特集 2011年8月6日

東京駅、携帯無しで偶然会えるか

リミットは1時間半。あなたは会えると思いますか?
リミットは1時間半。あなたは会えると思いますか?
携帯を持っていて当たり前のこのご時世。
待ち合わせの日時はキチンと決めておくけど、場所はアバウトに伝えてあとは駅に着いてから電話するね、というケースが増えてきた。

今回はそんな携帯頼りの自分を戒めるべく、もし携帯が使えない状況でそんな適当な約束をしてしまっていたら一体どうなるのかを検証したい。

旧友と、今回会うのが3回目の知人に「明日の夜7時に東京駅に来てください。会うまで携帯出ないよ」と伝えた。
果たして会うことが出来るのでしょうか。
東京葛飾生まれ。江戸っ子ぽいとよく言われますが、新潟と茨城のハーフです。
好きなものは犬と酸っぱいもの全般。そこらへんの人にすぐに話しかけてしまう癖がある。上野・浅草が庭。(動画インタビュー)

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今回のメンバー紹介

今回声をかけたのは、出会って17年になる女性と、最近知り合ったばかりの男性の2人。
新幹線乗り場近くにあった銅像「仲間」
新幹線乗り場近くにあった銅像「仲間」
どうしてこの2人に声をかけたかといえば、持っている相手の情報の差で出会える確率が違うかもと思ったからだ。
お互いをよく知っている場合と、
お互いをよく知っている場合と、
まだよく知らない場合の違いを検証したい
まだよく知らない場合の違いを検証したい

リミットは1時間半

この企画、最初は2人に会うまでやろうかと思った。しかし長年の友人は説得できたとしても、今回で会うのが3回目の方(北山さん)にそこまで付き合って貰うのは何だか申し訳ない。相手には言わなかったが、1時間半経ったら終了して携帯で連絡をとる事に決めた。人に迷惑をかけていいのは1時間半が限界だ。
7時だ。スタート!(3分前行動)
7時だ。スタート!(3分前行動)

待ち合わせは東京駅改札の中?外?

早速だが東京駅というマンモスステーションならではの問題が浮かんできた。東京駅で待ち合わせと聞いて、改札の中を連想するか否かである。なぜなら広い駅構内。外に出ずとも色んなお店が並び休憩する場も多く、待ち合わせ場所で割と有名な「銀の鈴」も改札の中にある位なのだ。ここで探す可能性も高い。
割と知られている待ち合わせ場所、銀の鈴。
割と知られている待ち合わせ場所、銀の鈴。
しかし私の場合、待ち合わせと言えば即座に改札の外と連想する。ひとまず改札を出よう。あ、その前に何口に出たらいいか誰かに聞こう。
インフォメーションセンターは18時まででした
インフォメーションセンターは18時まででした

目印を確認する?しない?

私には大きい駅には必ず目印があるというイメージがあった。なのでまず駅員さんやお店の人など詳しい人に聞いて確認する。迷って無駄に歩くのも嫌ですしね。
和菓子のお店の人に目印を聞いた
和菓子のお店の人に目印を聞いた
目印があるという丸の内の北口に出る
目印があるという丸の内の北口に出る
店員さんに改札外の目印を聞き、そこへ行ってみる事にした。それにしても駅の中が広くて外に出るまでに時間がかかる。
出た所にある交番でも聞いたら地下だと言われ、エレベーターで下りる
出た所にある交番でも聞いたら地下だと言われ、エレベーターで下りる
あった!目印のSLの動輪。あれ・・あの人もしかして?!
あった!目印のSLの動輪。あれ・・あの人もしかして?!
他人と他人だった
他人と他人だった
エレベーターで下りている時は早くも出会ってしまうかとドキドキしたが、遠目から見ても他人しかいないのが分かった。
ちなみにSL動輪の前には記念撮影のためなら入れる。撮りたいけど1人だしなあ・・
ちなみにSL動輪の前には記念撮影のためなら入れる。撮りたいけど1人だしなあ・・
近くの改札の駅員さんに駅の案内図を貰い、眺めながらしばし待つ
近くの改札の駅員さんに駅の案内図を貰い、眺めながらしばし待つ
来ない。他人さえいなくなった。移動しよう
来ない。他人さえいなくなった。移動しよう
あまり動きすぎるとすれ違う可能性が高いと、5分待つ事にしたがその間に徐々に人が減っていく。ここって実はあまり知られていない場所なのではないだろうか。

