特集 2017年12月29日

歳末たすけあい てづくり弁当交換会

みんなで弁当のおかずを交換するパーティをしました
みんなで弁当のおかずを交換するパーティをしました
弁当の具を複数種類作るのは面倒だ。

そこで一人ひとつおかずを作ってきて、それをみんなで平等に交換したらリッチな弁当が手軽に作れるのではないだろうか。

歳末のたすけあいとして、おかず交換弁当を作りたい。
1986年埼玉生まれ、埼玉育ち。大学ではコミュニケーション論を学ぶ。しかし社会に出るためのコミュニケーション力は養えず悲しむ。インドに行ったことがある。NHKのドラマに出たことがある(エキストラで)。(動画インタビュー)

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弁当でたすけあいの心を

今日はみんなが力をシェアして豊かな弁当を手に入れる、そんな年末にふさわしい助け合いの心を示したい。事前に協力してくれる人を募って、お弁当交換会を開催した。

今回は、お互いが何を作るかを予め伝えずにやることにした。他の人が何を作ってくるか…そのあたりの読み合いが楽しそうだ。

かりに同じものを作ってきたとしても、味付けや火加減の具合などいろいろと違う部分が見られるにちがいない。

自慢のおかずをひっさげて集まったのはこの5人だ。
デイリーポータルZライターからは江ノ島、トルー。編集部からは橋田、林、そして私藤原である。
デイリーポータルZライターからは江ノ島、トルー。編集部からは橋田、林、そして私藤原である。
編集部橋田さん以外は、基本的にふだんあまり料理をしない人物が集まっている。クックパッドを挙げるまでもなく、インターネットにはレシピ情報が溢れているので大げさな失敗はないと思うが、どうだろう。

だれか一人がフルーツカレーなどを作ってきたらおしまいになってしまう。このあたりの采配もなかなか楽しみなところである。
これを読んでいるあなたも一度手を止めて、自分だったら何を作るかをよく考えてみて欲しい。思いついただろうか。それではわれわれが作ったものを見ていこう。
ライター会議のあとに開催したのでおなかがすいている
ライター会議のあとに開催したのでおなかがすいている

江ノ島 きゅうりのハム巻き

江ノ島さんが作ってきたのがこちら「きゅうりのハム巻き」だ。一瞬アスパラベーコン巻き?と思ったのだが、アスパラでもなければきゅうりでもなかった。
きゅうりのハム巻き
きゅうりのハム巻き
彼が学生時代に母親が作ってくれたお弁当のおかずで最も好きだったものを作ったそうだ。

これを作るために江ノ島が珍しく台所に立っていると彼の母が話しかけてきたという。企画趣旨とチョイスの理由を説明すると「(あれだけいろいろ作ったのに)一番はそれか…」という反応をされたそうだ。
料理中のようす。出ている鍋が多い。
料理中のようす。出ている鍋が多い。
ハムときゅうりを合わせて焼く。こうも食べたことがあるものと食べたことがあるものを組み合わせただけなのに食べたことがないものができるのはすごいことだ。

トルー 卵焼き

トルーが作ってきたのはオーソドックスに卵焼き。卵焼き用の四角い小さいフライパンがなかったため、大きいフライパンで作ったから苦労したとのこと。謙遜しているが、見た目はそんなにおかしくない。
卵焼きだ
卵焼きだ
…見た目は問題なさそうなものの、彼は以前企画でキャラ弁を作ったとき箸が曲がりそうになるくらいご飯を固くした過去がある。(こちら

その硬さゆえ縦にしても形が崩れなさそうなキャラ弁であった。今回の卵焼きも固いのだろうか。

林 ちくわとウインナーの照り焼き

加工肉の組み合わせだ
加工肉の組み合わせだ
林さんはちくわとウインナーとの照り焼きを作ってきた。ちくわとウインナーの組み合わせは意外かと思いきや、ちくわもウインナーも、火を通さなくても食べられるから安心というのが食材のチョイスの理由だそうだ。

