特集 2021年8月15日

霊柩戦車でラジコン戦車大会に参戦(デジタルリマスター)

タミヤ主催のラジコン戦車大会に出ることになった。特製の「霊柩戦車」で優勝を目指す。

2010年12月に掲載された記事の写真画像を大きくし加筆修正し、再掲載しました。

父は数学教師。母は国語教師。姉2人小学校教師という職員室みたいな環境で育つ。普段はTVCMを作ったり、金縛りにあったりしている。(動画インタビュー)

前の記事:エヴァンゲリオンのあの「十字架の光」爪楊枝を作る


 「タミヤRCタンク大会」に出場することになった。タミヤRCタンク大会とは、タミヤから発売されている「タミヤ 1/35RCタンク」を改造して、「見栄え」「レース」「戦闘」の三部門で競う大会である。

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こちらがその戦車
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小さいけれど本格的

サイズは小ぶりだがスピーカーが内蔵されており、砲台やキャタピラの回転する音がちゃんと鳴る。砲台からは赤外線が発射され、対戦相手のセンサーに当たれば爆発音まで鳴る。出場するのは、ホビージャパン、モデルグラフィックス、アーマーモデリング、電撃ホビーマガジン、RC WORLD、RC マガジン、週刊アス キー、クアント、グッズプレス、GA Graphic……

本気過ぎるホビー雑誌の面々。普通に勝負しても全く勝てる気がしない。技術で駄目なら精神面で戦おう。理想は「攻撃する気のおきない戦車」。そんなことを考えていると、事故をほとんどおこさない車があると知った。

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霊柩車である

霊柩車は乗っている人はもちろんのこと、まわりのドライバーも無理な運転をしてこないので、ほとんど事故が起きないらしい。攻撃されない車!霊柩車!勢いに乗って「霊柩車の誕生」という本を読んでみた。いくつか「へ〜」と思うことがあったのでご報告させていただきます。

  •  名古屋では、霊柩「電車」が走っていた。
  • 幕府が倒れ、大名行列のプロデュースをしていた人々の一部が葬儀屋へと転職した。
    今でも大名行列の技術を残しているのは葬儀屋。大名行列の再現も葬儀屋が行っていることがある。
  • 白木作りの霊柩車が、漆塗り・金箔の車体よりも高額なのは、白木は日焼けするので年に数回表面を削らないといけないため。

 

霊柩車、おもしろい〜!俄然作りたくなってきた。もちろん今回目指すのは、日光東照宮を屋根に乗せたような見た目の「宮型霊柩車」である。

霊柩戦車を作ろう

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キャタピラの上に乗る「日光東照宮」の部分を探しにプラモ屋を回る

なかなかちょうどいいサイズのものがない(写真は大きすぎて諦めた大阪城)。最終的にジオラマ用のお寺のお堂プラモデルを買った。

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霊柩車カラーの金と黒に塗装
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同じように塗装したお寺を乗せると、
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完成!

想像以上に霊柩車っぽいものができて満足である。この戦車には、攻撃の当たり判定を測定する「センサー」を取り付ける必要がある。本来の取り付ける場所は戦車のてっぺん。しかし、霊柩戦車の場合、屋根が出っ張っていて取り付けが難しい。諦めてちょっとだけ側面に取り付けることにした(この時の判断が後々大会で大きく影響してくるとは夢にも思わなかった)

霊柩戦車の機能をご紹介

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車両後部には、しっかりと棺を収納できる
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棺のなかにはしっかりとご遺体を安置
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Bluetoothレシーバー+小型スピーカーをセットすると、
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遠隔操作で般若心境が流せるぞ
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さらにコントローラーは遺影型
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裏側にコントローラーがついており自立する
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この姿を見て、ラジコンを操作しているとは思わないだろう
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お香を焚くスペースももちろん用意

視覚、嗅覚、聴覚のトリプルアタックにより、対戦相手の攻撃意思をそぐ。これで勝利は間違いない。この戦車の改造にはまるまる3日かかった。負けるわけにはいかないのだ。

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いざ大会へ

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 朝7時に南大阪を出発。目指すは東京

 

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会場に到着

会場には、ホビー雑誌でしか見たことがないようなかっこいい戦車たちが集結している。

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技術力に裏打ちされた、遊び心溢れる各機体たち

戦車を一部ご紹介させていただく。

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グッズプレスさんの戦車

宮崎駿監督の描いた漫画に出てくる戦車だそう(砲台にトトロがいる!)