場所移動するか・・

一方、その頃二人は

友人は八重洲中央乗り換え口あたり(改札内)
友人は八重洲中央乗り換え口あたり(改札内)
北山さんは八重洲中央口のあたり(改札外)
北山さんは八重洲中央口のあたり(改札外)
19:12現在の皆の位置。スタートが見事にバラバラ!そして北山さんめっちゃ歩いてる。
19:12現在の皆の位置。スタートが見事にバラバラ!そして北山さんめっちゃ歩いてる。
東京駅に慣れている友人は駅の内側から順番に改札を周ろうとしている所。一方、慣れていない北山さんはひとまず丸の内の中央口に出て東京駅の真正面に出た。あ、その気持ち分かる。全然知らない駅の場合、とりあえず中央口に出るかも。
この時点で私1人だけ地下一階。今の所一番離れた位置にいる。こんなんで果たして会うことができるのでしょうか?
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挙動不審で移動

SL動輪から移動というと道は一つしかなかったので迷わず地下通路を通っていった。しかしただ歩くのではなく、人の顔を確認しながらである。たったそれだけの事ながら意外と大変。目をキョロキョロさせながら、沢山の人とすれ違った。
不審の自覚があるので手もブレがち
不審の自覚があるので手もブレがち
キャラクターストリートという所を通る
キャラクターストリートという所を通る
テレビ各局やアニメのキャラクターショップが並ぶストリートがあった。こういう所にいるとは考えにくいのでさっとスルーした。
銀の鈴の案内を発見。もう一度行ってみるべきか・・
銀の鈴の案内を発見。もう一度行ってみるべきか・・
入場券を買うつもりが乗車券買っちゃったけど言えば大丈夫。
入場券を買うつもりが乗車券買っちゃったけど言えば大丈夫。
改札を出てしまっていたのだが、もう一つの目印である銀の鈴もやっぱり一回確認した方がいいような気がしてきた。

店員さんと交番に既に尋ねていた質問「SL動輪と銀の鈴以外に待ち合わせとして使われる目印は無いか」を再度駅員さんに聞くと「他ねえ・・どこでも好きな所にすればいいんじゃない?」と言われ、やはり他に候補は無いのだと切符を買って銀の鈴へ向かった。
改札入ってすぐに銀の鈴発見
改札入ってすぐに銀の鈴発見
いない・・鈴の歴史でも読んで待とう
いない・・鈴の歴史でも読んで待とう
またここで数分待とうと決め、鈴の歴史が書かれた柱や鈴の写真を撮っていた。
もう少しバックからも撮っておこうかと後ろを振り返ってみたら、
友達いたー!
友達いたー!
なんと28分でアッサリ友人に会うことができた。結局私は目印を周っただけなのだが、2人のタイミングが合うかどうかは運次第。

しょっちゅう遊んでいる友人なのにただ会えただけでワーっとテンションが上がった。マンネリ化したカップルにはいい待ち合わせ方法かもしれない。(そのまま一生すれ違いかもね)
直前に友人が撮っていた写真。
直前に友人が撮っていた写真。

