
今年の夏も暑い。暑いと食欲も落ちがちなので、刺身の酢味噌あえは全国的なスタンダードとなっていくのかもしれない。
昔から、“沖縄の魚介類はユルくておいしくない” などと言われたりもするが、沖縄の気候に合った魚の食べ方は、間違いなくうまい。
沖縄では刺身を酢味噌で和えて食べることがある。
ただ刺身に酢味噌をかけただけと思うかもしれないが、それは少し違う。酢味噌の味は店ごとに異なり、使う魚や薬味もさまざま。昔から親しまれてきた定番だからこそ、それぞれの店にこだわりがあるのだ。
今回は暑い夏によく合う南国の定番、「刺身の酢味噌あえ」を紹介したい。

沖縄で鮮魚店は通称「さしみ屋」と呼ばれており、その名の通り刺身をメインで販売していることが多い。
沖縄では魚料理もいろいろあるが、家庭では刺身で食べる機会がとても多い。
調理するとしても塩水で煮た「マース煮」や、丸ごと揚げてガーリックバターで風味を付けた「バター焼」、あるいは分厚い衣をつけたおやつ的な位置づけの「ウチナー天ぷら」くらいなもの。
それらも居酒屋などではよく食べられるが、あまり家庭で日常的に作られるメニューではなく、やはりそのまま生でお刺身として食べることが断然多い。
そんな沖縄の刺身だが、食べ方にも特徴があり醤油とワサビで食べるだけでなく「酢味噌で和える」食べ方がある。
刺身を酢味噌や酢醤油で食べるやり方は、暑い地域で刺身を傷みにくくする工夫が受け継がれてきたものだと思うのだが、沖縄県内のほぼ全てのさしみ屋には酢味噌あえが販売されているし、入っている刺身の種類だったり、一緒に入っている薬味だったりとお店によってかなりオリジナリティがあって面白い。単純に刺身を市販の酢味噌で和えただけでなく、「酢味噌あえ」というジャンルの商品として各店で工夫を凝らしている感じなのだ。

ちなみにこの酢味噌は、いわゆる黄色っぽい「からし酢味噌」や「ゆず味噌」といった類ではない。沖縄の食品メーカーが出している市販品もあるが、ほとんどは鮮魚店や飲食店がそれぞれ独自の配合で手づくりしており、ニンニクやショウガ、七味などが入っているところもある。
そんな、めくるめく酢味噌あえの世界を覗いてみよう。
タママルヤ(浦添市)

仕入れによって変わると思うのだが、この日購入した酢味噌あえはマグロがメインで、2切れくらい皮の色が鮮やかなイラブチャー(アオブダイ)がのっていた。薬味としては生タマネギが刺身の下に敷かれている。

ここの酢味噌はビックリするくらい酸っぱい。多分かなり酢の濃度が高くて酢味噌を全部かけてしまうと魚の味も全部吹き飛んでしまうくらいなのだが、夏の暑い盛りはこれくらい酸っぱい方が食が進みそう。マグロのもっちりとした食感だけでなく、イラブチャーのコリコリとした食感がアクセントになっていて、単純なようでよく計算されたものなのかもしれない。
上原鮮魚店(浦添市)


こちらも浦添市にある上原鮮魚店という鮮魚店。屋冨祖(やふそ)という飲み屋街通りの真ん中にある。

ここの酢味噌あえはかなり具材が豊富で刺身サラダ感がある。
魚はマグロ、サーモン、イカ、タコなど。薬味は紫タマネギ、キュウリ、レタス、大根などが入っている。お店のおじさん曰く、今まで年齢層が高めの世代が買いがちな酢味噌あえの酢味噌をファミリー層にも食べてもらえるように日夜研究を重ねて出来上がった酢味噌が使われているとのこと。

確かに単純な酢と味噌だけでなく、複雑なコクみたいなものがある(何が入っているかは全然分からなかったけれど)。使われている具材も多いので、これだけでちょっとしたご馳走だ。
余談だが、ご主人曰く余った酢味噌は寝る前に飲んだら「ちょっとむせるけど、美人になる」そうである。
さしみ亭(本部町)

こちらは沖縄本島北部、本部(もとぶ)町にある鮮魚店併設のお食事処。ランチ営業も行っている。

本部町はカツオが有名な地域なので、カツオの酢味噌あえが食べられるかと思ったのだが、訪れたのが日曜だったためセリが休みでカツオの入荷はないそうだ。残念。

おいしそうな鮮魚メニューが並ぶなか、当然のような顔をして並んでいるのが「まぜみそ和え定食」。

マグロをメインに、タイ系の白身魚など数種類が入っている。薬味はレタスときゅうり。
コクのあるみそにガツンとくる酢の酸味。きゅうりのポリポリとした食感も心地よく、白飯が止まらない。おかわりください。
前出の2店舗と比べると、定食で白飯に合わせるからかこちらの酢味噌は色が濃く、どちらかというと酢よりも味噌の風味が強い気がした。

スーパーでは、刺身売り場に酢味噌がわさびや醤油と並んで置かれていることも多い。刺身を買って帰り、自宅で好みの量の酢味噌を和えるだけで、手軽に酢味噌あえの完成だ。

今年の夏も暑い。暑いと食欲も落ちがちなので、刺身の酢味噌あえは全国的なスタンダードとなっていくのかもしれない。
昔から、“沖縄の魚介類はユルくておいしくない” などと言われたりもするが、沖縄の気候に合った魚の食べ方は、間違いなくうまい。
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