それでも、巨大しゃもじはあった方がいい
今回は炉端焼きのために巨大しゃもじを利用したが、工夫次第では窯でピザを焼くのにも使えるかもしれないし、隣の晩御飯に突撃するためにも使えるかもしれない。なによりBBQを盛り上げるためのパーティーグッズとして買ってみるのもアリなんじゃないだろうか。興味のある方はぜひ一度試してみてほしい。
とはいえ同じメンバーで二度目をやったらスベる予感しかしないので筆者はもうやらない。8000円の巨大しゃもじ、欲しい方がいれば半額以下で譲ります。
唐突な話で恐縮だが、先日ふと「炉端焼きをしてみたい」と思い立ち、友人たちを集め炉端焼きスタイルのBBQを行った。結論から言うと、この炉端焼きBBQは予想以上に好評であった。とにかく楽しいのでぜひともこのスタイルを流行らせていきたい。
皆さんは炉端焼きのお店に行ったことがあるだろうか。炭火で焼いた魚や野菜を巨大なしゃもじに乗せてサーブしてくれる居酒屋のことである。
筆者は浅草の「たぬき」という炉端焼きの店に一度だけ行ったことがある。料理はもちろん美味しかったが、それとは別に、「一度でいいから自分もあの巨大しゃもじを使って料理をサーブしてみたい」と思うようになった。
あの巨大しゃもじ、ググって調べてみるとどうやら「掘返べら」という正式名称のようだ。なるほど、窯焼きでピザを焼くときに使われる「ピザピール」のように、あのしゃもじにしか見えない道具にもちゃんとした名称があるのだ。
掘り返しべら、はたして普通に売ってるものなのだろうか。いや、日本に炉端焼きの店は少なからずあるのできっと売っているのだろう。とはいえ、どの店に行けば掘り返しべらが売っているのか見当もつかないのでamazonで調べてみた。
…ない。掘り返しべら、amazonで取り扱いが一件もない。そんなバカな。星の数ほど商品を取り扱ってるamazonで見つからないとは、では炉端焼きの店ではどうやってあの巨大しゃもじを手に入れているというのか…。
その後、検索ワードを「巨大+しゃもじ」などいろいろ試してみたら、ようやく目当ての商品にたどり着いた。
どうやら給食などを大鍋で調理するときに使う業務用のヘラのようだ。専門器具であるところの掘り返しべらなんて売ってないから、もうこれでいいような気がする。
しかし8000円はけっこうな値段である。よくよく考えてみれば、8000円あれば炉端焼きの店で思う存分飲み食いできるのである。なにもこんなものわざわざ買わなくたって…
便利な世の中ですね。
箱を開けてみると想像よりもでかかった。まるで4歳の娘が小人になったようだ。大人の人の背くらいある長さのヘラだからそれもそのはず。これぞまさに炉端焼きの店でみたあの巨大しゃもじだ!これで念願かなってあの炉端サーブが自分にもできるのである。
ためしに巨大しゃもじを掴んで持ってみた。予想していたことではあるが、ずしりと重い。しかし不思議な高揚感がある。これはあれだ、最強の武器を手に入れた時の感触というか、大げさに言うならアーサー王がエクスカリバーを石から引き抜きはじめて手にしたときもたぶんこんな感じだったんじゃないだろうかという気がする。BBQ当日が楽しみである。
BBQ会場には南千住の汐入公園BBQ場を選んだ。最寄り駅から徒歩約10分。駅からBBQ場へ行く途中には角上魚類という大きな魚屋があり、都内で海鮮BBQをやるならここが便利だ。
角上魚類はもともと江戸時代の越後の魚問屋が発祥で、新潟の寺泊から日本海の新鮮な魚介類を直送で売っているとても大きな鮮魚店である。
筆者がこの店を知ったのはテレビ東京の『ガイアの夜明け』で特集されていたのを観たのがきっかけだ。築地ではなく寺泊から直送ということで、関東ではあまり見かけない日本海の新鮮な魚介類(ノドグロとか)もたくさん売ってる、という内容で、とにかく魚が美味しそうだったのでいつかここで思う存分魚介類を買いたいとずっと思っていたのだった。そういう意味では、炉端BBQと角上魚類で大人買い、二つの夢が今回同時にかなったといえる。
この中から食べたいものを選んで買って、店から歩いて3分くらいのところにあるBBQ場で焼いて食べるのだ。あまりにも近すぎるので、感覚としては魚屋の軒先で気ままに海鮮BBQをやるのに近い。これぞまさにセルフ炉端焼きである。
