デジタルリマスター 2023年4月10日

明治のドックは良いドック(デジタルリマスター)

浦賀にある二基のレンガドック

というワケで浦賀にやってきた。先ほども言ったように、この浦賀にはレンガドックが現存している。しかも、二基。

というか、日本に現存するレンガドックはこの浦賀の二基しかない。 しかもその二基を含め、世界中を見ても四基しか残っていない。つまり、世界のレンガドックの半分がここ浦賀にあるのだ。……と書くこともできる。まぁ、とにかく、相当に希少かつ貴重なモンだということ。

その浦賀のレンガドックの一つが川間ドック。川間ドックは浦賀湾の入口部分、現在ヨットクラブになっているその敷地の一部にある。

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川間ドックはこのヨットクラブの中に

ちなみに、このヨットクラブの横にあるマンションは、数年前に俳優の窪塚洋介が「I can fly」した場所なのであるが、まぁ、そんなことはどうでも良い。

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残念ながら扉船が撤去されているので、ドックは完全水没
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これじゃぁ、ドックだと知ってないと、気づかないよナァ……
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でも、しっかりレンガしてますよ
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ほらほら、階段もあるし

この川間ドックが作られたのは明治33年。元は石川島造船のドックとして作られ、その後旧住友重機械工業のものとなり、そして今ではその役目を終えて、ヨットクラブで隠居生活。

ドック内部と外部を隔てる扉船が撤去されているので、ただの港とまったく区別つかなくなってしまってはいるけれど、それでもよくよく見てみると、港とは違うドックならではの特徴が。

石造りのドックが男性的な感じなのに対し、レンガ造りのドックはどちらかというと女性的な感じがする。カッコイイというより美しい、そんな感じ。

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真打登場

そして、最後はとっておき。浦賀にあるもう一つのレンガドック。その名も、旧住友重機械工業浦賀艦船工場第一号船渠。通称、浦賀ドック。

この浦賀ドック、きちんと扉船もあり、水を排出するポンプも動き、 今もなお、ドライドックとして機能するドックなのである。

というのも実はこのドック、2003年の3月まで現役で使われていたものなのだ。閉鎖となってもう5年。それでも使われていた当時の雰囲気が十二分に味わえる、素晴らしいドック。

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いまだ現役感のある素晴らしいレンガドック(でももう使われていない)
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赤と白のコントラストがとても美しい
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そしてデカい。凄く、いい
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船の底を支える盤木(ばんぎ)もそのまま残ってる
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ドックの外側は、ほら海
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どこを見ても良い雰囲気。足元注意よし
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しかし、よくよく見るといたる所で腐食が進んでるのが分かる

浦賀ドックが作られたのは明治30年。それから100年以上にも渡り、このレンガドックは使いつづけられてきたことになる。

しかし、今回浦賀ドックを訪れてみて、以前に比べところどころ朽ちてきていることに気が付いた。金属の部分とか、クレーンの塗装とか。

ドックが作られてきて閉鎖まで、100年間の使用には耐えてきたというのに、たった5年の放置であっというまに風化していくというのは、いやはや、なんとも。ちょっとだけ、しんみりしますなぁ。


ドライドックよ、永遠に

今に残る、明治時代の巨大なドック。いかがでしたでしょうか。

今回紹介した四基のドックのうち、浦賀ドック以外はいつでも見学が可能。ただ、浦賀ドックだけは、毎年一月に行われる「中島三郎助まつり」など、 限られた機会でしか見学することはできないのでご注意を(私は3年連続でこの祭りに参加していたりします。だって、カッコ良いんだもの)。

また、その「中島三郎助まつり」でも、今年と同じ光景が来年も見られるとは限りません。閉鎖された浦賀造船所をずっとそのままにしておけるわけも無く、今後はミュージアムパークとして整備される予定なのです。

幸いレンガドックと機関工場は残される方針のようですけれど、それ以外のものは順次撤去されていくことになるかと思います。実際、クレーンのヘッドは早い時期に取り外されてしまったし、去年までは残っていた本部事務所も、今年は取り壊されてなくなっていたし。

古めかしい工場の雰囲気が好きな私にとってはちょっと寂しいことだけど、これもまた、時代の流れなんでしょうな。

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機関工場内部も凄いんですよ、浦賀造船所は
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ほらね、ほらね
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