特集 2022年4月15日

デジタル世界の人間になりたい

小学生のころに夢中になったものって誰にもあると思う。僕の場合、それは「デジタルモンスター(デジモン)」だった。デジタル世界に行ってデジモンと心温まる交流をしたり、時には強大な敵に立ち向かう主人公たち。

実は、いまだにあこがれの気持ちは消えていない。彼らみたいに冒険をしたい。デジタル世界に行ってみたい。

今回、そんな夢を全力でかなえてきました。

文化や街歩きが好きな会社員。昔からあるものと新しい技術が好き。誰も気づいていないことを見つけると燃える。好きな食べ物は天下一品。


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こういうことです

デジタル世界に行きたい。でも、どうすれば。

一つ、頭に浮かんだものがあった。それが「デジタル世界っぽい演出」だ。

例えばデジモンが進化するとき。デジモンの表皮がはがれ、そこに残るのは鮮やかな緑色の細いライン。いわゆる「ポリゴン」がむき出しになったその姿。現実からかけ離れたその異形に、「彼らは本当にデジタル世界に生きてるんだ」と画面にかじりついたものだった。

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こういう演出、見たことあるだろうか。

つまり、言いたいことはこうだ。自分が「ポリゴン」の姿になれば、「ポリゴンのように見える服」を作って着れば、ちょっとでもデジタル世界に近づけるんじゃないか。むくり。長らく眠っていた少年の心が起き上がり準備体操を始めた。

さっそく必要な材料をぽちり。到着は明日だ。ベッドに入る。目を閉じる。デジタル世界ってどんな世界が広がっているんだろう。どんなポーズがおもしろいかな。脳がさえきっている。小学5年生のころ、修学旅行で山梨に行く前日の自分もこんなだったっけ。
 
次の日、注文していた材料が届いた。さあやるぞ。使うものはシンプルだ。黒い服と蓄光テープ。以上。

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「コナンに出てくる犯人」のコスプレ準備じゃないよ。

タイツ、シャツ、ズボン、帽子にポリゴンっぽく蓄光テープを貼れば完成だ。コツはテープ同士を垂直にすること。

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職人が丹精を込めてポリゴンを作っています。

服を着て、電気を消せばこのとおり!

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今、デジタル世界に降り立った。

デジタル人間になれたんだ。自然と背筋が伸びて気をつけをしていた。少年時代の自分に敬意を称して。

実はここまでいろいろ苦労があったけど、それはあとで話すことにしよう。 

タイツのせいで見えてないけど、今顔がニマニマしてます。さてさて、せっかくなのでいろいろやってみよう。

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カラフルなゲーミングPCと相性ばっちり。
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VRゲームをする姿も、
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デジタル人間ならスタイリッシュに。

あとはあとは。

引き出しをあさっていると気になるものが出てきた。

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星だ。テープと同じように暗闇で光るやつ。

これ懐かしい。「チャレンジ2年生」でためたポイントでゲットしたんだっけ。何となくほしくなったけど使い道がなくて机の奥に眠っていたんだった。眠り続けて約20年。うまく使えないかな。

ピコーン!

頭の上で電球が。いや、星が光った。そうだ。これで今流行の "映え" ってやつをねらえるのでは?

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デジタル世界の人間 ~きらきら星を添えて~

ちょっと星が小さかった。まあでもいいでしょう。ありがとう、当時の自分。星、ちゃんと使えたよ。
 
ふう。ひととおり堪能した。次は何しようか。デジタル世界のイメージを頭の中で振り返る。浮かんできたのは、デジタル世界の果てまで旅する少年の姿。

そうだ。デジタル世界に行ってやりたかったこと。それは冒険<アドベンチャー>だ。さっそく外に行ってみよう!

タイツとテープで滑りそうな足を慎重に動かし、家のドアノブに手をかける。

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その前に、完成までの苦労を語りたい

実はこの形ができるまではいくつもの苦労があったのだ。せっかくなので、いったんその道筋を見てほしい。

最初のプラン

最初の構想では、タイツだけにテープを貼る予定だった。

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あっという間におもて面に貼れた。簡単にできちゃうな。天才か?

半分できたところで着てみよう。

タイツに足を通し、頭をかぶろうとして動きが止まった。

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頭が入らない。ぜんぜん天才じゃなかった。

どうしてこうなった。すぐに思い当たるところが見つかった。

伸びるタイツ + 伸びないテープ = 伸びないタイツ

タイツってそもそも生地を伸ばして着るものなのに、テープを貼ったことにより伸びなくなってしまった。別の手はないかな。

と、頭の中に言葉が響いた。

「伸びぬなら 伸ばしてみよう そのテープ」

そうだ。無理やりテープを伸ばせばすべてが丸く収まるじゃないか。腕にふんぬっと力を入れる。無理やり生地が伸びていく。伸びないテープがずれていく。えいやっと頭をねじこむ。気分は身体がやっと通るくらいの洞窟を探検する冒険家だ。

ベリベリベリ!

