これが雪を降らせている雲だ!(西村さん撮影)
西村:
これ、年末に五所川原で撮った写真です。
西村:
右手に低い山があるんですよ。梵珠山といって400m ぐらいしかないんですよね。
おそらく日本海から入ってきた湿った空気が梵珠山にぶつかって、雪がものすごい降るんですよ。
西村:
この入道雲みたいな雲が雪を降らせてる。よく見ると雪が降ってる場所がわかるんですよ。
西村:
400mぐらいの山でも雪を降らせるのには十分な高さってことですか?
増田:
数百mでもそこに風が当たって上昇気流が起こるわけなんですけど、その400mからさらにその倍とか、山の高さ以上に上昇気流って起こるわけですよね。
そこまで持ち上がっていけば、あとは雲がどんどんできて発達する。
西村:
標高400m で影響するんですね。
増田:
影響します。
冬もそうですし、夏でも例えば千葉県の南の丘陵地帯は標高 200~300m 台ですけれども、南から湿った空気が来たらそこにぶつかって千葉の房総の真ん中あたりだけぼこっと雨雲が湧くことがありますから。数百メートルでも天気を変える力はありますね。
増田:
冬の雲ってそんなに高くないんですよね。高さは4~6kmくらいのものが多い。夏の入道雲は13~15kmとかいったりしますけど。
気温が低いと水蒸気がすぐ水や氷になって雲になりやすいんですね。
林:
上空で結露するということですか?
増田:
そうです。目に見えない水蒸気が、上空に上がって露を結ぶ、つまり水になるわけですね。
で、冬は上空にあがって寒いからすぐに雲になっちゃう。
なので、低いところで雲ができるし、夏ほど大量に水蒸気があるわけじゃないので冬の雲は背が大きくならない。だからこうやって低いところから降ります。
林:
雲の上には青空が見えてますね。
冬は低い雲から雷が落ちる
増田:
あと、冬って雷が結構なりますから、低いところからズシーンとすごい大きな雷が鳴る。
西村:
なりました。一発だけ、ピカッ・ゴローンで終わりという
林:
雷が落ちてくる雲の高さが低いってことですか?
増田:
そう。一発ドーンとくるっていいますよね。一発雷とかいいますけど。
上空で気温が-10~-15℃くらいに低くなると、氷の粒がいっぱいできて、それが擦り合わさって静電気ができる。それが雷のもとになる。上空-10~-15℃っていう層がどこにあるのかが ポイントなんですね。
西村:
へええ
増田:
夏だったら-10~-15℃まで行くには相当上の方まで行かないといけないですが、冬に-10~-15℃だと結構低いところで雷のもとができる。低いところからズシーンと落ちるわけです。
東京の1月6日の雪は匂わせ低気圧
林:
1月6日の天気の話を聞きたいんですけど。南岸低気圧は遠くないですか?
注)太平洋岸に低気圧があると(南岸低気圧)関東に雪が降る
増田:
その低気圧は遠いですね。
林:
遠くても降るものなんですね
増田:
結果的にその北側にちっちゃい低気圧が発生して、それが降らせたんですよ。ここ、等圧線がちょっとだけ微妙に膨らんでますよね。
林:
え、どこ?
増田:
太い線が微妙に北に膨らんでますよ。そこになんかありますよ。
西村:
えー!
増田:
この天気図だけではちょっとわからないんですけれども、もうちょっと狭い範囲で専門的な天気図を見ると、風が集まって気圧がちょっと下がってて小さい低気圧があるんです。
コンピュータがない時代はこの膨らみを見逃さないかどうかが予報の別れ目だったっていいますね。
天気図を描く時はここに何かある、怪しいぞってことをわからせるために、わざとそこを膨らませられるかに技量の差が出るという話もありましたね。
西村:
天気図って人が描いてるわけではないんですよね
増田:
いまは基本コンピュータですね。最後に人の目でチェックをしていますが
西村:
気象通報とか聞いて自分で描くときこうやって膨らませられますか?
増田:
この時のデータを見てないので気象通報だけでできるかどうかは何とも言えないですね。細かいデータを分かっている段階だったら、「ここ何かありそう」と等圧線の膨らみで表現できるかもしれないです。
匂わせ天気図です。
どんどん積雪の予想が増えていった
林:
1月6日、気象庁からの発表がどんどん増えてったんですけど、これはよくあることなんですか?
