ということでザッと紹介して回った今年のISOT。大手メーカーが減ったぶんいろいろ頑張ろう!という気構えもみえたし、なにより来年からは幕張・東京・大阪で年3回開催という発表もされたばかり。主催者側も気合い入れてきたなという感じだ。
2020年は東京オリンピックでビッグサイト使えない(隣駅・東京テレポートの青海会場を使用する)ということでどうなるかと心配もしてたけど、とりあえず来年もおっかけてレポートするよ。
文房具業界は、とにかく夏がアツい。なんでかというと、秋冬以降の新製品を発表する展示会がやたらと目白押しになっているからだ。そんな中でも最も規模が大きいのが、文房具の夏フェスこと「国際文具・紙製品展」(通称:ISOT)である。
東京ビッグサイトにメーカーブースがひしめきあい、バイヤーや小売店などの人が押し寄せ、文房具マニアが注目製品に群がる、そんなイベントだ。
今年もそのISOTにずっと入り浸って取材してきたので、そちらの様子をレポートしたい。
デイリーポータルZでは2年ぶりぐらいになるISOTレポートなんだけど、実はこの空白の期間にちょっと大きな動きがあった。いわゆる「大手メーカーのISOT卒業問題」である。
一昨年にはデザインフィルが、今年はキングジムやゼブラ、LIHIT LAB.といった名前がよく知られてる大手が次々とISOTを離脱。それぞれが独自で展示会を開催するようになってしまったのだ。
えー、それじゃあISOTで見るものが無くなるじゃん、と考えてしまうかもしれないが、それはアレだ。早計ってやつだ。
大手がいなくなったから…というわけでは無いかもしれないが、中小メーカーがわりとイキイキと面白い新製品を打ち出してきてて、結果的にはなかなか面白いことになっているのである。
ということで、その辺りのイキのいいのを中心に、注目の文房具を紹介していこう。
まずいきなりブッ込んできたのが、ジオデザイン。
これまでにも豆腐そっくりのブロックメモ(紙質によって絹ごしと木綿が存在する)や、海苔巻きそっくりのハンドタオルなど妙なモノを出してきた同社だが、今年の夏に出荷となる新作はレタス型のメモ『東京書けるレタス』である。
どうだろう。おそらく、文章を読んで想像していた以上にレタスだったのではないだろうか。
いや、「想像した以上にレタス」という日本語が成立するのかはよく分からないけど、でも、そうとしか言いようがない。思ったよりずっとレタスなのだ。
パッケージのビニールを剥いても、やっぱりレタスだ。
中身はレタスの葉を模したメモ(紙もレタスっぽい質感のものをじっくり選んだそうだ)が40枚で、それをひとつずつ人の手でくしゃっと丸めてレタスになるように作っているそうだ。いわば、レタスメモ職人による手包み製法である。
使う時はこれを外側から剥いては一枚ずつちぎって使う。もちろんレタスなので、外側のメモは大きく、内側にいくに従ってどんどん小さくなっていくのである。たまにテントウムシがたかっていたり、虫食い跡があったりするのも、とてもレタスっぽい。
…と、レタスっぽさを追求しているんだけど、いざちぎって使おうとすると「これ、単なるしわくちゃの紙だな」という現実にも気付く。
ジオデザインはもうひとつ、エグゼクティブ向けのオフィスバッグも展示していた。
最近はフリーアドレス制のオフィスも増えたとあって、社内でノートPCや書類、仕事道具をまとめて持ち運ぶためのオフィスバッグがかなり人気なのだ。
こちらがそのオフィスバッグの新機軸『オカモッティ』。まさかの、出前用の岡持ちである。
しかも、単に既存の岡持ちを転用して「オフィスバッグだよ」と悪ふざけしているんじゃなくて、本当にオフィスバッグとして使うようにわざわざ縦の仕切りを入れて(出前用の岡持ちは皿を入れる関係上、縦の仕切りは存在しない)小物収納のためのスライド引き出しをつけたり、フタの裏側がミーティング用ホワイトボードになっていたりと、使いやすい工夫が満載なのだ。
重量感も抜群、握り手も木材をしっかり磨き上げて高級感溢れる仕上がりとなっている。専門の職人さんの手作りによる受注生産で、お値段も約3万円とまさにエグゼクティブ向けの逸品と言えるだろう。言えるのか?
