まとめ
巨人の攻撃の番になると、会場のスピーカーから「全盛期の声援」がBGMとして流れていました。そこまでするほどだから、プレーする選手にとってもファンの声援ってかなり重要なものなのだろうな。全力で応援できるようになる日を願うばかりです。
あと観客から思わず漏れ出てしまう声は、「ウェイ」が最多でした。これからビンゴをする方はぜひ参考にしてください。
昨今のプロ野球は、来場者数の制限や歓声・鳴り物禁止などの対策により、とても静かな中で試合が開催されているらしい。
これは、今までかき消されてきた選手たちの「生の声」を聞ける絶好のチャンスではないか。ということで、普段聞けない声を聞くために試合を見に行ってきました。
プロ野球の試合を見に行くことになりました。現在、試合観戦の際は「トランペット・ホイッスル等の鳴り物応援」「大声での声援・応援」などが禁止されているようです。
ファン一体となって盛り上がることができない寂しさもある一方、静かな中で試合を観戦して「普段聞こえない試合中の音」がいろいろ聞こえてくるチャンスとも捉えられます。もしかしたら、選手たちの生の声なども聞けるかもしれません。そう考えると尋常じゃなくワクワクしてきました。
居ても立ってもいられなくなったので「選手たちは試合中にどんな声を出しているか」予想をすることにしました。
しかし、私は野球のことを全く知らないズブの素人。高校生の頃まで「右中間ヒット」を「宇宙間ヒット(宇宙くらい遠くまで飛ぶヒット)」だと思いこんでいたほどです。
予想は困難を極めましたが、すべては試合を全力で楽しむため。なんとか、8つの掛け声を絞り出しました。こちらです。
① いいぞ!
チームの仲間がいいプレーをしたときには素直に「いいぞ!」と称えるのではないか。
② ナイスキャッチ!
ボールをうまく捕らえた時、私だったら「ナイスキャッチ」と言う。
③ 走れ!
野球というスポーツは、次の塁に走るか・走らないかという駆け引きも魅力のひとつと聞いたことがある。
④ ドンマイ!
試合が常にうまく運ぶわけではない。力を尽くしたチームメイトを気遣う一言もあるだろう。
⑤ リーリーリー
不勉強のため意味を知らないが、きつねを呼ぶみたいな響きだし「いい球来い!」的なことだと予想した。
⑥ 落ち着いて!
試合中は気持ちが高ぶるだろうから、落ち着かせる掛け声も必要。緩急をつけよう。
⑦ バッチコイ!
野球を知らない者からすると「バッチコイ」はなんとなく言っておいてほしい。
⑧ キレてるよ!
レパートリーがなくなってきてしまい、一か八かでボディビル大会の掛け声を入れた。
せっかくなので、これらの掛け声をビンゴにしてみました。試合中、実際に声が聞こえてきたらマス目をチェックしていきます。
ファンのみなさんに失礼があってはいけないので、試合の数日前から「野球観戦 マナー」等でGoogle検索して入念に下調べをし、気持ちを作ってから試合会場へ向かいます。
東京ドームへ到着しました。
この日は巨人対広島の試合で、私の周囲には赤色のユニフォームを身にまとった広島ファンの人々が、一定の間隔を開けながら座っています。
さすがに選手たちの肉声を耳で聞き取るのは難しいだろうということで、今回は本格的なマイクをお借りしてきました。
東京ドームのホームページを入念に読み込みましたが「ガチマイクの持ち込みを禁じます」とはどこにも書かれていなかったので、おそらく問題ないと思います。
マイクにイヤホンを直接させる仕組みになっているので、音を聞きながらビンゴをする形で進めていきます。
試合開始まであと30分。売店にやって来ました。アルコール類は販売が中止されていたりしますが、たくさんの魅力的なメニューが並んでいます。
少しゲーム性を加えたいと思った私は、「もしビンゴになったら、ここで売られている中でもっとも高いメニューを食べられる」というご褒美を設定することにしました。
いよいよ試合開始のアナウンスが流れます。イヤホンを耳にさしこんだのもつかの間、さっそく緊急事態が発生しました。
私の耳に聞こえてくるのは、大音量の「ダン!ダン!ダン!」という爆発音のようなもののみ。
会場を見回すと、みなさん細い棒のようなものを打ち鳴らしています。応援歌の合唱や鳴り物応援は禁止されているものの、普通に声援を送ることや応援グッズで音を鳴らす行為は禁止されていないのです。
つまり選手の声など到底聞こえない状況だということが分かりました。嘘だろ……。
唐突に原監督が「うるさーーい!」ってブチギレて会場全体が無音にならないかな? とわずかな期待を胸にしばらくイヤホンをつけていましたが、当然音が止む気配もなくすぐに諦めました。
どうしよう。そう考えたそのとき、カバンの中に「白紙のビンゴ」が入っているのを思い出しました。そうだ、まだ残された手があった……!