1/5 15:59 東京23区でもうっすらと積もる所があるでしょう。
1/6 6:23 東京23区でも1センチの積雪となる所があるでしょう。
1/6 10:59 東京23区でも5センチの積雪となる所がある見込みです。
1/6 16:40 東京23区では10センチの積雪となる所がある見込みです。
増田:
あまりないです。ただ、関東・東京の雪を最初からドンピシャで当てるっていうのは、なかなかむずかしいんですよね。普段だったら雪の量を多めに言ってだんだんだんだん減らしていくという、例えるならドライバーでばーんと打って、アイアンで近づけて、最後パターで寄せる…というのがいつものパターンなんですが。
小林:
ゴルフだ。
増田:
今回は逆で、やっちゃったパターンですね。
西村:
1月6 日、朝の1cmの積雪の天気予報しか見てなくて、仕事で家から九段までバイクで行ったんですよ。 15 時ぐらいに打ち合わせ終わったらびっくりするぐらい積もってて。
林:
バイクに積もるぐらい
西村:
時速10kmぐらいでトロトロ走ってこけずに帰れましたけど、天気予報見てないとやばいですよね。
増田:
今回は完全に後追いでしたからね。
林:
僕らは雪の予報が大変だというのは知っているんでそういうものだろうと思ってます!
注)雪の予報が難しいのはこの連載頻出のテーマです。
増田:
でも、やっぱりやっちゃいけないんですよね。
ゴルフパターンにしなきゃいけないんですよ。大きく出しておいてだんだん寄せていかないと。
林:
今回、どんどん増えちゃった理由はあるんですか?
増田:
まず気温が低すぎた。
普通、関東の雪って雨からスタートしてだんだん雪に変わってきた→べちゃべちゃ→うっすらしてきた→積もりはじめる。というのが多いんですけど、今回は最初から雪でしたもんね。
林:
確かに最初から雪でした
増田:
地上の気温も低かったし、上空数100m ぐらいの比較的空の低いところの気温も氷点下で雪が降る条件が揃っていたというのはありますね。
雪質によって積雪の深さがかわる
増田:
気温が低いと同じ降水量でも雪の量が増える傾向があるんですよね。ふわふわしますからね。
西村:
あーなるほど
増田:
気温が高いと、べちゃべちゃしてそんなに積もらないですよね。気温が下がるほど、0℃前後よりも-1℃、-2℃と下がるほうが同じ降水量でも積雪が増える。
林:
スキー場でここは雪質がいいとかべちゃべちゃしてるとか言いますが、あれも気温の差なんですか
増田:
そうですね。そのスキー場がどれぐらいの気温かっていうのが大きいですよね。
西村:
雪質の問題はありますね。青森は傘をささないっていうのは、雪質がふわふわしてるから払えばなんとかなるんですよ。
林:
新潟の雪が湿ってるのは温度のせいですね
増田:
地吹雪、つまり積もった雪が巻き上げられるのは、気温が低いからこそそういうことがおこるわけで。新潟とか北陸の平野部ではなかなか起きない。
西村:
鳥取も豪雪地帯なんで結構降るんですけど、雪質が全然違うと思います。鳥取はべちゃべちゃしてます。
増田:
1月6日に東京の降水量 6.5mm に対して、積雪が10cm。これは珍しいです。
西村:
そうなんですか?
増田:
関東で雪が降るときは1mmに対して0.5cm、多くても1cmくらい。それぐらいが予報のセオリーとか言われるんですけど、この 1mm =1cm より大きかったというのは、それだけ気温が低かったというパターン。非常に予想が難しい。
林:
降水量と積雪量の関係を見るのは面白いですね。
増田:
東京で雪が積もったとき、近年を見てもやっぱり 1mm = 1cm ぐらい、場合によっては 2mm 1cm ぐらいのペースで積もってることが多かったですけど、今回は逆ですもんね。
林:
五所川原市庄原は12月24日、降水量12.5mmで29cmも積もってる。
西村:
ふわふわだ
増田:
雪予想の後追いは久々ですね。2013 年の成人の日にやっちゃったことがあったんですけど、ここまで大きくズレたのは、それ以来かもしれないですね。
林:
いや、あのこれは別に責める気は全然なくて。
増田:
…慣れてますから。
でもね、やっぱ進歩してきたなとは思ってるんですよ。雪予報も。
それでもなかなか、ぴったりというのは難しいなあと思いますね。
雪の予想が難しいことが分かったところで今月の予想問題です!
(この問題については昨日掲載のその1をお読みください)
ヒント
・積もらなくても降れば1日
・「雪」にはみぞれを含む
・夜中に降って日付を越えたら2日
・寅年です
分かっても分からなくてもエイヤでご回答ください。
正解のかたには次回本連載で増田さんからお褒めの言葉が与えられます。