はじめに
はげます会では毎週金曜に、会員限定のメルマガを配信しています。限定コンテンツのコラム「無人島には持って行かない、大切にしまっておく自慢の品」、ほりべのぞみさんの大切な品を紹介してもらいました。
フードデリバリーの配達リュック
(ほりべのぞみ)
今年、訳あってフードデリバリーの配達員として働いた。その時に使っていた配達用リュックを、今でも大事に持っている。
フードデリバリーの配達リュックというものはつまり、保冷・保温バッグをリュック型にしたものである。私が支給されたリュックの寸法は 45cm x 45cm x 45cm と、巨大な立方体で、至る所にジッパーがついていて便利だ。リュックは上からだけでなく、前からもガバッと開くようになっているので、大きなピザもそのまま入れることができるようになっている。なんならピザが10枚ぐらい入りそうなサイズだが、ピザは見た目によらず重いので、10枚いっぺんに運ぶことはおすすめできない。
私が住むベルリンでは、フードデリバリー以外にも、医療品や食材宅配サービスがタケノコのように続出しており、街は自転車の配達員で溢れている。青、ピンク、緑、オレンジなど、カラフルなキューブを背負った配達員たちが街中を走り回っていて、天気が悪ければ悪いほど出番が増える。ベルリンの配達員のほとんどが移民で、私の周りではインド人の学生や南米の若者が特に多かった。
デリバリーの仕事は体力的にはキツかったが、待ち時間に他の配達員と情報交換したり、同じリュックの人とすれ違う時に会釈したりするのが楽しみだった。最低賃金のバイトなので稼ぎは良くなかったが、運動量が急激に増えたので一か月もしないうちに3キロ痩せた。
だが数か月ほどして、訳あってクビになった。(私はなんでこう、クビにばかりなるのだろう)会社から支給されたリュックやヘルメットは返却する必要はないそうなので、そのまま家にある。体重も気がついたら元に戻っていた。
あれから5か月。今やほとんど出番が無くなってしまった配達リュックだが、変に愛着が湧いてしまって捨てるに捨てられない。置き場所がないので寝室のタンスの上にボンッと放置したままなのだが、ピンクの立方体が視界に入るたびにデリバリーの仕事を思い出す。
でもこの配達リュック、よく考えたら釣った魚とかを保管するのに役に立ちそうなので、無人島に行くことになったら持って行こうと思う。
終わってふたたび解説です
ドイツのデリバリーのかばんはピンクでかわいいですね。他にもカラフルな色があるそうです。
突然クビになった話が出て衝撃的だったのですが、無人島へ行くとき「釣った魚とかを保管するのに役に立ちそう」という理由で持っていけそうで良かったです。(はげます会担当 橋田)
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