筆者が子どもの頃はあせもがひどく、夏の蒸し暑い夜は肘や膝の裏を保冷剤で冷やしてかゆみを和らげつつ寝ていた。
また、首や脇、太ももの付け根には太い血管が通っており、冷やすと効率的に体の熱を下げることができるというのは熱中症対策で知る人も多いだろう。
ここで私が提案するのは素早く効率的に身体を冷やす方法ではない。耳だ。耳を冷やすのである。
すると耳の空間が冷やされ、空間を満たす冷気がじんわりと頭蓋骨を伝っていく。
保冷剤を顔にあてたとき、直接肌に触れる保冷剤は例えるならガリガリ荒削りのかき氷だ。口の中は急激に冷えて頭がキーンと痛くなる。
対して耳にあてたとき。薄く削った氷はふわふわで、口の中で音もなく溶け、冷たさの余韻が残る。そういう優しい豊かさが、耳冷やしにはある。
耳を冷やしながら目を閉じると尚良い。
ピシ…パチ…
遠くで氷がきしみ割れる音が聞こえてくる。
暗闇の向こうに段々と、氷の大地の上に立つシロクマやペンギンの姿が浮かび、
気がつけば夢の中だ。
極上の体験を貴方に。ぜひお試しください。