マブイは信じられているのか
しかしそもそも沖縄のマブイ落ち伝説は世間一般に知られているのか。こういう話って年配の方々が伝承的に語り継いできた話であることが多いのではないか。沖縄の若者達はマブイについてどう思っているのだろう。話を聞いてみた。
マブイ、落としたことありますか。
「あります」
ほぼみんな、しかもいとも普通にそう答えるからびっくりだ。
・車で事故を起こしたときに落とした
・このまえ従兄弟が落とした
・トイレで拾った
・こうやって胸をたたくと落ちたマブイが入る
・落とした所の石を拾ってきた などなど
驚いた時に落としたマブイを再び入れるには、その場の石を拾ってきて本職の方に拝んでもらうか、もしくはその場で胸を数回たたきながら「マブヤーマブヤー」と唱えるとよいのだとか。ちなみにマブイが落ちるという「どぅまんぎる」は、やはり「驚く」に近い言葉とのことだった。これから使おうと思う。
どぅまんぎるお店「Big大ちゃん」
そんなわけで沖縄ではみんなカジュアルにマブイを落とし、そして拾っていた。僕も沖縄に住んでいた間、もちろん何度か「どぅまんぎる」状況に陥ったとは思うのだが、そのたびに落ちたマブイを置き去りにしてきてしまった。だから今こんなにミスが多いのかもしれない。いまさらながら胸に手を当てて僕の落とした「マブイ」を入れる仕草をしておいた。
最後に今回の沖縄でもっとも「どぅまんぎる」思いをした場所を紹介したい。ラーメン「Big大ちゃん」だ。
お店に入るとまずメニューがでかかった。A4のファイルに全倍でプリントされた写真が自信を表す。
そして店頭で見つけた「天ぷらうどん」というメニューを実際に注文したところ。下のような結果になった。サンプルとはいい方向に全然違うのだ。
まあどれを注文してもうまいので文句は出ないのだろうが、たぶんこの店にはたくさんの人の「マブイ」が落ちているんじゃないかと思う。落ちたマブイはちゃんと拾って帰りましょう。
マブイ、落としていませんか
「どぅまんぎるとマブイが落ちる」は沖縄ではごく一般的な話だった。落ちたマブイを再び体に入れるには、正式には「ユタ」と呼ばれる神職のエキスパートにお願いするしかないのだという。しかし「どぅまんぎる(驚く)」ことなんて日常に溢れている、そのたびに落ちたマブイをユタに拾ってもらっていてはきりがない。そこで人々は自分で拾うようになったのだ。
他県に暮らす方々にとっては正直理解し難い話だろう。しかしなぜだかわからないが実際に沖縄の地に足をつけると、この「魂」の存在をずっと身近に感じるようになるのだ。空気の中に、木の実に水に、魂は宿っている。これらと一緒に、僕たちも魂を体に宿して生きているのだ。どうだ、どぅまんぎただろう。