特集 2021年6月18日

電車の車窓フィルターでファンタジーを旅する

電車の車窓を持ち歩いたら、ファンタジーの世界を旅することになったのでご報告します。

ドライブも散歩も好きだが電車の旅がいっとう好きだ。

ぼんやりしているだけでずっと遠くに行けるのは宇宙船のワープみたいだと未だにしみじみ不思議に思うし、もたれかかったドアの窓の外に景色が流れていくのはいつまでも見飽きない。

そうだ、電車旅のよさというのはあの角が丸い窓がついたドアとセットなのではないか。

まちを歩くのと建物が好きで不動産会社に入りました。
休日は山を登り川を渡り海で石を拾います。

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きっかけは「電車の扉の向こうがお布団だったらいいのにな」

 

そもそもは旅をするどころか、いち早く家に帰りたいという強い念がきっかけだった。

筆者は毎日往復3時間電車に乗って通勤している。

電車旅は大好きだけれども、しょぼしょぼの目とペコペコのお腹を抱えた会社帰りとなると話は別だ。さらに駅から家までは徒歩15分。最寄駅に着く頃には、もう一歩も歩きたくないと座席にずぶずぶ沈んでいる。

「電車の扉の向こうがお布団だったらいいのにな」

自宅の前にバス停を作るよりもさらに難易度が高そうな願いだが、それでもなんとか雰囲気だけでも味わえないかと考えたどりついたのが、こちらの電車の車窓フィルターである。

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「長らくのご乗車お疲れ様でした。次は終点、お布団です」

電車の車窓フィルターを作る

イメージは一昔前のプリクラやカメラ機能にあるフィルター機能だ。

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布団視点

 まずは電車のドアの写真を撮る。

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せっかくだからお気に入りの電車にしよう

東京メトロの日比谷線が大好きだ。床の青色と黄色の鮮やかなコントラストと、ちらちらと星が瞬くような座席シートがたまらない。

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また別の電車にて。よく見ると窓の枠なんかもちょっとずつちがって見応えがある。

車掌さんの景色が見られるタイプの窓。幾つになってもわくわくする眺めだが、この窓にはお布団より銀河系を突き進んでほしい。宇宙旅行に行くときにはこの車窓フィルターも持っていこう。

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2L判で印刷して窓を切りぬいたら、窓の外側の面をアクリル板に貼り付ける。
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プシューと扉が開くシーンは、ドアを切り貼りした3種類のフィルターを用意して、コマ撮り風にしよう
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あとはフィルター越しに写真を撮るだけなのだが、しっくりくるポイントを見つけるのが案外難しい。
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フィルターに対するカメラの向きがうまくあわないとペラペラに見えるし、
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こっちは電車に乗っている感はあるけれど、見え方が幽体離脱か影から覗き見るストーカーみたいだ。見下ろす感じがよくないのか。

そんなこんなで調整の末出来上がったのが冒頭のgifであった。

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もう一度どうぞ!

いつものシングル布団が、ザブンと飛び込んだら気持ちが良さそうな大きなプールに見える。本当に電車に乗っているようで、ドアの向こうに広い広い世界が広がっていて、なんとも不思議な没入感があるのだ。

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電車の車窓フィルターでおとぎの国に出発だ

せっかくなので布団以外ではどんな絵になるか試しにいこう。

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いつもは都心を駆け巡る日比谷線を、のどかな田んぼに連れ出す
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しょっちゅう寝過ごしては遅刻していた田舎の高校生時代を思い出す眺め

普段の電車での目線に合わせてカメラを構え、遠くの景色を切り取るとこれは完全に旅の風景だ。

ピントが合わずにボケる感じも、窓枠がうっすら窓に反射して見えるのも、ぼんやり外を眺めてまどろんでいる様子を思い出させる。

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いざ、ファンタジーの世界へ!

今の季節、道端にはたくさんの野草が育っているが、草花と電車の車窓は最高の組み合わせだった。

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自分の背丈を軽々と超える草花に、コロボックルになった気分だ

細かい花弁が繊細そうなイメージだったヒメジョオン。車窓から見る姿はむしろ力強さがある。

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電車はぐんぐん花の群れの中を突っ切っていく。
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鬱蒼としてくるとよりワクワク感が増す

窓越しに見える花びらの先のギザギザや、雄しべのポフポフしたところにやけに迫力を感じるのがおもしろい。

被写体に近づいたことによる解像度の高まりだけではない、何かこう生き物としての存在感の強さがあるのだ。

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ジィッ…

タチアオイの視線の圧の強さには思わずたじろいだ。死んだふりをしないと食べられてしまうやつだ。なのにあまりにタチアオイは美しく、目を離すことも出来ない。

見惚れていると今度はもぞもぞと、足元からくすぐったさがやってくる。

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わ、
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うわうわ、
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シロツメクサの通勤ラッシュだ!
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生い茂っているところにフィルターを差し込んだだけ

シロツメクサに埋もれながら写真を撮っていたら、今度は上から大きな声が降ってきた。

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「おねーさーん!!」「なにしてんの〜!!」

もうだめだ、わたしはぎゅっと目をつぶって覚悟を決めた。

きっとこの巨人たちに摘まれてお口にぽいっと食べられちゃうんだ…

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「お兄ちゃん、僕にも見せてよ〜!」「なんだよー」兄弟喧嘩を横目に電車は進む…

追いかけてきた小さな巨人たちと散々鬼ごっこをして、満ち足りた気分で帰路についた。

いつもの散歩も、電車の車窓ひとつで立派な冒険の旅になるのだ。

今回は電車を使ったが、ほかにもいろんな窓が使えそうだ。たとえば、バスの一番うしろで窓にもたれて見るまちの風景、飛行機のあの丸っこい窓から見下ろす景色。

窓に映るのは、自分しか知らない特別な眺めだ。

今度の休みは好きな窓フィルターを持って、小さな秘密の旅に出よう。


食べものが大きくなると嬉しい

家に帰って、お昼ごはんのオムライスでも電車の車窓フィルターを試してみた。

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鍋で米を硬めに炊き、卵を三つ使った渾身のオムライスよ
 
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扉の向こうで大きな大きなオムライスが通せんぼしている。

チラっと見える半熟ふかふかたまごとチキンライスのすきまに、潜り込んで眠りたい。植物や布団同様、食べものも大きく見える瞬間があった。食いしん坊の夢に迷い込んだみたいだ。

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おやつのミスタードーナッツに押しつぶされるのもいいな

 

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