特集 2011年9月16日

幼なじみドボクに会いに行く

「幼なじみの子のことをよく見てなかった」っていう感じ。
「幼なじみの子のことをよく見てなかった」っていう感じ。
心理学で「単純接触効果」と呼ばれる現象がある。その名の通り、単純に頻繁にあっている人のことを好きになっちゃう、という心理だそうだ。

それか!って思った。
もっぱら工場とか団地とかジャンクションを愛でています。著書に「工場萌え」「団地の見究」「ジャンクション」など。(動画インタビュー

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少女漫画的なアレか

先日家の近所を自転車で走っていたら、冒頭のような風景に出会った。おお!工場だ!【大きな画像で単純接触したい方はこちら

ぼくは工場を求めて北九州まで行ってしまうような男なわけだが、なんのことはない、近所にすてきな子がいたわけだ。
無理して遠距離恋愛ですよ(『北九州はエルドラドだった!』より)
無理して遠距離恋愛ですよ(『北九州はエルドラドだった!』より)
まあたしかにでっかいコンビナートはかっこいい。しかし、それは手の届かないアイドルに入れあげるみたいなもんで、ほんとうにぼくのことを思ってくれる人は幼なじみだったりするんじゃないか。『クリィミーマミ』的な感じで。たとえが分かりづらくてすまん。ていうか、工場はぼくのこと思ってくれてたりはしないわけですが。

まあ、でも幼なじみの方にも問題があるんですよ。千葉の工場ってなかなか姿を見せてくれないんだよね。
貴重な千葉の幼なじみピーピングポイント。
貴重な千葉の幼なじみピーピングポイント。
気がつけば夜更けまで。
気がつけば夜更けまで。
千葉の工業地域って巨大なグリーンベルトで仕切られててほとんど見えない。

深窓の令嬢だ。お父さんが厳しくて電話も代わってもらえない、っていうあれ。というか、ぼくらの思春期には携帯電話もメールもなかったから家に電話するしかなかったよねえ。あれが災いして少子化に結びついてるんじゃないかしら。(←論理的飛躍)

幼なじみとキスもできないしそれどころか手も握れないんじゃ、そりゃあ川崎や四日市の妖艶な女性に惹かれてもしょうがないよね。

大人になったいま再チャレンジ

とはいえ、思い出してみればぼくがこどもの頃遊んでいた場所って、工事現場や倉庫街だった。そういう「単純接触」が、土木っぽい構造物("ドボク"と呼んでいる)にぐっと来てしまうという、現在のぼくの人格形成に影響しているのは間違いない。

あのころは気がつかなかった幼なじみの魅力。大人になったいま、近所のドボクを見に行ってみよう。まずは水門だ!
実力派幼なじみ!
実力派幼なじみ!
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行徳可動堰っていう子

家から自転車で15分ぐらい行ったところ、江戸川にいるでっかい幼なじみ、それが行徳可動堰だ。
「旧行徳橋」と一体になってる幼なじみ。ごつい!
「旧行徳橋」と一体になってる幼なじみ。ごつい!
「行徳可動堰」という名称が分からなくても「旧行徳橋」といえば「ああ、あれね」と認識できる千葉北西部の人は多いと思う。この橋と一体になっているのが「行徳可動堰」だ。あの橋の脇にかっこいいコンクリートの塔が4つ建っている、あれだ。
どちらかというと、サザエさんに出てくる花沢さん的な頼もしさ漂う幼なじみ。
どちらかというと、サザエさんに出てくる花沢さん的な頼もしさ漂う幼なじみ。
航空写真で見ると、こんな。【→大きな地図で見る
この旧行徳橋はちょう狭いので、すぐ横にもう一本「新行徳橋」が作られた。しかし、ぼくが思うに、旧行徳橋が混むのは道が狭いからというより、このかっこいいコンクリートの塔にみんな見とれて渋滞しちゃうんじゃないかしら!
橋のまんなかあたりで左右180度をパノラマで。
橋のまんなかあたりで左右180度をパノラマで。
いかにも「可動」な感じがいい。
いかにも「可動」な感じがいい。
最初の幼なじみ訪問でこの行徳可動堰を選んだのは、知人である佐藤さんの影響だ。

東京都江東区パナマ運河」という記事で紹介したが、佐藤さんは水門趣味の方。彼と知り合って最初のころ、ぼくが千葉の船橋に住んでいると言ったら「行徳可動堰ですね!」って言ったのだ。さすがだ。

ところが、調べてみたらほんとは「堰」と「水門」って違うらしいね。ぼくもよく知らなかったけど。水門は洪水や高潮の際に閉めて堤防として機能するのに対し、堰は川が増水したら氾濫しないように、水門とは逆に積極的に開けて流していくものらしい。

え、それってダムじゃん!萩原さんの管轄じゃん

って思って調べたら堰ってほんとに「ちっちゃいダム」だった。法的には堤高15m以上がダムで、それ未満は堰なのだそうだ。そういう意味では、この行徳可動堰は江戸川のいちばん下流にある「ダム」と言えないこともない。

これ以上の詳しいことについて知りたい方は萩原さんに聞いてみてください(←放り投げた)。
ちっちゃいダム。さすが花沢さん。
ちっちゃいダム。さすが花沢さん。

ゴルフ練習場!

