特集 2011年9月21日

鬼押し出しは鬼推しなのか、見てきた

ぬおーん・・・
ぬおーん・・・
群馬出身者なら一度は行ったことのある「鬼の押し出し」。行ったことはなくとも、必ず知っている言葉「鬼の押し出し」。なぜならご当地カルタの草分けである「上毛かるた」の一番最初、「あ」から始まる読み札は、

「浅間のいたずら 鬼の押し出し」なのだ。

県外の方には、「なのだ」と言い切られても何のことやらだろうが、なんとこういう名前の国立公園があるのです。
小さい頃行ったきりの「鬼の押し出し」に、ふと行ってみることにした。確かかなり異様な公園だったはずだ。
1970年群馬県生まれ。工作をしがちなため、各種素材や工具や作品で家が手狭になってきた。一生手狭なんだろう。出したものを片付けないからでもある。性格も雑だ。もう一生こうなんだろう。(動画インタビュー)

前の記事:もなかのプラモを作った

> 個人サイト 妄想工作所

群馬には何がある

JR東日本で「群馬デスティネーションキャンペーン」というものを展開していることはご存知か。7月1日から9月30日まで、群馬の観光や名産、アクティビティをアピールする企画である。

しかし我が群馬、温泉や自然など良いところはたくさんあるのだが、「これだ!」という1点モノの無敵スポットはほぼないので、キャンペーン自体あまり派手な色合いではなく、いくぶん地味にのんびりと展開されていたという印象がある(あくまで個人の感想)。

そのキャンペーンのチラシを読んでいて、ふと気が付いた。鬼押し出し(=鬼押出し園)が載ってない。鬼押し出し、推してないぞ。これは必ず私が行ってやろう、と決意した。
確かどのパンフレットにも、スペースを割いての紹介は載ってなかった。
確かどのパンフレットにも、スペースを割いての紹介は載ってなかった。
鬼押出し園には、小さい頃両親と行った。故郷の桐生市からだと、ほぼ群馬を横断する形になるので、えらく長い間車に乗る羽目になった。着いたころには立派な車酔い、途中で買った自販機のカップヌードルも戻しつつ、園内に入れば地獄のような絵図。

その経験が、「鬼押し出し=なんとも言えない変な場所」という記憶として残ってしまった。今なら、冷静に距離を置いて楽しめるかもしれない。そう思うなり長野新幹線に乗って1時間、軽井沢駅にやって来た。

だが曜日の感覚が麻痺していたので、うっかり連休ど真ん中の日に来てしまった。
秋の軽井沢、そりゃそうですよねー。こうなりますよねー。
秋の軽井沢、そりゃそうですよねー。こうなりますよねー。
「地味に」「のんびりと」展開していると思い込んでいた群馬キャンペーン、実はものすごく盛り上がってるんじゃないのか。ひっそりとした盛り上がりを味わおうと思って来たのに、来てみりゃシーンの最先端だ。私はシーンの最先端に立つ覚悟はあるか?そんな覚悟は今日はない。

すでに疲れを感じつつ、鬼押出し園を回る定期バス乗り場にやってくると、さっきまでの喧騒が嘘のようだ。数人しかバスを待っていなかった。うん、こんな感じでいいんだよ群馬は。
それにしてもいい天気だ。
それにしてもいい天気だ。
搭乗。おお、懐かしい感じの網棚だ。
搭乗。おお、懐かしい感じの網棚だ。
バスがすいているのは、みんな自家用車で来るからだ。すごい渋滞。
バスがすいているのは、みんな自家用車で来るからだ。すごい渋滞。
きっぱり一言「鬼押出し」。
きっぱり一言「鬼押出し」。
バスはどんどん高原へ向かっていく。
バスはどんどん高原へ向かっていく。
途中の乗り降りを含めても、乗車率は50%程度。快適なのだが、バス料金を調べてくるのを忘れた。ついつい普段の路線バス感覚で来てしまった。停留所を過ぎるたびに、電光掲示板の整理券無し欄の金額がどんどん跳ね上がっていって気が気でない。

