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はっけんの水曜日
 
親に自分の職業を体験してもらう

意外とかわいらしい

以上、西村父が取材執筆した記事を御覧いただいた。

小見出しのタイトルなど、いくつか抜けているところはぼくが補ったが、ほぼそのまま、69歳の取材記事である。


木漏れ日のあるテラスで原稿を執筆する父

初めての取材で、緊張している様子が伝わっただろうか?

「スゲェー」とか「ハクリョク」みたいなカタカナを文章中にちょいちょいさし込んでくるのが80年代のファッション誌みたいでかわいいなと思ったが、どじょうすくいで使うザルのことを「ソーキ」という知らない言葉で表現するあたりは、69歳という年齢がひょっこり顔を出したようで背筋が伸びた。


父に書いてもらった原稿

後半部分はどじょうすくいおどりの意外なきつさについてである。

ここはぼくも一緒に踊ったのだけど、確かにきつい。

普段使わない筋肉を使っている感じがすごく、このまま1時間ぐらいどじょうすくいおどりをさせられたら確実に足がつって舞台上で醜態を晒すことになったかもしれない。

どじょうすくいおどりを一回踊ると、軽くジョギングしたぐらいの運動量はあった。69歳には少々堪えたかもしれない。

えらいオセになったな


安来節のCDに興味津々の父

改めて、取材と執筆をしてみた感想を父に聞いてみた。

ーー今回、取材と執筆をしてみてどうでした?
「どうってなぁ……自分の子供が、こがな(こんな)仕事しとるんだなぁっちゅうのはよぉわかったわい。引っ込み思案だった子供が人様と交渉して、いろいろと聞き出す姿はえらいオセ(おとな)になったなと思うわ」

ーー作文はずいぶん書いてないって言ってたけど
「作文はなあ……小学校の三年のときにいっぺんだけほめられたことがある、便所のそばの南天の木について書いてほめられた、それだけ」

ーー大人になってからは?
「さぁてなぁ……警察学校の試験の時に書いたっきりだな」

ーーえ! 警察学校受けたの?
「受けたで。で、受かったけど結婚して商売はじめちゃったけぇ、警官にはならんかったけど」

ぼくの知らない父親の意外な過去が出てきた。

警官になってればよかったのにとちょっと思ったが、たぶん警官になってたらぼくはここに居ない。

しかし、時を経て、息子のぼくは全くの趣味で警備員のまね事をしたりしている。


勝手に警備員」より

親子二代をかけ、警官の夢を歪んだ形で叶えた瞬間である。

奇抜なことをしてひとを驚かそうとする

話はしぜんとぼくの子供の頃の話になってくる。

「だいたいお前は、奇抜なことをしてひとをおどろかそうとすることがよおあったな(よくあったな)。爆竹をたばこの中に入れられたときは腰抜かしたわぁ」

この事件はぼくもよく覚えている。
たばこの中の葉っぱをほぐして取り出し、代わりに爆竹をしこんでテーブルの上に置いておいた事があった。
その後、自分の部屋に戻ってファミコンをしていると、居間の方から「パン」という乾いた音に続いて「う゛ぉ〜ぁ〜!」という鈍い悲鳴が聞こえてきた。

「びっくりして叫んだら、部屋からお前が青い顔して飛んできて泣いて謝るけぇ、わざと大げさに痛がる芝居しとったけどな、アハハ」

あ、あれ芝居だったのか……。

やっぱりよくわからないところもある

やっていけんのか?

今回、息子の仕事を理解してもらうために、父にライターの仕事として取材と執筆を体験してもらった。父はライターがどんな仕事をしているのかよくわかったという。

しかし、まだすこしわからないところがあるといってこんな質問をされた。

「(無料サイトの記事で)どうやって儲かってるのかがわからない。やっていけんのか?」

それはぼくにもわからない。



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