特集 2022年5月18日

絵画教室に通って2年たちました記録

Before→After

自粛期間に入ってから、絵画教室に通いはじめた。週に1回、裸の人間を描く本格的なやつだ。

ちょうど2年たったので、経過をお知らせして見ようと思います。結論からいえばそれなりにうまくなり、学生に戻ったようなおもしろ2年間でした。

1990年沖縄生まれ。営業日のお昼休みに(ほぼ)毎日更新する「今日の休憩」というブログを運営しています。

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絵画教室に入るきっかけ

自粛期間に入った2年前、急に家での時間が増えたので

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美大卒の友人らに混じって、クロッキー会に参加することになった。みんなで課題の裸体を5分とかで速書きするやつです
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1人だけうそみたいな画力で参加していた。本当にまじめに書いてこれ

それでも絵は楽しい。優しい友人にアドバイスをもらいながら、毎日せっせと続けたところ

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だんだん「変」に見えることは少なくなった。この上達幅が面白かった

ただここから伸びが止まってしまい、絵は好きだけど何をしたらいいかわからん!という時期が続く。

友人に相談すると「初期はほんと人に習った方がいいよ」とのことだった。大人が教室に通う、という発想が恥ずかしながら全然なかったので目から鱗だった。

都内の絵画教室の口コミを調べまくり1年毎週通ってみることに決めた。

これが絵画教室の開始のきっかけである。

はじめての絵画教室〜絵を立てる台かっこいい〜

はじめて絵画教室にいくと

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This is 絵画教室みたいな光景が広がっていた。やばい めちゃくちゃ緊張する(画像はイメージでお楽しみください)

そして40代後半〜60代ぐらいしかいない。全員何年も受講しているっぽい…自分だけ完全に浮いている。 

見よう見まねで買ったアクリル絵の具、無理くり揃えた筆などを出した。緊張しすぎて耳が熱い。ていうかキャンバスってでかい!

そうして準備がおわると

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ほんとうに裸の方がでてきた。同性ながらめちゃくちゃビビる

が、周りは「無」で描きはじめた。男女問わず慣れたらしい。

というか描き始めたらそれどころではなくなった。全然描けないのだ。

先生からレクチャーを受けよう

絵画の基礎を学べる、とだけ書いてあったので参加したクラスだ。

本当に何もわからない。先生がレクチャーにやってくる。

 

先生「まず、形をきちんととってください」

私「形をとるってどうやるんですか」

先生「棒をつかって頭を一つ測ったら、まず頭身をはかります」

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頭身の測り方(ぬいぐるみ再現)。絵描きがよくやってるポーズは「計測」のためか!と心の中ではしゃぐ。
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先生「で、頭をはかったら、目の位置を決めて、目を基準にいろんなパーツの位置を割り出します」
私「え?」
先生「絶対自分の目は信じず、全部しっかり測ってください」

あまりの細かさに衝撃を受けた。ほんとに1パーツずつ測るのだ。

後々理由がわかったのだが、絵をうまく描くにはまず「正しく見る」ということが重要らしい。

「目の狂いを徹底的に直す」が絵の最初の一歩なのだ。

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そして取り組み始めた線。あまりのできなさに震える(実際手が震えた)

一応色塗りに進むことになった。ここでまたレクチャーを受ける。

 

先生「まず、現実はすべて立体ですよね」

私「そうですね」

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先生「絵というのは、立体のものを、平面で再現しようっていう試みなんですね」
私「…そもそも無理じゃないですか?」
先生「そうなんですよ。だから技術が必要なんです」 
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先生「これから教える技術は明暗法と言って、明るさと暗さを理論に基づいて書くと、立体的に人間が描けるという技法です」
私「なんかセンスとかじゃないんですか絵って」
先生「いや、基礎は暗記ですね 算数とかと同じ」
私「えぇ…」

絵はす〜ごく長い歴史があるので、本当に基礎がきちんとあるのだ。なのでしっかり怒られる。

先生「なんでここ明るいのかな?言ったよね」

私「言ってましたねごめんなさい」

先生「ここは暗くないと変じゃないですか?」

私「そうでしたすいません」

こういう問答を無限にやることになった。全然覚えられない…。

初めてのキャンバス絵、完成

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そして見よう見まねではじめて書いた絵がこちら。なんか変だけど何が変かもわからない。うまいかどうかも自分ではわからない。先生と見比べてみると…
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うっっっっっっっっっっっっま 
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比べると自分の絵がシンプルに終わってることがよくわかる。こんなにできないのか…と他人と比べてはじめて自分の位置がわかった。毎回本当に頭上で「ガーン」という音がする。

