ラブレターはビジネスメールと似ている
清書をしてもらうためにまずは自分でラブレターを書く。大事なのは恥ずかしがらずに「ラブレターほしい。100通ほしい」と思い続けながら書くことだ。
まず、自分が好きな理想の女の子をイメージして、その子からもらったらこういう内容だろうなーと妄想しながら書きます。
恥ずかしいだろうが、夢に向けての大事な準備なのだ。恥を捨てながらラブレターを書いていて思ったが、ラブレターの文章構成は仕事で送るような営業メールとだいたい同じであることを発見した。
株式会社○○
△△様
突然のご連絡、失礼致します。
私、株式会社□□の江ノ島と申します。
本日、御社のホームページで拝見させて頂きまして、是非とも、御社のケチャップをご紹介させて頂きたく、ご連絡差し上げた次第です。
いつも愛用しており、その魅力に取り憑かれまして、是非とも紹介させて頂きたく、取材させて頂ければ幸いです。
ご検討頂きまして、お手数ではございますがご連絡頂けますと幸いです。
何卒、よろしくお願いします。
これがビジネスメールである。特徴として、自己紹介、失礼しますという文章、どこで商品を知ったか、何をしたいか、などの文章で構成されている。そして、これが強風の中、書いたラブレターである。
できあがったのがこちらのラブレターです。
強風に負けないぐらいの愛のあるラブレターが書けた。とくに「でもでも」の部分が渾身のでき。
江ノ島くんへ
突然、びっくりさせてごめんね
私、○○の△△って言います。
同じクラスだけど、今までちゃんとしゃべったことなかったよね
いつも面白くて、楽しそうでいいなーといつも遠くから見て思っていました。
こんな人と、一緒にいたら毎日楽しいだろうなーと江ノ島くんを見るたびに思って、
付き合うならこんな人だろうなーとなんとなく考えていたら、
ドキドキしてきて、でもこの気持ちを直接なんて恥ずかしくて言えないから
手紙で伝えたいと思います。
好きです、付き合ってください。
恥ずかしくて変な文章になってしまったかもしれないけど、
気持ちが伝わればいいな。
お返事待ってます。
書きながらにやにやしちゃうほど良いラブレターができてしまった。これを清書してもらう。清書をしてもらうぞ!(興奮のあまり2回目書いた。)
清書するメンバーのラブレターの思い出
清書してもらうのは左からトルーさん、與座さん、井口さん、北向さん、ネッシーさん。
書いてもらうのは男女5名のライター。気になるのは、トルーさん、北向さんがいることだ迷惑メールの女性っぽいメールは男性がほとんど書いているというのを聞いたことがあるので参加してもらった。
今回、本当に知らない人からもらった感じにしたい。そこでただ単に清書してもらうだけではなく、先ほどのラブレターに各自で内容のアレンジを考えてもらい、封筒と便せんも用意をしてもらった。最終的にどのラブレターが一番よかったかを独断で私が決める。「怖っ」と誰か言っていたがそういう企画だからしょうがないです。
清書中も「うわっ・・・」という悲鳴が途切れることがなかった。
今回、想定は学生のときのラブレターである。全員に「学生の頃、ラブレターって書いてことありますか?」と聞いたところ、北向さんが小学生の頃に書いたことがあるらしい。
「へー、書いたことあるんですねー。どうでした?」と詳細を聞こうとする。
「返事はありませんでした・・・。」と言う北向さんに「えー、ダメだったんですかー」と言いながらのぞこうとしたが、冒頭で止まっている。
「転校するタイミングで書いたんですよ・・・」
そっと、北向さんから離れた。離れてのぞくことしかできなかった。
ラブレター欲しさを抑えきれない
ラブレターの清書をしてもらっているときは、とても落ち着かない。どんな内容を書いているのか気になってじっとしていられないからだ。
「今、どの辺書いてます? そこ好きなんですよー」、「へー、そういう文字で書くんですね。その装飾もいいなー」
書いてもらって申し訳ないので書いている内容を褒めてみたのだが、企画のせいか変態な感じになってしまっている。
