馬+ロバ+鹿+牛=ゾウ
アフリカゾウやアジアゾウのようにゾウという名前が付くシフゾウ。しかも聞いた話では「頭は馬」、「体はロバ」、「角は鹿」、「蹄は牛」なのだそうだ。おいおいどんな生き物なのだ!
これはアジアゾウ
それに「シフ“ゾウ”」というくらいなので、やっぱり鼻も長いのだろうと思う。馬とロバと鹿と牛がミックスされた上にゾウ。UMAみたいだ。それらの情報からシフゾウを想像すると、とてつもなく派手な夢のような生き物になる。
シフゾウ想像図(イラスト:ヨシダプロ)
ヨシダプロにシフゾウの想像図を描いてもらった。「頭が馬で体はロバ、角もあってそれは鹿で、蹄が牛です。名前はシフゾウです」とお願いしたら上のイラストになった。
僕の想像するシフゾウもまさにこれ。
恋に恋する女子中学生のように、僕のまだ見ぬシフゾウへの期待はどんどんと高まった。今だかつてこんな動物を見たことがない。
動物園にやって来ました(楽しみでテンション高いです)
期待でルンルン
やって来たのは多摩動物公園。
ここにシフゾウがいるそうだ。楽しみで仕方がない。小気味良いテンポの音楽が流れてくれば踊りだしそうだ。いや、今の僕ならバラードでもサンバのリズムで踊れるかもしれない。
園内の地図を見る
入ってすぐに園内の地図を見た。そこには間違いなく「シフゾウ」とあった。しかしそれを見て不安を感じた。
名前と一緒にシルエットもあったのだ。
そのシルエットが地味。ゾウなのに鼻は長くないし、鹿とトナカイを足して2で割ったような感じなのだ。三万円落とした時のような絶望にも似た「え…」を発してしまった。
地図にあるシフゾウ
僕の想像するシフゾウ
やっぱり地味だ。
とりあえずバラードでもサンバのリズムで踊れるというテンションはなくなった。でも、まだ分からない。地図のシフゾウはシルエット。毛の色がパッションピンクとかだったらまだ逆転はある。
途中で見かけたニホンジカ
シフゾウへと向かう途中で、僕はまたバラードでもサンバのリズムで踊れるテンションを、取り戻しつつあった。
大人気のパンダだってシルエットにすれば熊だ。新垣結衣だってシルエットにすれば、高校のクラスメイトの焼きそばパンをがっついていた女子と変わらない。
だからシルエットは地味だけれど、期待してもいいのではと思ったのだ。そんな期待を取り戻した頃に、僕はシフゾウの前へと辿り着いた。
ど~ん
ど~ん、ど~ん
シフゾウ登場
地味だ。
シルエット通り地味だ。しかもシフゾウのテンションが低い。僕の高いテンションの行き場がない。お釣りをもらおうと手を出したら、店員がトレーにお釣りを置いたみたいな感じ。この手の行方はどうなるのだ。
奈良で見た!
修学旅行で行った奈良公園で似たようなのを見た気がする。僕が聞いた「頭が馬」などの情報が間違っていたのかと疑ったけれど、それは間違いではないようだ。
書いてあるから間違いない
馬とロバと鹿と牛に似ているけれど、その動物ではないから「四不像」と言うそうだ。ゾウの字が「象」ではなく「像」なのがポイント。「像」なのだから「象」の要素が入っている必要がないのだ。そりゃ、鼻も長くないはずだ。完全に僕の一人相撲だった。横綱級だ。
確かに牛っぽくて馬っぽくて、なんか鹿っぽい(ロバはあまり見たことがないのでピンと来なかった)
ユキヒョウやオラウータン、そしてゾウの前には人だかりができていたけれど、シフゾウの前には僕しかいなかった。おかげでゆっくりシフゾウを堪能できた。その結果分かったことは地味だけれどかわいい、ということだ。限りなく地味だけどその中にかわいさがある気がする。
地味であることに違いはないけれど
モテるにはギャップが必要だと聞いたことがある。美人なのにちょっと訛っているとか。そう考えるとこのシフゾウはかなりのギャプを持っている。派手そうなのに地味なのだ。
派手そうなのに、
地味
四不像の像
シフゾウはもともと中国に多く生息していたそうだ。しかし現在では野生のシフゾウは絶滅している。いまは動物園でしか見ることはできない。
さらに国家一級保護動物に指定される貴重な動物だそうだ。国家一級保護動物にはパンダも指定されている。人気のパンダと同じ並びにシフゾウもいるのだ。こっちは地味で人気ないけど。
シフゾウの角を体験していのだけど、多くの人はシフゾウの前をスルーして行った
そういえば僕も、白魚のような手、カモシカのような足、子犬のような笑顔、イルカのようなキュートさを持ち合わせている(じっくり見るとそれぞれ類似点があると思う)。
しかし、それを聞いて僕に会うときっとがっかりするだろう。ハードルが高すぎる。馬、ロバ、鹿、牛を持ち合わせるシフゾウを見て地味だとがっかりしたように。シフゾウと僕の共通点に気がついてしまった。
「レッサーパンダのしっぽ」をかじる地主
さらに僕の名前は地主と言う。
それもがっかりポイントだ。シフゾウがゾウで無いように、僕も地主なのに地主ではない。土地もお金も全く持っていないのだ。シフゾウを地味だとバカにできないと気がついた午後だった。
四不像の像に跨った
地味が好きだった
若干期待しすぎたけれど、シフゾウはシフゾウでかわいかった。いま思うと逆にその地味な感じが良かったと思う。僕の好みは「地味」なのだ。普段の僕も地味だ。取材に行った日はピンクのシャツを着ているけれど、この原稿を書いている今は灰色のシャツを着ている。昨日も別の灰色のシャツだった。お互い地味だから、かわいく感じたのかもしれない。向こうも僕をかわいいという目で見ていた可能性がある。それは照れる。