食べ物系の文房具でもうひとつ気になったのが、製本会社の文房具ブランドCRU-CIALの『サンドイッチ/ハンバーガー単語帳』。
CRU-CIALは昨年にマカロン型のふせん(これがまたやたら良い出来だった)でISOTデビューを果たしたいま注目のブランドなのだが、新作のサンドイッチとハンバーガーもまたやたらと良くできていたのである。
単語帳といえば基本的に四角のものばかりで、たまにファンシーな動物型とかハートとかの変わり種があるぐらいのシンプルなジャンル。対してこのサンドイッチの完成度よ。
しかも、よく見るとパン部分が単純な円筒ではなく、きちんと立体的に丸みを帯びているのが分かる。つまり、金型でまとめでズドンと型抜きをしたのではなく、少しずつサイズ違いの紙を順番に束ねていってるのだ。
これ、めちゃくちゃ面倒くさい作り方で手間もすごくかかるので、印刷関係の仕事に関わったことがある人なら「うわー。これは作りたくねぇー!」と叫んでしまうこと請け合い。さすが製本会社ならではの見事な仕事と言えるだろう。
エポックケミカルは今回ピーナッツ(スヌーピー)関連の版権を取ったということで、あれこれスヌーピー推しの強いブースになっていた。
中でも面白かったのが『スヌーピー・フローティング・ハイライター』だ。
ハイライターというのは要するに蛍光マーカーのことなんだけど、まぁかわいいのを作ってきたぞ。
直液式のインクの中にスヌーピー型のフロートを浮かべてあるので、インクがちゃぷちゃぷ揺れる度にスヌーピーも揺れて楽しげだ。
さらにフロートは上下で別のスヌーピーが付いているので、逆さにすると、いったんインクに沈んだスヌーピーが違うポーズでまたプカッと浮いてくるのである。
しかし文房具好きとしては「うん、かわいいなー」だけでは済ませられない見所がある。このスヌーピーが浮いてるインクタンクだ。これがまぁ、やたらと太いのである。
フロートを中に入れるために、わざわざこのぶっといインクタンクを作ったんだろう。インク量も従来の4倍ぐらい入ってるらしい。
かわいさに加えてたっぷり書けるお得さもあるというから、これは注目せざるを得ないヤツだ。
さて、冒頭で「大手メーカーのISOT卒業問題」に触れたが、それでも頑張って残ってくれたるのがカール事務器である。
ところが、そのカール事務器がどうやら怒っているんじゃないか、と思ったのだ。
これは、いわゆる手提げ式の金庫。キャッシュボックスと言われるもの。
物理的なカギを使うキーロックとダイヤルロックを組み合わせた安全性の高いWロック金庫なんだけど、これに対してユーザーからやたらと問い合わせがくる。しかもその99%が「ダイヤルの番号を忘れちゃったからなんとかしてくれ」というものなんだそうだ。
あまりにその手の問い合わせの多さにキレた、とは公式に言ってないけど、たぶんキレたんじゃないかと思われるカールが作ったのが『D-LOCKキャッシュボックス』。D-LOCK…ダイヤルロックをロックしてしまう機能付きの金庫である。
つまり「忘れるぐらいならもうダイヤル使うんじゃねえ」とばかりにダイヤルロック用のダイヤルを回らないように固定してしまうのだ。そんな解決法、ありか!
いっそダイヤル無しの物理キーのみな金庫にすりゃいいんだけど、でもそれでもきちんとWロックで運用しているユーザーもいるから、製品ラインナップとしては必要なんだろう。
それにしてもほんと、真面目なやつほど怒らせると怖いとはこのことだ。
……と思ったら、このD-LOCKキャッシュボックス、ちょっと親切な機能も付いていた。
引き出しの中にこの手の手提げ金庫を入れて使っている場合、開けるとバネの力で勢いよくフタが跳ね上がって引き出しの上板にバン!と当たってしまうことがある。
それは良くないよなーということで、フタ跳ね上げバネの力を調整するつまみも付いているのだ。これをゆるめると、勢いも弱まってふわっと開くようになるわけだ。
良かった。どんなに怒っていても優しさは忘れてなかったんだね、カール事務器。
もうひとつISOTに残ってくれている大手メーカー、呉竹も頑張っていた。
2020年から小学校の学習指導要領が改訂され、小学校一年・二年生も筆を使った書道をやろう、ということになった。とはいえ低学年に墨を使わせると汚しちゃったり大変なので、水筆+濡れると黒く変色する特殊な紙による「水書道」に限られる。
ということでここ数年、書道具メーカー各社は水書道製品をいろいろと売り出しているというわけだ。