思いついた私は、カバンからビンゴを取り出して文字を書き込みます。
観客の出す音や声しか聞こえないのなら、「いいプレーを見たときに観客が思わず出してしまう声ビンゴ」にしよう。そう思い立ったのです。
1回表、広島の攻撃。なんといきなりホームランが飛び出し、広島が2点を先制しました。
まわりのファンのみなさんは「えっ!」「きた!」など口々に歓喜の声を漏らします。
そして……
打たれたボールが柵を超える瞬間、「お~!」と「いけ!」が同時に飛び出し、初回でまさかのトリプルリーチ。
試合終了までに「よし!」「ヤッタ!」「残念」のいずれかの発言が確認できたらビンゴになります。こんなにもトントン拍子で進んでしまうとは。
しかし、現実はそう甘くありませんでした。
2回裏ですかさず巨人がホームランを打ち返すと、その後さらに1点の追加点。その後も徐々に点差を広げられます。
そんな状況で、広島ファンのみなさんの口から「よし!」「ヤッタ!」はなかなか出てきません。出そうだと思った「残念」も出ず。
その代わりに聞こえてきた言葉をご紹介します。
・オイ
・ウェイ
・アハハハ!(相手がいいプレーをしすぎるので笑っている)
・あ~(フォアボールで巨人が進塁したとき)
・取れる!
・オッケー!
・イェーイ!
・ヘイ
・ボロボロですわ
・セーフ!(セーフではない)
・●●●!(選手の名前)
その後もなかなかファンのみなさんから期待どおりの声が出ないまま、試合は8回まで来てしまいました。
ここで衝撃的なことが起こりました。
なんとこのタイミングで、まわりにいた広島ファンがほとんど帰ってしまったのです。
私の中の田中邦衛が「広島がまだ野球やってる途中でしょうが」と怒鳴りましたが、ファンたちに邦衛の声は届かない。行方がわかっているゲームなんて、閉店後にゆっくりラーメン食べてる純と同じくらいの位置づけなのだからーー(「北の国から’84 夏」)
しかし、前に座っている2人が帰ってしまったらもうビンゴを続けることなどできません。そっちは野球目的かもしれないけどこっちはビンゴ目的で来てるんだから、君たちが帰ったら私は何を糧にこの場にいたらいいんだ。
「『よし!』って絶対この会場のどこかで誰かが言ってるし、ビンゴってことにしちゃダメかな?」
そんな邪な考えが、何度も頭を過りました。
しかし、ここは真摯に野球をプレーする選手たちと同じように正々堂々ビンゴマンシップにのっとった行動(?)を心がけていかなければならない。
前に座る2人が帰らないことを願いながら、引き続き試合を見守ることにします。
ついに最終回がやってきました。なんとここで、広島が執念の1点追加!
ヨッシャ~! これはもう「よし!」「ヤッタ!」と言う他ない!
しかし、前の席の2人からは、肝心の「よし!」「ヤッタ!」は出ず。「う~ん」という唸り声のみが聞こえてくる。
もしかして、照れちゃってんのかな…私が変わりに言おうか?
そして結局煮え切らない状況のまま、巨人の勝利で試合は幕を閉じました。
最後までトリプルリーチのままというめちゃくちゃパッとしない結果になったな…と反省していたそのとき。
私の前に座っていた2人が言いました。
「よし! 帰るか」
「よし!」が出た。
意外なタイミングで出た。
少し反則な気もしますが、観客の口から「よし!」と出たのでもうこれはビンゴ以外の何物でもありませんよね!?
そう自分に言い聞かせながら、急いで売店に向かいます。頭の中はカツカレーでいっぱい。
閉まっていました。まあ、そうだよね。もう試合終わったもんね。薄々わかってたよ。
巨人の攻撃の番になると、会場のスピーカーから「全盛期の声援」がBGMとして流れていました。そこまでするほどだから、プレーする選手にとってもファンの声援ってかなり重要なものなのだろうな。全力で応援できるようになる日を願うばかりです。
あと観客から思わず漏れ出てしまう声は、「ウェイ」が最多でした。これからビンゴをする方はぜひ参考にしてください。
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