1000円を少し超えた頃、ようやく浅間山が見えてきた。目的地までは近い。よかった、2000円くらいまで行ってしまうかとヒヤヒヤした。お昼代は守られた。
2時間も前は家で顔洗ってたのに。覚悟のないまま浅間山。
2時間も前は家で顔洗ってたのに。覚悟のないまま浅間山。
渋滞含めて1時間ほどバスに揺られ、やってきました鬼押出し園。ところがけっこうな人出だ。ひっそりとした感じを期待して来たのに、来てみりゃシーンの最先端。
休日のテーマパークおなじみの、学生男女のうきうきグループがたくさんだ。
休日のテーマパークおなじみの、学生男女のうきうきグループがたくさんだ。
降りたときちょっと涼しいかと思ったが、今日はやっぱり暑いようだ。
降りたときちょっと涼しいかと思ったが、今日はやっぱり暑いようだ。
園の外にまで「鬼の押し出し」が漏れ出てる。
園の外にまで「鬼の押し出し」が漏れ出てる。
ここで「鬼押し出し」とは何か、説明しよう。1783年の浅間山の大噴火で、大量の溶岩流がふもとの村を直撃、多数の死者が出た大災害となった。そのときに最後に流出した溶岩流が冷えて固まり、奇岩だらけの広大な一帯が形成されたのだ。

鬼押出し園は、その溶岩地帯の中をぐるっと見て回れるようになっている公園なのだ。
入り口へのブリッジに、比較図が彫り込まれていた。正面が浅間山で、写真右側へと溶岩流が続いていたのだ。
入り口へのブリッジに、比較図が彫り込まれていた。正面が浅間山で、写真右側へと溶岩流が続いていたのだ。
今日は雲が多く、寝観音は拝めず。
今日は雲が多く、寝観音は拝めず。
山容がバンバ変わっている。まだ現役火山なのである。
山容がバンバ変わっている。まだ現役火山なのである。
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ONITEKIなもの

なぜ「鬼押し出し」と言われるようになったのか。それは「鬼押出し園」サイトから引用すると、

「〈上州浅間嶽虚空蔵菩薩略縁起〉によると… 浅間山には“鬼”が住んでいることになっている。しかも、その鬼の行状が噴火に係わっているとみられることから、おそらく、押出しの奇異な現象を目にした里人によって、自然発生的に名付けられたものであろう。」

ということだ。うん、そうなんだろうなとうなずかざるを得ない。その時代、だいたいの天変地異は鬼が黒幕であろう。

その鬼っぽさを、建物や土産物、グルメなどがさらに強固なものにしている。では鬼的なものを求め、入ってみましょう。
其の時、俄かに空掻き曇り。お、お、鬼ゲートだ!
其の時、俄かに空掻き曇り。お、お、鬼ゲートだ!
「東叡山寛永寺別院 浅間嶽観音堂惣門」とある。鬼ゲートなどと口走って申し訳ありませんでした。
「東叡山寛永寺別院 浅間嶽観音堂惣門」とある。鬼ゲートなどと口走って申し訳ありませんでした。
どかーん。
どかーん。
ゴロゴロゴロ。
ゴロゴロゴロ。
溶岩奇岩の猛攻に、呆然とする(再現)。
溶岩奇岩の猛攻に、呆然とする(再現)。
これこれ、これよ。どこまでも広がる岩、岩、岩。岩マニアは全国から来るといい。一生分の岩だ、よくわからないが。