友人が予想したルート

友人は、まず私が改札の中にいるだろうと踏んでいた。なぜなら一度出てしまうとまた切符を買わないといけないし、駅の外はほとんど改装中という事を知っていたから。そして以前一緒に行った旅行で何度か待ち合わせた新幹線乗り場にいるのでは等と予想したのだ。なるほど、しっかり考えている。そして私はその事をすっかり忘れている。
2人の運命的な出会いのルート。点線は地下。
2人の運命的な出会いのルート。点線は地下。
1階を大体周った友人はそこで「銀の鈴待ち合わせ広場」という地下への案内を見つけ、私がいそうだと思い行ってみると「まんまといた」らしい。
という事であとは北山さん待ち
という事であとは北山さん待ち
その頃北山さんは大丸の前にいた
その頃北山さんは大丸の前にいた
しばし待つが北山さんは現れない。次に移動するとしたらどこだろうか?友人にわずかな北山さん情報を伝えてみる。
ザックリ情報
ザックリ情報
もしかしたら全く動かずホームで待っている可能性もあるねと友人。北山さんに二度会った印象からすると、同じ場所に留まっているタイプには見えなかったが、まだ日が浅いだけに可能性は否定できない。
北山さんが何線で来るのか検索中(携帯を使わないという主旨を忘れてる)
北山さんが何線で来るのか検索中(携帯を使わないという主旨を忘れてる)
一方そのころ北山さんはトンテキの前
一方そのころ北山さんはトンテキの前
使用するであろう中央線のホームに向かった。
ホームの端から端まで確認
ホームの端から端まで確認
北山さんはスタバの前
北山さんはスタバの前
いないです
いないです
外にいますからね
外にいますからね
同じ駅なのに色々な景色があるな、と編集しながら感心するほど検討違いの場所にお互いいるようだ。残す時間はあと半分。見つかるだろうか?どうなんでしょうか。
会いませんなあ…
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うーん、やっぱり改札の外にいるような気がする・・でも一応改札内で思い浮かぶ場所は行っておこう、という事で北山さんの出身地である京都へ向かう新幹線乗り場に立ち寄る事に。
新幹線乗り場はあっち、と詳しい友人
新幹線乗り場はあっち、と詳しい友人
まあ、いないですよね
まあ、いないですよね
京都出身だからという理由で新幹線乗り場を探す。かなり安直だが目的もなくウロウロするよりは何か予測しながらの方がまだ見つかる筈なのだ。ただ、相手の情報が乏しいのが問題。
もう一度銀の鈴行こう
もう一度銀の鈴行こう
いない
いない
外に出る前に、ともう一度銀の鈴を経由したがいなかった。もう外へ行こう。

北山さんは東京駅をほとんど使った事が無いと言っていた。とあれば東京駅のシンボル、レンガ造りの丸の内側の中央口に出るのではないだろうか。
外に出た。が、レンガは全く見えない
外に出た。が、レンガは全く見えない
東京駅正面は今こんな状態だ
東京駅正面は今こんな状態だ
工事中とは知っていたがここまで大々的とは。人通りもあまりなく、ここにいる可能性は無いなとすぐ思った。さっき通ったSL動輪を経由してまだ見ぬ八重洲口の外に行ってみる事にした。
こりゃいないね、と話しながら絵と記念撮影
こりゃいないね、と話しながら絵と記念撮影
その頃北山さんはSL動輪前にいた!
その頃北山さんはSL動輪前にいた!
なんと、私が絵の前でWピースをしている頃、北山さんはこれから私達が向かおうとしているSL動輪の前にいたようだ。急げ自分!
「あれが丸ビルだっけ?新丸ビル?まあどっちでもいいかー」
「あれが丸ビルだっけ?新丸ビル?まあどっちでもいいかー」
「さっきもここ来たんだよ」と友人に説明中。それはいいから早く行け!と今なら思う
「さっきもここ来たんだよ」と友人に説明中。それはいいから早く行け!と今なら思う
北山さんいなくなってた。あと3分早ければ・・!
北山さんいなくなってた。あと3分早ければ・・!
あまりに東京駅の様相が変わっていたのと久々に丸の内の景色を見た事で無駄話をしてしまい、SL動輪についたのは北山さんから遅れる事3分後。あー惜しかった!
めちゃくちゃ接近していたのだ
さっき撮れなかった記念写真が撮れた
さっき撮れなかった記念写真が撮れた
友人も
友人も
この悠長な写真を見る限り、北山さんには申し訳ないが、友人と会えた事で気が緩んでしまっている事が分かる。気がつけばあと残すところ24分。まだ行っていない八重洲口の外に向かおう。
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ここもさっき通ったけどまた通る
ここもさっき通ったけどまた通る
その頃北山さんは面白い鼻の絵の前。どこだここ・・
その頃北山さんは面白い鼻の絵の前。どこだここ・・
「こっち行くとキャラクターストリートっていうのがあって、そこでも写真撮りたかったんだー」
「こっち行くとキャラクターストリートっていうのがあって、そこでも写真撮りたかったんだー」
その頃北山さんはそのキャラクターストリートのJUMPショップ前
その頃北山さんはそのキャラクターストリートのJUMPショップ前
写真撮れて満足
写真撮れて満足
北山さんはほっぺタウン復活ポスター前
北山さんはほっぺタウン復活ポスター前
SL動輪からこっち、北山さんと同じような所を通っている様なのになかなか辿りつかない。私が北山さんのさっきいた場所に着くまでに、北山さんはその分先に進んでいる。このままでは一生会えないんじゃないか。アキレスと亀理論だ。
八重洲口の地上に出る。時間的に最後の舞台だ。
八重洲口の地上に出る。時間的に最後の舞台だ。
うわこれまた広そうだなー・・
うわこれまた広そうだなー・・
あの黒い人かと一瞬思ったが、違った
あの黒い人かと一瞬思ったが、違った
私「あの黒い服の人かと一瞬思ったけど違ったみたい。」
友人「もしそうなら写真撮るためにカメラ持っているだろうしね」


