今回は割とまじめにがんばりました
本物のモンブランを最初から手作りするとなると、かなり大変だと思うが、モランモンブランは意外と簡単にできる。
なのでおすすめです、と書こうとしたのだが、どういうシーンで作ればいいのかはよくわからない。
妻からは「着想があほらしい割には、ちゃんとできたじゃん」という感じのことを言われた。ルールを守っておいしくサプライズのあるものができて、ほっとしました。
モンブラン」という栗を使ったケーキがある。そして、「モランボン」という焼肉のタレなどを作る会社がある。
全く関係のない、「モンブラン」と「モランボン」。字面をしっかり見ると違うのだが、なんだか似た響きがある。
ケーキ屋でバイトをしていた知人から、モンブランを指さしたお客さんに「モランボンください」と言われたという話を聞いたことがある。ネットで「モランボン モンブラン」と検索 するとわかるが、間違えたことのある人は多いようだ。
とてもまぎらわしい「モンブラン」と「モランボン」。ならば両者を統合してしまえばいいのではないか。そういうわけで、やってみました。
※2009年3月に掲載された記事の写真画像を画像拡大ツールで大きくして再掲載しました。
「モンブラン」と「モランボン」。落ち着いて考えるとそこそこ違うのに、なぜだか間違いやすいこの2つ。そして、間違えたときのおもしろさのインパクトが高いのは、両者が全く別のものであるからだと思う。
かなりの距離がある「モンブラン」と「モランボン」。ケーキと焼肉のタレはどう考えても結びつかない。
そこをなんとか統合したい。まずは「モンブラン」の方を確かめてみよう。
そう、これが「モンブラン」である。いろいろアレンジしたものも多いが、一般的にはスポンジケーキなどの土台にホイップクリームを乗せ、その上にマロンクリームをにょろにょろと細く絞り出すというものだろう。上に栗の甘露煮が乗っている場合も多い。
対して、「モランボン」は焼肉のタレ。始めからわかっていたことだが、改めて確かめるとさらに距離が遠のいた。
正確な商品名は「ジャン」なのだが、実家では子供の頃からなぜだか「モランボン」と会社名の方で呼んでいた。
これはきっと、「モランボン」という言葉に、口に出して言ってみたくなる魅力的な響きがあるからではないかと思う。妻も私に影響されたのか、特に意識せず「モランボン」と、夫婦共々言っている。
さて、「モンブラン」と「モランボン」の統合。実践するにあたって、いくつか条件を課してみた。
…というルールにしてみた。特に3つ目が大事で、これはありだと思えるものを作ってみたい。
そういうわけで、ここから実践編だ。焼肉のタレであるモランボンを手にとってまず気がついたのは、タレ以外の使いみちをしてもいいのではないか、ということだ。
パッケージにはメーカーからの提案として、焼肉のタレ以外にも肉野菜炒めやから揚げに使えると書いてある。なるほど。
特に注目したのは、「ハンバーグ」の文字。確かにハンバーグの下味に使うと、いつもとはちょっと違った味わいのものができそうだ。よし、モンブランの土台となる部分は、ハンバーグで作ることにしよう。
ハンバーグの種には炒めたタマネギを混ぜるのが一般的だが、うちでハンバーグを作るときには他のものを加える場合も多い。今回はシメジのみじん切りを加えることにした。
シメジを生の状態で混ぜ込んでから焼いても大丈夫なので、炒める手間がひとつ省ける。ハンバーグ全体の味を甘くしたくないな、というときにもちょうどよい。もちろん、食感や味わいもよくなるのでアレンジのひとつとしておすすめだ。
今回の下味はもろろんモランボン。他にオイスターソースを少量とあらびき胡椒を入れてよくこねる。
焼いているそばからいいにおいが漂ってくる。よし、これで土台はいいだろう。あとは、モンブランをモンブランらしく見せている要、マロンクリームにあたる部分をどうするかだ。
「モンブラン」というケーキを「モンブラン」たらしめているもの。それはなんと言っても、細く絞ったマロンクリームだろう。いろいろなアレンジのモンブランを見かけるが、この部分はほとんどのものが押さえているところだ。
ちゃんとおいしいものにしたいというルールを課している今回の試み。うーん、ハンバーグと合うもので、よい素材はないだろうか。…おお、あれはどうだろう。