とにかく岩があり、その間を舗装された道が通じ、ところどころ見晴らし所やお堂があるものの、売店などはなく、結局は岩だ。岩と高原植物、そして山だけだ。

にもかかわらず、たくさんの客が来ていた。ひそかに今、岩もブームなのか。
30年前の自分たちが前方にいる。
30年前の自分たちが前方にいる。
岩を見すぎて、口の奥がゴツゴツしてきた。
岩を見すぎて、口の奥がゴツゴツしてきた。
突然の雪だるま?
突然の雪だるま?
底岩の隙間に、従業員の置いた雪だるま、というわけ。そこは気温が低い、というデモンストレーションだ。
底岩の隙間に、従業員の置いた雪だるま、というわけ。そこは気温が低い、というデモンストレーションだ。
入り口付近にはグルメやお土産もあって、やはり鬼(+溶岩)推しだ。
鬼火山!
鬼火山!
鬼押キティ、残り数カウントまであるぞ。
鬼押キティ、残り数カウントまであるぞ。
鬼焼!ひえー。
鬼焼!ひえー。
鬼まんじゅう!黒い!うまい!(正体は黒ゴマ)
鬼まんじゅう!黒い!うまい!(正体は黒ゴマ)
溶岩クッキー。写真では見えにくいけどどっちがどっちかわかりませんでした。
溶岩クッキー。写真では見えにくいけどどっちがどっちかわかりませんでした。
思ったよりはクッキー寄りだった。やはり黒ゴマである。
思ったよりはクッキー寄りだった。やはり黒ゴマである。
出た鬼辛!うひょー。でも暑いのでパスした。
出た鬼辛!うひょー。でも暑いのでパスした。
浅間山に見立てたということなので、今日のお昼はこれだ。
浅間山に見立てたということなので、今日のお昼はこれだ。
…思ったほどは鬼だらけでもなかった気がする。だがこの屹立する岩だけでも十分だ。もう少し岩散歩をしてみましょう。
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目に見えない鬼らしさ

こういう岩だらけで、もうこのあたり相当感覚が麻痺している。「ああ岩か」と。
こういう岩だらけで、もうこのあたり相当感覚が麻痺している。「ああ岩か」と。
ちなみに一人で行きました。
ちなみに一人で行きました。
ものすごくいい天気と、岩。
ものすごくいい天気と、岩。
散歩、とは言っても長いコースで30分、起伏の多い道を歩く。しかも高原の炎天下。自販機もない道をひたすら歩くうちに、ここはいったいどこなのか、よくわからなくなってきた。
行けども行けども岩ばかり・・・
行けども行けども岩ばかり・・・
休憩所が、ちょっと怖い。
休憩所が、ちょっと怖い。
やがて空は掻き曇り、一陣の冷たい風が。
やがて空は掻き曇り、一陣の冷たい風が。
入り口から近めのコースには家族連れやグループがけっこう歩いていたが、園の辺境にあるコースへとぐんぐん進むと、やがて一人の人間も見なくなってしまった。
奥から等身大の怪獣が出てきそうでコワイ。
奥から等身大の怪獣が出てきそうでコワイ。
この道を行った先には何があるのか。
この道を行った先には何があるのか。
風の音しか聞こえない。行けども行けども人がいない。
風の音しか聞こえない。行けども行けども人がいない。
よく見ると、地面に転がる石は・・・
よく見ると、地面に転がる石は・・・
全部溶岩だ!おそろしや。
全部溶岩だ!おそろしや。
高いところから嬬恋や軽井沢方面が、怖いくらいに見渡せる。
高いところから嬬恋や軽井沢方面が、怖いくらいに見渡せる。
遠くに見えた、突然顔を出す観覧車もなんだか怖い。
遠くに見えた、突然顔を出す観覧車もなんだか怖い。
やがて人通りの多いコースに合流。溶岩みたいな犬だけど、ほっとした。
やがて人通りの多いコースに合流。溶岩みたいな犬だけど、ほっとした。

妙な鬼スポットを期待して行ったが、普通に混んでいて、普通に鬼推しで、じゃあ普通に楽しもうかと思って歩いていたら、妙な空間に巻き込まれた、といった気分だ。いまだにあの、風の音しか聞こえない風景(まさに風景!)が、頭から離れない。

とにかく、天気のいい秋の日には最高だと思うので、行ってみてください。普通の観光客も、岩マニアの人も。
最後に浅間メンチカツ丼を。浅間山の「三重式成層火山」を現していたんですな。
最後に浅間メンチカツ丼を。浅間山の「三重式成層火山」を現していたんですな。

【告知】
■今週末24・25日は、東急ハンズ新宿店7F・バラエティフロアにて、乙幡の物品販売ブースの販促企画として消しゴムはんこを店頭で彫ってます。何だそれ、と思ったらレッツゴー。

24日 11時~18時
25日 11時~16時

■そして25日はそのあと、「間取り図ナイト~おもろ不動産ナイト!!」にゲストで出演します。あの屋上物件について話すよ!
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