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モデルグラフィックスさんの戦車

鋼鉄製にしか見えない。たった数十センチ程度の戦車が何トンにも見える!迫力が違う。

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電撃ホビーマガジンさんの戦車

カラーリングが微妙にグラデーションになっている。どうやって塗り分けているのだろう……!各機体の恐るべき完成度の高さ!しかし、これは想定通り。技術力でそもそも勝てるわけないのだから。

大会がはじまる

大会は「見栄え・レース・戦闘」の3部構成となっている。まずは見栄えのコンテスト。はりきって霊柩戦車からお経を流し、まわりにアピール。続いて線香を焚こう。

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嗅覚で攻めるぞ

チャッカマンをカチカチやっていると司会の人から「何やってるんですか!」と怒られた。申し訳ありません、わたくし線香を焚こうとしておりました。結果は下から三番目。しかし、相手はプラモのプロたち。充分に健闘している。ここから巻き返せばいい。

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続いてはレース

ターゲットである戦車を3つ撃破しながらコースを進み、そのタイムを競う。

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キドキしながら順番を待つ

お寺・スピーカーを載せているので、霊柩戦車は、他の戦車よりも1.5倍ほど重い。坂をちゃんと登れるだろうか。不安が募る。

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しかし、調子良く進む!

ひとつ目の戦車をなんと15秒で撃破!これはいける!いけるぞ!

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思った瞬間、倒壊

上り坂に挑もうとした時にバランスを崩し、坂を転がり落ちる。その衝撃で屋根が外れて自走不能に。まだ開始20秒しか経っていないのに!
この時点で「完走は無理」という覆せない事実をつきつけられたが、このレースはタイムアタック。リタイアになる上限の120秒までは挑み続けなければならない。

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無の時間が流れる

残り時間100秒ほどモゾモゾと戦車を前後に動かす。がんばっている感じを出して終わった。

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もちろん最下位である

編集部の林さんから「自分自身がご臨終になってるね」と言われた。悲しい。しかし、本当の勝負はこれから。まだ「戦闘」が残っている。この戦車は畏れ多くて攻撃されないのだから、負けるはずがない。一発逆転もあるかもしれない。

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こちらが戦闘会場

「やったるぞ!」自らを鼓舞していると、司会の方がツカツカとこちらに歩いてきて、霊柩戦車を眺めてこう言った。

「この戦車はセンサーの付け方がルール違反です。屋根にセンサーが隠れているので対戦相手の赤外線が届かないかも。狙っても倒せないかもしれませんが、皆さんそれでもOKでしょうか?」  
OKなわけない……!

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畏れではく、ルール違反により無敵戦車になっていた

皆さんいい人たちばかりなので苦情が出なかったが、そんな卑怯な改造をしたやつが勝っていいわけない。もし、ルール違反の戦車が1位になってしまった日には、会場の空気はどうなってしまうのだろうか。怖すぎる。霊柩戦車のセンサーが相手の砲撃を受けつけてくれるのを願うほかない。絶対に負けてほしい戦いがそこにある。そんなわけで、敵の戦車に弱点をこれでもかと見せつけまくる。

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願いは届き、なんとか撃破された!ホッとひと安心
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最終結果はこちら

一位の週刊アスキーさんの26ポイントに対し、霊柩戦車のポイントは、2ポイント。
はたして同じ競技に本当に参加していたのだろうか。もちろん最下位である。
 

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優勝した方々にはトロフィーを含め、様々なタミヤ商品が贈呈されていた

 

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仕方がないので、自分でお金出してタミヤ商品を買って帰った

霊柩戦車で戦いを挑んでみて

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編集部の皆さんに慰めてもらい、早々と会場を後に

今回、霊柩戦車はボコボコにやられてしまったわけだが、宮型霊柩車自体も数が減ってきているらしい。もともと1000万だった霊柩車が、ヤフオクで数十万円で売られていたりもする(払い下げの宮型霊柩車はモンゴルで大人気なんだとか)20年後も宮型霊柩車は現役で町を走っているのだろうか。そうであってほしい。

 

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