特集 2011年9月22日

函館と言えばダム公園

歴史ある大学のキャンパス、と言われてもうなづける
歴史ある大学のキャンパス、と言われてもうなづける
函館の観光地と言ったら何を想像するだろうか。

朝市?五稜郭?函館山の夜景?

どれもすばらしいけど、それに勝るとも劣らない観光スポットをご紹介したい。それは、港町函館を文明開化の夜明けから現在まで見守ってきた笹流ダムと、北海道中の名ダムを一度に見てまわることができるダム公園だ。
1974年東京生まれ。最近、史上初と思う「ダムライター」を名乗りはじめましたが特になにも変化はありません。著書に写真集「ダム」「車両基地」など。
(動画インタビュー)

前の記事:でかい駐車場めぐり(つくば編)

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ステキすぎる笹流ダム

笹流ダムは、函館の駅前から車でおよそ20分でたどり着く。近くの道は路線バスも通っているので、レンタカーを借りなくても行くことができる。函館まで行ってダムを見なくても、と思うかも知れないけど、僕に言わせれば函館まで来てここを見ずに帰る方がもったいない!

森の中に開けた、手入れの行き届いた公園に入って行くと、目の前に異国情緒漂う白い壁が姿を現す。
まるでイギリス式庭園の奥に建つ宮殿といった佇まい(てきとうです)
まるでイギリス式庭園の奥に建つ宮殿といった佇まい(てきとうです)
もう、ここは本当にすばらしい景色だ。ダムについて快く思っていない人でも、この眺めにはため息を漏らすのではないかと思う。ダム好き目線からでも、景色の美しさという点では間違いなく日本で五指に入るダムだ。

何がいいとかどこが素敵とか、いちいち説明するのが野暮に思える。
ダムにアレルギーがある人でもここは認めてくれるんじゃないか
ダムにアレルギーがある人でもここは認めてくれるんじゃないか
というか、初見でダムだと思う人の方が少ないと思う
というか、初見でダムだと思う人の方が少ないと思う
目の前の公園もステキだ
目の前の公園もステキだ
笹流ダムは、江戸時代末期に開国した日本が世界に向けて開いた港町のひとつ、函館市の水道をまかなうために造られた。完成したのは1923年(大正12年)で、文明開化から見守ってきた、というのは少々大げさだけど、函館の発展の一翼を担ってきたのは間違いないだろう。

ふつうの人がイメージするダムとはだいぶ違うと思うけど、それもそのはず。バットレス式ダムと言って、現在日本にはここを含めて6基しかない型式だ。
水を塞き止める板を縦の柱と横の梁で支える
水を塞き止める板を縦の柱と横の梁で支える
ダムの両側から遊歩道が伸びていて、ダムの上を通ってぐるっと1周まわってくることができる。
ダムの上はとても細い
ダムの上はとても細い
でも横道にそれるとヒグマ出るらしい
でも横道にそれるとヒグマ出るらしい
旅行ガイドとかに出ているのもあまり見たことがないけど、函館観光の際にはぜひ立ち寄ってもらいたい。

そして、次に向かうはその先にあるダム公園だ。

ステキすぎるダム公園

笹流ダムからさらに車で道を進むと、5分くらいで新中野ダムに行き当たる。新中野ダムも函館の水道水を貯めたり、洪水を防いだりするダムだけど、こちらの見た目は普通のダム。
これ以上近づけないので写真も小さく1枚だけだ
これ以上近づけないので写真も小さく1枚だけだ
新中野ダムは立ち入り禁止であまり詳しく見ることはできないけど、そのすぐ下に割と広い公園がある。

場所は地味だし、ここに来るまでに案内の看板などもないけど、その公園がタダモノではないのだ。
駐車場に車を停めて奥の公園に入ると
駐車場に車を停めて奥の公園に入ると
何とそこは「ダム公園」!
何とそこは「ダム公園」!
ダムの下にあるからダム公園なのか、それとも...?と思って、手入れの行き届いた園内を歩く。
とてもキレイな公園だ
とてもキレイな公園だ
しかし、視界の隅になにか違和感がある。何だろう、ふつう公園にはないものがある気がする...!
違和感の正体
違和感の正体
何かあるなーと思って近づいてみたらミニチュアのダムだった。ミニチュアと言っても高さ1mくらいある。しかもこれ、すぐそばに本物がある新中野ダムそっくりだ!
ダムのミニチュアだ!
ダムのミニチュアだ!
けっこうでかい、そして精巧
けっこうでかい、そして精巧
撮る姿は変態っぽい
撮る姿は変態っぽい
何とここ、園内を流れる人工の小川に、北海道を代表するさまざまな型式のダムのミニチュアが造られているのだ。

