我々を待ち受ける脅威の数々!
先ほどとは別の山道へ入った我々は、今度こそ巨大コウモリを発見すべく慎重に森の奥へと分け入った。しかしその山道は、タコノキという奇怪な植物に占拠された、魔の道であったのだ!
小笠原にしか生息していないというタコノキは、その名の通りタコのように無数の足(のような根)を持つ植物である。それはまるで、夜になるとその足を使って動き出し、獲物を捕食すべく人に襲い掛かりそうな造形!
この奇怪なタコノキが茂っているというだけでも十分に警戒すべき場所だということが分かるが、その先にはさらに我々の想像を越えた恐るべき光景があった!
それは、奇妙な形の植物にも全く臆すること無く、タコノキに馬乗りになってその葉を貪り食うヤギの姿であった!
まさに食うか食われるか! 弱肉強食、ルール無用の自然世界とはいえ、不気味な風袋をしたタコノキを一方的に食らうとは。おっそろしいなぁ……
だが、この恐るべき獣たちはもともとこの地にいたものではない。 かつて家畜として持ち込まれた後、島に放たれ野生化したなれの果てなのである。人類のエゴにより小笠原に連れてこられたヤギたちもまた、大自然の犠牲者なのかもしれない。
我々は気をしっかり持ってその足を進める。これで臆していたら巨大コウモリなど見つけられなどしないのだ!
しかし休む暇など与えんとばかりに、更なる危機が次々と我々に襲い掛かってくる!
父島最深部に迫る!
幾度となく現れる異形の者たち。
これはまさに、我々の向かう先はこの島の生物たちにとって 重要な場所であるということの証明だろう。 巨大コウモリは、必ずやこの先にいるに違いない!
我々の探検も、いよいよ佳境に向かいつつあるのである!
その恐るべき光景には、誰もが驚かざるを得なかった。そこには首を刈られた二宮金次郎の石像が不気味にたたずんでいたのだ!
これは、我々に対する父島からの警告なのかもしれない。このまま先に進んでしまったら、この像と同じ目に遭うのではないだろうか。 そんな不安が隊員たちの頭によぎる。
しかし、ここまで来て後に引くことはできない。不安を振り払い、希望だけを胸にひたすら突き進む!
山道を進むにつれ、周囲の不気味さは度を増していく。雨が降った後の山はぬかるんで滑り、容易に進むことはできない。過酷な粘土質の山道が、我々の体力を容赦なく奪ってゆく。
それでも我々は数々の試練を乗り越え、ついに視界の開けた山の尾根へと出ることに成功した!
それはまさに、知られざる生物が生息していると言わんばかりの神秘的な場所であった。間違いなく、この先には何かがあるだろう。隊員たちは最後の力を振り絞り、進む。
そして、その先で我々が見たものとは!
それはあまりに異様な姿に変化したタコノキであった。タノコキ自体、かなり異様な形態をした植物であるというのに、これはそれを遥かに凌駕している。
これぞまさにタコノキの最終形態!タコノキの中のタコノキ。タコノキの親玉と言えるだろう! 扇のように広がったその姿は、畏敬の念すら感じてしまうほどである!
それにしてもこのタコノキ、まるで何かを守っているように見える。 この先にあるものを、両手を広げてガードしているようだ。この先には、一体何があるというのだろうか。
隊員たちはそのタコノキを越え、奥へと進んだ。
するとそこには……
こうして、我々の冒険は終了した
長時間に渡る捜索の結果、残念ながら我々の前に巨大コウモリが現れることは無かった。この広大な父島のどこかにそれはいるはずなのであるが、今回の探検ではその姿を捉えることはできなかった!
日程の都合上、もはや我々に残された時間は無い。我々は断腸の思いで巨大コウモリ捜索を断念せざるを得なかった!
いつか必ず帰ってくる。そしてその時は、必ずや巨大コウモリを見つけ出す!それだけを誓い、我々は小笠原を後にした!
§
お気づきかと思いますが、この物語はフィクションです。
オガサワラオオコウモリは小笠原唯一の哺乳類の固有種であり、絶滅危惧種であり、国の天然記念物であり、とにかく手厚く保護されていて捕獲等は当然ながら禁止されています。
また、父島のオガサワラオオコウモリは夜行性 (人のいない南硫黄島では昼間行動するそうですが)なので、昼間探しても多分見つかりません。
オガサワラオオコウモリが見たい人は、ナイトツアーに参加するのが良いでしょう。それでも見れるかどうかは分かりませんが(私は残念ながら見られませんでした)。
あと、小笠原に地底人はいません。人食い大蛇もいません(普通の蛇も)。