特集 2011年8月27日

プチ反抗期の子供と作る夏の工作

左からメガネ男、プチ反抗期男子、元気女子
左からメガネ男、プチ反抗期男子、元気女子
夏休みの宿題。
小学生の頃の僕は、夏休みは大好きだったけれど、この宿題というのが嫌で仕方がなかった。誰か手伝ってくれないかと願っていたら夏休みが終わっていたぐらいだ。

そんな小学生のために大人になった僕が夏休みの宿題を手伝いに行くことになった。お願いされたのは「工作」。よし、僕の一番苦手な分野だ。
1985年福岡生まれ。思い立ったが吉日で行動しています。地味なファッションと言われることが多いので、派手なメガネを買おうと思っています。(動画インタビュー)

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今年も手伝いに行きます

去年に続き今年も自由研究をお手伝いします、と当サイトで募集した。去年はハル君(当時小学5年生)の工作を手伝いに行った。(その時の様子はコチラ
去年の一場面(女の子は妹のミドリちゃん当時小学3年生)
去年の一場面(女の子は妹のミドリちゃん当時小学3年生)
ハル君とはペットボトルで船を作った。
モーターもついた立派な船だ。波一つない、たとえばお風呂場みたいな場所ならどうにか沈まない船だった。よく言えばガラス細工のような繊細な船だ(事実を分かりやすく書けば、持ち上げただけで壊れる)。
ペットボトルで作ったガラス細工船
ペットボトルで作ったガラス細工船
このような船でも、ハル君は満足してくれたようだった。その証拠に今年もハル君から手伝いに来て欲しいと依頼があった。そう今年もハル君の手伝いに行くのだ。1年が経ちハル君たちはどのように成長しているのだろうか。
ということで、待ち合わせの南町田にやって来ました
ということで、待ち合わせの南町田にやって来ました

反抗期情報

ハル君は去年小学5年生だった。ということは、今年は6年生というこになる。来年は中学である。事前にお母さんから「プチ反抗期」という情報を頂いている。
プチ反抗期を心配に思っている僕
プチ反抗期を心配に思っている僕
もう昔のこと過ぎて自分の反抗期がどんなものだったか覚えていないが、ハル君のプチ反抗期とはどのようなものだろうか。盗んだバイクで走り出す感じだろうか。それだったら大変だ。マヨネーズは必ずキューピーそれ以外は食べない、くらいの反抗ならいいのだけれど。
ハル君登場!
ハル君登場!
一年ぶりにハル君と再会した。身長が伸びている。しかし、服は去年着ていた色と同じような感じだ。反抗期らしいけれど、ハル君はハル君のままだったのね、と少し安心した。全身を黒でまとめていたら、僕には手におえない反抗期だと思うから。
服の色が同じ感じで安心
服の色が同じ感じで安心

あ、手に負えない

家に移動して、今年は何を作るかを聞いた。今年はハル君だけでなく、小学4年生になった妹のミドリちゃんの工作も手伝うことになっている。工作は美大卒の僕がもっとも苦手とするものだ。
僕の作ったエヴァンゲリオン(念のため、僕が作ったのは向かって左側です)
僕の作ったエヴァンゲリオン(念のため、僕が作ったのは向かって左側です)
ハル君は映画「9<ナイン>~9番目の奇妙な人形~」のナインの人形を作りたいということだった。製作にティム・バートンが関わった映画だ。映画の公式サイトで予告編を見たのだけれど、かなりの工作力を必要とする人形だと分かった。
これを作りたいそうです
これを作りたいそうです
冬場の冷えた麦茶のニーズのような僕の工作力。かなりの苦戦が予想される。一方妹のミドリちゃんはマカロンタワーを作るそうだ。もうマカロンも大体作ってある準備のよさ。去年に引き続き今年も妹の方がよくできている。
マカロンタワーを作ります
マカロンタワーを作ります
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今年のテーマは金と権力

厳しい戦いが予想される今回の工作。去年とは異なりゴールとなるビジュアルがはっきりとしているのが、厳しさに拍車をかけている。海に向かって走り出したかったが、走り出した先は工作に必要な物を買うダイソーやハンズだった。町田に海はないのだ。
必要な物をハル君が書き出す
必要な物をハル君が書き出す
買い物中ハル君と話す。今回の取材には編集部石川さんにも同行してもらっているのだけれど、ハル君は僕と石川さんに、収入は月々いくらなのか、月々あとどれくらい収入がアップすると嬉しいのか、などと金の話題を終始振って来る。去年はなかった話題だ。
そんな話をしつつ買い物
そんな話をしつつ買い物
地主さんの仕事は何? と何回も聞いてくるので、自由な感じでやっているよ、と話していたら「無職か」と僕がもっとも使わないでおきたかった単語をハル君はまるで華麗なステップを踏むかのように連呼していた。

