特集 2011年7月6日

いなかっぺ大将の涙クラッカーを作りたい

僕が5日間がんばった成果
僕が5日間がんばった成果
いなかっぺ大将というアニメ(原作は川崎のぼるさん)をご存じだろうか?青森から東京に柔道修行にやってきた風大左衛門(通称大ちゃん)が主人公のギャグアニメだ。一つ人より~♪というテーマ曲を知ってる人も多いだろう(動画)。

今日は、そんないなかっぺ大将、大ちゃんの涙をテーマにしたいと思います。

※編集部注:文中にでてくる各作品について若干のネタバレを含むことがあります。今から見ようと思っている方はちょっとだけ読み飛ばしてください。
あばよ涙、よろしく勇気、こんにちは松本です。

1976年千葉県鴨川市(内浦)生まれ。システムエンジニアなどやってましたが、2010年にライター兼アプリ作家として自由業化。iPhoneアプリはDIY GPS、速攻乗換案内、立体録音部、Here.info、雨かしら?などを開発しました。著書は「チェーン店B級グルメ メニュー別ガチンコ食べ比べ」「30日間マクドナルド生活」の2冊。買ってくだされ。(動画インタビュー)


> 個人サイト keiziweb DIY GPS 速攻乗換案内

涙クラッカーとは?

いなかっぺ大将の大ちゃん。師匠が猫だったり色々おかしなとこもあるのだが、個人的に一番おかしいと思ったのは涙だ。大ちゃんはよく泣くのだが、「どぼじでどぼじで」と泣きつつ、涙の玉がアメリカンクラッカーの様にカチカチとぶつかる。
涙が個体となってぶつかり合うという個性的な表現。
涙が個体となってぶつかり合うという個性的な表現。
涙は液体なのでカチカチとぶつかるのはおかしい。と、ギャグマンガに無粋な突っ込みをする。それに、玉になるほど大量の涙はそうそう出ない。どんなに号泣しても、直径5cmはあろうかという玉を作るのは難しいだろう。

今回はそれをやってみようと言うことだ

ギャグマンガでやってる事を真に受けて真似すると結構死にがちなのだが(特にこち亀は死ねる)、涙のクラッカーを作るのなら死にそうにはない。

なので、今回はそれをやってみようという訳だ。要は、涙をたくさん集めて個体にすればいいのだ。
この瓶で涙を集めるのだが、以前ラー油が入っていたので少し中華っぽい匂いがする。
この瓶で涙を集めるのだが、以前ラー油が入っていたので少し中華っぽい匂いがする。
涙が流れてきたらこうして受け止める算段。
涙が流れてきたらこうして受け止める算段。

瓶で集める

涙を集めるのに小さなガラス瓶を用意した。蓋がないと涙が蒸発したりこぼれたりするので蓋は必須。あとは僕が泣いて、涙が流れたら目尻に瓶を付けて涙を貯めればいい。

簡単じゃないか。
「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」はガチ。
「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」はガチ。

とにかく感動しまくればよい

泣くには感動すればいい。まず最初は、こないだまで深夜にフジテレビで放送してた「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」だ。

主人公だけ「めんま」という死んだ幼馴染みの幽霊が見えて、めんまを成仏させるために、高校生になりすっかり仲が悪くなったかつての仲良しグループ(超平和バスターズ)が集まって花火を打ち上げるという話。

最終2話を録画してあったのでそれを見た。一度見ているのだが何度見ても涙が溢れてくる。めんまが可愛すぎてツライ。「ずっと仲良し」だけで5滴は泣ける。
1分で泣いた。
1分で泣いた。
今期(放送クールの事です)最も泣けるアニメとして名高い「あの花」だけあって破壊力は抜群だ。何度見ても泣ける。今また見ても泣けると思う。
良い最終回だった。
良い最終回だった。
結局あの花の名前がなんだったのかはよくわからなかったけど。
7年前には号泣した映画。
7年前には号泣した映画。

この調子で泣きまくろう

最初のあの花ですっかり涙腺がゆるんだので、畳みかけるように「いま、会いにゆきます」だ。生き返ることで定評のある竹内結子さんが、やっぱり生き返って(オチ的には生き返りではないが)、色々あって感動する話だ。

2004年の公開当時、映画館に1人で見に行って始まって3分で泣いた。それでDVDが出た時に買ったのだが、なんと封を切っていなかった。7年ぶりに見て泣けるだろうか。
なんで7年前の僕は号泣したのか。
なんで7年前の僕は号泣したのか。

