アバサー(ハリセンボン)提灯
ハリセンボンは沖縄方言でアバサーと呼ぶのでここからはアバサーで統一したい。
アバサーの皮の部分を膨らませて乾かして作るアバサー提灯。沖縄ではおみやげ屋さんでは小さいもので1000円、大きなもので2000円程度で売られている(おしゃれなおみやげ屋さんや空港にはないかもしれない。探すなら少し古めのお店がいい)。
アバサー提灯自体は可愛いのだが、困ることがある。家に飾るにはすごく生々しいのだ。
しかしせっかくのアバサー提灯。天井から吊るす以外に何かもっとステキな飾り方はないものか、考えていたらいいことを思いついた。アバサーの針の部分を剣山のように使って花を刺し生け花をするのだ。アバサー提灯を使ってリビングに花のある生活を。なかなかステキじゃないか。
思いついたらすぐにやってみたくなって近所のスーパーに走ったが、あいにく花は供花しかなかった。しかし生け花の発祥は仏教伝来に際し、花を献じる供花に由来するという説が有力である。ということは、きっと供花で正解なのだ。
あとアバサーに刺す前の練習に普通の剣山を買ってみたのだが、花の高さと剣山の小ささが合っていない気もする。
しかしここは生け花をしたことのない初心者ならではの勢いでひとまずやってみよう。
と思ったら供花の茎がストローのように空洞になっていた。これはできるのか?
刺しにくかったが、無理やり剣山に刺せた。
剣山の大きさと花の高さがちぐはぐだが、とりあえずこれが見本。
はたして供花とアバサーで生け花はできるのか。
アバサーは痛い
アバサーの針は花を刺せるぐらいの強度はあるのか。
刺すというより茎の空洞にうまく入れる感じだが。
同じ要領で花を刺していこう。
続いてチャーギ(イヌマキのこと。沖縄ではよく仏壇にも供える)を。
しかしチャーギの茎がめちゃくちゃ硬い。アバサー剣山は丸いため手に持っておかないと花を生けられないため、硬いチャーギを切るために思わずアバサーを持っている手にも力が入ってしまう。
手が痛いよう。
血が出たよう。
しかしなんとか切って、チャーギを生けた。
なぜアバサーの下に生けたかというと、花を上、チャーギを下に生けることでうまくバランスをとって、上から吊って飾れるのではないかと思ったからだ。
まぁ思ったようにはいかなかったのだが。
これが華道アバサー流だ
吊るす案は捨てて、置いて飾ることにしよう。
全体が丸いので置くだけでも何度も転がったのが、何度かやっていたら奇跡的にバランスを保って止まったアバサー。
おお、これは思った以上にありなのではないか。
台に沖縄っぽい布を巻く。
おおおお!
これで終わってもよかったのだが、チャーギだ。
さっき下の部分から抜いたチャーギを忘れていた。
もう下には生けられないし、横に生けたら絶対バランス崩して転がってしまうだろう。
そしたらここだ!
「アバサー生き返ったで!」
ご覧になっただろうか?チャーギを咥えさせる前と後では明らかにアバサーの目に宿る生気が違うのだ。生け花には花を生かす、命を与えるという意味があるらしい。
アバサー流は花だけでなく、花を生けるアバサーまでにも命を与える、そんな流派ができた瞬間である。
しばらく机の上に飾っていてハタと気付いた。アバサーは針が剣山にはなっても下に花に水を与える水受けがないので生けた花がすぐにダメになってしまう。
これでは花がかわいそうだ。
ということで誕生したばかりだが華道アバサー流はこれにて解散!
花を生けた後のアバサー提灯はしばらくして物置の中にしまわれた。どうしたらアバサー提灯を家にいい感じに飾れるのか。今後も考えていきたいです。