編集部日記 2025年8月29日

呪いが時代に対応して来る、きっと来る(2025.8.29 朝エッセイ/伊藤健史)

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伊藤です。
少し混み合った地下鉄で吊り革をつかんで立ち、電子書籍を読んでいると、ザリッ、ザザッと砂を噛むようなノイズ音が聞こえてきました。
私の前には50代後半から60代、中肉中背で白いシャツを着て白髪の短髪をきちっと整えた清潔感のある男性が座っています。どうやら彼のワイヤレスイヤホンから発せられているようです。

ああ音漏れね、と思ったのですがよく聞くと、ノイズに人の声が混ざっているのに気づきました。抑揚のない呟くような女性の声。何を話しているのかはわからないが、誰かに語りかけているようにも、念仏のようなものを虚空に唱えているようにも感じられ、一言で言えばかなり不気味でした。

近くの乗客たちも眉をひそめています。時間にして3~4分程でしたが、状況の奇妙さに拍車をかけたのは、男性が穏やかな表情で目を閉じて腕を組み、微動だにしないことで、まるで我々にだけ聞こえているかの様でした。

「貞子」

私の脳裏に、今や国民的ホラーアイドルとなった「リング」「らせん」の貞子が浮かび上がりました。長い髪をだらっとした白装束のあの人ですね。

作品では彼女の怨念が込められた「見ると死んでしまう」ビデオテープが次々と見た人を呪い殺してゆくのですが、年月は流れ、ビデオはもはやマニア向けメディアになってしまいました。

貞子をもってしても、メディア環境の変化に柔軟に対応できなければ、呪いをかけるのは不可能。ならば、今、呪いをどう発信するのか。DVDももうそんなに出回ってないしね。
Youtubeやスポティファイで配信し、あわよくば音漏れを通じて不特定多数に呪いをバズらせる。呪いを運営する上できわめて合理的なメディア戦略ではないでしょうか。

あれから1週間ほど、呪いの音漏れを聞いた面々はつつがないだろうか。私はやや胃腸が不安です。音漏れだと呪いの効き方もこんなものなのでしょう。

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プレーヤーがなくなって見られないDVDソフトたち

そんなわけで本日の記事をアレいたします。

「最北端の駅というものがある」というおなじみの地主イントロがじわじわ来る最北端満喫紀行。とてつもないバイタリティで動き回る地主さんが切り取る最北端のやや青みがかかった風景が旅情をかきたてまくります。そしてなにあの蕎麦!こんなん行きたいでしょう。

「紙ストローになったのにゴミ箱のプラスチック表記にはストローの絵が?」とりもちさんが、ふとした気づきの真相を探るためにマック新店舗を巡ります。好奇心のおもむくまま、気がついたら昼から晩までマックずくし。マック愛あふれるクエストをお楽しみください。

そして....あの伝説のイベント「ほめられ屋敷」が復活します。なんと13年ぶりとのこと、アメリカの素数ゼミみたいですね。熟練のほめスタッフたちが参加者をほめにほめまくる、気持ち良さを絞ってさらに気持ちよさを抽出したような催しです。参加すべし。

16時はみなさんの「買ってよかったもの」特集、今月も購買意欲を刺激するしぶアイテムが目白押しです。コメントからいろんな人の生活が垣間見えるのも楽しいですね。
いつか買ってよかったものだけで作ったゲストハウスでみんなで暮らしましょう。


またお会いしましょう。

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