味付けは?と聞いたら「醤油とさとうとみりんと酒」。てりやきだ。クックパッドでお弁当のおかずに適したものを検索したら出てきたようだ。

橋田 玉こんにゃくとウインナー

おかずを何にするか迷って2品用意してくれた橋田さん。
おかずを何にするか迷って2品用意してくれた橋田さん。
はじめ玉こんにゃくだけで来るつもりだったそうだ。しかしそれだと、なんだかかぶる気がしてウインナーを追加したら、結果として「ウインナーと練り物」として林さんのおかずとかぶってしまった。
ウインナーはいいウインナーだそうだ
ウインナーはいいウインナーだそうだ
ただ、特筆すべきは「ウインナーの良さ」で、これは肉の万世で買ってきた美味しいものとのこと。情報もおいしさの一部だったりするので期待は高まる。

そして最後は主催者であるぼくが持ってきた自慢の一品である。
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藤原 赤飯

そしてぼくの作ってきたものは。
お弁当に入っていたら嬉しいものを考えて…
お弁当に入っていたら嬉しいものを考えて…
赤飯にした
赤飯にした
ぼくはお弁当に入っていたら嬉しいご飯は何かを考えて赤飯を用意した。みんなはおかずを作ってくることを予想して、裏をかいてご飯ものだ。

ここで裏をかいた人が二人以上いたらお弁当がご飯だらけになってしまうリスクはあったが今回は無事にセーフだった。赤飯がかぶったら、このたすけあい弁当という船は沈没してしまうだろう。

ちなみに赤飯を自分で作るのは面倒(むずかしそう)な気がしていたが、スーパーに炊飯器で炊ける赤飯用の豆が売られていて、案外てこずらずに作ることができた。
パッケージの言うとおりに作ったら炊飯器が赤飯でパンパンになった
パッケージの言うとおりに作ったら炊飯器が赤飯でパンパンになった
以上6品が今回のお弁当のメニューである。ぱっと見たところおかしなおかずはなく、どれも美味しそうである。

おかず交換タイム

さっそく食べよう…とするその前に、これはたすけあい弁当なので、一旦持ってきた弁当箱に各自おかずを詰め替えていく。
この民族は弁当のおかずを交換する
この民族は弁当のおかずを交換する
これがたのしい。そのままの容器でそれぞれのおかずを突っつきながら食べても楽しいかもしれないが、やはり自分専用の弁当にするのは格別である。自分が作ったおかずを差し出して、人からおかずをもらうというのは貿易のようでもある。

仕上がりはこうだ。
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おかずを交換したので入ってるものは全部おなじである。だいぶ茶色い弁当になった。ただでさえ茶色いのに、赤飯がトドメになっている。

みんなお腹が空いている(ライター会議後に撮影しました。夜です)。それぞれの盛り付けが完成し、さあ発車メロディは鳴った。たすけあい弁当、出発進行である。
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人んちの味フェスティバル

歳末たすけあい弁当。それはめくるめくひとんちの味付けであった。ひとんちの味の狂い咲きとも言えよう。食べるのが楽しみである。ひとつひとつ説明したい。

まずはいちばん見たことのない料理、「きゅうりのハム巻き」から食べることにした。
あ、あー
あ、あー
「うまい!」と言うつもりで食べたのたのにタイミングを失ってしまった。まずくはないが、おいしい!という感じでもない。きゅうりとハムとごま油の味がする。どこかで中華サラダ(きゅうりとハムが入っている)の声が聞える。

そうか、これか!と思った。これこそが店で味わうことは決してできないであろう正真正銘の「家庭料理の味」である。外国に「日本家庭料理の店」があったとしたらこれをだしてほしい。うまさまずさの彼岸にこの料理はある。
作った本人は「これだ」と言っていた
作った本人は「これだ」と言っていた
ただ正直ちょっとぼんやりした味だなと思って理由を聞いてみると、味付けはせず、あるのは塩もみしたきゅうりとハムの塩気のみで、あとは炒めただけだという。そこに塩を足さないというのは勇気といえるのではないか。

