ただ「タンメンの断面」と言いたいがために作った断面丼だが、実は普通に食器として日常利用しても良さそうなぐらいの実用性もあった。
例えばおでんをいれると「底に大根と玉子が沈んでるな」というのが目に見えて分かるし、酒を飲む際のアイスペールとして使うと、この通り、水族館のペンギン水槽っぽさも出せる。
せっかく高い接着剤で作ったことでもあるし、しばらくは断面を楽しむことにしよう。
「布団が吹っ飛んだ」とか「アルミ缶の上にあるミカン」というのは、ダジャレであると同時に、現実にあり得る情景描写でもある。
対して「タンメンの断面」というのは、ダジャレとして言葉の上では成立しているけど、現実にはあり得ない情景だ。だって丼に入っている麺類の断面なんて、普通は見えるはずないんだから。
そうなると、逆に見てみたくない? タンメンの断面。
そもそも“断面萌え”なんてワードがあるぐらいで、およそみんなが断面というものを好ましく感じているのは間違いないと思う。
例えば最近人気のフルーツサンドなんかは断面のビジュアルあってこそのものだし、タレが染みて黄味がやや凝集した味付け玉子の断面を嫌う人はいないはずだ。
僕は幼い頃にウルトラマンの怪獣解剖図で大興奮したクチだが、あれもまぁ断面萌えと言えそうだし。飛行機や車のカットモデルだって、ずっと見ていられるぞ。
つまり、断面にはそれだけ人を引きつけるパワーがある、ということに他ならない。たぶん。
普段は見えていない中身が素通しになっちゃう背徳感がいいのか、機構を把握できる知的好奇心の満たされっぷりがいいのか……などと突き詰めて考えれば断面の魅力はいろいろあろう。
単にダジャレを言いたいだけで走り出した企画ではあるが、もしかしたら「タンメンの断面」にも、ものすごい萌え要素が見つかるかも知れない。
で、「タンメンの断面」なんだけど、シンプルに考えれば、丼を真っ二つにカットすればいけるんじゃないか。
あとは断面に透明のアクリル板を貼り付ければ、断面が見える丼ができそうだ。
ということで、まずは丼の切断である。
最初は何も考えずに陶器の丼を真っ二つにしようと思ったんだけど…ルーターのパワーが強くないため、ダイヤモンドカッターでもめちゃくちゃ時間がかかってしまうのだ。
あまりの面倒くささで即座にプランを変更。すぐさま100均で樹脂製の丼を買ってきた。これなら陶器よりはサクサク切れるだろう。
真っ二つにできたら、切り口をガシガシとヤスって平面を出す。
ここに、断面に合わせてレーザーカッターで切り出した3ミリ厚のアクリル板を貼り付ければOKというわけだ。
……なんだけど、今回はひとつ、作業上の大きな制約がある。
丼とアクリルは接着剤で貼り合わせたいんだけど、食品衛生法の関係上、一般的な接着剤は食器に使うことができない。
じゃあどうすればいいかというと、もちろん法の抜け道というのはどんなところにもあるもので。
いやそんなグレーな話ではなくて、食品衛生法をクリアした接着剤を使えばいいのだ。
ただし普通の接着剤の3〜4倍ぐらい高い。ぶっちゃけ、こんなダジャレごときに使うにはもったいないお値段なのである。
ともかく、これなら口に触れる食器に使っても問題なし。安全性もばっちりだ。
タンメンのスープが接合面の隙間から漏れないようしっかり接着&シーリングをして24時間ほど乾燥させれば、断面の見える丼が完成である。
断面丼、シンプルだけど、思ったよりも見た目が楽しい。
真横や上から眺めて真っ二つ感をじっくり堪能したら、いよいよ次は本題の「タンメンの断面」である。
ちなみに今さらなんだけど、タンメンというのは関東圏でのみメジャーな食べ物で、それ以外の地域ではあまり見かけることがない。
僕は関西出身なんだけど、確かに東京に出てくるまではタンメンを食べたことがなかったのだ(『美味しんぼ』で読んで、存在だけは知ってた)。
一般的には“たっぷりの野菜炒めを乗っけた塩ラーメン”のことを指すので、要するに、お馴染みのサッポロ一番塩の野菜炒め乗せ=タンメンだと思ってもらえればいい。
ということで断面丼に茹でた麺を盛り、スープを注ぎ、野菜炒めを乗せれば……これが「タンメンの断面」だ!
しょうもないダジャレに長々とお付き合いさせて申し訳ない。懸案のやつ、ご査収ください。
なんというか……ビジュアル的に予想から外れた感じは全くないんだけど、それでも改めて「ははー、断面はこうなってましたか」という不思議な感慨がある。想像してたよりもいいものを見た気がするというか。
底に沈んだ麺がどっぷりとスープに浸っているのは空腹感をそそるし、野菜炒めのボリュームが可視化されていることで満足感を高める効果もありそうだ。
とりあえず、ダジャレをきちんと具象化できただけで充分に満足だし、なによりタンメンの断面が意外と魅惑的だということが分かったのも収穫である。
あと、先にも述べた通りタンメンというのは関東限定の料理でもあるので、「タンメンの断面」にピンとこない人もいるかもしれない。ここまで突っ走っておいて今さら言うなって話だが。
なので念のために、こちらも用意しておいた。「担々麺の断面」だ。
断面の面白みではタンメンよりも一段落ちてしまい、なんか結果として蛇足感が出てしまったのはもったいない。
やはり「ワンタン麺の断面」も準備しておくべきだったろうか。
ただ「タンメンの断面」と言いたいがために作った断面丼だが、実は普通に食器として日常利用しても良さそうなぐらいの実用性もあった。
例えばおでんをいれると「底に大根と玉子が沈んでるな」というのが目に見えて分かるし、酒を飲む際のアイスペールとして使うと、この通り、水族館のペンギン水槽っぽさも出せる。
せっかく高い接着剤で作ったことでもあるし、しばらくは断面を楽しむことにしよう。
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