特集 2018年9月30日

サーティワンのアイスで雪見だいふくを作る(デジタルリマスター版)

パックマンの敵みたいなのができた
パックマンの敵みたいなのができた
雪見だいふくはアイスクリーム界の異端児だと思う。

アイスクリームの外側を餅(ぎゅうひ)で包むという、和菓子と洋菓子の見事なコラボレーションはロングセラーにふさわしいおいしさだ。

定番のバニラのほか、これまでにチョコレート味や抹茶味なども発売されているけど、もっといろいろな味のアイスも試したい。そして、いろいろな味のアイスと言えばサーティワンである。

では、サーティワンのアイスでカラフルな雪見だいふくを作ってみよう。

2011年6月に掲載された記事の写真画像を大きくして再掲載したものです。
1974年東京生まれ。最近、史上初と思う「ダムライター」を名乗りはじめましたが特になにも変化はありません。著書に写真集「ダム」「車両基地」など。
(動画インタビュー)

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オリジナルに敬意を表して

まずは確認の意味も込めて、1981年から売られているオリジナルの雪見だいふくを買ってみた。さすが発売から30年も経っているだけあって、脳へのパッケージの刷り込みもすごい。アイス売り場に来て一瞬で見つけられた。
箱を見ただけで中身と味が想像できる安定感
箱を見ただけで中身と味が想像できる安定感
夏は2個入りのパックが姿を消すらしい
夏は2個入りのパックが姿を消すらしい
スーパーには小さめのだいふく9個入りのボックスが売られていた。アイスを包んでいるぎゅうひは温度が上がると溶けやすくなるため、実は雪見だいふくの販売は冬が主らしく、よく見かける2個入りのパックは見つからなかった。

さっそく1個食べてみる。甘くて柔らかいぎゅうひとバニラアイスがすぐ溶けて混ざるのがおいしい。昔から変わらない安定感。
ザ・定番の味
ザ・定番の味
せっかく作るなら、あわよくばオリジナルを越えるものができないかと期待したい。でも越えようとする壁の高さも改めて知ることになった。

とりあえず、アイスを包むぎゅうひを作ろう。

ぎゅうひを作る

ぎゅうひの作り方はネットでいろいろ検索して、白玉粉を水で溶いて砂糖を混ぜて電子レンジに入れる、といういちばん簡単そうな方法を使った。できたての生ぎゅうひなんて見たことないので、正直これで正しいのか分からなかったけど、練ったり伸ばしたりしているうちに雪見だいふくの皮っぽくなったからOKだ。

あと投入する砂糖の多さにも驚いたけど、できたものを食べてみたらちょうどいい甘さだった。和菓子...恐ろしい子!
雪見だいふくと一緒に買ったのでスーパーのレジの人に企みが見破られなかったか心配
雪見だいふくと一緒に買ったのでスーパーのレジの人に企みが見破られなかったか心配
白玉粉をその倍の量の水で溶いて
白玉粉をその倍の量の水で溶いて
白玉粉が溶けたら水と同じ量(!)の砂糖を投入
白玉粉が溶けたら水と同じ量(!)の砂糖を投入
砂糖も溶かしたらレンジで数分加熱
砂糖も溶かしたらレンジで数分加熱
ヤマトのりができた、と言っても信じそうな見た目
ヤマトのりができた、と言っても信じそうな見た目
ものすごく熱いできたてのぎゅうひを片栗粉をひいたまな板の上に載せて、粉をまぶしながらひたすら潰したり引っ張ったりして薄く伸ばす。熱いしすぐ破れるし粉が足りないとくっつくしで今回これがいちばん難しかった。あ、これは「未来の巨匠」コーナーで使えるレベルだ、と思ったけど、動画どころか写真も1枚も撮れなかった。

