中華料理屋にて
午後5時40分。林さんが電話に出ない。朝から何も食べてないので夕飯でも食べながら待つことにした。はじめての町でどこが美味い店なのかわからない。ハンバーグが食べたかったのだがどこで食べられるのかもわからない。結局一番隅にあった中華料理屋に入ることにしたのだが、「隅」という立地にそのときの心理状態がよくあられているように思う。
石川F1はつけ麺と半チャーハンのセット、大北F1はサンマー麺を頼む。F1が完成したときのあの興奮が、電話が通じない焦燥感と満腹感によってみるみる削り取られていく。しかし石川F1は時折思い出したようにあの官能的なエキゾーストノートを発してF1化していた。このチャーハンを食べ終えてしまえば、おれはあのハングリーなF1の心を忘れてしまうかもしれない。そんなF1としての最後の抵抗だったのか。チャーハンを食べていても、これはF1なのだと思い知った。 |