ちょっと聞いてよ 2022年8月24日

愛知県の伝統野菜「十六ささげ」を食え

実家に住んでいたころによく食べていた野菜「十六ささげ」。
愛知県の伝統野菜で、全国区の野菜でないことを実は最近まで知らなかった。

関東の知り合いに話したら「インゲンでは?」「そんな野菜は無い」と言われた。「無い」とはなんだ。

十六ささげの存在を証明するため、愛知から東京へと持ち帰り、デイリーポータルZ 編集部の方に食べてもらった。

愛知県出身、東京都在住のデザイナー。イラストを描き、写真撮影をして日々を過ごす。
最近は演劇の勉強に熱中。大きなエビフライが好き。

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十六ささげはお盆の時期に現れる

十六ささげはインゲンに似たビジュアルで、正直どこにでもありそうな印象の野菜である。
淡白な味だが、やわらかくてきゅっとした食感がいい。

流通時期は短く、だいたい7月下旬〜8月末。9月も半ばになると見かけなくなる。

a1.jpgスーパーの売り場ではほとんどの場合「ささげ」表記である。10本程度でくくられ、ひと束単位で買える。

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販売価格は100円〜200円くらい

量に対してなかなかの価格設定である。

実家では、畑で作った自家製十六ささげを祖母からもらっていたので、値段なんて意識したことがなかった。思っているよりも貴重な食材だった。

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このスーパーでは、サヤエンドウとインゲンのあいだに置かれていた
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胡麻和えにすることをすすめられている

ゲットしたところで、インゲンと比較してみる。

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画像左がインゲン、右が十六ささげ

インゲンは、シルエットにメリハリがあり、さわると固い。

それに対して十六ささげは、心配したくなるくらいショボショボして見える。そして風に吹かれればなびくやわらかさ。

インゲンに似ていると前述したが、並べてみるとあまり似ていない。

十六ささげは束ねたまま茹でろ

野菜炒めにしてもうまいし、聞くところによると天ぷらにしてもいいらしいが、ここはスーパーの提案を採用し、老若男女広く愛されている胡麻和えを作ることにする。私も好きな食べ方である。

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塩水を沸騰させ、2、3分茹でる。束ねたまま入れるとバラバラにならない
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水に晒して
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小指一本分くらいの長さにカット。インゲンと違い、筋取りの工程はない
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断面を見ると、小さな豆が入っていることが確認できる
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醤油と砂糖、いりごまを和えれば、十六ささげの胡麻和えが完成
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今回はたくさん作ったが、通常一回の食事に出てくる量はこれくらい
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母から送られてきた画像。愛知が誇る万能調味料「かけ味噌」で味付けをしたパターン
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十六ささげ試食会を開催

作った十六ささげの胡麻和えを食べてもらうべく、デイリーポータルZ 編集部へ持ち込んだ。

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十六ささげを食べる会メンバー(左から、筆者、林さん、橋田さん、安藤さん)
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違いがわかるように、インゲンの胡麻和えも用意した。左が十六ささげ、右がインゲンだ。
調理後だとほとんど同じに見える

勢いあまってすべて胡麻和えにしてしまったので、「見た目には違いがよくわからないですね」と言われてしまった。ひと束はそのまま持って来ればよかった。

調理前の十六ささげはこの記事ごしに見てもらうとして、とにかく食べてもらおう。

まずは安藤さんから。

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どうですか!

筆者と同じ、愛知県出身の安藤さん。

「売られているのは見たことがあるが、食べた記憶はない」とのこと。さてどうか。

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「これは……食べたこと、ありますね。」何かを思い出したようす

「いつ・どこで食べたかは思い出せないけど、食べたことがある。でも、たぶん実家。」と安藤さん。

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「食感が、歯ごたえが、インゲンとはあきらかに違いますね。」

味よりも、過去の経験のほうが気になるらしく、

声をどんどん大きくしながら「食べたことあったわ〜」と何度も繰り返していた。

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インゲンが苦手だという橋田さんはどうか
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「初めて食べる味!おいしい!」目が輝いている

橋田「インゲンとは全然違うよ!これなら無限に食べられる!」

橋田さん曰く、インゲンは苦く、えぐみがあると感じる。十六ささげにはそれがないそう。

橋田「他の食べ物にたとえられるかなって考えてみたけど、思いつかない。この細さも、味も。」

橋田「ちょっといいおしゃれカフェにでてくるような野菜?”京野菜”みたいな。」

安藤「いいえ。家で食べます。レストランで出てくるイメージはないです。」

そう、十六ささげは飲食店のメニューとしては見かけない。

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テンションが爆発していた。苦手な物に似た見た目の食べた物が好きな味だったら、こうなるかも

「夏になったら愛知まで買いに来てください。」と言ったら「それか、米田さん(筆者)が愛知から戻った次の日にもらう」と言われた。

嬉しいが、ここまで気に入られるのは想定外であった。

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最後は林さん。「あー」とか「うーん」とか言いながら黙々食べる

「たけのこのやわらかいところみたいな食感。定食の惣菜とかについてたら何も考えずに食べちゃうやつ」

安藤「くだものみたいに、『うわあ、あまい!』みたいなピークがないですよね」

「地元の人がフツーに食べているものって感じですね。他の地方から来た人が説明を求めても、その土地の人は『わざわざ食べるものじゃないよ』って言うような。」

まさに地産地消だ。

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筆者はずっと「知ってる野菜の食レポってむずかしいですね〜」と言っていた

十六ささげは日持ちせず、三日もすればしなびてしまう。しかし調理はかんたんでクセがなく、じわじわうまい。

夏に愛知を訪れた際は、ぜひスーパーを覗いてみてほしい。

愛知以外でも作られてはいる

後日、安藤さんから「ささげを売っている店を見つけた」と連絡をもらった。横浜で見かけたという。

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安藤さんから送られてきたささげ(群馬産)売り場の写真

愛知で買った十六ささげより大きいようにも見える。
それに、1kg単位での販売は愛知では見たことがない。業務用として売られているのかもしれない。

調べてみたところ、名前に「ささげ」とつく野菜はかなりの種類があることが分かった。「十六ささげ」は「ささげ」の亜種であり、その総称でもあるらしい。

さらに、愛知の伝統野菜であり、岐阜の伝統野菜でもあり、沖縄や奈良などでも作られていることがわかった。伝統野菜とは。

十六ささげ、シンプルながら知らないことがまだまだ多そうだ。
次回、『各地のささげ』食べ比べ試食会の開催を待て。

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