しかし悪戦苦闘しつつ、餃子の皮のような薄さと大きさのものを何枚か作った。
形はぼろぼろだけど皮ができた
形はぼろぼろだけど皮ができた

いよいよサーティワンの登場

あとはサーティワンで買ってきたアイスを包んで冷やし、固まれば完成だ。たくさんあるカラフルなアイスの中から、今回は即興で9種類のアイスを選んだ。
思わず「モンスターズ・インク」という言葉が浮かんだ
思わず「モンスターズ・インク」という言葉が浮かんだ
アイスそのままでは大きすぎるので、小さじ2杯分くらいすくって、常温まで冷ましたぎゅうひで包む。型をつけたり冷すために保管するのに、9個入りの雪見だいふくのカップが数も大きさもちょうどよかった。
カップにぎゅうひを敷いてアイスを落とす
カップにぎゅうひを敷いてアイスを落とす
それを手早く包む
それを手早く包む
中のアイスがみるみる溶けて染み出てくる
中のアイスがみるみる溶けて染み出てくる
とけだしたりもしたけれど、私はげんきです。
とけだしたりもしたけれど、私はげんきです。
容赦なくみるみる溶けるアイスに手を焼きながら、これ以上ないくらい急いで9種類包んだ。これ見て作りたいと思った人は、ぎゅうひも一旦冷してから包んだ方がいいと思います。

完成したカラフル雪見だいふくは冷凍庫に入れて、一晩冷してから食べてみた。
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完成!試食!

最強に冷やした冷凍庫で一晩寝かせ、いよいよ試食。

果たして、新しいバリエーションに入れられそうなフレーバーはあるのだろうか。
「新しい雪見だいふくを買ってきたよ!」
「新しい雪見だいふくを買ってきたよ!」
ぎゃー
ぎゃー
溶けるアイスを包むのは想像以上に難しかった。冷凍するのに使った9個入りのカップには、にじみ出て固まったどぎつい色のアイスが広がっていた。

あんなにキレイに雪見だいふくを包めるなんて、今風に言えばロッテまじ神。
でもカップから出してみたらそれなりの形にはなっていた
でもカップから出してみたらそれなりの形にはなっていた
会いたかったーYes!
会いたかったーYes!
おそるおそるカップから出してみると、思ったよりきれいに包めていた。薄いぎゅうひにアイスの色が透けていてかわいい。

それぞれを包丁で半分に切ったら、これぞサーティワン!というカラフルなアイスが並んだ。すべてぎゅうひにくるまれているけど。

では溶ける前に試食してみよう。
ポッピンシャワー
お勧め度:★★(5点が満点)


最初に選んだのはポッピンシャワー。クリームソーダのような味のアイスの中に弾けるキャンディーの欠片が入っている。現在サーティワンの中で一番人気らしいので、これが合うかどうかがこの企画の成否を握っている気がする。
親だったら子供に与えたくない系の色合い
親だったら子供に与えたくない系の色合い
半分に切るとポップさが半端ない
半分に切るとポップさが半端ない
その名の通り色合いは超ポップ。食べてみると、まあまあうまい?いや、ふつうだ。

もともとあまり主張しない味のアイスだけど、ぎゅうひに負けているようでさらにぼんやり。弾けるキャンディーもぎゅうひに絡めとられたのかまったく弾けず。一番人気のこのアイスの良さが分からなくなっている。

せっかく盛り上がっていたパーティーで、DJが変わった途端マニアックな選曲になってフロアが空いてくる、という感じである。

ぎゅうひ、案外どんなフレーバーにも合ってしまうんじゃないか、なんて軽く考えていたこの企画に暗雲が立ちこめる。
杏仁豆腐
お勧め度:★★★★★(5点が満点)


続いて選んだのは期間限定らしい杏仁豆腐。選んだキッカケは杏仁豆腐とぎゅうひ、というどこか似ている2人が合うのかどうかを知りたかったから。だけど調べたらマンゴーやパイナップルも入っているらしく、思いのほかフルーツ寄りかも知れない。
お店で出てきても安心な色合いと姿
お店で出てきても安心な色合いと姿
半分に切ったら本格的なスイーツっぽい!
半分に切ったら本格的なスイーツっぽい!
これはひとくち食べて目が覚めた。なにこれ超おいしい。

ポッピンシャワーで不安がよぎっていたけど、2種類目でいきなり出ました、文句なしの満点。アイスそのものが僕好みなのかと思って食べたら確かにそうだったけど、ぎゅうひでくるむことで間違いなく一段上の味わいになっている。

