証したいのは「“ひざ”と“ひじ”はどちらが強いのか」である。
ダイヤモンドも砕き割る鋼鉄のひじと
鋼鉄の塊もぶち壊す黄金のひざ
いや、ゴメンナサイ
最初に言っておくが筆者はムエタイの達人とかではもちろんなく、身も心もかよわいただのおじさんである。
しかし、そんな普通のおじさんの「ひじ」と「ひざ」が戦ったらいったいどうなってしまうのか興味はないだろうか。
まあ、おそらく興味ないに違いないが、ケンカに巻き込まれた時のため、より強力な武器がどちらなのか知っておくのは無駄じゃない。しかもお互いの実力は底辺の部分で拮抗しているのでいい勝負にはなりそう。
「どんな盾も突き抜く矛」と「どんな矛も防ぐ盾」の戦いは魅力的だが、何も壊せないもの同士の戦いもそれはそれでエキサイティングだと思う。
というわけで第一回戦「ひじ」対「ひざ」
ようするに「エルボーVSひざ蹴り」ですね
!!!
上の写真、見ようによっては小島よしお。だが、本人はいたって本気である。
メタボが功を奏して致命傷は避けられた(腹が邪魔で体が曲がらないから)が、ひじ・ひざともに電流が走り、しばらく立てなくなるほどのダメージを負った。
結果は「どちらも壊れないけど、そこそこ痛い」だ。
ひざの勝ち
でも一応白黒つけるとすれば、どちらかというとひじのほうがダメージがでかい。僕はエルボーよりひざ蹴りのほうが得意みたいなので、喧嘩の時はひざを使うことにします。
痛い…
こういう茶番があと3つ続きます
本家のようなエンターテイメントを期待していた人には申し訳ないが、今回はこんな小規模な対決をあと4番見てもらうことになるので、これから読み進める人は覚悟してください。
二回戦「くさや」VS「香水」
次なる対決の材料を仕入れるためにやってきたのは東京都港区の竹芝桟橋。
竹芝桟橋からは八丈島や新島など、伊豆七島へ向かう船が発着していて、客船ターミナルにはレストランや売店もある。
島の特産品が買えるアンテナショップ「東京愛らんど」
中でも一番の名物といえば「くさや」
瓶詰のほぐし身を購入
続いては新橋のドラッグストアで
素敵な香りのフレグランスを購入
匂い対決
そう、第二戦は「くさや」VS「香水」。
くさやといえば、その旨さと引き換えに凶悪な匂いを放つことで知られる魚の干物。
かつて「おいしいくさやができるまで」という記事の中で、編集部の安藤さんはくさやの匂いを「うんこ」と評している。
対するはその芳しい香りで女子を引き付けるモテアイテム「香水」。
「くさい」と「芳しい」を同時に嗅いだら、果たしてどちらの匂いが勝るのか。
白黒ハッキリさせてみようではないか。
「くさい」と「芳しい」のエース対決
ルールは簡単。
鼻の左の穴で「くさや」の匂いを右の穴で「香水」の匂いを同時に嗅ぎ、「くさい」と感じれば「くさや」の勝ち、「芳しい」と感じれば「香水」の勝ちである。
赤コーナー「くさや」
青コーナー「香水」
もうこの時点で心なしかくさい。さすがだ
まだ開封していないのに早くもくさい匂いが漏れ出している「くさや」。
瓶を開けて嗅いでみるとそれはそれは強烈なスメルが鼻をついた。
噂には聞いていたが、これほどとは。
おほー
まさに「絶対王者」と呼ぶにふさわしい臭さ。
「香水ふぜいが10年早いわ!」。
そんな声が聞こえてきそうなほど、圧倒的な存在感を放っている。
これは早くも勝負アリか。
ビニールで密封し
ストローで嗅ぐ穴を作る
右がくさや、左は香水を染み込ませたティッシュ
精神統一
いざ!
おうっ!
