特集 2023年7月5日

無限の猿定理マシン

「無限の猿定理マシン」を無限に動かしてみた

こうして無限の猿定理マシンが完成した。あとはこれを無限に動かせばよい。私はただそれを見守り、無限にパソコンの電気代を払い続けるだけでよい。それですべてが解決する…。

ダイスが振られ、それが読み取られる。これは猿(概念) が「な」と入力した瞬間。

幸先よく「はつるつひそな」からスタート。温かく見守ろう。

スタートからわずか35回目にして早くも「秘仏」という言葉を入力。すごいぞ猿!

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しかしダイスをよく見ると「T」ではなく「Y」となっている。じつはダイスの読み取り精度は100%ではなく、ときおり誤ってしまう。精度は6~7割ぐらい。今回はそれも愛嬌ということで進めさせていただく。
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開始から1時間。早くも意思を持ち始めたかのような字面が並び、ドキッとする。
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いったいどんな物語が紡がれているのだろう。
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開始から2時間半あたりで見つかった言葉。「めまい」「脱毛(ぬけげ)」「なじる」など、数々のあんまりうれしくない言葉の入力に成功している。
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開始から3時間半。「テキ屋」「臭み」「血うみ」「賭博」…。

勝手にダイスがカラカラとまわり言葉を見つけていくのは面白い。自分の脳内に全くなかった言葉たちがその瞬間、目の前に発生する。ものすごくよく言えば現代アートなのかもしれない。

ちなみにこのカラカラという音は思ったよりうるさい。 

カラカラの音をどうぞ。

1回聞くだけなら何とも思わないが、なんども繰り返すと頭がおかしくなりそうだ。しかもこの先無限にずっと続く。最悪すぎる。

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無限の終わり

無限に続くと思われたマシンであるが、スタートから4時間後、918回目を迎えるときに思わぬ事態を迎える。ダイスがずっと回りっぱなしで止まらなくなったのだ。

暴走である。ひたすら単純作業をさせられた猿による反逆かもしれない。

本来はダイスが止まっているタイミングで文字認識を行うのだが、暴走のせいでダイスが止まらない状態で文字認識をすることになった。すると、なぜか「あ」や「え」として認識されてしまう。

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「あ」と「え」ばかりで不気味。かつて、イギリスの大学が本物の猿にキーボードを与えた実験があり、そこではほとんど「S」ばかりの入力となったらしい。つまりこの状態のほうが本物の猿に近いと言える。

……というわけで、無限に動かすことに失敗した。どうしてこうなったのだろう。もしかすると、電池が無くなったのかもしれない。

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電池の残量を確認したが異常なし。というか、電池の残量を確認している時点で、このマシンが有限の命だということを認めていることにならないか?自分。

結局、原因はわからなかった。もしかするとパソコンからモーターへの命令がうまくいかずに調子がくるったのかもしれない。やっかいな話だ。システムをずっと動かし続けるのって難しい。世の中のシステム運用管理担当者たちに思いをはせる…。

ちなみに、この実験の様子はYouTubeで生配信していた。アーカイブを載せておく。

 

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917回ダイスを振って得たもの

今回の実験では918回目でおかしくなってしまった。うまく行ったところまでの結果を振り返ろう。

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入力されたのは748文字の羅列。誰か解読してほしい。
入力中に見つかった3文字以上の言葉たち。

この言葉をもとにAIに絵を描いてもらおう。

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冒頭の「はしご」に引っ張られている気がする。なんだか不気味な絵だ。( Image Creator from Microsoft Bing で生成)

ダイスを振るというランダムな行為が繰り返され、最終的に絵になった。これは無から生み出された絵だ。なんだかすごいことをしている気がする。

せっかくなのでChatGPTにも聞いてみた。

田中太郎と秘仏の物語が始まった。

全文を載せておく。

ある日、青い空の下、日向の中央にある小さな村で、不思議な出来事が起こりました。村人たちは、村のはしごの上に立つ秘仏を崇拝していました。その秘仏は、的山と呼ばれる山の頂上にある特別な場所に安置されており、村人たちにとっては宝物でした。

ある日、村の若者である田中太郎は、はしごを登りながら手に持っていた水筒をこぼしてしまいました。水筒からこぼれた水がはしごを伝って秘仏の前に落ちた瞬間、秘仏が光り輝き始めました。村人たちは驚きましたが、それ以上の不思議な現象が起こりました。秘仏の前にあったパーツがはんざとして地面に落ち、そこからはんさの花が咲き誇りました。はんさは非常に希少な花であり、その薬価は高く、秘仏と共に村の宝とされていました。村人たちは大喜びし、そのはんさの花を使ってさまざまな薬を作りました。