それとは別に、個人的に最近の呉竹製品で「これ最高」と思ったのが、『ZIG クリーンカラー・ドット』という水性サインペン。
モノとしては良くある細字+太字のツインタイプペンなんだけど、この太字側のペン先が面白い。ぶっとくて先端が球状に丸まったこのペン芯を紙に捺すと、この通りきれいなドットが描けるようになっているのだ。
実はこのドット芯とも呼ばれる機能を持ったペンは他社からもいくつか発売されているんだけど、それらはだいたい先端がフラットな円筒形の芯で、紙に対して真上から垂直に捺さないときれいなドットが捺しにくいのである。
ところがクリーンカラー・ドットは球状のペン芯なので、適当に斜めから捺してもほぼ確実に欠けなくドットが捺せる。さらにペン芯に弾力があるので、紙にぐっと強く押しつけると大きなドット、ちょんと軽く当てると小さなドット、という感じでさまざまなサイズに描き分けられるのもポイントだ。
色とサイズの違うドットを適当にポンポン、チョンチョンと捺してるだけで、なんとなく見栄えのする画面ができあがるのが、とても楽しい。しかも失敗知らずなので、ついつい無心になって捺し続けてしまう。
他にも、写真の上からトレーシングペーパーを敷いて画面を埋めるようにドットを捺していくと簡単に点描画も描けてしまう、というように絵心のない人でも楽しめる画材としてオススメなのである。
ISOTの楽しみに、中小じゃなくて微少メーカー…具体的に言うと企画開発から営業までぜんぶ社長一人でやっている、いわゆる“ひとりメーカー”の製品を見ることがある。
こういったメーカーはだいたいアイデアの効いた面白い製品を作るので、小さなブースだからといって油断できないし、見逃せない。
そんなひとりメーカーのひとつ、アノファクトリーの『スライドスリー』なんか、ついつい「おお!」と声が出ちゃう面白さだった。
営業所なんかのホワイトボードに貼ってあるネームプレートで、社員ごとに「出社」「退勤」と現在の状況をスライド式に切り替えて表示できるものがある。あれも手書きで「出社」とか書くよりはずいぶん便利なんだけど、でもだいたいはオン・オフのように2択でしかステータス表示できないのが普通だ。
でもそれじゃ足りなくね?とばかりに表示をもう一つ増やして3択式にしたのが、この『スライドスリー』である。
表示切替用のスライダを2つにすることで、「出社」「退勤」「休暇」のように3つのステータスが素早く切り替えられるわけだ。シンプルな機構だけど、これはとても良くできていると思う。
アノファクトリーではもうひとつ、『ファイルの見出し ならべる君』も興味深かった。
これはクリアホルダーに装着して使うインデックスツールで、本体には1~12の数字が並んでいる。ここに窓の開いたクリップをはめることで、大量のクリアホルダーをソートすることができるのだ。
中の書類の優先順位で数字をつけてもいいし、12ヶ月の分類に使ってもいい。窓クリップをずらせば数字も変更できるので、インデックスシールを貼り替えるような手間もない。
なるほど、クリアホルダーでパンパンになったホルダーケースも分かりやすく整理できそうで、これもいいな。
ひとりメーカーといえば、伊葉の『伊葉ルーペ』も面白かった。
伊葉は以前にも「人間は関節の構造上、横にまっすぐ文字を書くようにできていない」という理論を元に紙面と罫線が斜めになった『伊葉ノート』を作った、パンチの効いたひとりメーカーである。
で、その伊葉の今回の新作が、こういった展示会などでパネルの細かい文字を見るのに最適なツール『伊葉ルーペ』だ。
使い方としてはまず、小さなレンズ2枚を付属のカラビナで名札のネックストラップにつないでおく。あとは読みにくい細かな文字に出会ったらレンズをつまんで自分の目の前にかざすだけ。
おおお、シンプル。これでいいのかというぐらいのシンプルさ。
ちょっとピントを合わせるのにコツが要るが、確かにこれなら老眼鏡をかけなくても大丈夫だし、目の前にかざすので視界も広い。
伊葉のひとり社長である宮坂さんは元々眼鏡屋さんだった職歴があり、こういうレンズを扱うのはお手のものらしい。というか、この『伊葉ルーペ』も専用のレンズを使っているのではなく、老眼鏡用のメガネレンズを宮坂さんが中央から削りだして作っているそうだ。
つまり伊葉ルーペ1セット作るのに老眼鏡用のレンズ2枚が必要になるわけで、コストがやけに高いのが問題らしい。いや、そりゃそうだろう。こういう無茶が通ってしまうのも、ひとりメーカー製品の面白さである。