全く涙出ず

7年前の僕はどうかしてたのかも知れない。そう思うくらいサッパリ泣けなかった。人の号泣ポイントは、時間の流れの中で変わっていくものらしい。

確かに7年前の僕は泣いたのだが、今はさっぱりだ。あの頃の僕と今の僕を比べると、今の方が大分幸せなので泣けなくなったのは良いことなのだろうと思う。

「いま、会いにゆきます」はノー涙でフィニッシュです。

では、次だ。まだまだ涙は足らない。

トイ・ストーリー3

泣ける映画無い?と妻に聞いて出てきたのがトイ・ストーリー3。本当は1と2も見た方が良いらしいが、話はわかるだろうし泣けるのは3なので、と渡された。

内容としては、動いて喋るおもちゃ達が保育園の年少組送りにされて苦労したあげく脱走する話だ。当サイトライターの北村さんも泣けるって言っていた。期待大。
1と2すっ飛ばして3を見る暴挙。
1と2すっ飛ばして3を見る暴挙。
「あの花」と「トイ・ストーリー3」のおかげ。
「あの花」と「トイ・ストーリー3」のおかげ。

結構たまってきた

トイ・ストーリー3はいい話だった。1の頃は子供だったおもちゃの持ち主アンディも成長し、大学生になっておもちゃを卒業する。もう遊ばないおもちゃ、でも捨てられない。アンディの成長は嬉しいが、遊んで貰えなくて寂しいおもちゃ達は、自分はいらない存在だと思い込み家を出る。

そんな心のすれ違いが切なく、でも最後は綺麗にまとまった良い映画だった。

良い映画なので感動して泣いた。涙は「あの花」の分と「トイ・ストーリー3」の分で結構溜まってきた。

でも涙クラッカーを作るには足らないのでもっと頑張って泣こう。

映画館で泣こう

テレビの録画と家にあったDVD(またはブルーレイ)を見て泣いてきたわけだが、今度は外だ。映画館で映画を見て泣いていきたい。

そうしてやってきたのは新宿の映画館。見る映画は、「そらのおとしもの」だ。
映画の日に見に行ったので1000円。
映画の日に見に行ったので1000円。
主に妻が見たがっていたので行ったのだが、「そらのおとしもの」はおおむねギャグアニメだ。パンティが鳥のように羽ばたいて世界を渡ったりする、爽やか変態ギャグアニメだ。

「証言者 バカ」の部分で笑ったが、泣くシーンは無かった。でも隣を見たら妻がクライマックスで泣いていた。つくづくこの人の泣きポイントは判らない。

僕は泣けなかったので、ノー涙でフィニッシュです。「爽やか変態ギャグアニメ」で泣けるわけが無かった。
涙瓶はこうしてスタンバイしていたのだが。
涙瓶はこうしてスタンバイしていたのだが。

続きましては「127時間」

映画館2本目は、127時間。登山やクライミングが好きなアウトドア青年がうっかり岩と一緒に谷に落ちて、気付いたら岩に腕を挟まれて抜けなくなった話だ。
とにかく痛くてつらい話。
とにかく痛くてつらい話。
どんなに頑張っても腕は抜けず、最後は凄く痛い展開になる。その結果に達するまで127時間掛っているのだが、食べ物も水もわずかしかない状況の中、朦朧とした意識で主人公は過去を顧みる。

感動はしたのだが、感動よりも痛さが勝ってしまったので涙が流れるところまではいかなかった。

涙を流すのって難しい。泣くという現象はかなり繊細なのかも知れない。
5枚借りてきた。
5枚借りてきた。

レンタルビデオで泣こう

映画の日とは言え1本見るのに1000円掛る映画館で泣くのは高く付く。なのでレンタルビデオ店で感動できる映画を借りてきた。1本100円だ。

借りたのはまず5本。

「ジョンQ」、「ライフ・イズ・ビューティフル」、「奇跡のシンフォニー」、「最高の人生の見つけ方」、「ぐーぐーだって猫である」。

モースト涙ムービーは「奇跡のシンフォニー」

結論だけ書くが、5本のなかで最も泣いたのは「奇跡のシンフォニー」だった。

ギタリストの男とチェリストの女。一夜の関係で子供が出来ちゃったけど、女の方は出産直前に轢かれて入院。生まれた子供は父親が勝手にどこかの施設に預けてしまって男も女も子供もバラバラ。でもそんな両親の音楽的才能を引き継いだ少年は音楽に導かれ、両親にとって出会いの地であるNYへ。悪い大人に騙されたりもしたけれど、私は元気です、という映画。