静かになり、いなくなったのかと井口さんが顔をあげると、
じっと黙って見ている男がいた。リアルでこういう人がいたら本当に怖いと思う。
それぞれ書き進める中、「蛍光ペンを使った方がいいかな」「文字をちょっと丸くしてみよう」などそれぞれ積極的な試行錯誤をする様子が見られるようになった。
しかし、「付き合ってください」の部分で、悲鳴が再びあがる。嘘だとわかっていてもここで全員、苦悶していた。
「書くのにかなりの勇気と覚悟が必要」「感情を無にして写経しています」「ぞわぞわする」「別人にならないと書けない」「仕事と割り切ってます」などなど賞賛の声が止まらなかった。本当にありがとうございます。
その様子を遠巻きに見るジャージの男。
撮影をしてくれた編集部の橋田さんはこの様子を「夢を見ている感じ」と表現していた。多分、悪夢だ。
全員が書き終わったようなので用意してもらった封筒に入れてもらう。どの人が書いたのかわからない方がドキドキするので、私は違う場所で待機している間に部屋のポストに投函してもらうことにした。
その間、橋田さんに撮影してもらった写真を見ると、
トルーさんは封筒に貼るシールを用意していた。女子力高い。
そして、そのシールはほとんどの人が使っていた。(受け取ったラブレターを見たとき、同じシールが多いなとは思っていた。)
「シカ可愛い!」「このシール可愛い!」と女子みたいな会話が聞こえてきた。
見ていない間、「この女の子、不器用なんだよなー」「黄色いワンピースが似合いそうなイメージ」など、各自がラブレターを書いた女の子を妄想していた。でも、原文は俺だ。
できたらしいのでポストへ入れてもらう。
ポストに投函してもらう
待ちに待っていたラブレターがついにできた。早く読みたい気持ちを抑えながら、ポストに投函してもらう。
外にあったポストを借りようとしたが、レンタルスペースの持ち主の手紙が色々と入っていたので部屋の引き出しを使うことにした。
準備は整った。
清書してもらったラブレターを受け取る時が来た! 学生の時の自分よ、ついに夢にまで見たラブレターが手に入るぞ!
すでに喜びが漏れ出ている。
「えー?本当にあります?」
先ほどまで興奮していたが冷静になって考えてみると、自分で用意した文章で、しかも書いているところも見ていたのだ。気持ちが冷めてしまう可能性もある。嬉しくなかったら申し訳ないなーと思いながら、引き出しを開けて受け取る。
自作自演なのにめちゃくちゃ嬉しかった。
書いているところも見ていたはずなのに歓喜だった。これはすごい。
「江ノ島くんへ」というのが、こうグッときますよね。
他人なのだが心の距離を一歩詰め寄って来てくれた、そんな温かい気持ちが封筒からも伝わってきませんか?
こういう手紙を学生時代にもらえていたら、こんな記事を書くことはなかっただろうし、変な人がいたらじっと見てしまって絡まれることもなかっただろう。
母さん、産んでくれてありがとう。
嬉しすぎてしばらく見ていた。
ラブレターの優勝を決める
このまま持ち帰って家で1人で見ようと思ったが、本当に趣味でやったと思われると今後、参加メンバーとの関係に支障が出るのでこの場で読むことにした。
後ろを見たとき、同じシールが貼られている様子が業務用ラブレターみたいだなと思った。
どのラブレターを誰が書いたのかは最後に発表するので皆さんも想像してほしい。簡単に紹介していく。
まずはおしゃれにシールを貼ったこの手紙。
全体的に真面目で印象がある。きっと委員長タイプ。
「明日の中間テスト、頑張ろうね!」にときめきめいたが、北村真一だった。(トルーさんの本名)
次はちょっと可愛い感じの手紙。明るく振る舞っているが、根は真面目なタイプだと思う。
LINEを載せている感じが現代っぽい。そして、差出人は牛島。誰だ。
こちらは蛍光ペンを使った明るい雰囲気の手紙。ちょっと勉強はできないけど、明るい性格だと思う。ドジっ子だ。
緊張しているのか、びっくりさせてごめんなさいが2回も入っていてかわいい。好きです!
