間取り図を描くという人間の不思議な能力
まずはとにかく「あなたの家の間取り図描いてください」とお願いした、その結果をご覧いただきたい。
上手い。すごく上手。びっくり。
一見弱々しいタッチだが、実にしっかりとしたスケール感覚。侮りがたし。
すばらしい。押し入れや扉の正確な描写にこだわりを感じる。なんでこんなにうまいんだ?
かわいい雰囲気にだまされてはいけない。4畳半と6畳、そして12畳の広さの違いを見事に描き分けている。ただ者ではない。
これかなり好き。シンプルな中に、たしかな間取り図センスを感じる。
やや変則的な形ながら、かなりよく描いている。ほんとうまいなあ、みんな。
うまい。みんなちょううまい。
「え、こんなのふつうじゃん」と思った方は、どうぞご自身で描いてみてほしい。これらの「マイ間取り図」がどれだけすぐれたものかが分かるだろう。
だいたい、どんなに住み慣れた自分の部屋でも、真上から間取り図的に見るということはありえない。つまり、間取り図的俯瞰描写は、単に「見たままを描くことができる」というのとは別の認知・描写能力を必要とするものなのだ。
しかし一方で、ちょっとしたコツがつかめれば、誰でも俯瞰図を描くことができる。これは人間に備わったふしぎな能力なのだと思う(*民族・文化問わず、人は5、6歳になると見たことのないはずの上空からの俯瞰である地図的描写を読み、時には描くことができるものらしい。こういう空間の認知の文化について興味がある方は、イーフー・トゥアンの『
空間の経験 』という本を読んでみてほしい)。
なぜ我々は間取り図を描くことができるのか?
さて、なんとなく学術的な香り豊かな記事になってきた。なってないか?なってるよね。
で、実際描いてみた方は分かると思うが、いちばん難しいのは「大きさ」だ。位置関係を描写するのはそれほど困難ではないが、15平米と20平米を描き分けるのはかなり難しい。
しかし、我々日本人には秘密兵器がある。
畳だ。
畳なのだ。
そうなのだ。畳だ。
我々は畳のおかげで、空間の大きさを比較し、またこうやって描くことが容易にできるのだ。
と、思う。たぶん。
たとえばアメリカ人に間取り図描かせてみたい。たぶんうまく大きさ描き分けられないと思うんだよね。
「間取り図ナイト」の舞台上。左から2番目が森岡さん。向かってその右隣は大塚さん。そのとなりがぼく。赤い人はカルカル店長横山さん。
で、なんでこんな間取り図描いてもらったのかというと
実は、ぼくは東京カルチャーカルチャーで、「間取り図ナイト」というイベントに出演している。
すでに9回も行っており、きたる
2011年9月24日には第10回が開催予定だ。
このイベント、毎回
ミクシイの「間取り図大好き」コミュニティの管理人である森岡さん主催で、われらがDPZライター仲間の大塚さんとぼくを加えた3人で行っているもの。
この森岡さんが毎回すばらしく奇妙な間取り図コレクションを披露してくれる。それを見ながらあれこれ好き勝手なことを言う、そういう催しだ。
で、このイベントに来てくれたお客さんに
間取り図を描いてもらったら、ちょう楽しかった、とそういうわけだ。
そう、いわゆる不動産やさんで見かける間取り図には描かれないものが見える。それがとても面白い。
たとえばひとつ上の間取り図描いてくださった方のコメント。いやあ、困っちゃうねえ。
不動産屋の間取り図にはないもの
家具や家電が描かれると、ぐっと親近感が高まる。というか、ちょううまい!
もはや間取り図というより生活描写。そしてあいかわらずちょう上手!
そうなのだ。家具や家電は不動産やの間取り図には描かれていない。あたりまえだ。
あたりまえだけど、こうやってそれらが描かれた、みなさんのマイ間取り図を見てると、こういうものが描かれていない間取り図って、なんか大事なところで間違ってるんじゃないかという気がしてくる。
メーカー名にこだわりが。「シタール」も気になる!