少年が音楽に目覚めていくとこも感動したし、知らずにそれぞれが会ったりすれ違ったりするもの感動したし、最後のクライマックスでは嗚咽した。
すげーよかった。
すげーよかった。
明るい雰囲気と悲しさが同居する高度な映画。感動はしたが僕には高度すぎた。でも10滴ほど採取出来ました。
明るい雰囲気と悲しさが同居する高度な映画。感動はしたが僕には高度すぎた。でも10滴ほど採取出来ました。
末期癌のじいさん二人で旅に出る話。これも泣いた。
末期癌のじいさん二人で旅に出る話。これも泣いた。
飼い猫と死に別れるという経験がないので泣けず。良い映画でしたが。いきなり吉祥寺紹介とか入ってシュール。
飼い猫と死に別れるという経験がないので泣けず。良い映画でしたが。いきなり吉祥寺紹介とか入ってシュール。
アメリカの糞みたいな健康保険問題を扱った映画。良い映画だけど泣けず。
アメリカの糞みたいな健康保険問題を扱った映画。良い映画だけど泣けず。

涙が足らないので2枚追加

奇跡のシンフォニーが大変に泣けたのだが、まだちょっと涙が足らない。見終わった5枚を返しにいったら、おすすめされたけど前回は借りれなかった映画が返ってきてたので借りてきた。

「鉄道員(ぽっぽや)」と「秒速5センチメートル」だ。鉄道員は妻の一押し、秒速5センチメートルは当サイトライターのM斎藤さんおすすめだ。M斎藤さんは始まって5分で泣いたって言っていたので期待できる。
涙の追加、なるか。
涙の追加、なるか。

鉄道員で号泣

佐藤乙松は、JR北海道の駅長で鉄道一筋40年。なにがあっても鉄道員を務めてきた。そんな乙松の定年間近に奇跡が起きた、という話。鉄道員としてひたむきに生きる様と、夫や父としては不器用な乙松(高倉健さん)の姿に涙が流れた。

途中、二人きりの座敷で小林稔侍さん演じる仙ちゃんが高倉健さんに「ずっと俺と一緒にいてくれ、な、ポー!!シュッシュッシュッシュッ」って迫るとこはビックリしたけど。
問題のポー!シュッシュッシュッのシーン。
問題のポー!シュッシュッシュッのシーン。
かなり増えた涙。
かなり増えた涙。
背景というか映像はすごく綺麗だった。光の表現とかすごい。
背景というか映像はすごく綺麗だった。光の表現とかすごい。

秒速5センチメートルは泣けず

秒速5センチメートルは淡い恋のうつろいを描いた作品で、小学生の頃に始まった恋愛は、それぞれの引っ越しで終わり、それでも男は初恋を忘れられず、女の方はすっかりいい思い出になって結婚間近、という話(超大雑把)。

遠くにいるしかない自分が苦しくて、子供な自分は相手を思いやれなくて、切なくて、ただ時間が過ぎていく、みたいな話。読点が少ないのはオマージュです。

M斎藤さんは5分で泣いたと言っていたが、5分って言うと女の手紙が朗読されつつ、山崎まさよしさんのOne More Time Chanceが後ろで流れるシーンだ。凄く詩的で良いシーンだが、涙は出てこない。僕が中高生の頃にそういう淡い恋をしなかったからだろうか(M斎藤さんの恋について不明)。

これくらいでいいか

5日間、映画とかアニメを見まくって泣きまくって涙を貯めまくった結果、結構な量になった。涙って普通は一滴一滴の雫の形でしか見ることがないので、こうして瓶に貯めてみると涙に見えない。白濁していて、なんだかポカリスウェットみたいだ。

なんかホコリみたいのが漂ってるし、正直言って汚い。涙が美しいってのは都市伝説だった。
エル知っているか、涙は白く濁っている。もっと貯めたいが、そろそろ書かないと締め切りだ。
エル知っているか、涙は白く濁っている。もっと貯めたいが、そろそろ書かないと締め切りだ。

凍らせよう

僕の涙は大ちゃんの涙と違って常温では液体で、アメリカンクラッカーにはなり得ない。どうやって固体にするかって、一番簡単なのは凍らせる方法。ゼラチンで固める手も考えたのだが、一応ゼラチンは食べ物だし最後にスタッフが美味しく食べるのは嫌なのでやめといた。