友人たちとの待ち合わせ場所は角上魚類の店の前にした。今回初めて顔合わせするメンバーもいたので、事前の案内では「巨大なしゃもじを抱えている人がいたらそれが私なのですぐ分かると思います」と伝えておいた。
めっちゃ目立つ。これはどんな人込みの中だろうとすぐ分かる。観光ツアーのガイドが持っている旗どころの話ではない。だって、今までの人生の中で街中で巨大なしゃもじを持ってる人なんて、ヨネスケ以外に見たことがないもの。
「うわ、めっちゃでかいですねそれ」集合場所につぎつぎやってくる友人たちは、挨拶よりもさきに巨大しゃもじのインパクトに思わずみんな笑っていた。そうなのだ。私も家に届いた巨大しゃもじの箱を開封して手にとったとたん思わず笑ってしまったが、ふだん我々が認識しているものが極端に巨大になったら、もうそれだけでちょっと面白いのだ。これはなんというか、美術作品が超巨大であるというだけで「すげー」ってなる現象に近いのではないだろうか。
「なんなんですかこの巨大しゃもじw どこで売ってるんですかwww」「amazonで普通に買ったw」「wwwいくらするんすかこれw」「8000円」「はっせんえんwwwwww」
思わず草をはやしてしまった。そうなのだ。「(笑)」という感じではなく、「www」って感じの笑いがドッカンドッカンとれるのだ。しかもひとしきり説明が終わった後で次の友人たちが来ては「なんなんですかこの巨大しゃもじw」からやりとりがはじまり、またそこから笑いが生まれる。二匹目のドジョウどころの騒ぎではない。ドジョウ、五匹も六匹もいる。爆釣だ!
巨大しゃもじの顔見せがひとしきり終わったところでBBQ場に移動し、炭火を起こし、手早くできそうな物から焼く。ほどなくして美味しそうに焼けた。食べごろだ。
これが炉端焼きスタイルBBQである。ちなみに炉端焼きの店は調理カウンターと客席に隔たりがあるのでしゃもじに乗せて料理をサーブする必要があるが、我々の炉端スタイルBBQでは焼き場とテーブルの間に遮蔽物がないので、わざわざしゃもじに乗せてサーブする必然性がまるでない。なんなら直接渡した方がぜんぜん早い。
しかしあくまで料理はしゃもじに乗せてサーブすることを最後までつらぬいた。なぜならこれは炉端焼きスタイルBBQであり、筆者はこのために大枚(8000円)払ってしゃもじを買ったからである。
筆者が巨大しゃもじで料理をサーブするたびに参加者から爆笑(苦笑?)がうまれた。おそらく参加者にとって初めて見る絵ヅラだし、わざわざ苦労してしゃもじで必死にサーブしてる様がウケてるのではないだろうか。自分の一挙手一投足がこんなにもウケるのは生まれて初めての経験だ。まるで自分が平成の爆笑王になったかのようである(平成もうすぐ終わっちゃうけど)
炉端サーブすると、みんな自然と笑顔になる。
こうして撮られた写真を見て気づいたのだが、この炉端サーブ、けっこう皆から写真を撮られるのである。絶好のシャッターチャンスというわけだ。まるで結婚式のケーキ入刀のようではないか。その中心にいるのは自分。悪い気はしない。むしろ自分が人気者になったのではと錯覚する。冷静に考えるとBBQ場で巨大しゃもじをふりまわすただの不審者に他ならないのだが…
これなんか一度テーブルで切ったタタキをわざわざ焼き場に戻し、焼き場からしゃもじで無理やりテーブルにサーブしている。本末転倒ではあるが、炉端サーブがやりたいために8000円も投資しているのでこの措置は当然である。
ちなみにショウガのすりおろしと刻みネギをポン酢でまぜておいたものをあらかじめ用意しておき藁焼きカツオのタタキに大量にぶっかけて食べるととっても美味しいのでぜひ試してみてほしい。最悪の場合、巨大しゃもじがなくてもできる。
今回は炉端焼きのために巨大しゃもじを利用したが、工夫次第では窯でピザを焼くのにも使えるかもしれないし、隣の晩御飯に突撃するためにも使えるかもしれない。なによりBBQを盛り上げるためのパーティーグッズとして買ってみるのもアリなんじゃないだろうか。興味のある方はぜひ一度試してみてほしい。
とはいえ同じメンバーで二度目をやったらスベる予感しかしないので筆者はもうやらない。8000円の巨大しゃもじ、欲しい方がいれば半額以下で譲ります。
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