完全にその家のメンバーの合意によってチューンナップされた「人んちの味」である。うまいまずいとは違う、目がさめるような未発見のベクトルに興奮が高まる。

料理は「味」

続いて橋田さんのこんにゃくとウインナー。
おいしいですね
おいしいですね
玉こんにゃくは味がしみてお弁当のおかずにピッタリの味付けになっている。一方ウインナーは皮がパリッとして、さすが肉の万世の一品と思わせるおいしさだ。味付けは醤油とのこと。……ウインナーに醤油ってありだったのか。

他のメンバーは、ウインナーは塩コショウで味付けするものと思い込んでいたところの醤油。これもまたいい「ひとんちの味付け」である。

料理はうまいかまずいかだと思っていたのだが、違った。料理は「味」だったのだ。

あまくない卵焼き

卵焼きこそあじつけに差があるもの代表だ
卵焼きこそあじつけに差があるもの代表だ
卵焼き界には甘い卵焼きと甘くない卵焼きがあるという。そんななかトルー作の卵焼きはふりきった甘くなさであった。

うちの母が作る卵焼きは甘い(他のメンバーの家の卵焼きもそうだった)のでこれはすごい体験であった。先日札幌に旅行に行ったときに食べた茶碗蒸しが甘くて驚いたのだが、その逆の体験をしたのだと思う。

これもまたうまいまずいの彼岸にいる体験である。

ひとんちの食材という考え方もある

ウインナーとちくわのてりやきだ。うちでは焼いたちくわを食べることがないので、食材として目新しさがあった。なるほど食材のチョイスの時点で思ってもなかった領域がある。

家庭によって食材の偏重があるのかもしれない。そういえば僕が小学生のころ、我が家に砂肝ブームがやってきて、毎晩のように串焼きにした砂肝を食べていたことがあった。あれは珍しい食材の偏りっぷりだった。

という話をしたら、林さんは子供のころに家でセンマイ刺しブームがあったと言っていた。みそだれをつけて食べるあれである。こういう家であったブームはいろいろ聞いて回りたい。
林さんは前日の夜にこれを作りながら酒を飲んだという。それもまた完全に別世界の体験だ。
林さんは前日の夜にこれを作りながら酒を飲んだという。それもまた完全に別世界の体験だ。

おかわりがうれしい

ぼくが作った赤飯は赤飯それじたいはまったくおかしいところがない普通の味だ。自分が作ったせいもあるのかもしれない。人んち感はないのでおもしろみがない。

強いて言えば弁当に赤飯が入ってる事自体が僕の趣味なので、他の人からすると違和感が生まれてよかったかもしれない。ちなみに我が家は祖父がよく赤飯を作ってくれるので赤飯を食べるのはふつうである。

あとふつうの感想だが自分が作ってくれたものをおかわりしてくれるとうれしい。
もっと食べてくれという気持ちになる
もっと食べてくれという気持ちになる
ここで弁当を持ってきてない人が食べる用の買ってきたものを食べたら「売られてる味」で、おいしいんだけどあまりおもしろみがないことに気がついた。ちょっとえらそうな意見ですが。
ここで弁当を持ってきてない人が食べる用の買ってきたものを食べたら「売られてる味」で、おいしいんだけどあまりおもしろみがないことに気がついた。ちょっとえらそうな意見ですが。
こうしてバラエティ豊かなお弁当を楽しく食べることができた。自分はひとつのおかずしか作ってないのにこのリッチさはなんだろう。

自分の持ってきたものを分け与えて、他の人が作った(つまり自分が作っていない)ものをもらうなんて、まるで社会の仕組みみたいである。お弁当のおかず交換は素朴な共産主義みたいだなと思った。

人んちの味よ永遠なれ

人んちの味付けのものを食べるのはおもしろい。弁当を交換することで効率的にその楽しさを満喫することができた。

オクトーバフェストやタイフェスでいろいろなソーセージの屋台が並んでいたりするのとおなじように、いろんな人んちの卵焼きの屋台が並んでる人んちフェスも開催してほしいものだ。

会議後を終えたあとにこの撮影をしたので酒を飲みながら弁当を食べたのだが、ここはお茶がよかった気もする。もちろん人んちの濃さのお茶である。
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