こんなに美しい公園にダムのミニチュア。誰がどういう情熱でこの公園を造ったんだろうか。
ミニチュアとは言えかなり立派で貯水池もちゃんとある
ミニチュアとは言えかなり立派で貯水池もちゃんとある
それぞれのミニチュアの横には、モデルとなったダムの解説もあった。それにしても、もっと大きくて有名なダムを差し置いて重力式ダムのモデルが新中野ダムというのは地元特権な気がする。
案内板がこれは新中野ダムと紹介
案内板がこれは新中野ダムと紹介
でもたとえば定山渓ダムとか
でもたとえば定山渓ダムとか
糠平ダムの方が大きいし有名だと思う
糠平ダムの方が大きいし有名だと思う
新中野ダムを超えて先に進むと、ついさっき見たばかりのダムが現れた。実際とは位置関係が逆だけど、あの立派な格子模様は間違いなく笹流ダムだ。
これでこのミニチュアがどれだけ精巧かが分かってもらえると思う
これでこのミニチュアがどれだけ精巧かが分かってもらえると思う
笹流ダムが北海道を代表するダムのひとつということに異論なし。それにしても、特徴的なスリットを模様にせずちゃんと造ってあるあたり、この公園のミニチュアダムには本当にダム愛が感じられる。
ここまで見事に再現されたら文句ない
ここまで見事に再現されたら文句ない
しかも柵とかなくて触ったり登ったりできるのもいいところ
しかも柵とかなくて触ったり登ったりできるのもいいところ
あまりの精巧さ、立派さにもう大興奮である。本物と同じアングルで写真を撮りたくて、地面に頭をつけて撮影してしまう気持ちも分かってもらえるだろうか(たぶん無理)。
本物のように撮りたくて
本物のように撮りたくて
思わず土下座姿勢
思わず土下座姿勢
その先にあるのはかなり立派なアーチダム。北海道でアーチダムと言えば、そう豊平峡ダムである。てっぺんについている放流口の数が違うけど、本物の展望台と同じ位置から眺めたミニチュアは、まごうことなき北海道を代表するアーチダムだった。
ミニチュアとは言え風格が違う気がする
ミニチュアとは言え風格が違う気がする
アーチも見事に再現されている
アーチも見事に再現されている
ゲートの数とかバルブとかキャットウォークとか細かいところはいいんだよ!
ゲートの数とかバルブとかキャットウォークとか細かいところはいいんだよ!
本物の展望台から眺めた豊平峡ダム
本物の展望台から眺めた豊平峡ダム
と同じ位置関係で眺めたミニチュア
と同じ位置関係で眺めたミニチュア
本物の副ダムはアーチしているが
本物の副ダムはアーチしているが
ミニチュアでも忠実に再現!
ミニチュアでも忠実に再現!
すごい。見事な本気っぷり。この公園を造った人は本当にダムの魅力が分かっていて、それを一般人に親しみやすく紹介している。こんな公園が全国のダム密集地帯にあればいいのにと思う。

さらに遡って、ミニチュアダムが建ち並ぶ川のいちばん上流にあったのは、ロックフィルが見事な大雪ダムのミニチュアだった。
石を積んで造るロックフィルダムの特徴を見事に表している
石を積んで造るロックフィルダムの特徴を見事に表している
大雪ダムの写真持っていないので同じ型式の別のダムを
大雪ダムの写真持っていないので同じ型式の別のダムを
ちゃんと表面に石の模様をつけ、上流側もなだらかな斜面が続くこだわりが泣ける
ちゃんと表面に石の模様をつけ、上流側もなだらかな斜面が続くこだわりが泣ける
どうだろう。まさか港町函館がこんなにアツいダム観光地だとは思わなかったのではないだろうか。僕は知らなかった。

函館に行ったら、朝市行って、五稜郭見て、教会とか修道院とか見てまわったあとでいいから、函館山に登る前にぜひ笹流ダムとダム公園も組み込んでください。

本気で造ったダム公園

ダム公園は誰が何の目的で造ったのかが分からない。とにかく本気でダムが好きな人が本気でダムをミニチュアにした公園を造った、ということは分かった。

きっともうすぐ、幼いころからこういう環境で育った、今までとはレベルの違うダム好きが函館から現れるんじゃないかと思っている。楽しみだ。
本当に普通のキレイな公園の中にダムがある
本当に普通のキレイな公園の中にダムがある
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