ノートだ! 学生っぽさは一番ある。
今、目の前に良さを凝縮した手紙がある。学生の時にもらったら一日中ドキドキしながら他の人にばれないように何度も見たと思う。
冒頭のカラフルな感じと絵文字を入れてくるところに、普段はクラスでもよく喋る女子で(うるさいなー)と思っていたけど、これをきっかけに意識してしまうところまで妄想した。
にやにやが止まらない手紙だった。
この手紙は好きな食べ物を知っている人というのが、好感度高い。
「2枚目につづく」というのが、ていねいでかわいいと思った。
この手紙、心に訴えかけてきますよね。
いかがだったろうか。一部、誰が書いたかわかるが全部素晴らしいラブレターだったと思う。全て100点で全員と付き合いたい気持ちだが1人に決めたい。(何様だという言葉が出てきていると思うが飲み込んでほしい。)
ノートとラーメンのラブレターで迷ったが、
優勝は好きなものを把握しているラブレターの町田さんです!
優勝はラーメンの絵を描いてくれた町田さんのラブレターだ。「好きなものをちゃんと把握している」ところに本当に好きなんだろうなという気持ちを感じたので。
ちなみに書いたラブレターはそれぞれ上の通り。優勝したのはネッシーさんのラブレターだった。
あまりにも罪深い企画をしてしまい、帰り道に良くないことが起こるのでは不安になった。
年度末に仕事が忙しくて大変なこともあったが、今日という日を迎えることができて本当によかった。また、誕生日にお願いします。
このあとずっと変なテンションだった。
こういう日があってもいいかもしれない
最初は全員、困惑していたが最終的には楽しい雰囲気になった。ラブレターたちは帰ったら机の引き出しにしまって大事にしたいと思う。
また、最後に参加者たちの感想です。
ネッシーさん
ラブレターについて。 書いている時は、わりと淡々と写経しているみたいな気持ちでした。恥ずかしい、照れくさいと本格的に思い始めたのは、江ノ島さんが手紙を読み始めて、さらにそれをみんなが読み、感想を言い始めたあたりです。自分が書いたラブレターが、外界に触れてる様子を見るのって、こんなにも精神力が必要だったのかと、びっくりしました。 トルーさんが、すごくかわいいシールやマスキングテープを大量に持ってきていたことに感動しました。
與座さん
ありがとうございました!最初は余裕だと思っていたのですが「ずっと一緒にいたい」と書いた辺りからこんないい言葉をウソで書く罪悪感やゾワゾワなどいろんな思いがまざってしまい「大好き」と書いたところでもう精神が限界でした。でも不思議と読んでもらってる時は「他人に負けたくない」「私を選べ」と思ってしまい、なにこれ怖いと思いました。
井口さん
話聞いた時「すげえやばい企画だ」と思ったし、始まるまで怖すぎたんですけど実際みんなで書くと手紙書くのもめっちゃ楽しかったし、書いていた間は江ノ島さんに恋する架空の女子生徒を憑依させて頑張りました。参加して新しい世界が見られて良かったです。あと、江ノ島さんには優勝した町田さん(仮)と末永く幸せになってほしいなと思います。
トルーさん
楽しく書いていたのですが「好きです、付き合ってください」のところで我に返って、急に背筋がぞわぞわしました。書き終えて、少し自分という人間がすり減った感覚がありましたが、その分成長できたと思います。ありがとうございました。
北向さん
できるだけニュアンスは残しながら告白はしたけどもう少し踏み込めない後輩のつもりで書いて満足していたのですが、後から思い返したら単純にこんなラブレターをもらいたかっただけなんじゃないかという自分の思いに気づきました。
最後は回し読みをした。自分宛のラブレターを読まれるのは恥ずかしいが最終的には慣れる。