「だいじょぶ。駐車場に行ってみよう」私よりさっちゃんの方が元気である。さっちゃん隊長。とぼとぼ広い裏の駐車場を歩いていると、なんとさっちゃんの目の前をゲンが駆けぬけた！　入ったのは栗林家の右後ろに隣接しているＫ家の庭。ジャングルとみまごうばかり、うっそうとしている。

えーわかんないよーと弱気でいると、さっちゃんが「音が聞こえる」という。「あそこあそこ！」じーっと目をこらしてみると、いた！　草と草の間にすわって、こちらを振り返っている。まさに保護色。動かなければまったくわからない。チーターにむかし猿人が食われてたわけだ。じっとしてるとチーターではなく蚊に食われる。ゲンも蚊に食われて帰って来るそうだ。この庭で食われてたんだなー。

蚊に食われながらもヒマなので今まで撮った写真のチェックをしていたら、いつのまにか、ゲンの姿が見えなくなっていた。「ゲンゲーン」とさっちゃんの呼び声がジャングル庭にむなしく吸いこまれる。沈黙。もうＫ家の庭にはいないようだ。ぐるりとまわって、さっきゲンを見つけた室外機のすきまに行ってみる。いない。

しばらくあたりをうろうろしていたが、あきらめて栗林家に帰る。おとなりの庭を手入れしていたおばさんに「ネコならウチにいたわよ」と言われる。「おとなり」というのは、ゲンがさっきまでいたＫ家の裏にあたる。そうか。意外と行動範囲は狭いらしい。クリさんが「キャタツを探してみる」と庭の倉庫をごそごそしてると「おとなり」の方からゲンが現れ、猛ダッシュで庭を反対側へと駆けぬけた！

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