さらに、石川さんと地主さんがジャンケンして負けた方がデイリーをやめて、とも言っていた。ハル君に何の得があるのだ。しかも試しにジャンケンをしたら僕が負けた。ハル君、笑えないから。青信号の横断歩道で車に轢かれたらこんな気持ちなのだろう。
そんなことを言いつつも手をつなぐハル君
そんなことを言いつつも手をつなぐハル君
買い物しつつハル君は石川さんに社長について聞いていた。よっぽど興味があるようだ。金と権力、去年のハル君にはなかったワードだ。成長を感じた。世間への反抗期だろうか。
買い物して帰って来てお昼をいただいた
買い物して帰って来てお昼をいただいた

分からん

布や骨組み人形等を買ってきていよいよ工作が始まる。のだけれど、作り方がさっぱり分からない。いきなり砂漠のど真ん中に連れて来られたようだ。遭難だ。
綿を巻けばいいのではないかと
綿を巻けばいいのではないかと
ナインはふっくらとしているので、人形に綿を巻いてその上に麻布を貼り付ければいいと思ったのだけれど、「違うでしょ」とお母さんから注意が入る。急に自分の小学生の頃を思い出した。こんな感じだった。もう僕の宿題のようになりつつある。
お母さんに教えてもらう
お母さんに教えてもらう
大きめに服を作って骨組み人形に着せて隙間に綿を詰めるようにすればいいそうだ。問題は「大きめの服を作って」のところ。四半世紀生きて来たけれど、服を作ったことなんて一度もないのだ、と僕が悩んでいた頃、ハル君は全く別のことをしていた。
レゴに夢中
レゴに夢中
ミシンは無理やりまかせた
ミシンは無理やりまかせた
布を適当に切ってミシンで縫っていく。ミシンはハル君の仕事。ミシンなんて小学校の授業以来使ったことがないので、失敗した時のためにハル君に任せた。汚い大人になってしまった気もするけれど、これはハル君の工作なので、汚くなってないと自分に言い聞かせる。
意外と上手
意外と上手
その後、足と腕の場所に穴を開ければほぼ完了。ちなみに服は元のナインは麻布だけれど、ハル君の希望でジーンズ地になっている。結果これが原宿っぽくていい気がする。
原宿っぽいよね
原宿っぽいよね

塾に行く前に

この日のハル君は途中で1時間ほど塾に行かなければならないそうだ。ちなみにハル君の両親の願いは何とか都立高校に行ってもらうこと。僕も親に似たようなことを言われていた気がする。
相変わらず元気な二人
相変わらず元気な二人
先の原宿系のファッションに腕をつける。腕は縫い目を見えるようにする方が目指すナインに似るようだ。左の腕を僕が縫いつけ、右の腕をハル君が縫いつける予定。共同作業であるが、ハル君は途中であきらめていた。
あきらめてイカを食べていた
あきらめてイカを食べていた
プチ反抗期というカードを発動しているハル君は、イカを食べていた。反抗期だと人はイカを食べるようだ。

また、この人形にあまり納得が行かないようで、こんなの学校に持っていけないとも言っている。

でもねぇ、と僕は思う。今までの僕の工作で一番いい出来なのだ。ハル君の気持ちも痛いほど分かるけど、僕の中では歴代1位の出来なのだ。
歴代1位(後は顔ですな)
歴代1位(後は顔ですな)
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マカロンタワー

ハル君が塾に行ってしまったので、その間にミドリちゃんの工作を手伝う。こちらはまだ反抗期というカードは発動していない。またマカロンはほとんど完成しているので、後はタワーにしていくだけである。
上手いもんですよ
上手いもんですよ
こちらは石川さんが主導。石川さんがマカロンにボンドをつけて、ミドリちゃんがそれを筒に貼っていく。僕はそれを見守る係にミドリちゃんから任命された。あきらかに余っていた僕に係をくれる辺り、とてもいい子だ。
こちらは順調にできていく
こちらは順調にできていく
マカロンは紙粘土を使って作っている。これもミドリちゃんが作ったそうだ。なかなかの出来だ。もうコチラを僕が作ったことにするわけにはいかないかと悩んだりもした。妹の工作の方がレベルが高いのだ。ハル君が「こんなの学校に持っていけない」という気持ちが分かる。
素晴らしいでき
素晴らしいでき
特に事件もなく石川さんとミドリちゃんの2人が、石ころ一つない平坦な道を歩くかのように作り上げていく。ミドリちゃんは途中で仕事を放棄したりせず、もちろんイカを食べたりもしない。反抗期ではないからだ。
完成!
完成!