「家のほぼ半分を占めるベッド」ときた。いいなあ、こういうの。というか、よく部屋に入ったなー。もしかして窓から入れた?
すごい家電(?)きた!(お聞きしたところ、ソムリエさんでした!さすが、自宅にもあるのか!)
「だいじょうぶか」って思うものも
前ページ最後に新婚さんのアクションに伴う物音についてのコメントがあったが、さらにすごいものがいくつか。
だいじょうぶか。
週3て。
大家さんが…
趣味で住民の交友関係を把握!「事件のとき心強い」って、ちょっとポジティブすぎませんか。
いちばん衝撃的だったのはこれ↓だ。だいじょうぶかほんとに!
えーーっ!
間取りつったら、もちろんアレですよアレ!
いやはや、だいじょうぶかみんなほんとに。
で、3つ上の監視業務が趣味の大家さんの間取り図を見ていただきたい。右上を。
「都営横川5丁目アパート」とある!記入すべきポイントをわかってらっしゃる!
都営横川5丁目アパート!名団地!ぼくの団地写真集の表紙にも抜擢したぐらい!
都営横川5丁目アパートっていったら泣く子も黙る団地界の名品ですよあなた。
名品過ぎてぼくの団地写真集の表紙に抜擢したぐらいですよ。
いやー、そりゃあこれが近所にあったら間取り図描くときに一言入れたくなるよねえ。うんうん。
考えてみれば現代間取り図の発祥はある意味団地にあるわけで(『DK』っていう間取りの標準は団地のために開発されたのだ)。うれしいことに、団地にお住まいの方もその間取り図を描いてくれた。
おお!まさに団地な間取り。いやあ、いいですねえ。
お、これはリフォームされてるかな?どうかな?
いい。じつにいい。トリッキーなところはないが、こういうのをしみじみ味わえるようになってこそ一人前の間取りストだと思う。
家具以上に不動産や間取り図には描かれないもの
さて、今回みんなによって描かれたもののなかで最も印象的だったのは家具以上に間取り図にはふつう描かれない、あるものだ。
ねこ。
ねこ。小次郎だそうです。
ロフトにねこ。
ニャー。
何の補足説明もなく「猫」。
通り道であることを明記。
家具どころじゃない。なんといっても動くものだ。不動産に動産が描かれる。これってすごいことなんじゃないか。というか、猫って動産って言っていいのか。
いやまじめなはなし、地図とか間取り図に動くものが描かれないとされているのはなんでなんだ、と思ってしまった。ここまでみんなが猫描きたがるってことは、彼らは間取り図に置いて重要な要素なんだろうに。
「猫」と「描」って似てるし。
世の中に面白くない間取り図はない
間取り図描くって、ほんと、とてもいい趣味なんじゃないかと思った。
たとえば同じ自分の部屋でも毎年描いていくとかも面白いかも。ちょっとした日記みたいになるんじゃないかな、マイ間取り図定点観測。
「間取り図ナイト10」やります!
ということで、文中でもご紹介しましたが、また「間取り図ナイト」をやります。またみんなに描いてもらうっていうのやりたいなー。
みなさまのお越しをお待ちしております。
2011年9月24日、25日と、2夜連続で催します!詳しくは
こちら。
「工場萌えO」書店で売ることになりました!
先日「
写真集を自分で作ってみたらたいへんだった」という記事にした同人誌工場写真集「工場萌えO」。
コミケに参加してみたくて作ったものですが、ありがたいことに
新宿ジュンク堂さんが取り扱ってくれることになりました!ありがとう!
コミケに行けなかった方は新宿ジュンク堂へぜひ。電話での発送注文も受け付けているそうです。いい写真集だぜ、ほんとに。
本記事執筆時点であと数十冊しかないようですので、おはやめに!