杏仁の味とぎゅうひが完璧にマッチしているうえ、フルーツの酸味が気持ちいいコンビネーション。新しい中華のデザートを作ってしまった、くらいの満足感がある。

鉄拳とかでカンフーの使い手を選んで、てきとうに連打したらものすごいコンボが炸裂して一瞬でKO、みたいな爽快感があった。
マスクメロン
お勧め度:★(5点が満点)


わかった、フルーツ系のフレーバーだったら間違いなく合うはず、と思って自信満々に選んだのはマスクメロン。メロン味のアイスって同じ値段でもちょっと高い気がする。色もキレイだしこれが当たれば商品化も夢ではない、と思ったのだけど。
商品化するときいちばん売れそうな名前と色だけど
商品化するときいちばん売れそうな名前と色だけど
ミニキャベツみたいでかわいい
ミニキャベツみたいでかわいい
ああ神様...。

メロンとぎゅうひ、この2つの間には決定的な文化の違いがある(あたりまえだ)。根本的にまったく歩み寄らない。

ちょっとわざとらしいくらい強い、やや人工的なメロンの風味が、ぎゅうひの壁に当たって跳ね返されている。あんなにヤワな壁なのに少しも通り抜けることができないらしい。

色白で顔は完璧に欧米人なのに、頭の上に大銀杏が乗っかってる外国人力士の違和感、と言ったら分かってもらえるだろうか。
ツインベリーチーズケーキ
お勧め度:★(5点が満点)


チーズ風味のアイスの中にストロベリーとブルーベリーのソースが入り、さらに本物のチーズケーキがゴロッと入っている先進的なアイスクリーム。チーズケーキとぎゅうひのマッチングを試したくて選んでみた。
大人しめな中に不穏な空気を感じさせる
大人しめな中に不穏な空気を感じさせる
本当にチーズケーキが入ってる!
本当にチーズケーキが入ってる!
しかしまさかの2連敗。

チーズ風味のアイスも、ストロベリーやブルーベリーのソースも、ぎゅうひとの相性はそれほど悪くない(すごくマッチする、というほどでもない)のに、このフレーバーのアイデンティティたるチーズケーキが、ぎゅうひとのわずかな方向性の違いを主張する。わずかとは言え、いちばん肝心の素材が合わないので★は1つ。

ほんのちょっとした違いだけど、時間が経つにつれてお互いの距離はジリジリ離れていくのだ。同じ新宿をターミナルとしながら、どんどん離れていく京王線と小田急線のように。
ナッツトゥユー
お勧め度:★★(5点が満点)


5種類ものナッツが入っているらしい。アイスとナッツの相性はバッチリだけど、果たしてぎゅうひとのマッチングはどうだろう。
どこかで見たことある雰囲気...
どこかで見たことある雰囲気...
ナッツぎっしり、確かな満足(違う)
ナッツぎっしり、確かな満足(違う)
これ、どこかで食べたことある。

こってりとしたアイスとぎゅうひの味が似ていて、やっぱりここでもアイスがぎゅうひに負けている感じ。おいしくなくないけど、全体的な味は芯が通ってなくてぼんやりしている。ナッツとぎゅうひの相性は悪くないんだけど。

食べながら断面を見て思い出した。これくるみゆべしだ!でもあそこまで振り切った味の濃さはなくて(冷たいから?)、もっと自分を出せよ、と少しもどかしさすら感じる味。

何となく、学生時代ジャケットから靴の先までアニエスベーだった同級生を思い出した。彼の部屋にはラッセンの絵が飾られていた(別にいいけど)。
ジャモカアーモンドファッジ
お勧め度:★★★★(5点が満点)


今まではほとんど甘さ主体のフレーバーだった。そこで大人の味、コーヒーアイスクリームの登場である。一緒に入っているアーモンドとチョコレートは問題ないだろう。
見るからに子供は手を出さないお菓子
見るからに子供は手を出さないお菓子
果たしてコーヒーとぎゅうひの運命は
果たしてコーヒーとぎゅうひの運命は
ひとくち食べて笑ってしまった。

これはうまいぞ。コーヒーとぎゅうひ、アーモンドとぎゅうひ、チョコレートとぎゅうひ、お互いすごく遠いところにいたはずなのに、どれも合う!

