最初に言い訳を
三軒茶屋からムーンウォークで移動し始めてすぐに気付いたのだが、ムーンウォークは街中でやるものではない。後ろ向きに移動するので、とても危ないのだ。バックミラーが欲しい、移動中ずっとそう思っていた。
危ないだけではない。4年前の記事でも書いたが、ムーンウォークをやるにはなるべくツルツルした床が良いのだが、ツルツルした歩道なんてある訳もなく、大抵はガタガタしている。冒頭でご覧いただいた映像で、僕のムーンウォークが上手くいってないのは、その辺りの事情もあったのだ。
そんな悪条件の中、三軒茶屋の次のバス停「昭和女子大」まで30分近くかかってしまった。この日は涼しい気候だったのに、すでに汗だくである。
しかし、僕は渋谷までムーンウォークで行かなければならないのだ。
「ビート・イット」のメロディを口ずさみながら、昭和女子大からペースアップをはかった。
視線も気になる
危ない、足が滑らない、というムーンウォークには向かない環境も厳しかったが、更に辛いのはメンタル面である。国道246沿いの歩道は結構な人通りがあって視線が気になるのだ。
僕の後ろからやって来て追い越す人たちは、かなりの確率でこちらに振り向いて様子を確認する。
更に国道246は交通量が多く渋滞している。渋滞中の車からも視線を感じる。
確かに、ムーンウォークで街中を移動する人なんて見たことがない。気になって然るべきである。いや、ムーンウォークだと気付いてない可能性もある。後ろ向きで変な歩き方をしている奴がいる。ほとんどの人がそう思っていたかもしれない。だとしたら、それはとても残念である。ただの後ろ歩きだとマイケルの追悼にならないからだ。
「ムーンウォークをしています」
と背中に張り紙をした方が良かっただろうか?
開始から約1時間、ようやく三宿に到着した。ここまでで全体の1/3ほどの距離である。
三宿の交差点を渡った所に、「喜楽亭」というおいしいカレー屋さんがある。僕はここの壷焼カレーが大好きだ。マイケルがもし食べていたらきっと気に入ったはずである。マイケルがカレーを食べるのかどうかは分からないけど。
結局、カレーの香りに負けて喜楽亭の中に入ってしまった。かなり足が痛くなってきたので、休憩も兼ねてチキンカレーを食べることにした。トッピングはガーリックとゆで卵である。
やっぱり喜楽亭のカレーはおいしかった。
カレーを食べて元気を取り戻し、店を出た。
まだまだゴールは遠い。「スムース・クリミナル」のメロディを口ずさみながら、先を急ぐ。「スムース・クリミナル」のマイケルは本当に恰好良い。いつかはあのダンスを踊れるようになりたいが、僕にはダンスの基礎がないからきっと無理だ。