村の文科長である山田さんは、秘仏とはんさの薬を使って、知育教材を作りたいと考えました。山田さんはまつげが赤みがかっていることで知られており、その知識を生かして多くの子供たちを育ててきました。そして、はんさの薬が子供たちの知育に効果があると確信していました。村では、乳呑みに知育ができる環境が整えられました。はんさの薬を摂取した子供たちは、ますます多くのことを学び、青い未来を描くようになりました。

しかし、幸せな日々は長くは続きませんでした。村が被災し、微細な微罪の存在が問題視されました。政府の査問団が村を訪れ、文科長の山田さんを含む村人たちは厳しい取り調べを受けました。村人たちは自らの意見を述べるためにも、日々の生活から離れて外部の情報を知る必要があると考えました。

そこで、村の人々はサイトを作り、再度の査問に備えました。サイトでは、村の現状や文科長の功績、はんさの薬の効果などが詳しく記載されていました。村人たちは懸命に査問団との対話を進め、自らの主張を裸体に晒しました。しかし、その努力もむなしく、査問団は村の活動を禁止する決定を下しました。村人たちは打ちのめされましたが、諦めずに闘い続ける決意を固めました。

そんな中、村にはタイムリープ能力を持つ少女、田中花子が存在していました。彼女は田中太郎の妹であり、村の希望の光でした。花子は町外れの古い神社で、タイムリープの力を使う方法を学びました。花子は秘伝の甘露を求めて、秘仏の前にある豆腐を頂きました。すると、彼女の前に未来から来た人物が現れ、「東部の大地で起こる未来の危機を防げ」と告げました。花子はタイムリープの力を使い、未来の東部地域に飛びました。

そこでは、怪物が村々を襲っており、多くの人々が被害を受けていました。花子は地域の住民と協力し、怪物を倒すために戦いました。頭脳を駆使して戦略を立て、農地のバリアを作り出し、怪物を撃退しました。花子の活躍によって東部地域の人々は救われ、彼女の名は美名として広まりました。帰還した花子は、村の人々に未来の危機と東部地域の復興について報告しました。

彼女の話を聞いた村人たちは、文科長の山田さんを中心に行動を起こしました。村人たちははんさの薬を作り、売り上げを通じて被災地の支援を行いました。村の若者たちはエージとして働き、復興活動を進めました。

その後、村では窯場と屋台が建設され、地域の特産品が作られるようになりました。特に大弐と呼ばれる農産物は評判となり、対日輸出も行われるようになりました。さらに、田中花子の功績をたたえて、村は彼女の名を冠した「田中花子基金」を設立しました。この基金は教育支援や地域の文化振興などに役立てられ、多くの人々の助けとなりました。

村の人々は、困難に立ち向かいながらも絆を深め、未来への希望を取り戻しました。それぞれが自らの力を発揮し、村全体が一丸となって成長していく姿は、他の地域にも大きな影響を与えました。

秘仏のもたらす超常現象で栄えた村の没落と、特殊能力を持つ少女の出現による復興の物語だ。ふつうにめちゃくちゃ面白い。後半の怒涛の展開がすごい。

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タイトルもセンスがある。

今回の実験でシェイクスピアの作品はできなかったが、かわりに「希望の光、田中花子」は完成した。大満足。


無限の旅

当たり前だが、まだまだマシンは無限回ダイスを振る運用に耐えられないと感じた。無限回の電池交換が必要だし、無限円の電気代を支払う必要がある。パソコンやカメラやモーターの寿命だってあるだろう。つまり無限個のパソコンとカメラとモーターが必要だ。そのためには無限年生きる必要がある。無理だ。

それならできるだけ自動化しよう。電池ではなく太陽光で動くようにしよう。パソコンやカメラやモーターを自動で修復する仕組みを作ろう。X年後、荒れ果てた地でカラカラと音を立てて回る2つのダイス。モニターに表示されているのはひらがなで記されたシェイクスピアのハムレット。もちろんすでに人類は滅びているので誰もそれに気が付かないし、なにも起きない。ふたたびダイスはカラカラと回りだし、あてもない無限の旅を続けるのであった。おわり。

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