特集 2023年4月12日

4月は大丈夫な日が多い~ 気象予報士・増田さんの詳しすぎる天気解説2023.4

ひょうが降る仕組み

林:
雹は雲の中の氷が溶けないで落してくるわけですよね。溶けない条件っていうのはなんですか。
増田:
雲の中には氷や雪があるんですよ。
それが落ち始めて、下に行くほど気温が上がるから溶けて雨になるんですけど、雹ができる積乱雲の中では、すっごい上昇気流が起きているんですね。
すっごい上昇気流が起きているから、そうすると氷の粒が落ちてきて溶け始めたと思ったら上昇気流で戻されちゃうので、表面が溶けてきたのにまた冷えて固まる。
そのときに周りの水滴だったり、氷の粒をくっつけて大きくなる。
この繰り返しで、どんどん氷がでかくなっていく。

雲のなかで上下する間に大きくなる氷が雹として落ちてくる

林:
溶けないんじゃなくて、氷が大きいんですね。
増田:
大きいまま落ち始める。大きいから溶けてはいるんだけど、なんとか溶け切らずに落ちてくる。
林:
ゴルフボールの大きさのが降ってきたって言うけど、上空ではもっとでかいんだ。
古賀:
怖すぎる。
林:
でも、ちょっと見たい。
古賀:
ブルジュ・ハリファとかだったらすごいでかいってことですか。
増田:
高いビルぐらいならそうでもない。2000年5月24日だったかな。茨城・千葉にびっくりするぐらいの雹が降って、みかん大が当たり前でソフトボールぐらいのもあって。氷の塊たちで車が半分埋まっているんです。あれは衝撃受けましたね。

林:
飛行機がその雲に突っ込んだら大変。
増田:
ですよね。だから飛行機は積乱雲を避けなきゃいけない。激しい乱気流があるというのもありますけど。
林:
雲って空に浮かんでファンシーなイメージありますが。めちゃめちゃ怖いですよね。
古賀:
ドラえもんが雲を作って遊ぶとか。でも氷が上下してるわけでしょ。怖すぎるでしょ。
増田:
SASUKEみたいにかわしてく。
林:
命がけ

ひょうの大きさ世界記録は熊谷

増田:
今までで溶け切らずに一番大きかった世界記録は日本が持っていて。熊谷です。
林:
また熊谷。
古賀:
気象ポイント。
増田:
かぼちゃ大のひょう。
古賀:
それぶつかったら死ですよね。
増田:
大正6年。気象庁のオフィシャルの記録として残っている。かぼちゃ大のが降りました。ひょうで人が亡くなったとは書いてないかな。(記録)
林:
内陸だと降りやすいんですか?
増田:
そうですね。山の近くであるのも上昇気流が起こるきっかけになりますし、海と地面だったら地面のほうが夏は熱せられやすいので激しい上昇気流が起こってモクモクなりやすいという面はあります。
林:
熊谷で暑いのも雹が降ったのも無関係ではないというか、原因は一緒。

増田:
このときの状況が昔過ぎてわからないんですけど、6月の終わりなので、暑かったんでしょうね。それも影響してモクモク大きくなったんでしょうね、雲が。
林:
熊谷の気象台楽しそうですよね。
古賀:
記録的なことがいろいろあって。
林:
メリハリがあって。
増田:
雹ね。あとは東京でもありましたよね。2014年だったかな。
小林:
町田のほうがめっちゃありましたね。
増田:
道が雹だらけになったのは。なんだっけな。三鷹だったかな。2014年だったと思いますよ。
小林:
2014年6月24日。さすが増田さん。覚えてるわー。
増田:
ホントの夏になっちゃうと暑すぎて、溶けやすくなるので、4月から5月。5月がピークですね。太平洋側に関しては。6月の梅雨時ぐらいまでかな。
林:
逆に冬はできないんですか?
増田:
日本海側は秋から冬のほうが雹が多い傾向にあります。
日本海側って雪が降りますけどあのとき雷も鳴るんですよね。日本海側の雷は秋の終わりから冬が多いんですけど、そのときに雹も降ってきたりするので。
林:
雹、期待しちゃいけないけど、大きいの見たい。
増田:
雹の思い出は。中学校の部活の初日。仮入部が終わって5月のゴールデンウィーク明け。練習が終わるときの、気をつけ礼をするときに、ソフト部の向こうの子たちがきゃーって言い始めて、向こうから雨来た!こっち来た!バチバチバチって雹だった。
1990年の5月、6日7日8日ぐらいかな。雹の思い出はそれから。こうやってくるんだって。
林:
打ったりしなかったんですか。キャッチしたり。
増田:
整列中だったからグローブは置いちゃってた。