ISOTでひとりメーカーと並んでここ数年注目なのが、印刷・紙業界の文房具ブランドだ。
最初のページで紹介したCRU-CIALも製本会社だし、他にも印刷会社や紙の卸し会社なんかもいろいろやっている。さすが紙のプロの仕事だけあって、唸るような紙モノがどんどん出てくる。
例えば紙の卸売りのケープランニングの人気アイテムが、一週間連続式の日めくりふせんカレンダー『himekuri』。特に昨年発売のの2019年版からは文房具プランナーの福島槙子氏が企画したネコ柄と文房具柄がラインナップし、これが大ブレイク。結果的に文房具業界で最大のアワード、日本文具大賞の機能部門で優秀賞まで獲ってしまった。
これ、まず365日毎日違う柄のかわいいネコと文房具のイラストが楽しめるのがすごく良い。さらに剥がした日付(一枚ずつふせんになってる)も日記や手帳に貼って日付表示に使えるため、お気に入りのイラストを捨てずに再利用できるというのが、かわいいもの好きのツボに刺さったようだ。
来年版の2020年版は、その辺をさらにパワーアップ。
文房具柄・ネコ柄は2019年版から引き続いて人気イラストレーター・萩原まお氏が続投。特に文房具柄は実際の文房具メーカー26社の協力を得て、MONO消しゴムやテプラといった実在の文房具が登場するようになった。
しかも使い終わった日付は付属の小冊子(文房具の説明入り)に貼ることで、最後にはミニ文房具図鑑ができあがるという仕様だ。これはかなりマニア心をくすぐりそうな気がするぞ。
絵柄はさらにフォトグラファー伊佐知美氏による世界の旅行スポット写真が365枚楽しめる『himekuri 旅』(これも小冊子に貼って旅図鑑が完成する)や切手風イラストの『himekuri 切手』など計8種に増量。
お好きな人にはよりたまらん感じになってきたな。
関東交通印刷は、鉄道の切符…特に硬券と呼ばれる硬くて分厚い紙の切符の印刷を得意とする印刷会社だ。とはいえ最近はもう硬券の切符なんて使ってる鉄道会社はなかなか見あたらない(一部ではまだ残ってる)。
そこで関東交通印刷が最近手がけているのが、自社の技術を活かした鉄道文房具である。
なかでも面白かったのが、硬券で改札を受ける際に駅員さんが専用の切符切りでパンチしてくれる、あのパンチ穴の形をそのまま使ったペーパークリップ『硬券パンチクリップ』だ。
もちろん素材も硬券の厚紙をそのまま使ってある。
パンチ穴の切り欠き部分を使って書類をまとめることができる、というもので、いわば紙製のゼムクリップみたいな感じ。
よく見るとパンチ穴の形がそれぞれ違うが、これは旧国鉄時代の首都圏の駅でそれぞれ使われていた46種のパンチを再現しているのだそう。
駅によってパンチ穴の形が違うので、どの駅から乗ったか分かるようになっているわけだ。ちなみに写真中、指でつまんでるのが東京駅のパンチ穴らしい。へー。
ISOTは国内メーカーだけではなく、中国・台湾・韓国といった海外のメーカーも参加している。正直なところ、この海外ブースが集まった辺りは人通りも少なめで、あまりチェックしてる人もいない印象だ。
あー、なんというもったいないことを。面白いのに、最近の海外ブース。
台湾は素敵マステやかっこいいハイセンス系文房具がすごい伸びてきてるし、中国・韓国もガジェット内蔵文房具なんかが面白かったり。これを見逃すのは絶対にもったいないのである。
例えば、中国のBURANBUILが展示していたのが、スマホ対応のノートカバー。まず表紙側のポケットはスマホが入りやすく加工されているし、さらに開くと下の写真のようにスマホスタンドにも早変わり。
これ会議中にLINEとかメールが入ったのを確認しやすいし、こっそり動画見て暇つぶしするのにも良さそうだぞ。
スタンド用パーツはマグネットで固定できるようになっているので、使わないときは邪魔にならないのも気が利いてる。
同じく中国メーカーFrontのモバイルバッテリー内蔵手帳は、給電用ケーブル(mini USB、Lightning)がセットされてる上に、表紙はワイヤレス充電のQi対応。
つまりQi対応のスマホを手帳の上にポンと置いておくだけで充電ができてる、という仕組み。おおこれ便利じゃん。
あと、個人的にやたらツボったのが、韓国のトップ折り紙メーカーJONG IE NARAのロボ折り紙。なんと15体の折り紙飛行機や戦車が変形合体して巨大ロボになる、ダイラガーXV的にスケールのでかいやつだ。