香水の勝ち
ストローで吸った瞬間、刺すような香水の香りが鼻腔に充満した。
頭がクラクラして倒れそうな破壊力だ。
くさやの圧勝かと思いきや、ストロー内で圧縮された香水の匂いはくさやを完全に凌駕するものだった。
「くさやレベルの加齢臭もおまかせ」。そんなキャッチフレーズで売りだしてはどうかと思う。
まあ、これはこれで鼻をもぎとりたくなるほどに不快であるが。
しばらく頭がクラクラしました
三回戦「ふがし」VS「唾液」
続いての戦いは「ふがし」VS「唾液」。
口の中がパサつく食べ物No.1の「ふがし」に人間の唾液はどこまで通用するかを検証する対決だ。
ふがし
唾液増量アイテムとして梅干しを使う
唾液は偉大だ
人間が物を食べる時、唾液は欠かせないものだ。Wikipediaには唾液の役割についてこう書かれている。
「空腹時に食物を見、これを咀嚼した時、粘り気の少ない漿液性の唾液が大量分泌され、これにより食物は湿らされる。このことにより粉砕しやすくなり、食塊の形成を容易にする」
そんな唾液の天敵といえる食べ物といえばふがしではないだろうか。
その圧倒的なパサパサ感で口の中の水分を奪い、唾液の分泌という人間の機能を阻害するふがし。
砂漠で食べたくない食品No.1である。
ということで三回戦「ふがし」VS「唾液(梅干し)」
まずはノーマルな「唾液力(だえきりょく)」をはかるため、梅干しなしでいってみよう。
想像以上のパサパサ感
水なしだととても一本食えない
駄目だ。とても食えない。
あまりにも圧倒的な吸収力。丸腰の唾液力ではとても太刀打ちできない。
梅干しでドーピング
というわけで、梅干しを投入。
見ているだけで唾液が分泌される食品No.1の梅干しと、口の中がパサつく食品No.1のふがし。
果たしてどちらが勝つんだろう。
唾液分泌中
梅干しすごい。見てるだけでじゅわーっと唾液が溢れてくる。これが人間の本能か。
これならふがしに勝てるかも。
梅干しを凝視しながら
ふがしを食べる
ふがしの吸収力たるや…
駄目だ。一口ほおばっただけで、一瞬にして全ての唾液をもっていかれた。
ふがしの吸収力ハンパじゃない。
僕もこんな吸収力のある人間になりたいものである。ふがしから思わず人生を学んでしまうほどの圧倒的な実力だ。
唾液をいくら出してもぜんぜん追いつかない
ふがしの勝ち
三回戦はふがしの圧勝。
梅干しで増量された唾液をも根こそぎ奪う圧倒的な勝利だった。
四回戦「激辛」VS「激甘」
くさやを買った「東京愛らんど」で気になる商品があった。父島産のトウガラシを使った「からいっしょ」という酢醤油だ。
姉妹品の「からいっす」もある。駄洒落だ
ネーミングセンスに魅かれて思わず購入した「からいっしょ」だが、せっかくなのでこれも何かと対決させてみたい。
「からいっしょ」はかなり激辛な調味料とのことなので、激甘と戦わせよう。
「からいっしょ」に対抗できる激甘って何だろうか。近所で一番大きいスーパーに行き、店員さんチョイスに委ねることにした。
「この店で一番甘いものをください」
お忙しいところすみません
彼女が選んだ激甘は「はちみつ」。わりとオーソドックスなチョイスだ。
激甘代表「はちみつ」
激辛代表「からいっしょ(唐辛子酢醤油)」
からいっしょの実力
ところでこの「からいっしょ」ってどれだけ辛いんだろうか。ちょっと舐めてみよう。
どれどれ
ひー!!!!!!
こりゃあたまげた。
脳天からしびれるような刺激に、一気に汗が吹き出す。
これまでに食べた調味料の中で1、2を争う辛さである。「からいっしょ」なんて呑気なこと言ってる場合じゃない。
そんなわけで、四回戦「激辛」VS「激甘」対決
これまたルールは簡単。
激辛と激甘をいっしょに食べて最終的にどちらが勝つかという対決だ。
もしかしたら激辛と激甘が調和されてちょうどいい味わいになるかもしれない。
激甘と激辛を食パンにかけて
同時に食べます
えい!
しばらくは、はちみつの甘い味が口の中に広がる。序盤は激甘が優勢だ。
甘くておいしい
!!!
激辛の大行進
甘い幸福が口の中を満たすおだやかな時間はあっという間に過ぎ去り、激辛という名の悪魔がやってきた。辛い!辛い!辛い!
後で調べてわかったことだが、辛さの刺激は舌で直接感じるものではないため、舌で受け取って少し時間が経ってから痛点で感じるものらしい。
ということで、はちみつの甘みがちょうどなくなった頃に激辛の大群がやってきて、口の中でドンチャン騒ぎを始めた。
「激辛」VS「激甘」は「激辛」の圧勝だ。
日頃から気になっていた様々な事象に白黒つけてみた4番勝負。そこから学ぶことも多かった(うんこをもらしても香水があれば大丈夫、など)。
矛盾は矛盾のまま放置したほうが人生うまくいくことも多いが、あえて立ち向かうことで見える真理もあるのだ。
激辛を摂取しすぎるとしばらく動けなくなることも分かった