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クイズの正解者

林:
さて、3月のクイズは4月1日正午の気温でした。結果は20.9℃。
古賀:
20℃の人が。

武井崇さん 20.0℃ キリが良いから
ぽこぺんさん 20.0℃ ちょうどキリ良く

増田:
お見事!
林:
キリが良い感じで、という理由でした。
増田:
ふたりともキリが良い感じで。こういうときもある!
林:
低い人もいますね。反動があるのではという理由です。
増田:
素晴らしい。雨の日がちょっとずれれば全然ありえました。
林:
難しいですね。お2人キリの良い方が。
増田:
お見事です本当。

季節は前倒しているけど、梅雨と海開きは変わらない

古賀:
季節が前倒しになって困ってることって桜祭り以外にありますか?
増田:
夏すぎて、今度は紅葉が遅くなってる。だから、紅葉まつりはどんどん後ろにずらしていかなきゃいけないとかあるんでしょうね。いちばん明らかなのはゲレンデ開き。
古賀:
もうむしろ開けないみたいなニュースもやってましたね。
林:
冬が短くなっているということですか?
増田:
そうですよね。スキー場がちゃんとできるぐらいの雪が降るというのが遅くなっている。
林:
海開きは前倒さないですね。
増田:
海開きは7月1日のままが多いのかな。
林:
暖かいから5月にやっちゃおう、って話は聞かないですよね。
増田:
5月は関東周辺はなかなか気合がいりますね。寒中水泳まではいかないけれど。
林:
海水温も関係あるんですか?
増田:
海水温あるんじゃないですか。空気は先に暖まりやすいですけど、海を温めるのは時間がかかるので
林:
ゴールデンウィークに夏日になったからって海に入っても寒い。
増田:
あとは梅雨があるから。梅雨が明けて海だ!みたいなイメージで7月にしているんじゃないですかね。
林:
梅雨入りも早くなってますか?
増田:
それはないですね。梅雨前線って赤道近く、熱帯とかの水蒸気がいつ上がってくるかということなので、気温と軽くリンクはしていますけど、完全にはリンクしてない。
林:
梅雨前線は4月だと東南アジアのほうにいるんですか?
増田:
まだまだ。はっきり出てないですね。

2023年4月9日18時の衛星写真・まだ梅雨前線ははっきり出ていない

増田:
熱帯は水蒸気が多くて雲が湧きやすいんですけど、もうちょっとまとまるようになってから北に来る。5月の初めにお話をする頃には沖縄はもしかしたら梅雨入りしているかもしれないので、その頃にははっきりと出ているかもしれないですよ。 

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問題はゴールデンウイークの天気・増田さんのトラウマ

林:
4月のクイズはゴールデンウィークの天気にしましょうか。

増田:
ゴールデンウィークの天気というのは気象予報士の腕の見せどころですね。
昔は気象庁が今年のゴールデンウィークの天気と言って連休直前に発表するようなことをやっていたんですよ。
その当時に僕は背伸びして頑張ってしまったときがあって、まだ連休よりだいぶ前の4月20日前後に資料見たら高気圧がずっと来て、晴れ続くじゃん!気温上がるじゃん!と思って「晴天初夏型のゴールデンウィーク」って見出しで記事を書いたんです。
それがヤフートップにバーンって載って、うわー載ったー!って思ってたら、その年に限って晴れない晴れないw
ブログのコメント欄に何が晴天初夏型だってたくさん書かれました。ゴールデンウィークに無理し過ぎちゃだめ。
林:
なんでそんなに晴れなかったんですかね。
増田:
高気圧は西から東に次次と来てたんです。ただ、その来る位置がちょっと北にずれちゃってた。北日本はよく晴れていたんですけど、関東は全然晴れなくて。
林:
言いにくいですよね。北日本は晴れるんですよって。
増田:
火に油を注ぎに行くようなもの。
増田:
晴れが続くっていうゴールデンウィークもあれば、冷たい雨のゴールデンウィーク、前線が停滞するゴールデンウィークもあったりとか、けっこういろんな顔を持ちます。
古賀:
晴れてほしい。気持ちとしては。
増田:
専門的な資料を見ると、今年は日本付近はいつもの年よりも気圧が低いですよ。つまり低気圧がやってきやすいのかな。今の時点ではすごいアバウトです。 

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古賀:
現状はちょっと怪しげ。
増田:
あと参考になるのが天気出現率。
過去30年どんな天気だったかというのを平均して出したものですけど、東京の4月29日!おー!過去30年、晴れていた割合が73.3%、曇6.7%!そして雨が20%。
古賀:
まあまあ難しいですね。2割はあるよな。
林:
晴れかなー。
増田:
本命は晴れですよね。対抗馬が雨として、大穴は当然雹ですね。

ということで、みなさんも考えてください。希望でもOK!
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