甘さはぎゅうひが担当していて、甘さを押さえたアイスクリームとの組み合わせが絶妙。自信を持って勧められる大人のスイーツだ。

中尾彬さんのねじねじマフラーを買ってきて親父にプレゼントしたらなんかすごく似合った、というような感触。
コットンキャンディ
お勧め度:★★★(5点が満点)


味ではなく、色のどぎつさで選んでしまった。食べる直前までどんな味だかも知らなかったけど、わた菓子をイメージしたアイスクリームとのこと。...でも日本にはこんな青いわた菓子ないよね?
どうしよう、何かの生命体っぽい
どうしよう、何かの生命体っぽい
つぶれてしまった形がかえってかわいい
つぶれてしまった形がかえってかわいい
口に入れたあとは、見た目ほどのインパクトは感じない。

全体的にもわんとしているけど、たまにちょっとした酸味があって、それがいいアクセントになる。ど派手な見た目とは裏腹に、和菓子のようなストイックな味わい。でももう少しウリがほしいところ。

バニラとか、定番ものに少し飽きてきたかな、というときの変化球として(見た目も含めて)いいかも知れないけど、これがエースになることは確実にない。

左投げ右打ち、アンダースロー、イケメンハーフの甲子園ピッチャー、でもMax130kmで2番手、背番号は12、と言った感じ。
チョコレートミント
お勧め度:★(5点が満点)


僕が子供のころからサーティワンでいちばん好きなチョコレートミント。ほどよい甘さとさわやかな後味はぎゅうひに合うんじゃないかと思っていた。
ありそうでなかった組み合わせ
ありそうでなかった組み合わせ
ぜったいおいしそうだ!と思って口に入れたのだが
ぜったいおいしそうだ!と思って口に入れたのだが
う、うわー。

と思わず声が出てしまったほど、予想を完全に裏切るダメさ加減。どんなに噛んでも、ミントアイスとぎゅうひがまったく別物、と口の中で識別されている。欧米とアジアの違いが如実に出てしまった感じ。

せっかくおいしいアイスとぎゅうひなのに、一緒になった意味がまったくない。

朝食はごはんかパンか、トイレは和式か洋式か、寝室はベッドか布団か、という問題は結婚前に解決しておくべきなのだ。
レモンシャーベット
お勧め度:★★★★★(5点が満点)


最後に残ったのはレモンシャーベット。アイスクリームはともかく、シャーベットは合わないのではないか、とむしろハズレを期待して選んでみたフレーバーだったのだけど。
これはこれで和菓子っぽい
これはこれで和菓子っぽい
地方の銘菓でありそうな色と形
地方の銘菓でありそうな色と形
最後に奇跡が起きた。

これはすごく爽やか!まったく期待していなかったせいか、感動的なおいしさを感じてしまった。

甘いぎゅうひにレモンの酸味がこの上なく引き立つ。正直、レモンシャーベット単体では(おいしいけど)特別感動しなかった。でもぎゅうひにくるんだら別世界。間違いなくレストランとかのデザートで出てきても違和感のない、いやむしろうまいとシェフを呼びたくなるレベル。

三つ編みにメガネの女の子を歌わせてみたらあまりの美声に世界中が涙した、みたいな奇跡が現実に起きたのだ。目の前で。

コラボしてほしい

サーティワンは日本に初出店してから今年で37年、雪見だいふくは発売開始から30年だそうだ。ふだんは顧客を取り合う立場の両者だけど、第三者が興味本位で合体させてみたら奇跡が起きた。

ぜひここは手を取って、一度でいいから企業の本気のコラボを見てみたいと思った。とにかく雪見だいふくレモンシャーベットと雪見だいふく杏仁豆腐、食べてみてください。
僕は試食のしすぎで腹を冷やして寝込みました
僕は試食のしすぎで腹を冷やして寝込みました
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