はじめに
毎週金曜の夜にはげます会限定メルマガを配信しています。1万文字以上ある超長いメルマガです。編集長林が書き始めたお題で、編集部メンバーがリレー方式でつないでいきます。
はげます会会員限定のコーナー「さいきんどう?」では、ライターに近況を聞いています。高瀬雄一郎さんに聞いた小話を紹介します。
髪を切りにいく旅行(高瀬雄一郎)
昔から、髪を切る時間をどうにか楽しくすごしたいと思ってきた。2ヶ月に1回2〜3時間、必ず行かないといけないものなので、ぼんやり座ってるだけではもったいないと思ってしまうのだ。
ある時は、店頭の黒板の日記がいつも面白い美容室に行き、好きだった回をお伝えしたり、より具体的なエピソードを聞いたりしていた。またある時は、毎回必ず髪型を変えると決めて、自分の印象がガラッと変わるのを楽しんでいた。
しかし、日記の美容室は引っ越しで離れてしまい、髪型もネタ切れ。ここ2年ほどは、漫然と髪を切りにいく日々が続いていた。
このままじゃいけない。そう思っていたら、最近新しい楽しみ方を思いついた。「髪を切るための旅行に行く」だ。
もともと髪型や仕上がりにこだわりがあるわけではないので、技術やメニューで美容室を選ぶのは難しい。ならば、そこに行くこと自体が楽しみになる場所を選ぼうということだ。
例えば、海が見える美容室というのは気持ちがよさそうだ。選ぶ基準が旅行の宿さがしみたいだなと思いつつ調べてみると、神奈川県の七里ヶ浜にあったのだ、オーシャンビューの美容室が。
そして当日、それは最高の1日でした。
まずは住んでいる千葉から電車で鎌倉に移動し、駅前を少しブラブラする。こういうベタな観光地ってテレビではよく見るけど意外と行く機会はないので、すごくミーハーな気持ちで楽しんだ。
お昼を食べたら江ノ電に乗って七里ヶ浜へ向かい、いよいよ美容室へ。お店は本当に海の目の前で、大きなガラス窓があり、ずっと海を見ながら髪を切ってもらえた。
そして美容師さんは、近所のおすすめスポットやここに来るお客さんの特徴などを教えてくれた。七里ヶ浜ではすごく明るいメッシュを入れる人が多いそう。まるで旅先で旅館の人と話すようなその土地の話だ。
終わったあとは、海岸でしばらくボーッとして、レンタサイクルで海沿いを江ノ島まで走り、はじめての湘南モノレールに乗り、大船でお刺身定食を食べて帰ってきた。髪を切りにいったとは思えない充実感だった。
海外旅行好きの友だちが「帰りの飛行機の中ではもう次どこに行こうか考えている」と言っていたが、今ならその気持ちが分かる。今度は森の中の美容室に行くのもいいし、知らない町の商店街の床屋さんもありだ。
この先、私の髪が新しい記事のたびに短くなっていたら、髪を切りにいく旅行にはまってるんだなと思ってください。
終わってふたたび解説です
知らない町に行きたいがために、高瀬さんの髪がどんどん短くなってしまわないか心配です。記事が公開されるたびに高瀬さんの髪がどうなってるのか気になって、髪型ばかり見てしまいそうです。
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