なんとか着ることができた。でも変な音がしたような。

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クモの巣に引っかかった人間?

テープは伸びずにはがれた。目前まで近づいていたデジタル世界への扉が遠ざかっていく。こうして最初の挑戦が終わった。
 
第二のプラン

さあ次へいこう。。さいわいなことに、最初のトライで教訓ができた。伸びる部位(頭と胴体と足部分)にテープを貼ってはいけない。
よし、今度は「伸びない服」も用意して別々に準備しよう。具体的には、

●    帽子
●    Tシャツ
●    ズボン
●    タイツ(腕と足先)

にそれぞれテープを貼り、最後に着てみよう。伸びない部位に貼るのでうまくいくはず。いや、うまくいってくれ!

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ペタペタ。もう慣れたものだ。蓄光テープを貼りたい人がいたら呼んでください。

8割は貼れただろうか。しかし、ここまできて動いていた手が止まった。問題発生。大量に用意したはずのテープがなくなってしまった。

今回、余裕を持ってテープを30メートルも買っておいた。身長を18周以上できるサイズだし、これだけあればいけるっしょ。慢心だった。今ならカメに抜かされたウサギの気持ちがよくわかる。

しょうがないので追加注文だ。ぽちり。

さて、途中だけどせっかくだから着てみよう。

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これは勝ったのでは! 今、蓄光テープを貼るときに出た裏面テープを紙吹雪にして飛ばしたい気分です。

後日。追加のテープを貼ってようやく完成した。最終的に使ったテープは40メートル。デジタル人間になるためには、マンション13階分のテープが必要だったのだ。デジタル人間までの道はなかなか遠かった、いや長かったな。

こうして冒頭に戻るというわけだ。

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冒険に行こう

さあ、デジタル世界に行ってやりたかった「冒険」に出かけよう。

ドアを開けて夜の街へ飛び出す。冒険の始まりだ!

始まるはずだった。

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あれ、おかしいな。

どんなふうに見えるだろうか。なんというか、変わったパジャマを着ている人間というか、黒いスパイダーマンになり損ねた人間というか。さっきの "Cool" なオーラ、どこにいってしまったんだ。

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参考までに、さっきの勇姿をもう一度ご覧ください。

原因はすぐにわかった。明るさだ。夜の街にはいたるところに「明かり」がある。だから、デジタル世界の人間の黒い服部分が普通に見えてしまうんだ。

じゃあ暗いところに行けばなんとかなるかな。しかしだ。

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暗い場所に行ったつもりでも弱く明かりが入ってくる……。思わず「考える人」のポーズになった。

ここは街の住宅地。整然と街灯が並び、夜でも安心して歩くことができる場所。そう、街には「本当に真っ暗な場所」などなかったのだ。

悟った。デジタル人間は外で生きていけないんだと。

でも、よく考えるとこれって当たり前のことだ。「デジタル世界」と聞いて多くの人がイメージするのはパソコンやインターネットだろう。これらのほとんどは屋内にあるものだ。えっ?  スマホは屋外でも使うって? デジモンが流行っていた時代にはまだケータイが普及してなかったから……。

 

さあ、家に帰ろう。

 

家の中限定ではあるものの、デジタル世界の人間になる夢がかなった。やり切った。満足だ。

物語ではタイムマシンに乗って少年時代の自分にメッセージを伝えるシーンがあるけど、もし僕がその境遇になれたらこう伝えるだろう。「デジタル世界の人間になる夢、かなうよ」と。


でも、本当にそれでいいのだろうか

デジタル人間になれた。やりきった。しかし、1週間後に思ってしまった。

本当にデジタル世界に行ったと言っていいのかな。デジタル人間の格好をしただけなんじゃないのか。少年時代の心は「夢はかなった」とさけんでいる。でも、心の奥で納得できない大人の自分がいる。

ある日、ひらめいた。そうだ、VRだ。

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ソフトで「デジタル世界の住人」のモデルを作って、
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デジタル世界に降臨だ。

ああそうか。本当に求めていた世界はここにあったんだ。

ここなら思う存分冒険ができる。人との交流もできる。まさに無限大な夢。

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夢に見たデジタル世界に今、立っている。

こうして、本当の意味で「デジタル世界に行く夢」がかなったのだった!

そして今、デジタル世界に冗談抜きでハマりそうで困っている。デジタル世界にいる人はみんなやさしいし、世界は無限大に広がっている。仕事中もついデジタル世界のことを考えてしまっていたり……。現実をおろそかにしない程度に楽しもうと思います。

(帽子の3Dモデル:ぴケの創作屋さん

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