1回の教室は大体3時間。絵は4〜5回にわけて完成させる。それを何セットも繰り返すことで技術をあげようということらしい。

先生はこれをうん十年もやっている。うまくて当たり前だがガーンとなる。うますぎる。

そのあとも試行錯誤が続き

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初期三枚。全部なんか怖い

ですが最近はだんだんコツを掴んできて

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これになった。なんかうまくなった!けどまだめちゃくちゃ怒られる
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これもうまくかけた方のやつ。​​​が、これはうまく見せるためにインチキトリミングをしていて
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引きで見ると「構図と背景と色のバランスどういうこと?」の絵になっている。人物がうまくなったとて、絵にはもっといろんな要素があるのだ。道のりは果てしない。
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絵画教室に通ってよかったこと

ざっくり2年通ったので絵画教室に通ってよかったことは無数にあるのですが、良かったことをまとめると

①自分ではたどりつけない基礎に出会える

独学のころ「絵 基礎」で検索すると恐ろしいほどいろんな意見がでてきて何をしたらいいかわからなかった。

絵は好きだが特に描きたいものはない、という意識の低い自分にとっては「1人の先生のやり方に師事する」というやり方はとてもあっていた。

ひとまず「学ぶ道筋」を探すという作業をショートカットできるのが教室のいいところである。

②自分では気づかないミスの原因がわかる

ある日先生に「線を描くスピードが早すぎる」と指摘をされた。全く気にしたことがなかったので驚いた。

私は速書きをするクセがあるらしい、というか絵って素早く描くものだとなぜか思っていた。

実際は先生もゆ〜っくり線を描くのだ。じっくり見て描くのだから当たり前だ。

そうした「割と致命的な間違い」を他人はただしてくれる。筆の速さを気をつけてからは絵が急に落ち着いた。習ってよかった〜となった。

③絵を見る視点が本当に変わる

以前は美術館にいって絵を見たところで「へぇ〜」しか出なかった。

が、今は西洋絵画などは恐ろしくすごいことがよくわかる。

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どう塗ったらこんなに立体的に見えるのか、色の選び方もダサくなくてすごい、いらん余白がすこしもなくてかっこいい、など知識が増えたおかげですごい絵のすごさが身に染みてわかるようになった。教室ではこのようなプリントが配られ「真似しろ」と言われる。真似…真似!!

また、一度ゴッホの自画像を模写する回があったが

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「あーこの人か、なんか点点点で自画像とか描いてる人だな、まあいけるのでは?」

と、余裕をかまして思ってやってみると、まずキャンバスに絵の具で「点」を綺麗にのせることがまず難しい。

自分が「点」も描けないとは思わなかった。予想外の壁にぶつかり一瞬脳が止まる。

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まったく点が打てずにいろんなところをサボった私の模写ゴッホ

教室の後、ゴッホの絵を生で見に行った。すると、め〜〜〜〜〜ちゃくちゃでかいキャンバスに描いて「うわーー」と声が出る。

こんなでかいキャンバスで全体のバランスをとりながら、点で絵を完成させるなんてイカれている。

先生はゴッホを研究しすぎて「あいつは本当に絵がうまい」と友達か?というテンションでゴッホを語る絵画オタクでもある。そんな人から教わる豆知識もおもしろい。初心者ながら、有名な画家は本当にすごいんだなあと肌でわかるようになった。

番外よかったこと:誰とも喋らなくていい

学生時代の授業は、そもそも友達に絵を見られることが恥ずかしかった。

が、我々はもう大人で他人だ。交流を望まなければ、誰とも喋らなくてもいい!これがめちゃくちゃありがたかった。(2年間クラスメイトとほとんどしゃべっていない)

仲良くなりたい人はなってるし、1人がいい人はほっといてくれる。大人最高である。

絵もうまくなりつつ、なんか楽しみも増える。

絵画教室最高〜!の2年間レポートでした。


絵は下手でも楽しい

クロッキー時代は毎日練習していたが、最近は仕事も忙しく週1の教室でしか練習していない。伸びは遅いし、同じところで毎回怒られるがそれでもやればうまくなるのでおもしろい…。

引き続き無理せずうまくなりたいなと思っております。

5年目のレポにもご期待ください。

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はじめる前の人をかいたやつと習ってから父を書いたやつ。自分でも面白いぐらい目のレベルがあがっておりたのしいです。おすすめです

 

※一部写真に写真ACさんのフリー写真を利用しています。 

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