もちろん折り図も一冊の本になるぐらいボリューミー。
すごい折ってみたいので、なんとか韓国から取り寄せられないか思案中である。
文房具業界で最も権威のあるアワードといえば、日本文具大賞。
数多いエントリーからまず機能部門・デザイン部門で5製品ずつが優秀賞に選ばれ、その中の各1製品がグランプリとしてISOT初日に発表・表彰されるのである。
今年のグランプリはもういろんなメディアでニュースになったのでご存知の方も多いだろうが、機能部門はプラチナ万年筆の『プロシオン』、デザイン部門はMARK'Sの『システム手帳』が獲得した。
残念ながらこの両グランプリメーカーとも今回のISOTにはブース出展していないので紹介を省くが、でも優秀賞製品も優秀というだけあって、興味深いのだ。
こちらはデザイン部門で優秀賞を獲った、ピージーデザインの『Kuramae Concrete Pen』。軸がアルミとコンクリートでできているボールペン+コンクリート製ペンホルダーのセットだ。
コンクリートの質感も合わせて見た目がやたらとスタイリッシュで、なるほどこれがデザイン部門優秀賞か、と納得できる完成度である。
もちろんコンクリだけあって、重量はペン単体で29gと普通のボールペンの3倍近い重さ。握ってみると指にずっしりと重みがかかって、かなり笑えるぞ。
しかしこれで書いてみようと筆記姿勢を取ると、重量がそのまま安定感に変わってすごくスムーズに書けるのだ。重いんだけど、それが気にならないというか、重心バランスが上手に整えてあるっぽい。
コンクリの感触もひんやり、サラサラとして気持ちいいし、夏用のペンとして使うとかなり快適なんじゃないだろうか。
機能部門優秀賞で気になったのは、磁石メーカー マグエバーの『マグサンド』。
金属面だけじゃなく、ガラスや樹脂、木材などある程度薄いものならなんでもくっついてしまうマグネットフックである。
仕組みは単純で、要するに板面の裏表から2つのマグネットパーツで挟みこんで固定するというだけ。このマグネットがかなり強力で、間に1㎝厚ぐらいの板をはさんでもしっかり固定できるぐらい。
さらにマグネットパーツがシリコンで全面を包んであるため、板面を傷つけにくく、雨に濡れても錆びず、耐荷重を上げる滑り止めにもなる(板厚5㎜で約500g)というから、確かに優秀だ。
吸盤フックよりも安定性があるし、両面テープほど板面にダメージを与えないのも、ポイント高い。
例えば飲食店のガラス扉にメニュー看板をぶら下げたり、タンスにハンガーをかけたりと応用範囲は広めなので、これも発売されたらかなり売れるんじゃないかと思う。
小西製作所が展開するポップアップカードブランドWAO! POPも注目だ。開くとポップアップした木から桜の花びらやイチョウの落ち葉がひらひら落ちる『ひとひら』カードで、こちらは昨年の日本文具大賞デザイン部門の優秀賞を獲得している。
今年は既存のポップアップカードをいろいろとパワーアップさせて展示しているぐらいとのことで、とくにめぼしいものはないかなー、とスルーしかけたのだが、そうい油断をしちゃいけないのがISOTだ。
念のため「なんか自慢したいポップアップありません?」と訊いてみたところ、「うちがOEMで作ったカードなんで、おおっぴらには展示してなかったんですけど…」とブース裏から持ってきてくれたのが、これ。
某重機メーカー(見りゃ分かるけど)がイベント用に作ったものだそうだが。うおおおお!こんな細かいところまで作り込まれたショベルカーが、平面から立ち上がるぞ!
ちなみにこの動画、Twitterにアップしたところ、3日で再生回数15万回を超えた。いやー、誰が見てもかっこいいよな、これ。
小西製作所にお願いすればこういうのを受注生産で作ってくれるわけで、いつかは僕も自分の立像ポップアップカードとか作ってばらまいてみたい。
ということでザッと紹介して回った今年のISOT。大手メーカーが減ったぶんいろいろ頑張ろう!という気構えもみえたし、なにより来年からは幕張・東京・大阪で年3回開催という発表もされたばかり。主催者側も気合い入れてきたなという感じだ。
2020年は東京オリンピックでビッグサイト使えない(隣駅・東京テレポートの青海会場を使用する)ということでどうなるかと心配もしてたけど、とりあえず来年もおっかけてレポートするよ。
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