ラストスパート

塾からハル君が戻って来たので残りを進める。頭をつければほぼ完成というところまで来ている。ただハル君は相変わらず、こんなの学校に持って行けないと半ばあきらめ気味。そして僕も相変わらず素晴らしい工作ができていると興奮している。
仲の良い3人
仲の良い3人
一人紙粘土に麻布を巻く僕
一人紙粘土に麻布を巻く僕
ハル君と僕の美的感覚に差があるようだけれどハル君の美的感覚の方が正しい気がする。服を麻布からジーンズ地にしたのはハル君のアイデア。実際のナインよりもスタイリッシュになってカッコよくなっている。また、この後に選んだ目にするボタンもハル君の方がセンスが良かった。
僕は緑色の目を推していた
僕は緑色の目を推していた
実はこのあたりは僕がかなり真剣に工作をしていてあまり周りのことを覚えていない。要するにハル君は別のことをしていたのだと思う。イカでも食べていたのではないだろうか。
手足に針金を巻いて完成
手足に針金を巻いて完成

スプラッターに

ここまでは僕主導で作ってきたけれど、ハル君は自分の納得行くものを目指し、手を加え始めた。僕としては先の状態が、ビームスあたりで売っていそうで満足していたけれど、まだまだのようだ。
その頃僕は姿勢を正すようにミドリちゃんに教育を受けていた
その頃僕は姿勢を正すようにミドリちゃんに教育を受けていた
ちなみにハル君はこんなの学校に持っていけない、と悪態をつく度に、この日休みだったお父さんが登場して怒られていた。お父さんは怖いようだ。自分の子供の頃を見ているようで懐かしい気持ちになった。
ホットボンド片手に作業するハル君
ホットボンド片手に作業するハル君
ハル君がホットボンドでレゴパーツを利用して手足をつけて、さらにお面をつける作業を行った。去年もホットボンドをかなり好んでいたが今年もホットボンドに絶対的な信頼を寄せていた。あまり変わっていなくてホッとした。
で、完成!
で、完成!
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完成しました

紆余曲折あったけれどどうにか完成した。時計はすでに夜の8時を目指して動き出し久しい。途中ハル君が学校に持っていけないなどと言っていたり、これオレの工作かなと思えるくらい僕が作業していたけれど、それも今となってはいい思い出。りっぱなナインの完成だ。
糸もいい感じ
糸もいい感じ
ホットボンドの糸もいい感じに作用して、なかなかの出来。エヴァンゲリオンを作った僕の製作総指揮には見えない。アメリカのスプラッター映画に出てきてもいい感じだ。目指したナインは遠い存在になってしまったけれど、ハル君も満足しているようだった。
満足のようです
満足のようです
その直後テレビに夢中
その直後テレビに夢中

餃子をいただく

去年もそうだったのだけれど、今年も工作終了後に手作り餃子を頂いた。子供たちは今年も~と不満があったようだけれど、この餃子、ニンニクがきいていてとびっきり美味しいのだ。これを食べるために、ハル君が僕に対して発した「秋葉原っぽい」という言い得て妙な発言に耐えたのだ。
めちゃくちゃ美味しかった
めちゃくちゃ美味しかった
食後に部屋を見渡すとハル君の夏休みの1日の予定が書かれた紙が貼ってあった。細かく書かれているが、守ったのは1日だけだそうだ。宿題もまだまだ残っているらしい。ミドリちゃんはほぼ終わったそうだ。女の子の方がしっかりしているのだろうか。
ハル君の予定
ハル君の予定
あるいは、と書きたかったらしい
あるいは、と書きたかったらしい
このあたりでミドリちゃんのテンションの針が振り切れたようで、酔っ払いのようにずっと笑っていた。箸が転がってもおかしい年頃、と言ったりするがそんな感じでずっと爆笑。つられてコチラも笑ってしまう。
食後のまったり
食後のまったり
ハル君が、自分の名前をネットで検索すると去年の記事が出てくる、とか、去年の記事に載せた動画がYouTubeで2万回再生されているなどと言っていた。人気を気にしているようだ。かわいいところもあるな~と思った1日だった。
個人的に満足のいく工作でした
個人的に満足のいく工作でした

こうなれば来年も!

2年続けて工作の手伝いに行かせてもらった。成長が見えて楽しかった。子供たちは去年よりパワーアップしていたし、工作のレベルも高くなった気がする(小学生の工作としては)。

ハル君は来年で中学生。夏休みの宿題に工作はあるのだろうか。あればまた手伝いに行きたい。反抗期で悪態をつくけれど、それも含めてかわいいのだ。中学では水泳部に入るらしいけれど本当に入るかも気になる。ハル君はどうも僕と同じ匂いがする。中高一貫して帰宅部だった僕と同じ匂いが。
反抗期!
反抗期!
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