スーパーの売り場を行ったり来たりしているうちに見つけたのは、マッシュポテトの素だ。レストランで出てくるハンバーグの付け合わせとして、定番のひとつではないか。
要は裏ごししたジャガイモであるこの製品。これなら細く絞り出すこともできる。自分でジャガイモをゆでるところから始めればさらにおいしいものができるだろうが、今回は手軽さでこちらを使ってみた。
箱に書いてある分量通りにお湯を入れて混ぜてみる。細く絞り出すことを考えるとまだ固そうだったので、少しずつお湯を追加。まだちょっと固いかな、くらいのところで味付けにモランボンを投入。
よく混ぜると色もそれっぽくなってきた。味見をしてみると韓国風な感じが出ていて、これはこれでおいしい。
ではこれを細く絞りだそう。製菓用品店に行けばきっとモンブラン用の絞り口金は置いてあるのだろうが、今回はちょうど空になったマヨネーズの容器があったので、これを使ってみる。
いつ頃からこうなったのだろうか、絞り口が2種類使えるようになっていてとても便利だ。キャップをパカッと開くと細口タイプ、ねじって全部外すと星形タイプとなる。
今回は細口タイプを使用。中にマッシュポテトを入れて、絞り出してみる。
やった!試しに絞ってみたところ、イメージしていた通りに細くつながったマッシュポテトが出てきたぞ。ボソボソとちぎれたりせず、にょろにょろとかなり長く絞り出すことができる。
さて、焼き上がったハンバーグには、白いごはんをトッピング。本物のモンブランで言うところのホイップクリームにあたる色合いを考えてこうしてみた。
ハンバーグ、マッシュポテト、ごはん。取り合わせとしてもアリのはずだ。では、この上ににょろにょろと出していこう。…さあ、できました。
おおー、事前に思っていたより、かなりのモンブランができた。黙っていればケーキに見えるのではないだろうか。
モランボン味のマッシュポテトは予想以上にマロンクリームっぽく見える。土台のハンバーグは、ざっくりとしたクッキー生地のタルト風に見えなくもない。
上にトッピングしたものも、モンブランとしての画竜点睛を果たしてくれている。
トッピングの正体は、ホールタイプのマッシュルーム。始めは栗を乗せようかとも考えたのだが、味のバランスを考えて却下。どうしようかと考えていて、やはりスーパーの売り場で目に入ったのがこれだった。
マッシュルームならハンバーグの付けあわせに出てくることもあるだろう。トータルの味わいを壊すことのない選択だと思う。
ケーキ皿に乗せてフォークを添えると、ケーキとしてのモンブラン性がアップ。さらに紅茶を淹れて横に置けば、それはもう素敵な午後のティータイムだ。
男性には多いだろうが、甘いものは苦手という方にもおすすめできる。なぜならこれは、ハンバーグディッシュをひとつにまとめたようなものだからだ。
断面図を撮るために2つに切ってみた。マロンクリームを模したマッシュポテトの部分はともかく、マッシュルーム・白ごはん・ハンバーグといったケーキとしてはあり得ないものの正体が見えても、なおケーキっぽく見えるのには驚いた。
しかし漂うのは、ケーキの甘いにおいでなく、モランボンとハンバーグのにおい。見た目と比べると頭が混乱するが、とにかくおいしそう。では食べてみよう。
デイリーポータルZの記事では、口にするには勇気が必要なものを食べることもある(例えば1・例えば2)。しかし今回のは大丈夫。おいしいに決まっている組み合わせで作っているからだ。
食べてみた。…よし、実際にうまいぞ!
普段は別々に食べているものが口の中で統合。調味料としてのモランボンが、ハンバーグやマッシュポテトに焼肉風の味をかもし出して、意外性のあるおいしさにもつながっている。成功と言っていいものができたと思う。
本物のモンブランを最初から手作りするとなると、かなり大変だと思うが、モランモンブランは意外と簡単にできる。
なのでおすすめです、と書こうとしたのだが、どういうシーンで作ればいいのかはよくわからない。
妻からは「着想があほらしい割には、ちゃんとできたじゃん」という感じのことを言われた。ルールを守っておいしくサプライズのあるものができて、ほっとしました。
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