十六ささげはお盆の時期に現れる
十六ささげはインゲンに似たビジュアルで、正直どこにでもありそうな印象の野菜である。
淡白な味だが、やわらかくてきゅっとした食感がいい。
流通時期は短く、だいたい7月下旬〜8月末。9月も半ばになると見かけなくなる。
スーパーの売り場ではほとんどの場合「ささげ」表記である。10本程度でくくられ、ひと束単位で買える。
量に対してなかなかの価格設定である。
実家では、畑で作った自家製十六ささげを祖母からもらっていたので、値段なんて意識したことがなかった。思っているよりも貴重な食材だった。
ゲットしたところで、インゲンと比較してみる。
インゲンは、シルエットにメリハリがあり、さわると固い。
それに対して十六ささげは、心配したくなるくらいショボショボして見える。そして風に吹かれればなびくやわらかさ。
インゲンに似ていると前述したが、並べてみるとあまり似ていない。
十六ささげは束ねたまま茹でろ
野菜炒めにしてもうまいし、聞くところによると天ぷらにしてもいいらしいが、ここはスーパーの提案を採用し、老若男女広く愛されている胡麻和えを作ることにする。私も好きな食べ方である。
十六ささげ試食会を開催
作った十六ささげの胡麻和えを食べてもらうべく、デイリーポータルZ 編集部へ持ち込んだ。
勢いあまってすべて胡麻和えにしてしまったので、「見た目には違いがよくわからないですね」と言われてしまった。ひと束はそのまま持って来ればよかった。
調理前の十六ささげはこの記事ごしに見てもらうとして、とにかく食べてもらおう。
まずは安藤さんから。
筆者と同じ、愛知県出身の安藤さん。
「売られているのは見たことがあるが、食べた記憶はない」とのこと。さてどうか。
「いつ・どこで食べたかは思い出せないけど、食べたことがある。でも、たぶん実家。」と安藤さん。
味よりも、過去の経験のほうが気になるらしく、
声をどんどん大きくしながら「食べたことあったわ〜」と何度も繰り返していた。
橋田「インゲンとは全然違うよ!これなら無限に食べられる!」
橋田さん曰く、インゲンは苦く、えぐみがあると感じる。十六ささげにはそれがないそう。
橋田「他の食べ物にたとえられるかなって考えてみたけど、思いつかない。この細さも、味も。」
橋田「ちょっといいおしゃれカフェにでてくるような野菜?”京野菜”みたいな。」
安藤「いいえ。家で食べます。レストランで出てくるイメージはないです。」
そう、十六ささげは飲食店のメニューとしては見かけない。
「夏になったら愛知まで買いに来てください。」と言ったら「それか、米田さん(筆者)が愛知から戻った次の日にもらう」と言われた。
嬉しいが、ここまで気に入られるのは想定外であった。
林「たけのこのやわらかいところみたいな食感。定食の惣菜とかについてたら何も考えずに食べちゃうやつ」
安藤「くだものみたいに、『うわあ、あまい!』みたいなピークがないですよね」
林「地元の人がフツーに食べているものって感じですね。他の地方から来た人が説明を求めても、その土地の人は『わざわざ食べるものじゃないよ』って言うような。」
まさに地産地消だ。
十六ささげは日持ちせず、三日もすればしなびてしまう。しかし調理はかんたんでクセがなく、じわじわうまい。
夏に愛知を訪れた際は、ぜひスーパーを覗いてみてほしい。
愛知以外でも作られてはいる
後日、安藤さんから「ささげを売っている店を見つけた」と連絡をもらった。横浜で見かけたという。
愛知で買った十六ささげより大きいようにも見える。
それに、1kg単位での販売は愛知では見たことがない。業務用として売られているのかもしれない。
調べてみたところ、名前に「ささげ」とつく野菜はかなりの種類があることが分かった。「十六ささげ」は「ささげ」の亜種であり、その総称でもあるらしい。
さらに、愛知の伝統野菜であり、岐阜の伝統野菜でもあり、沖縄や奈良などでも作られていることがわかった。伝統野菜とは。
十六ささげ、シンプルながら知らないことがまだまだ多そうだ。
次回、『各地のささげ』食べ比べ試食会の開催を待て。