そのとき黒い服の人、タイミングよくポケットからカメラを取り出した。
本人だった!!
本人だった!!
こちら北山さん。お疲れ様でした!(せっかく登場して貰った所で記事は終了。しかもピンボケ)
こちら北山さん。お疲れ様でした!(せっかく登場して貰った所で記事は終了。しかもピンボケ)
パッと見て疲れた様子が別人に見えたのだが、タイミングよくカメラを取り出してくれたお陰で気になり、ちゃんと近づいて見てみたら本人だった。おー!

下のルート図が示すとおり、北山さんは改札の外の色んなところを歩き尽くし、あとどこを周ればいいのか考えながら休憩していたそうだ。
大体で見てください。
大体で見てください。
北山さんはまず丸の内中央口へ出たが何も無かったので移動。大丸辺りが人通りが多かった。人が多い方が待ち合わせ場所として利用されるだろうと、そこを中心に探していたとの事。

私が着いた時は人は少なくなっており、閉まった大丸の白シャッターの前に黒い服で1人いたというのが目についたのだが、それは別に狙っていた訳ではないと言う。
北山さんの最後に撮った写真。大丸の写真ばかりだった。
北山さんの最後に撮った写真。大丸の写真ばかりだった。
そうやって、色んな偶然が重なった時に人は出会うのか。この感覚、何でもすぐに繋がれる現代では感じにくい、貴重なものなのかもしれない。

おかげで東京駅に詳しくなりました

制限時間がある中で、1人会えれば成功と思っていた。また失敗パターンかもしれないとドキドキしながら探していた。ところが実際は30分で友人に会えて、最終的に全員そろった。それぞれ、自分がどういう思考で行動したのか、また、「自分も同じとこ通ってた!」と写真を見ながら楽しげに話をした。バラバラにスタートしたみんなが共有した80分後の興奮。面白い。

あの時こうしなかったら会えなかったんだよなあとか、他の人ならどう行動していたのだろうかとか、私と全く同じ行動をする人がいるかもな、とか、想像が止まらない。出会いって、改めて凄いと思った。
写真に時間を入れるとニュースに見える事も発見
写真に時間を入れるとニュースに見える事も発見
それにしても・・北山さんに随分歩かせたものだとマップに線を入れながらただ今反省中。
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