丸い氷を作る製氷皿はあるが、そういうのはもっと汁がないと作れないので自分でこさえる事にした。こういう時にはエポキシパテが便利だ。
A剤とB剤を混ぜると硬化する。硬化前に形を作って待つだけ。
A剤とB剤を混ぜると硬化する。硬化前に形を作って待つだけ。
半球を2個作ってくっつける算段。ちょっと大きすぎたか。
半球を2個作ってくっつける算段。ちょっと大きすぎたか。
小さめのも作った。最初に球を作って、それにワセリンを塗って雌型を作る訳です。
小さめのも作った。最初に球を作って、それにワセリンを塗って雌型を作る訳です。
半球の大小が2セット完成。
半球の大小が2セット完成。
ちょうどいいスポイトがうちにあったので、それで涙を型に入れた。型にはワセリンを塗っておいたので外すのも簡単だろう。
いよいよ佳境な訳です。
いよいよ佳境な訳です。
4つの型に移したら大体涙が尽きた。なんとか足りてよかったが、失敗したら記事が書けないので(いや、失敗しても書けるか)割とドキドキでアル。
凍るのを待ちます。
凍るのを待ちます。
涙ってちゃんと凍るのだろうか。
凍ったが、なんだか氷が粗い。やっぱ塩分入ってると凍りにくいか。
凍ったが、なんだか氷が粗い。やっぱ塩分入ってると凍りにくいか。
おお、凍った。次は、涙を型から抜いて半球の平らな面同士をくっつける。間に涙を塗ってまた凍らせれば溶接の要領でくっついて球状の涙氷が出来るはず。

さて、型から外すか。と、ピンセットで外そうとしたら、割れた。
全部割れた。
全部割れた。

あわわわわわ

当サイトの工作では大体、型から外すとこで失敗する。今回もそのパターンに則ってちゃんと失敗した。いや、ちゃんととか言ってる場合じゃない。

しょうがないので室温に出しておいて涙が溶けたら糸を入れた。

凍ったら糸を引っ張れば氷が抜けるという目論見である。今度こそ上手くいくか。
紐を引っ張れば抜けるイメージ。
紐を引っ張れば抜けるイメージ。

半球が出来た

糸を引っ張ってみると、少し割れたけど型からポコンと外れた。見事な半球である。
思ったより上手くできたよ。
思ったより上手くできたよ。
これを2個くっつければ球状の涙が出来上がる。いよいよ完成が近づいてきた。
まだこの段階では分離してしまう。
まだこの段階では分離してしまう。
半球の涙氷をくっつけて、隙間に余っていた涙を注入。でもってまた冷凍庫へ。注入された涙が半球の涙を溶接して、球状の涙氷が出来上がった。

やほほーい。
若干崩れたが、「涙の玉」と呼んでもいいかもしれないものが出来た。
若干崩れたが、「涙の玉」と呼んでもいいかもしれないものが出来た。
で、出来た(と言い切らせていただく)。多分世界初の、リアルいなかっぺ大将の涙クラッカーだ。自分で言うのもなんだが、素晴らしい。頑張って泣いた甲斐があった。
美しい。涙が美しいのは都市伝説ではなく、古き言い伝えはまことであった。
美しい。涙が美しいのは都市伝説ではなく、古き言い伝えはまことであった。
ちょうど良い具合に糸が出ているので、これをセロテープで顔に留めた。あははは、いなかっぺ大将だ!
いなかっぺ大将あらわる。そう言えば僕も柔道やってたり田舎出身だったりして、結構いなかっぺ大将だ。
いなかっぺ大将あらわる。そう言えば僕も柔道やってたり田舎出身だったりして、結構いなかっぺ大将だ。
涙でアメリカンクラッカーをする様子を動画で撮りました。会社からでなければご覧ください。
いきなり音出るけどビックリしないように。

5年くらいごしにやっと出来た

実はこの企画、5年くらい前からやりたいって言っていた。でも涙を溜めるのが面倒くさくてずっとやらずにいた。

ところが先日「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の最終回を見たらボロボロ泣いて、その涙がもったいないのでためることにした。

凍らせた涙は溶かして瓶に戻したので、また今度号泣する機会があったら涙をためて今度はもっと大きな涙氷を作ってみたいなとか思ってます。
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