で、上の可動堰の写真の背後をご覧いただきたい。画面右のほうだ。

そうだ!ゴルフ練習場だ。
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幼なじみとしてのゴルフ練習場

住宅街の仲に唐突に現れる柱とネットだけの構造物。夜ともなればこんな風にライトアップ。ちょうかっこいい!
住宅街の仲に唐突に現れる柱とネットだけの構造物。夜ともなればこんな風にライトアップ。ちょうかっこいい!
以前「全長100メートルの深海魚」と題して記事を書いたことがある。通称「打ちっ放し」と呼ばれるゴルフ練習場を撮ってみたレポートだ。

ぼくはゴルフクラブを握ったこともない人間だが、この打ちっ放しにはぐっとくるものがある。
おそらく家から一番近い打ちっ放し。見に行ったら、こどもの頃を思い出した。
おそらく家から一番近い打ちっ放し。見に行ったら、こどもの頃を思い出した。
そういえばこどもの頃、よく遊び場にしていた場所は、バッティングセンターの横にあった。

子供心にネットと柱だけのその佇まいが、なんか不思議だった。その後そのバッティングセンターはなくなってしまったが、あの構造物を見上げたときのざわざわする感覚はいまもよく覚えている。

上の写真は、おそらく家から一番近い打ちっ放しだ。全体的な雰囲気が、こどもの頃見ていたそのバッティングセンターと似ていた。じーんとした。
ガスタンクと打ちっ放し!こんな場所があったとは!
ガスタンクと打ちっ放し!こんな場所があったとは!
これは京葉線の車窓からも見える打ちっ放し。江戸川を挟んで対岸から見たら、ガスタンクとの夢の競演となった。いやー、いままで見落としてたよ。

もう一箇所、こどもの頃から目にしていた打ちっ放しがあったのだが、行ってみたらなくなってマンションが建っていた。ショック。

工場や水門と違って、けっこうすぐなくなってしまう打ちっ放し。幼なじみには会えるうちに会っておいたほうがいいと思った。

大人になってから知人に教えられる

さて、さいごにもう一種類の幼なじみを。それは鉄塔だ。
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ふり返れば鉄塔だらけ
ふり返れば鉄塔だらけ
冒頭の水門(ほんとは「堰」だけど)が幼なじみであったことに気づかせてくれたのが、佐藤さんであったように、鉄塔に気づかせてくれた知人がいる。鉄塔マニアの長谷川さんだ。【→長谷川さんの鉄塔サイト「毎日送電線」】
近所の江戸川を渡る2本の送電線と、それを支える凛々しい鉄塔。
近所の江戸川を渡る2本の送電線と、それを支える凛々しい鉄塔。
人っぽいよね、鉄塔って。
人っぽいよね、鉄塔って。
彼の話を聞いて「そういえばすごくなつかしい鉄塔があるなあ」って思い出したのだ。こどもの頃正月にたこ揚げに行った空き地のはじっこに立っていた鉄塔だ。おそらく送電線に近づかないように言われたことから記憶に残っているのだと思う。そういう人多いんじゃないかな。みんなの「思い出の鉄塔」を訊いてみたい。
その送電線を追っていったら、なんと例の「チューボー」に!
その送電線を追っていったら、なんと例の「チューボー」に!
思い出の鉄塔があることを気づかせてくれたのが、大人になってから出会った人だというのはおもしろい。鉄塔って、ありふれててもっとも気づきにくい幼なじみかもしれない。
鉄塔好きがよくやる「結界写真」(立入禁止でない鉄塔を探して、真下から見上げる)をやってみた。こうやってみると千差万別なのね、鉄塔も。
鉄塔好きがよくやる「結界写真」(立入禁止でない鉄塔を探して、真下から見上げる)をやってみた。こうやってみると千差万別なのね、鉄塔も。

みんな幼なじみドボクを誇ったらいいと思う

ぼくの好きな小説に「秋の花」という推理小説がある。そのクライマックスシーンでこういう一節がある。
「ずっとこちらですか」
タクシーが走り去ると、円紫さんは、これといった特徴もない、ただ家々と塀と垣根の続く街筋を見回して、そういった。
「はい。生まれて育ちました」
「この辺りを小学生のあなたが走っていたんですね」
「そうです」それから私は、まるで自分のことでも謙遜するように付け加えた。「山も海もない、詰まらないところで…」
円紫さんは、やさしい目で私を見た。
「もう何年かすると、あなたもきっと誰かをここに連れてくるのでしょうね。そして自分の歩いた道を教えてあげる。その時、誰かは、《この道はどこの道より素敵だ》と思うでしょう。一本の木、一本の草までね」
(「秋の花」北村薫/東京創元社)

ほんとうにすてきな風景、心を打つ景色は、どこかに出かけた先にあるのではないと思う。今回近所を自転車でぐるぐるまわってみてそう思った。

告知:「うまくはならない写真ワークショップ」やります

毎回ちょう楽しくて、エキサイティングなワークショップ。またやります。興味ある方はぜひ!

前回までと同様、テーマは「自分探し禁止!」です。

以前同じ内容で行ったカルチャーカルチャーでの様子はこちらのレポートで。

→1回目:好きでもなんでもないもを撮るとどうなる?
→2回目:とにかく同じ時刻に撮るってのを1ヶ月続けるとどうなる?
→3回目:他人になりすまして撮るとどうなる?
興味ある方はぜひ!詳しくは→こちら
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